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乳がん

がんの解説

がんの症状から治療法までを、県内病院で診察中の医師が解説します。

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 乳がんの発生について

 乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。その中には『乳腺』と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在しています。

 乳がんは、この乳腺組織は構成している乳管や小葉の内腔(内がわ)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。
 乳管から発生したがんを『乳管がん』といい、小葉から発生した癌を『小葉がん』といいます。そして、がん細胞が乳管や小葉に中にとどまっているものを『非浸潤がん』、乳管や小葉をつつむ基底膜を破って外に出ているものを『浸潤がん』といいます。また、非浸潤がんが乳管に開口している乳頭に達して湿疹様病変が発生するものを『パジェット(Paget病)』といいます。

 同じ乳がんであっても、細胞の性格がおとなしいものから活発なものまでさまざまで、患者さんによって違います。

 疫学について

統計

 わが国で乳がんと診断される女性は、1年間に4万人にのぼります。

 年齢別にみた女性の乳がんの罹患(りかん)率は、30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。
 女性では、乳がんにかかる数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上です。これは、女性の乳がんの生存率が比較的高いことと関連しています。男性の乳がんは、年間の死亡数で女性の乳がんの100分の1以下のまれながんですが、女性の乳がんに比べて生存率が低い(予後が悪い)ことが知られています。
 年次推移は、罹患率、死亡率ともに一貫して増加しており、出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死亡率が高い傾向があります。

乳がんの高危険因子

 乳がんの発生、増殖には、性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。これまでに確立されたリスク要因の中には、体内のエストロゲンレベルに影響を与えるようなものがほとんどです。実際に体内のエストロゲンレベルが高いこと、また、体外からのホルモンとして、経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法によって乳がんのリスクが高くなる可能性があるとされています。
 生理・生殖要因としては、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないことがリスク要因とされています。また、閉経後の肥満は確立したリスク要因ですが、閉経前乳がんについては、逆に肥満者でリスクが低くなることがほぼ確実とされています。
 飲酒習慣により、乳がんのリスクが高くなる可能性があるとされ、また、閉経後の女性では運動による乳がんリスク減少はほぼ確実とされています。その他の食事、栄養素に関しては、野菜、果物、イソフラボン等が注目されているものの、十分に根拠がそろっているものはまだありません。
 その他、一親等の乳がんの家族歴、良性乳腺疾患の既往等が乳がんの確立したリスク要因とされています。

 検査・診断について

乳がんの症状

a)乳房のしこり
 乳がんは5mmぐらいから1cmぐらいの大きさになると、自分で注意深く触るとわかる“しこり”になります。しかし、しこりがあるからといってすべてが乳がんであるというわけではありません。

b)乳房のえくぼなど皮膚の変化
 乳がんが乳房の皮膚の近くに達すると、えくぼのようなくぼみができたり、皮膚が赤く腫れたりします。乳房のしこりが明らかではなく、乳房表面の皮膚がオレンジの皮のように赤くなり、痛みや熱感を伴う場合、「炎症性乳がん」と呼びます。

c)乳首の変形
 乳首近くや真下にがんがあると、乳首の向きが変わったり、乳首が陥没したりします。

d)乳房の近傍のリンパ節の腫れ
 乳がんは乳房の近傍にあるリンパ節、すなわち、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)、胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)や鎖骨の上下のリンパ節(鎖骨上リンパ節、鎖骨下リンパ節)に転移をきたしやすく、これらのリンパ節を「領域リンパ節」と呼びます。

e)乳首からの分泌液
 片方もしくは両方の乳首から赤や茶褐色、黄色などの分泌液を訴えて受診される方がいます。これらの症状があるからといって、すべてが乳がんというわけでなく、良性の疾患でもみられます。

f)痛み

検査

 乳がんが疑われると、しこりや病変の存在を視触診および、マンモグラフィ、超音波検査(エコー検査)などの画像検査で確認します。
 次に、病変に針を刺して、細胞・組織をとって顕微鏡で調べる病理検査を行います。また、病変の状態や広がり、他の臓器への転移の有無を調べるために、必要に応じてCT・MRI、腹部超音波検査、骨シンチグラフィ、PET(ペット)などの画像検査も行います。

