トップページ > 健康・福祉 > 医療・保健 > (群馬県のがん対策) > 血液のがん

血液のがん

がんの解説

がんの症状から治療法までを、県内病院で診察中の医師が解説します。

胃がん │ 肺がん │ より詳しい肺がんの情報 │ 大腸がん │ 肝臓がん │ 乳がん │ 子宮頸がん │ 前立腺がん │ 血液のがん

内容

  1. 血液のがんを理解するために
  2. 白血病
  3. 悪性リンパ腫
  4. 多発性骨髄腫

1 血液のがんを理解するために

はじめに

 血液は全身を流れ、さまざまな機能を持っています。血液のがん(悪性腫瘍)の代表が、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫です。リンパ節の腫れ、骨の痛みのような場合を除き、症状が出づらいのが血液がんの特徴です。しかし、血液細胞は血を止める(止血)、感染を防ぐなど生命の維持に直結する重要な役割を担うため、できるだけ早く診断し、治療を始めた方が良いのは他のがんと変わりありません。ここでは血液がんを理解するために必要な知識を記します。

白血病、悪性リンパ腫の種類

 血液がんのうち、白血病は末梢血液中や骨髄でがん細胞が増えるのに対し、悪性リンパ腫は「しこり」をつくる特徴があります。白血病にも進行が早いかどうかで「急性白血病」と「慢性白血病」、がん化した細胞の種類によってそれぞれ「骨髄性」と「リンパ性」とにわかれます。よって白血病は、「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」、の4つに分類されます。図1)

 悪性リンパ腫も、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」とに分かれます。後者は腫瘍細胞の増える速さにより「低悪性度」、「中悪性度」、「高悪性度」、また、がん化した細胞の種類により「B細胞性」、「NK/T細胞性」に分かれます。(図1)

図1白血病、悪性リンパ腫の種類の画像

図1


造血幹細胞、リンパ組織

 血液は赤血球、血小板、白血球の「血球成分」と、タンパク、ミネラルなどを含む「血漿成分」に分けられます(図2)。白血球は「顆粒球」、「リンパ球」に分けられ、どちらも「感染防御」の役割をします。血小板は血を止める働き、赤血球は酸素を全身に運搬する働きをします。血液細胞は骨の中心部にある「骨髄」で造られています。骨髄には「造血幹細胞」という血液の親玉の細胞があり、それが分化、増殖することによりいろいろな血球が造られます。

 一方、リンパ組織は全身に拡がるリンパ管、リンパ節、消化管のリンパ装置などから成ります。リンパ球は機能面から3つ(B細胞、T細胞、NK細胞)に分かれ、リンパ組織および血液中を循環しています。B細胞がさらに分化し「形質細胞」になると、病原体(ウイルスや細菌)を壊すための「抗体」(=「免疫グロブリン」:メモ参照)を産生します。このようにリンパ球は外からの病原体の侵入を防ぐ役割、「免疫」の機能を担っています。(図2)

メモ
 血液中のタンパクには、アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン(凝固因子の1つ)などがあり、50%以上はアルブミンです。グロブリンはさらに「α」、「β1」、「β2」、「γ」にわかれます。免疫グロブリンは「γ-グロブリン」です。(図2、図3)

図2の画像

図2

図3の画像

図3


血液がんの原因

 がん化は何らかの原因で遺伝情報に狂いが生じ、それが蓄積することにより起こると考えられています。以前から放射線とがんとの関係が指摘されていました。またウイルスとの関連も注目され、HTLV-Iウイルスと成人T細胞性白血病、EBウイルスと悪性リンパ腫などはその代表です。しかし多くの場合は原因がはっきりしないことが多く、生まれてから受けたいろいろな影響が関係していると考えられています。

フローサイトメトリ、染色体検査、遺伝子検査

 急性白血病細胞、悪性リンパ腫細胞は顕微鏡でみると同じような形態をしています。しかし、細胞表面にいろいろなタンパクが存在し(「表面形質」といいます)、それが細胞の種類により異なります。1つ1つの細胞の表面形質をモノクロナール抗体で識別するのが「フローサイトメトリ法」で、腫瘍細胞が「骨髄性」か「リンパ性」か、後者なら「B細胞」、「T細胞」、「NK細胞」のどれに属するかを診断します。

