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がんの治療を受けるコツ

更新日:2012年2月2日 印刷ページ表示

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がんの治療を受けるコツ

 患者さんや家族の方が、自分が納得できる治療を受け、がんに立ち向かっていくためにはどうしたらいいのでしょうか。

 県内のがん診療連携拠点病院・前橋赤十字病院で、日々がん患者さんの治療にあたる岡本亘平先生に、がん患者さんとその家族の方達に向けて「がんの治療を受けるコツ」をまとめてもらいました。

 情報収集を始めるその前に、是非このページをご覧になって、決して不安になりすぎたり、焦りすぎたりすることなく治療を進めていきましょう。

がんの治療を受けるコツ

  1. はじめに
  2. 診察を受けるその前に
  3. 初診時
  4. 告知について
  5. 検査について
  6. がんと診断されたら
  7. 治療方針について
  8. 病院を替えたいと思ったとき…
  9. セカンドオピニオン
  10. 手術
  11. 抗がん剤治療・分子標的薬治療
  12. 放射線治療
  13. 緩和ケア
  14. 内服薬
  15. 治療中、治療後の通院について
  16. おわりに

1.はじめに

 自分ががんだと診断されたら…

 あなたはどこの病院でどのような治療を受けたいでしょうか。考え方は人それぞれだと思います。しかし診察を受ける際に注意していただきたい点や、実際に診察をしていて困るケースというのもあります。現在ではインターネットで様々な情報を手に入れることができますが、それだけに頼ると間違った情報に惑わされることもあります。基本的には主治医によく相談した上で判断するようにしてください。

 ただし診察時間には限りがあり、なかなか一人の患者さんに充分な時間を割いてお話しすることができないことが多々あります。

 そこで普段の診察の流れや、診察する中で気づいたことなどを簡単にまとめてみました。皆さんが診療を受ける際の一助になればと思います。

2.診察を受けるその前に

 病院で診察を受けるときに、普段病院に通いなれない方などは緊張されることも多いと思います。医師に話しておこうと思っていたのに言い忘れてしまった、などということもあるかと思います。何を伝えたいのか、何を聞きたいのかを良く整理してメモしておくのもよいと思います。

 がんの話をしていると、患者さん本人は聞いているようでも全く頭に入っていないことも良くあります。何より命に関わることですし、治療のためには費用もかかり、仕事も休まなければならない…などといろいろ考えてしまいます。できればご家族と一緒に受診していただき、一緒に診察室に入って話を聞いていただくのがよいと思います。

3.初診時

 医師がまず知りたいことは、1.いつからどのような症状があるのか、2.持病、3.既往歴、4.内服薬、5.アレルギーなどです。

  1. 症状:痛みや出血、発熱などの症状がいつ頃からあり、ずっと続くものなのか、よくなったり悪くなったりを繰り返すものなのか、どんな時に症状が出るのか(起き上がると痛い、横になるとよくなるなど)
  2. 持病:現在治療中の病気があるならば必ず医師に伝えましょう。糖尿病や高血圧やぜんそくなど、今後の診断・治療や投薬に影響するものがあります。
  3. 既往歴:現在は良くなっていても以前治療を受けた病気・手術を受けるような大きな病気やけがなども伝えるようにしてください。
  4. 内服薬:最近では薬局や医院で「お薬手帳」や「薬の説明書」を出しているところが多いですので、持っている場合には必ず持参し、医師に見せるようにしましょう。特に血液をサラサラにする薬は検査や手術の際にあらかじめ中断する必要があることもありますので注意が必要です。中断が必要な場合は「○月○日から中断して△月△日に検査」など医師から指示が出ますので、自己判断で中止することは避けてください。
  5. アレルギー:薬や食べ物などでアレルギーがある人は必ず医師に伝えてください。薬の名前までわかると医師としても対応しやすくなります。

4.告知について

 現在はがんであっても基本的には本人に告知する方針の医師がほとんどです。手術や治療を行うに当たって、がんであるとはっきり伝えないと、どのような方法でどのくらいの期間の治療が必要かなど十分に説明することができないからです。患者さんが自分の病名を知り、治療法をよく聞いたうえで納得して治療を受けていただくためです。自分ががんであってもがんであると知りたくない人や、患者本人が認知症などで判断できないなど特殊な場合はまず医師にその旨を伝えてください。

5.検査について

 一つの検査だけでがんと確定するわけではなく血液検査、レントゲン、CT、MRI、内視鏡検査などが必要です。最終的には生検(腫瘍組織を一部採取して がん細胞があるのかどうか、あるとすればその性質はどんなものかを調べる検査)で確定することもあります。検査や生検には痛みや出血を伴う処置もあり、部位によっては入院が必要なこともあります。