a)問診
 月経の状況や出産・授乳の経験、家族でがんにかかった方の有無などの質問は、乳房の状態や乳がんのなりやすさを判断するためのものです。しこりについては、いつ気付いたか、気付いてから大きさに変わらないか、月経の周期で大きさに変化はないか、痛みを伴うかなど聞かれます。

b)視触診
 視触診とは、乳房を観察し、手で乳房やリンパ節の状態を検査するものです。乳房に変形がないか、乳頭の湿疹や分泌物がないかなどを観察します。また、乳房に直接触ってしこりの状態などを調べます。首やわきの下のリンパ節が腫れていないかどうかも触れてみます。

c)マンモグラフィ
 マンモグラフィとは、乳房のX線撮影のことです。より診断しやすい写真を撮るために、乳房をできるだけ引き出して、圧迫板という薄い板で乳房を挟み、圧し広げて撮影します。そのため、多少の痛みを伴うこともあります。
 マンモグラフィでは腫瘤、石灰化などが確認できます。腫瘤はマンモグラフィ上で白くみえるかたまりで、良性のしこりでも、がんでもみとめることがあります。石灰化はマンモグラフィ上で白くみえる砂粒のような影で、乳房の一部にカルシウムが沈着してものです。その形状や数、広がりかたなどで、良性を考えたり、悪性を疑ったりします。

d)超音波検査(エコー検査)
 超音波を乳房に当てて反射波を利用して画像をつくります。超音波検査は乳房内にしこりがあるかどうかの診断に有効です。そして、しこりの形や性状などで、多くの場合、良性なのか悪性なのかを判断することも可能です。マンモグラフィと超音波検査のどちらかでしか発見できない乳がんもあるため、精密検査においては両方の検査を行うことが、通常となっています。

e)CT検査・MRI検査
 いずれの検査も造影剤という検査用の薬を用いて検査を行います。乳がんであると判明した場合に、その広がりを確認するために行うことが多いですが、診断の難しい場合などには乳がんかそうでないかの鑑別のためにも行うことがあります。

f)細胞診・組織診
 画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変やがんを疑った場合には、細い針を刺して細胞を採取する細胞診や、局所麻酔下でやや太い針を刺して行う組織診(針生検など)が必要になります。

・細胞診
 乳腺の細胞検査には、穿刺吸引細胞診、乳汁(乳頭分泌物)の細胞診などがありますが、最もよく行われている検査は穿刺吸引細胞診です。
 穿刺吸引細胞診では、病変部に直接細い針を刺して、注射器で細胞を吸い出したものを顕微鏡で観察します。多くの場合は局所麻酔なしに行われ、超音波で確認しながら針を刺します。

・組織診(針生検など)
 針生検は、細胞診よりもやや太めの針を刺し、その中に組織の一部を入れて取り出す方法です。通常はマンモグラフィや超音波検査で、採取部位を確認しながら検査が行われます。
 針生検には、コア生検という一度に1組織のみ採取して検査する方法と、マンモトームという吸引機能のある機械を用い、一度に複数の組織を採取して検査する方法があります。どちらも局所麻酔を用いて痛みを抑えて検査します。特にマンモグラフィ検診で石灰化という所見だけが発見され、触ってもしこりがわからず、超音波検査でも存在がはっきりしない場合には、後者のマンモトーム生検が診断に有効です。また稀に針生検で良性か悪性か診断が出来ない場合は、局所麻酔下で、病変部を摘出することもあります。

g)遠隔転移がないかを調べる検査
 がんは進行すると、他の臓器に転移(遠隔転移)することがあります。乳がんと診断されると、治療を開始する前に遠隔転移がないか調べます。それにはCT検査やMRI検査、腹部超音波検査などを行います。骨への転移がないか調べるために骨シンチグラフィを行います。病院によってはPET(ペット)検査を使って遠隔転移がないか調べることもあります。

乳がんの診断までの流れの画像
乳がんの診断までの流れ

 治療について

初期治療とは

 乳がんと診断され、最初に受ける治療を『初期治療』といいます。初期治療には、手術、放射線治療といった局所治療と、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療といった全身治療があります。