 ヒトの染色体は、父親由来、母親由来の常染色体が22本ずつ、性を決める性染色体が1本ずつ、計46本あります。常染色体は1番から22番まで番号が付けられています(図4)。染色体には遺伝情報がぎっしり詰まっており、これに異常があると遺伝情報にも狂いが生じ病気の発症につながります。この異常の有無を調べるのが「染色体検査」、「遺伝子検査」です。血液がんでは、細胞入手が比較的容易なため、これらの検査は診断時に必ず行います。これは一部のがんで病気に特有な染色体異常、遺伝子異常があるためです。慢性骨髄性白血病での「フィラデルフィア染色体」、「BCR-ABL遺伝子異常」などはその代表です。

血液がんの治療 -------主力は抗がん薬治療(=「化学療法」)

 血液がんの診断、治療法の進歩はめざましく、完全に治る(「治癒」といいます)事例も少なくありません。血液がん治療では抗がん薬治療(「化学療法」)のウエイトが高いのが特徴です。化学療法では治療を繰り返し、腫瘍量を減らしていきます(図5)。そのため治療は長期間に及び、日頃から体力の維持、増進に心がける必要があります。また、白血球数低下時には感染症にかかりやすく(図5、マル印)、その病原菌の侵入経路が虫歯からのことが少なくないため、歯の衛生管理も非常に重要です。

 化学療法を繰り返すと次第に抗がん薬が効かなくなってくるため、抗がん薬の効果が最も良い初発時にしっかりと治すことが重要です。それには正しい診断と、患者さん、ご家族が病気について良く知ることが大切です。

図4の画像

図4

図5の画像

図5


 

2 白血病

白血病とは

 造血幹細胞あるいはそれが少し成長しただけの未熟な細胞ががん化した病気で、腫瘍細胞が無制限に増殖し体内に蓄積します。未成熟な細胞が増殖し進行が速いのが「急性白血病」、成熟した細胞が増殖し、ゆっくりとした経過をたどるのが「慢性白血病」です。 

白血病の診断

 血液検査を行い、白血球、血小板、赤血球数を検査し異常細胞の有無をチェックします。最終的な診断には骨髄の検査が必要になります。骨髄の検査は腸骨(いわゆる腰骨)または胸骨(前胸部中心の骨)に針を刺して骨の中心部から骨髄液を採取します。このときに、染色体検査、遺伝子検査も合わせて行います。
 白血病のタイプにより所見、治療法も異なりますので、疾患別に概説します。

1)急性白血病

 がん化した細胞の種類により「骨髄性」、「リンパ性」に分かれますが、病態、臨床所見については両者間であまり差がありません。造血幹細胞あるいはそれが少し成長しただけの未熟な細胞ががん化した病気で、腫瘍細胞が無制限に増殖し体内に蓄積します。未成熟な細胞が増殖し進行が速いのが「急性白血病」、成熟した細胞が増殖し、ゆっくりとした経過をたどるのが「慢性白血病」です。

臨床所見

 急性白血病では未熟で役に立たない白血病細胞が骨髄を占領し、正常な血液細胞が造られなくなります(図6)。
 このため所見としては、1)正常な血液細胞を造れないための症状、2)白血病細胞が増え体内に貯まったための症状に分かれます。

1)正常な血液細胞を造れないための症状

末梢血液中の正常な白血球、血小板、赤血球が減少します。その結果、これら血球が担っていた機能が低下することによる症状が出ます。

  • 正常白血球減少:感染防御力低下による症状---------感染症や発熱
  • 血小板減少:止血能低下による症状---------------------皮下、歯肉、脳などへの出血
  • 赤血球減少(「貧血」):酸素運搬能低下による症状---------動悸、息切れなど