6.がんと診断されたら

 慌てずにまずは自分のがんの現状をよく確認しましょう。がんの性質は千差万別です。肺がんと胃がんは全く性質の違うがんですし、肺がんの中でもがん細胞の種類によって性質は異なります。また命取りになる進行がんもあれば、治療によって治せるがんや、命にあまり影響を及ぼさないおとなしいがんもあります。自分のがんがどういった性質で、進行がんなのか早期がんなのかなどよく主治医に確認しましょう。国立がんセンターのホームページなども参考にインターネットなどで調べてみるのもよいでしょう。

7.治療方針について

 治療といっても手術、抗がん剤、放射線治療、そのほかいろいろな方法があります。がんの性質と部位、進行度、あなた自身の年齢やがん以外の持病によっても治療法は大きく異なります。知り合いが受けた治療やインターネットで調べた治療がよいと思ってもその治療があなたの状態にあう治療とは限りません。

 あなたの病状は主治医がもっとも良く知っています。主治医によく話を聞いて自分に合った治療法は何なのか、他にはどんな治療の選択肢があるのか確認しましょう。がんの治療については診療ガイドラインというものがあり、各がんについて大まかな治療の方向性は決まっていますが、個々の医師により考え方も異なります。また病院の設備や医師の専門性などにより、その施設で行える治療と他施設でないと行えない治療があります。

 他の医師の話も聞いてみたいときや、主治医の説明に納得がいかないとき、他施設でないと行えない治療を受けたいときなどには遠慮無く紹介やセカンドオピニオンを希望する旨を主治医に伝えましょう。

8.病院を替えたいと思ったとき…

 あの病院でやっている新しい治療を受けてみたい…、どうせ治療を受けるならば大きい病院がいい…、主治医とどうもウマが合わない…。だけど病院を替えたいと主治医に告げるのは申し訳なかったり怒られたりしそうで気が引けるからと無断で他の病院を受診する患者さんがいます。

 新たな主治医はそれまでの検査データなどがない場合、もう一度同じ検査を行うか、以前の主治医に問い合わせてそれまでのデータを紹介状としてまとめてもらい(これには結局診療情報提供料がかかります)、患者さん本人に持ってきていただかないと、治療を開始することができません。この作業は新旧の主治医にとっても、患者さんにとっても時間と労力とお金の無駄遣いでしかありません。

 必ず主治医に相談してみて下さい。「○○病院の先生はこの治療が上手い」「△△病院には新しい治療機械がある」などその専門家である主治医が知っていることもあると思います。また、特殊ではない治療であれば小さな病院の方が小回りがきいてすぐに受けられることもあります。

9.セカンドオピニオン

 医療が進歩して1つの病気についてもさまざまな治療法が生まれています。その結果、医師によってあなたの病気に対する考え方が違うことがあります。また、医師や病院によって、医療技術や診療の質に差があることも考えられます。そこで、あなたにとって最善と考えられる治療を、患者と主治医で判断するため、主治医以外の医師の意見を聞くこと。それがセカンドオピニオンです。セカンドオピニオンは意見を聞きに行くことですので、その後の治療についてはまた相談して元の主治医のもとで受けても、セカンドオピニオン先の病院で受けてもかまいません。セカンドオピニオンは患者さんにとっては治療の選択肢が増える可能性があり、医師にとっても見落としなどをなくせるメリットがあります。ただし何回もセカンドオピニオンを求めるのはいたずらに治療開始を遅らせることにもなりますので、気をつけましょう。

 希望される場合は主治医にセカンドオピニオンを受けたい旨を伝えてください。

参考サイト:セカンドオピニオンネットワーク

10.手術

 手術は、腫瘍の部位や大きさ、進行度によって様々な方法がありますが、基本的にがん細胞を体から取り除く手段です。がんが進行して周囲に浸潤しているときや転移がたくさんあるときには手術ができないことがあります。手術でがんが取り除けても、再発する可能性もありますので、一定期間の通院や抗がん剤や放射線治療の追加を受ける必要があることもあります。

 また、手術で根治が望めなくてもなるべく腫瘍を減らすために行う手術や、がんによる症状を軽減する手術(大腸がんで大腸がふさがってしまった場合、人工肛門を造設して食事がとれるようにする手術など)もあります。