乳がんの治療方法のグラフ画像
乳がんの治療方法

 乳がんの治療方針を決定するうえで、念頭に置くことは以下のことが考えられます。

  1. しこりの大きさと乳房内での広がり具合
  2. リンパ節への転移状況
  3. 身体のほかの臓器への転移(遠隔転移)の有無
  4. 乳がんの性質

 このうち1~4は触診、マンモグラフィや超音波検査、あるいはMRIやCTなどで判定され、乳がんの進行度(臨床病期)が決められます。乳がんの進行度は大きく0~4の5段階に分類され、病期の数値が増えるにしたがい予後が悪くなります。以下に臨床病期を示します。

乳がんの臨床病期

0期
 乳がんが発生した乳腺の中にとどまっているもので、極めて早期の乳がんです。これを「非浸潤(ひしんじゅん)がん」といいます。

1期
 しこりの大きさが2cm(1円玉の大きさ)以下で、わきの下のリンパ節には転移していない、つまり乳房の外に広がっていないと思われる段階です。

2期
 2a期と2b期に分けられます。

2期

2a期

しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移がある場合、またはしこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がない場合。

2b期

しこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がある場合。

3期
 「局所進行乳がん」と呼ばれ、3a、3b、3c期に分けられます。

3期

3a期

しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節がお互いがっちりと癒着していたり周辺の組織に固定している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節(内胸リンパ節)が腫れている場合。あるいはしこりの大きさが5cm以上でわきの下あるいは胸骨の内側のリンパ節への転移がある場合。

3b期

しこりの大きさやわきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁にがっちりと固定しているか、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたり皮膚がむくんでいるような状態です。炎症性乳がんもこの病期に含まれます。

3c期

しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合。あるいは鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある場合。

 また、2「リンパ節への転移状況」と4「乳がんの性質」は、針生検でとられた組織や手術でとられた病変部やリンパ節の顕微鏡の検査(病理検査)でわかります。以下では特に乳がんの病理検査について詳しく説明します。

乳がんの病理検査でわかること

 病理検査を行うことで以下のことがわかります。

  1. 浸潤の有無(非浸潤がんか浸潤がんか)
  2. 腫瘍の大きさ
  3. がんの種類(組織型)
  4. がんの顔つき(悪性度)
  5. リンパ節転移の有無と個数
  6. 脈管侵襲(がん周囲の血管やリンパ節にがんがみられるかどうか)
  7. 増殖能(がん細胞が増える程度のようなもの)
  8. ホルモン受容体の有無
  9. HER2(ハーツー)蛋白の過剰発現の有無

このなかで、8、9について詳しく説明します。

ホルモン受容体について

 乳がんのなかには、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の刺激を受けて増殖しているものがあります。そうした乳がんには、ホルモン受容体というものが存在しております。この受容体に女性ホルモンがくっつくことにより、刺激され、がん細胞が増殖していくと考えられています。

 病理検査ではこのホルモン受容体の有無を確認することが出来ます。ホルモン受容体のある乳がんは女性ホルモンの刺激を受けていると考えられ、後で説明するホルモン療法が効きます。

HER2(ハーツー)蛋白について

 HER2蛋白は細胞の表面にあり、正常な細胞にもわずかに存在しております。HER2蛋白は細胞の増殖を調節していると考えられています。乳がんのなかには、このHER2蛋白が過剰に存在するものがあり、そうしたものは乳がん細胞の増殖を強めていると考えられています。

 病理検査ではこのHER2蛋白の発現を調べることが出来ます。分子標的治療薬のなかで、ハーセプチンやタイケルブといったお薬があります。これらはHER2蛋白に対する薬で、HER2蛋白が過剰に存在する乳がんに対して有効です。

局所治療について

1:手術について

 乳がんの手術には大きくわけて、しこりを含む乳腺の一部を切除する『乳房温存術』と、乳房を全部切除する『乳房切除術』とがあります。

乳房温存術

 しこりがあまり大きくなく、乳頭の真下まで、しこりが及んでいない乳がんが適応となります。正常の乳房は残すことが出来ますが、多少なりと乳房の変形があります。患者さんが美容的に満足できることが、前提です。

 問題点としては、乳がんが取り残される可能性があります。病院によっては、切除した乳腺の断端の一部分を手術に病理医の先生に顕微鏡でみてもらい、がんの取り残しがないか調べることがありますが、手術後に摘出された乳腺をホルマリンに浸したのち(永久標本)、再度顕微鏡で取り残しがないか確認することで確定に至ります。もし、取り残しの程度が軽度である場合は、後述する放射線治療でおぎなうことが出来ますが、その程度が広範囲な場合は再手術を行わねばなりません。

