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肝臓がん

がんの解説

がんの症状から治療法までを、県内病院で診察中の医師が解説します。

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1 肝がんとは

 肝臓に出来るがんは、大きく分けて、原発性肝がん(肝臓から発生したがん)と転移性肝がん(他の臓器のがんが肝臓に転移したがん)の2つがあります。肝臓から発生したがん(原発性肝がん)の約90%は肝細胞がんで、胆管細胞がんが約5%、残りはまれな腫瘍です。従って、肝がんというと肝細胞がんを指すことが多いです。

 日本の肝細胞がん(以後肝がん)患者さんの、平均年齢は60代後半で、男性の数が多く、女性の約3倍です。肝がんの最も多い原因は、肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎や肝硬変です。肝炎ウイルスのうち肝がんと関係があるのはB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)の2種類です。

 日本では、肝がんの約70%がHCV、約20%がHBVによるとされています。肝炎ウイルスは血液・体液を介して感染します。主な感染経路は血液製剤による感染・消毒されていない注射針による感染などが挙げられます。

C型肝炎ウイルスの感染の可能性が一般より高いと考えられる方

  1. 1992(平成4)年以前に輸血を受けた方
  2. 大きな手術を受けた方
  3. 血液凝固因子製剤を投与された方
  4. 長期に血液透析を受けている方
  5. 臓器移植を受けた方
  6. 薬物濫用者、入れ墨をしている方
  7. ボディピアスを施している方
  8. その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、その後肝炎の検査を実施していない方等)

 肝炎ウイルスに感染していても症状は乏しく、感染しているかどうかは、血液検査をしないとわかりません。従って、上記のような感染の危険性のある人は、一度血液検査(HBs抗原、HCV抗体)をすることが勧められます。

 最近では、肝炎ウイルスの治療法も進歩しており、感染している人は、適切な治療を受けることにより、肝がんの発生を予防することも出来ます。C型肝炎に対しては、3剤併用療法をはじめとするインターフェロン療法、また、B型肝炎は、インターフェロン療法や内服の抗ウイルス薬(核酸アナログ)があります。

 肝がんに特有の症状は少なく、肝炎・肝硬変などによる症状が主なものです。食欲不振、だるさ、おなかの張り感、便秘・下痢など便通異常、尿の色が濃くなる、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、むくみ、吐血、下血、突然の腹痛、貧血などが挙げられます。しかし、このような症状が出現した場合は、かなり進行しているといわざるを得ませんので、早期に発見するためには定期的な検査が必要となります。

2 診断と治療

 肝がんの診断は、血液検査と画像診断により行われます。肝がんになりやすい危険因子を持っている人を対象に定期的に血液検査(腫瘍マーカー)と画像診断をして肝がんを早期に発見します。

1)画像診断

 肝がんの診断に重要な検査で、超音波検査、CT、MRI検査などが含まれます。痛みや苦痛がほとんどなく、外来で行える検査です。

 超音波検査は放射線の被曝がなく、腫瘍と血管の位置がよくわかります。ただ、患者さんの状態や部位によっては見えにくい場合があります。

 CT検査/MRI検査では身体の断面をみることが出来ます。肝がんは血管の豊富な腫瘍で、造影剤という薬を静脈から注射して撮影することにより、腫瘍の血流がわかり、診断がしやすくなります。

2)腫瘍マーカー

 肝がんの腫瘍マーカーとしては、AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA II(ピブカ・ツー)、AFPレクチン分画が用いられます。一般的にがんが大きくなるにつれて、腫瘍マーカーも数値が上昇します。治療をしてがんが小さくなったり、がんを手術で取り除けば、腫瘍マーカーの数値は下がったり、陰性になります。腫瘍マーカーは、がんの診断や治療の効果判定、再発の有無の診断に役立ちます。但し、肝がんの腫瘍マーカーは、肝がんであっても陰性のことがあり、また、がんのない肝炎・肝硬変だけでも陽性のことがありますので、画像診断を同時に行う必要があります。

3)針生検

 画像診断や腫瘍マーカーの結果から、多くの場合は肝がんと診断がつけられます。しかし、中には診断がつけられないことがあります。このような場合には、超音波検査で肝臓内部を見ながら細い針を腫瘍部分に刺し、少量の腫瘍組織を採取する針生検という方法を行うことがあります。

4)肝がん検査の頻度

 肝がんの場合は、症状が出現してから病院を訪れるのでは手遅れのことが多いため、肝がんの高危険群に属する人は日ごろからの定期検査が必要です。定期検診の間隔は、病状により異なります。採血や超音波検査、必要に応じてCT、MRI検査などを行います。

3 病期(ステージ)・肝障害度分類

 がんの進行程度(病期)を大まかに示すものとして「ステージ分類」があります。ステージ分類は1から4までの4段階に分けられており、数字が大きいほどがんが進行していることを意味します。

画像:肝がんの病期分類(日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取り扱い規約(第5版)」より一部改変)
肝がんの病期分類(日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取り扱い規約(第5版)」より一部改変)

 また、肝臓(肝機能)の程度をみる分類がChild-Pugh分類や「肝障害度」分類です。Child-Pugh分類は、A、B、Cの3段階に分けられます。AからCの順序で肝障害の程度が強いことをあらわします。

Child-Pugh分類
項目\ポイント 1点 2点 3点
脳症 なし 軽度 ときどき昏睡
腹水 なし 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dl) <2 2-3 3<
血清アルブミン値(g/dl)  3.5< 2.8-3.5 <2.8
プロトロンビン活性値(%) 70%< 40-70% <40%