11.抗がん剤治療・分子標的薬治療

 抗がん剤治療を行う理由にはいろいろあります。抗がん剤が有効であるがんに対して行うもの、手術ができないがん(白血病などのように手術で取り除けるものではないもの、がんが進行していて切除するのが困難なもの)に行うもの、手術の前に抗がん剤治療を行うもの、手術の後に抗がん剤治療を追加するものなどがあります。また抗がん剤治療といっても、数ヶ月入院して点滴で抗がん剤を使うものや、通院で点滴をするもの、内服薬の抗がん剤を外来通院で投与するものなど方法も様々です。

 やはりがんの種類によってある程度標準的な治療が決まっていますので、主治医からよく説明を受けて下さい。

 抗がん剤は毎年新たなものが出てきており、最近では分子標的薬という新しいタイプの薬もたくさんあります。効果や副作用も薬によって様々ですので、医師や薬剤師にもよく説明を聞いて、どのような効果・副作用があるのか確認してください。

12.放射線治療

 放射線治療は様々ながんに対して行われています。放射線治療がよく効くがん、手術がしにくい部位のがんや、手術前後や手術中の補助療法、高齢者や合併症が多く手術や抗がん剤治療では危険を伴う患者さんなどに行われます。また、がんの増大や転移による痛みのなどに対症療法として行われることもあります。早期のがんに対して行うことで手術を回避でき、機能を温存することが可能な場合もあります。

 最近では新しい放射線治療(強度変調放射線治療、内照射療法、重粒子線治療)も出てきており、以前に比べ副作用は少なくなっています。

13.緩和ケア

 がんは初期の段階では症状が出ないことも多いですが、部位や大きさによっては痛みや苦痛を伴うものもあります。痛みに耐えながら治療を行うのもつらいものです。また、残念ながら様々な治療を持ってしてもがんが進行してしまうことも多くあります。手術も抗がん剤治療も放射線治療も効かなくなることもあります。がんの痛みや苦痛を和らげる治療を緩和ケアといいます。

 痛みに応じて通常の鎮痛薬や麻薬性の鎮痛薬を使用し、そのほか鎮痛補助薬と呼ばれる様々な薬を使用します。以前はがんの治療中にはあまり行われませんでしたが、最近では痛みや苦痛があれば積極的に併用する方向になってきています。麻薬性の鎮痛薬は痛みの強さに応じた適正な量を使用すれば中毒患者に見られる幻覚などの副作用はなく、それによって命を縮めてしまうこともありません。

14.内服薬

 処方された薬は必ず内服しましょう。副作用などで内服を続けるのが無理そうであれば、必ず主治医へ相談してください。急に中断することで強い副作用が出る薬もあります。また勝手に中止していることを言い出しにくいからと主治医に告げずに、ずっと薬だけもらい続けている患者さんもたまに見受けます。逆に内服するのはとてもつらいのに、自分のために頑張ってくれている主治医に申し訳ないのでやめたいといえずに飲み続けている患者さんもいます。

 よりよい治療を受けるためにも内服の状況や体調は正確に主治医に伝えて下さい。特に内服薬の抗がん剤は高価なものが多いので無駄のないように内服して下さい。

15.治療中、治療後の通院について

 がんは時間がたってから再発や転移を起こすこともあります。がんの種類によっては10年以上たってから再発するものもあります。また抗がん剤やホルモン剤を使用して抑えてはいても、治癒はしないがんもあります。体調がいいからといって自己判断で通院を中止することなく、決められた受診日に受診するようにして下さい。

16.おわりに

 がんは治せるものもありますが、残念ながら治せないものが依然として多いのも現実です。その中で少しでも長く生きられるように、少しでも快適に生きられるように世界中の医師や研究者が治療、研究を行っており、がんの治療方法は日々進歩してきています。10年前、5年前と治療方法が大きく変わってきています。世の中にはいろいろな情報があふれていますが、あなたの病状を一番把握しているのはあなたの主治医です。よりよい治療を受けるためには主治医とよく相談して自分の病状を理解した上で方針を決定することが重要です。医師は病気に対しての知識や経験をあなたよりも多く持っていますが、治療を受けるのはあなたであり、そしてお互い対等な人間同士です。疑問に思ったこと、腑に落ちない点などは遠慮なく質問するべきだと思います。そうして医師と信頼関係を築くことがあなたにとっての最善の治療を受ける近道だと思います。

 執筆者紹介

岡本亘平(おかもとこうへい)

昭和50年、神奈川県で生まれ、東京で育つ。
平成12年、群馬大学医学部を卒業し群馬大学泌尿器科に入局。
日本泌尿器科学会専門医、指導医
平成26年4月から桐生厚生総合病院で、前立腺がん・膀胱がんほか泌尿器科疾患の治療にあたる。
趣味は、愛犬(キャバリア)の散歩・世話と旅行

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岡本亘平先生