乳房切除術

 乳房を乳頭ふくめて全部切除する方法です。乳がんが広範囲に広がっている場合、しこりが複数みとめられる場合や、乳頭の真下までがんが及んでいる場合が適応になります。乳房温存術をしても変形が強く出る可能性がある場合にも行われます。大胸筋や小胸筋を温存する胸筋温存乳房切除術と、胸筋も切除する胸筋合併乳房切除術がありますが、現在は前者の術式がほとんどです。

腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検

 乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節は、わき(腋窩)のリンパ節です。
 腋窩リンパ節郭清とは、腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)を周囲の脂肪組織とともに切除することです。以前は、乳房切除術、乳房温存術のいずれにおいても、標準的に腋窩リンパ節郭清が行われていました。腋窩リンパ節郭清をする目的は、再発を予防することと、リンパ節への転移の有無、リンパ節転移の個数を調べることにあります。リンパ節転移が多い場合は全身に転移する可能性が高いため、術後の十分な再発予防が必要となります。腋窩リンパ節郭清をすることで腕のむくみ(リンパ浮腫)や腕や肩の運動障害、わきの感覚の異常といった後遺症を引き起こす可能性があります。

 センチネルリンパ節とは、腋窩リンパ節のうち最初に癌細胞がたどり着くと考えられているリンパ節です。
 センチネルリンパ節生検はこのリンパ節のみ摘出し、手術中に癌細胞の有無を調べる検査方法で、センチネルリンパ節に癌細胞がなければ、腋窩リンパ節郭清を省略すること出来ます。これにより、先に説明した後遺症を軽減することが出来ます。センチネルリンパ節は術前の検査で転移を疑うような腋窩リンパ節がない乳がん患者さんに行われます。

放射線治療について

 放射線治療は、放射線を照射することにより癌細胞を死滅させ、乳癌の再     発予防や再発後の進行を防止する目的で行われています。

 乳房切除術後、乳房温存術後、骨転移時などに分けて放射線照射の基準が設けられています。 乳房切除術後では、胸骨傍部あるいは鎖骨上下にリンパ節転移が予想される場合に照射するとがあります。

 乳房温存術後では、手術した乳房全体に照射し、癌巣残存が疑われる場 合には、しこりを取った部分に絞って正面より電子線の追加照射(boost照射)を加えることがあります。
 乳がんが骨に転移をおこすと、痛みが出現することがあります。また転移した骨の部位はもろくなり、容易に骨折することがあります。放射線治療は骨転移からおこる痛みを軽減させることや、骨折を予防するために行われます。

 放射線治療の副作用としては、放射線を当てた部位に見られる皮膚炎や肺炎などがあります。皮膚炎の多くは放射線治療後にゆっくりではありますが、改善します。肺炎に関しては放射線治療後、数か月して発症することがあります。発熱や咳がよく治らず、ひどくなる場合は担当医に相談してください。

 全身治療について

 かつての乳がんの治療は、転移を防ぐためにはできるだけたくさん切除したほうがいいと考えられていて、大きな手術が行われていました。ところが、残念ながら大きな手術をしても、何年かして他の臓器に再発する患者さんがいることがわかってきました。

 乳房にがんが見つかった段階で、目に見えない小さな細胞が、体のあちこちに転移している(微小転移)という考え方がでてきました。この微小転移という、がんの小さな種が他の臓器に根をはり、増殖すると全身転移が起こります。全身治療はこの微小転移を抑え込むためや、根絶やしにするために行われます。