各項目のポイントを加算しその合計点で分類する。
Grade A:5-6点
Grade B:7-9点
Grade C:10-15点

4 治療

 外科療法、局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法など、身体の外から針を刺して行う治療)、肝動脈塞栓術の3療法が中心です。この他に、放射線療法や化学療法(抗がん剤投与)などがあります。
 外科療法、局所療法、肝動脈塞栓術は、それぞれ長所・短所があり、一概に優劣をつけることはできません。がんの進み具合、肝機能の状況などの条件を十分考慮したうえで選択されます。

1)外科療法

肝切除

 肝切除は、がんを含めて肝臓の一部を切除する治療法で、最も確実な治療法のひとつです。最近では腹腔鏡による肝切除も行われてきています。
 肝切除をするかどうかは、1) 腫瘍の条件と2) 肝機能によって決められます。つまり、肝臓がんの大きさ、数、分布と肝機能から総合的に判断します。例えば黄疸や腹水のある患者さんに、過大な肝切除を行うと肝不全という重い合併症を引き起こしてしまうため、このような患者さんは肝切除の対象となりません。

肝移植

 肝臓をすべて摘出して、かわりにドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法です。肝硬変・肝不全のために治療が困難な場合に、治療法のオプションとして考えられています。肝臓がんに対する肝移植は肝外転移のない例に限られ、1)単発・5cm以下、2)3cm以下・3個以内が適応となります。肝移植の年齢制限は65歳以下とするところが多いです。

2)局所療法

ラジオ波焼灼療法

 特殊な針を体外から肝がんへ挿し込み、通電することでその針の先端部分から熱が発生し、がんを焼灼する治療法です。通常は、超音波をガイドに行いますが、CTや腹腔鏡などを用いて行うこともあります。がんの大きさは3cmより小さく、がんの個数は3個以下の小型肝がんが対象となります。

3)経カテーテル的治療

肝動脈化学塞栓術

 肝動脈化学塞栓術とは、がんに栄養を供給している血管を人工的にふさぎ、がんを兵糧攻めにする治療法です。大腿部(ふともも)のつけ根の部分にある大腿動脈からカテーテルを挿し込み、先端を肝動脈へ進めます。このカテーテルを通じて、ゼラチン・スポンジなどを注入し、肝動脈を詰まらせて、がんに供給する血流を遮断し、がんを死滅させます。通常、治療効果を高めるために、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすいリピオドールという造影剤を懸濁して、ゼラチン・スポンジを注入する前に投与します。肝動脈化学塞栓術は他の治療法に比べ治療対象の制限が、比較的少ないため多くの患者さんに対して行われています。ただし、完全に治ってしまう確率はあまり高くありませんので、繰り返し行ってがんを抑え込んでいく必要があります。

 下図に肝がんのさまざまな病態ごとに、可能な治療法を示します。ただし、これはあくまで大きな目安であり、肝がんの治療法は、がんのある位置などのその他の条件も含め患者さんごとに総合的に判断して選択します。

画像:(肝癌診療ガイドライン 治療アルゴリズム 2013年版より引用)
(肝癌診療ガイドライン 治療アルゴリズム 2013年版より引用)

4)その他の治療

 放射線療法は、骨に転移した時などに疼痛緩和を目的として行われることがあります。また、最近では陽子線、重粒子線などの放射線治療が、肝がんの治療に適応されることもあります。化学療法は、肝切除や穿刺療法、肝動脈化学塞栓術などの治療で効果が得られない場合などに行われることがありますが、治療効果があまり高くないのが現状です。

重粒子線療法

 重粒子線治療は、がん病巣に集中して照射することが可能で、一般の放射線が効きにくいがんにも効果があり、短期間で治療できるのが特徴です。肝がんに対しても、重粒子線治療は行われており、群馬大学重粒子医学研究センターでは、平成22年より肝がんに対する重粒子線治療を行っています。

分子標的治療薬

 分子標的治療薬は、一般的な抗がん剤とは作用機序が異なり、がんの進行に影響を与える特定の分子に作用します。がん細胞が増える原因となる信号の伝達を遮断し、がんの周囲に新しい血管を作る作用(血管新生)を阻害して、がん細胞の増殖を抑制します。

5 肝がん治療後の経過

 肝がんの原因は、大部分が肝炎ウイルスです。肝がんの治療は、その原因である肝炎ウイルスまで根絶するものではありません。そのため、2度目の肝がんが発生することも少なからずあります。したがって、肝がんの治療がいったん完了しても、定期的なチェックが必要ですので、担当医の指示に従って下さい。
 なお、喫煙や飲酒も肝がんの発生に関係があると考えられています。肝がんの治療を受けた人や肝炎ウイルス感染者はタバコをやめ、アルコールの摂取を控えましょう。

執筆者紹介

柿崎 暁(かきざき さとる)

平成2年 群馬大学卒業。平成11年アメリカ国立衛生研究所留学。
平成14年群馬大学医学部附属病院肝臓代謝内科助手、平成22年肝疾患センター副センター長、平成25年肝臓代謝内科講師
医学博士、日本消化器病学会評議員、日本肝臓学会東部会評議員、日本消化器内視鏡学会評議員
趣味:世界遺産めぐり

画像:柿崎暁先生
柿崎暁先生

山崎 勇一(やまざき ゆういち)

平成7年 群馬大学卒業。平成20年アメリカ国立衛生研究所留学。
平成22年群馬大学医学部附属病院肝疾患センター助教。
医学博士、日本消化器病学会指導医、日本肝臓学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本内科学会専門医
趣味:旅行

(更新日:平成25年12月10日)

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