2)白血病細胞が増え体内に貯まったための症状

 一方、白血病細胞が体内に貯まると、その部位が腫れるという形で症状が出ます。肝臓、脾臓、歯肉の腫れはその代表です。

診断

血液検査、骨髄検査を行い、未熟な白血病細胞があるかどうかを顕微鏡で調べます。さらに「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」を区別するための検査をします。これは治療で用いる抗がん薬が異なるためです。

治療

1)抗がん薬治療(=「化学療法」)

 白血病細胞は発見された時点ですでに全身に拡がっているため、抗がん薬治療(「化学療法」)が第1選択となります。急性白血病は診断された時点で体内に約1兆(1012)個の腫瘍細胞があるといわれています。白血病を完全に治す(=「治癒」)ためにはそれを「ゼロ」にする必要があります。急性白血病治療では、複数の抗がん薬を同時に使用する「多剤併用療法」を行います。抗がん薬治療に伴い、正常造血細胞も影響を受け白血球数が極度に低下します。この状態では感染症にかかりやすいため、無菌室(またはそれに準ずる場所)で治療を行います。

化学療法による治療は、寛解導入療法、寛解後療法の2段階から成ります。(図7)

・寛解導入療法

 見かけ上、白血病細胞が消え、正常造血が回復する「完全寛解」を目的とした治療です。急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病とでは、使用する抗がん薬の種類、投与スケジュールが異なります。特殊なものとして、急性前骨髄球性白血病では活性型ビタミンAである「レチノイン酸」が非常に有効です。寛解導入療法により約70-90%の患者さんが完全寛解になります。

・寛解後療法

 完全寛解の状態では正常造血は回復し、白血病細胞は消失したように見えます。しかし、体内にはまだ1億(108)個くらいの白血病細胞が残っています。この残った白血病細胞の根絶をめざして、抗がん薬による「寛解後療法」を半年から2年間行います。

2)造血幹細胞移植(=「骨髄移植」)

 白血病に侵された骨髄を、健康な人(ドナー)の骨髄に置き換える治療法です。大量の化学療法、放射線療法などにより、体内すべての白血病細胞と正常血液細胞を壊します(「前処置」といいます)。骨髄をカラにした状態で白血球の型(HLA)がほぼ一致したドナーの造血幹細胞を患者に戻し、破壊された骨髄と入れ替えます。このように造血幹細胞移植では強い化学療法、放射線療法、さらにドナー細胞による免疫反応で再発率は減少しますが、治療自体の副作用が格段に強くなるため、年齢、全身状態等その適応には制限があり、すべての人に行える治療ではありません。最近では「前処置」を軽くして、移植可能な症例を増やす試み(=ミニ移植)も行われています。

図6:白血病の病態の画像

図6:白血病の病態

図7:急性白血病治療の概念の画像

図7:急性白血病治療の概念


2)慢性骨髄性白血病

 急性骨髄性白血病が役に立たない未熟な細胞が増殖するのに対し、慢性骨髄性白血病は分化し機能を持った細胞が無制限に増える疾患です(図6)。増えた細胞は正常細胞と同じ機能を持ちますので、急性白血病のような自覚症状は出づらく、白血球数が末梢血1ミリ立方あたり10数万(正常は4000から9000)になっても自覚症状がない場合もあります。

病期(病気の進み具合)

 「慢性」という名前のとおり非常にゆっくりとした経過をたどりますが、数年たつと「急性転化」という急性白血病と同じような状態になります。しかも、いったん「急性転化」をおこすと治療がほとんど効かなくなります。

  • 慢性期:白血球数は増加していますが、その中身はバランスが取れています。この時期は数か月から数年続きます。
  • 移行期:骨髄や末梢血中の未熟な細胞比率が増加し、治療が効きづらくなります。
  • 急性転化期:骨髄や末梢血中で未熟な細胞が増え、急性白血病と同じような状態になります。しかし、抗がん薬治療はほとんど効きません。