 1:ホルモン療法

 先に説明したように、乳がんの病理検査で、ホルモン受容体がある乳がんがホルモン治療の適応となります。ホルモン療法は生理があるかないか(閉経前か閉経後)で使うお薬が異なります。現在では以下の3剤が主に使用されています。

a.  抗エストロゲン剤

 このお薬は、女性ホルモンであるエストロゲンがホルモン受容体とくっつくのを妨げることで、乳がん細胞の増殖を抑えます。このお薬は患者さんが閉経前でも閉経後であっても、効果があります。内服薬であり、5年間内服してもらうことが、標準となっています。

b.  LH-RHアゴニスト製剤

 閉経前のひとは卵巣機能が活発に働いており、女性ホルモンであるエストロゲンのほとんどはこの卵巣から作られます。脳のなかにある下垂体から卵巣を刺激するホルモンが放出されることで、卵巣からエストロゲンが作られます。LH-RHアゴニスト製剤はこの下垂体ホルモンの放出を抑えることで、卵巣からのエストロゲン産生を妨げ、乳がんの増殖を抑制します。閉経前の患者さんはこのLH-RHアゴニスト製剤と抗エストロゲン剤を併用することが、標準治療となっています。このお薬は注射薬で、お臍の周りの皮下に注射します。投与期間は2-3年とされていましたが、最近では患者さんによっては5年間投与したほうがよいとされています。

c.  アロマターゼ阻害剤

 卵巣機能が低下した閉経後のひとでは、エストロゲンは副腎から分泌された男性ホルモンをから作られるようになります。男性ホルモンがエストロゲンに作りかえられる過程で働いているのが脂肪組織などにあるアロマターゼという酵素です。このお薬はこのアロマータゼの働きを阻害することで、エストロゲンが作られるのを抑えます。最近では抗エストロゲン剤に代わる治療法として閉経後の乳がん患者さんに広く使用されています。内服薬であり、5年間内服することが標準となっています。

 一般に、ホルモン療法は化学療法に比べて副作用が軽いといわれますが、のぼせやほてり、イライラ感や頭痛・肩こりなどの更年期障害様の症状がでることがあります。また薬剤によっては、関節痛や骨粗しょう症・子宮体がんの危険が高くなることがあります。担当医とよく相談し使用することが望まれます。

2:化学療法

 手術後の病理検査で、腋窩リンパ節転移が多数あったり、腫瘍が大きかったり、がんの悪性度が高かったり、脈管侵襲(がん周囲の血管やリンパ節にがんがみられるかどうか)が広範囲に認められたりする場合は、再発の可能性が高くなることが考えられます。またホルモン受容体が陰性であったり、HER2が陽性であることも再発の危険が高まるとされています。こうした場合には、術後に抗がん剤による化学療法を行うことが検討されます。乳がんの抗がん剤はさまざまありますが、現在では、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の使用の中心となっています。

 術前の検査でしこりが大きかったり、すでに腋窩リンパ節転移が明らかな場合などでは、化学療法したのちに手術を行う、術前化学療法が行われることがあります。腫瘍が縮小することで、乳房温存術が可能になることもあります。

 化学療法は、がん細胞だけでなく正常細胞にも影響します。脱毛や下痢、口内炎が起こったりします。また、白血球や血小板の数が減少し、免疫力が低下したり、血が止まりづらくなったり、貧血なったります。そのほか吐き気、全身のだるさ、手足のしびれ、関節痛・筋肉痛、皮膚やつめの変化、肝機能障害などがでることもあります。症状の程度は抗がん剤の種類で異なり、患者さんの個人差の大きいものもあります。最近はこうした副作用を軽減するお薬も進歩していますが、副作用が重度の場合は抗がん剤の投与の変更や延期、中止などが検討されます。がんが治療される前に全身がだめになっては本末転倒になるからです。

3:分子標的治療

 がん細胞は、正常細胞と異なり、際限なく増殖し続けるという性質があります。現在の研究成果で、がん細胞は増殖するのに必要ないろいろな因子をもっていることがわかってきました。分子標的治療はこれらの因子を特定して狙い撃ちすることで、がんの増殖を抑える治療です。それに用いられる薬を分子標的治療薬といいます。
 先に説明したHER2蛋白はこれらの増殖因子の一つと考えられています。

 分子標的薬であるハーセプチンは、このHER2蛋白を攻撃することでがんの増殖を抑えることができ、HER2蛋白を過剰に発現している乳がんにのみ効果があります。ハーセプチンは抗がん剤に比べれば副作用は少ないですが、心臓機能低下や呼吸器障害がでることがあります。
 ハーセプチン以外にタイケルブやアバスチンといった分子標的薬が乳がんの治療に利用されて、今後も新たな分子標的治療薬が開発されていくでしょう。

乳がんについて(転移・再発、早期発見・検診)


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