 このように「急性転化」を起こすと治すことは難しくなりますので、治療が良く効く「慢性期」にしっかりとした治療を行うことが大切です。

原因、診断

 慢性骨髄性白血病では9番染色体と22番染色体の一部が相互に入れ替わった「フィラデルフィア染色体」とよばれる染色体異常がほぼ全例で見られます。この結果、9番染色体上の「ABL遺伝子」と22番染色体上の「BCR遺伝子」とがくっついた「BCR/ABL融合遺伝子」が形成され、血液細胞の増殖に大きく関与します。(図8)
 したがって、診断では白血球数の異常増加に加えて、「フィラデルフィア染色体」、「BCR-ABL融合遺伝子」の証明が重要です。

治療

 「急性転化」になると治療は難しくなりますので、「慢性期」にしっかりと治療することが大切です。以前はハイドレア(経口抗がん薬)、インターフェロン(注射薬)が使用されましたが、ほとんどの症例は急性転化をおこし、造血幹細胞移植(「骨髄移植」)以外には助かる方法がありませんでした。しかし、イマチニブ(商品名「グリベック」)という治療薬が登場し状況は一転しました。この薬は慢性骨髄性白血病に特有の「BCR/ABL融合遺伝子」由来の蛋白を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮します(図8)。すなわち、白血病細胞のみに効いて、正常細胞にはほとんど影響しない画期的な内服薬です。この薬剤の登場により治療成績は飛躍的に向上し、骨髄移植が必要な患者さんは激減しました。一部でイマチニブ無効例があることがわかりましたが、最近ではそのような症例にも有効な薬剤(ニロチニブ、ダサチニブ)が開発され、臨床応用されています。
図8:慢性白血病の遺伝子異常の画像

図8:慢性白血病の遺伝子異常


3)慢性リンパ性白血病

 血液中で成熟リンパ球に似た、しかし、全く機能を持たない白血病細胞がリンパ節、骨髄、脾臓などで非常にゆっくりと増殖、蓄積します。(図6)

症状

 自覚症状はなく、健康診断で偶然見つかるケースがほとんどです。診断後10年以上経過しても無症状のことも少なくありません。しかし病気が進むとリンパ節、脾臓、肝臓が腫れたりします。また、骨髄が白血病細胞で占領され正常な血球が造られなくなると、細菌、真菌(カビ)、ウイルスなどの感染症症状が出ます。

診断

 血液検査で成熟リンパ球が増加しているのが診断のきっかけです。増えたリンパ球を「モノクロナール抗体」で識別し、腫瘍性に増えているかの判断をします。本疾患が疑われた場合、骨髄検査、CTスキャン、腹部超音波検査も適宜行います。

治療

 抗がん薬が急性白血病ほど効かず、完全に病気を治すこと(=「治癒」)は難しいため、病気の進行度にあわせて治療方針を立てます。身体の症状、異常が認められない場合には、定期的な血液検査を行いながら経過観察します。リンパ節の腫れ、貧血、血小板減少を伴うようになった場合、プレドニン、シクロホスファミド、フルダラビンなど単剤による抗がん薬治療を考慮します。

3 悪性リンパ腫

悪性リンパ腫とは

 悪性リンパ腫は免疫を担当するリンパ球ががん化したもので、リンパ節などのリンパ組織が腫れるのが特徴です。一般にリンパ節が腫れるのは感染症によるものが圧倒的に多く、カゼをひいたときに扁桃腺が腫れるのはその代表例です。また、消化器がんや肺がんなどの転移、膠原病などでもリンパ節が腫れることがあります。

診断

 リンパ節が腫れた原因を確定するためには、リンパ節を外科的に取って検査すること(「生検」といいます)が必要となります。リンパ節以外の場所、たとえば胃、腸、鼻などにも悪性リンパ腫が発症することがありますが、診断の確定にはやはり「生検」が必要です。生検した場合、1)腫瘍かどうか、2)腫瘍なら悪性リンパ腫かそれ以外のがんか、3)悪性リンパ腫ならどのタイプ(=「病理組織型」)か、の診断をします。

 悪性リンパ腫は40種類以上の病理組織型に分かれます。病理組織型により治療方針が大きく異なるため、その診断は非常に重要です。そのため従来の顕微鏡による組織形態のほかに、免疫染色、フローサイトメトリ法、染色体検査、遺伝子検査等で病理組織型を決定します。治療法選択の見地から、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」、後者はさらに「低悪性度リンパ腫」と「中・高悪性度リンパ腫」に分け治療方針を決定しています(1  血液疾患を理解するために、図1参照)。

 また、病気の進み具合(「臨床病期」)の診断も大切で、通常、1期から4期に分類し、1、2期は限局し、数字が大きくなるほど進行していると判断します。(図9)

臨床病期決定に必要な検査は下記のとおりです。

  • 骨髄検査
  • CTスキャン
  • FDG-PET
  • ときに、MRI
図9:悪性リンパ腫の臨床病期の画像

図9:悪性リンパ腫の臨床病期


治療

 一般にがんの治療法には、1)化学療法、2)放射線療法、3)外科療法があります。悪性リンパ腫は「しこり」をつくる特徴がありますが、細胞の結びつきは非常に弱く、診断された時点で腫瘍細胞が血液中を循環しているものとして治療方針を立てます。そのため、抗がん薬治療(「化学療法」)が主力となります。この場合の化学療法は2~3週に1回の割合で抗がん薬の点滴を行い、残りの日は休薬し副作用が出るか観察します。
 以下、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫にわけて解説します。

○ホジキンリンパ腫

 腫瘍細胞がリンパ節を中心に広がります。ホジキンリンパ腫が局所に限局している臨床病期I、2I期では、化学療法を3-4回行ったのちに局所に放射線療法を行い、80%以上の症例で治癒(=「完全に治すこと」)が期待できます。病期が進行した3、4期では化学療法を6~8回行います。その治療成績は5年生存率で50~80%と幅がみられます。
 再発例に対しては、自己末梢血幹細胞移植(「メモ」参照)を併用した大量化学療法を行います。 

○非ホジキンリンパ腫

 病理組織型の悪性度のほかに、腫瘍細胞が「B細胞性」か「NK/T」かの診断も重要です。これは「B細胞性」には抗体療法が有効だからです。

1) 低悪性度リンパ腫

 病気の進行が年単位と遅く、症状もあまり出ません。そのため、病気の進行が非常に遅い場合は、何もせず経過観察する場合もあります。
 B細胞の表面にはCD20と呼ばれるタンパク質が存在し、それに対する抗体「リツキシマブ」(商品名:リツキサン)が臨床応用されています。これは腫瘍細胞だけに効いて、正常白血球や血小板には影響しない特長があります。これと抗がん薬を組み合わせることにより、治療効果を高めることができます。臨床病期3、4の進行例では、リツキシマブ併用化学療法を行います。

 再発症例に対しては、フルダラビンまたはベンダムスチンという薬剤を中心とした化学療法、CD20抗体にβ線を出すイットリウム(90Y)を結合したイブリツモマブチウキセタン(商品名:ゼヴァリン)による免疫放射線療法などを行います。

2) 中・高悪性度リンパ腫

 病気の進行が中悪性度リンパ腫で月単位、高悪性度リンパ腫が週単位と比較的早いのが特徴です。このタイプのリンパ腫は抗がん薬が良く効き、ビンクリスチン、エンドキサン、アドリアマイシンと副腎皮質ホルモンによる「CHOP療法」が標準療法として行われています。B細胞性リンパ腫の場合、CHOP療法にリツキシマブを加えた「R-CHOP療法」が行われており、リンパ腫で一番多い「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」では、治癒率が20%近く向上しました。治療前に大きな腫瘍があった場合は、化学療法終了後にその部位に放射線療法を追加する場合もあります。

 再発時には自己末梢血幹細胞移植(「メモ」参照)を併用した大量化学療法を行います。また、初発時の臨床所見、検査結果から治りやすいかどうかの予測が立てられます。再発のリスクが高い初発症例にも、自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を行うことがあります。


メモ:自己末梢血幹細胞移植

 抗がん薬治療後、骨髄機能が回復するときに末梢血に造血幹細胞(「1 血液がんを理解するために」参照)が出現します。これにG-CSFという白血球回復を促進する薬を使用するとその数はさらに増えます。この末梢血中に出現した造血幹細胞をストックしておき、通常の数倍量の抗がん剤を投与した後に造血幹細胞を戻し、正常造血を回復させる方法です。抗がん薬に反応しやすい血液がん、特に悪性リンパ腫、多発性骨髄腫では有効性が認められていますが、その適応には年齢、全身状態などに制限があります。

4 多発性骨髄腫

多発性骨髄腫とは

 多発性骨髄腫は形質細胞ががん化したものです。形質細胞は「抗体」(=免疫グロブリン)を産生する細胞で、がん化してもその性質を保持します。しかし腫瘍化した細胞なので、産生される免疫グロブリンは一種類しかできず、しかも役に立ちません。逆に正常な免疫グロブリン産生は抑制されるため、免疫力が低下します。血液検査で血液中のタンパクを調べると、図10のような鋭いピークが存在します。これを「Mピーク」といい、このMピークの蛋白を「M蛋白」(単クローン蛋白(monoclonal)=異常蛋白)といいます。

 一方、骨髄腫細胞は骨破壊を促進するタンパクを産生するため、骨がボロボロになります。そのため、骨がもろくなり、ちょっとした外力でも骨が折れてしまいます(=「病的骨折」)。

図10の画像

図10


症状

 骨髄腫細胞が骨髄を占領することによる症状、Mタンパクを産生することによる症状、骨破壊による症状に大別されます。症状を列挙します。

  • 貧血
  • 血液中のM蛋白の増加 → 血液の粘度が増す
  • 腎臓機能障害 (血液中のクレアチニンが増加)
  • 免疫力の低下 → 感染症にかかりやすくなる
  • 骨破壊、骨が溶ける → 骨の痛み、病的骨折、血液中のカルシウム濃度が上昇

治療

 Mタンパクを認めてもすぐには治療を行わず、上記症状が現れた「症候性骨髄腫」と呼ばれる段階で治療を開始します。これは、治療薬には副作用をともなう抗がん薬を使うこと、骨髄腫を完全に治す方法がまだないこと、早く治療をしても、症状が現れてから開始しても治療成績は変わらないことがわかっているからです。

 治療は、1)骨髄腫細胞に対する抗がん薬治療、2)骨に対する治療、の2つに分けて考えます。

1)抗がん薬治療(=「化学療法」)

 以前は治療薬が限られていましたが、最近は新薬が登場し、治療成績も改善しています。

a.MP療法

 メルファラン(商品名:アルケラン)、プレドニゾロン(商品名:プレドニン)の2種類を4日間内服します。副作用は軽く、外来通院治療が可能です。

b.自己末梢血造血幹細胞移植(3.悪性リンパ腫、「メモ」参照)

 抗がん薬治療で「Mタンパク」を減らした後に「自己末梢血幹細胞」を採取し、大量化学療法後にそれを戻し、正常造血を回復する方法です。

c.その他の薬剤

  • インターフェロン:注射薬です
  • ボルテゾミブ(商品名:ベルケード):B細胞の増殖に重要な「NFκB」を抑える薬剤です。最近、初発例にも使えるようになりました。
  • サリドマイド(商品名:サレド):薬害を起こした薬剤として有名ですが、抗腫瘍効果があることがわかり臨床応用されています。
  • レナリドマイド(商品名:レブラミド):サリドマイドの類似薬です。

※サリドマイド、レナリドマイドともに、患者教育、薬剤管理を厳重に行います。

2)骨に対する治療

 抗腫瘍効果のほか、骨破壊を抑え、QOL(Quality of life生活の質)向上をねらって、ビスホスホネート製剤(商品名:ゾメタ)を用います。ただ、虫歯のある人に使うと「顎骨壊死」をおこしますので、治療開始前に歯科受診が必要です。

執筆者紹介

塚本憲史

群馬大学医学部附属病院腫瘍センター長

群馬県がん対策トップページへ戻る

このページについてのお問い合わせ

健康福祉部保健予防課
〒371-8570 前橋市大手町1-1-1
電話 027-226-2614
FAX 027-223-7950
hokenyobo@pref.gunma.lg.jp