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がん登録とは(院内がん登録の解説)

このページでは、群馬県の取り組んでいるがん対策や、群馬県でがんにかかった人のデータ等について紹介しています。

群馬県がん対策推進条例 | 群馬県がん対策推進協議会 | 群馬県がん対策推進計画(平成25年3月) | 重粒子線治療について | 群馬県がん検診受診率向上企業連携事業 | 群馬県のがんに関するデータ | 地域がん登録 | 地域がん登録から知る群馬県のがん | 予後情報の提供について | 院内がん登録の解説 | 執筆者紹介

はじめに

 2012年の人口動態統計の年間推計によれば1年間に死亡したのは125万6千人、最も多いのががんによる死亡(36万1千人)、第2位は心疾患(19万9千人)、第3位が肺炎(12万8千人)、第4位が脳血管疾患(12万2千人)でした。高齢化の進行により、がんで亡くなる方が増えてきましたが、がんは早期に発見して治療すれば治るようになってきました。どの位の人ががんになり、どんな治療を受けて、その結果がどうなったのかを調査する仕組みががん登録です。5年生存率はこのがん登録から導き出すのです。

ここでは、下記1.~5.について解説したいと思います。

  1. 4つのがん登録
  2. 3つの病期分類
  3. 拠点病院における院内がん登録
  4. 予後調査(生存確認調査)
  5. がん登録等の推進に関する法律と全国がん登録

(1)4つのがん登録

 これまで、日本には3つのがん登録がありましたが、2013年12月6日「がん登録等の推進に関する法律」が成立し、2016年1月1日(予定)から、4つめのがん登録の全国がん登録がスタートすることになりました

  1. 地域がん登録(都道府県単位)
  2. 院内がん登録(医療機関単位)
  3. 臓器がん登録(学会主体による臓器別)
  4. 全国がん登録(2016年(平成28年)1月1日開始予定)

1については、地域がん登録のページをご覧下さい。地域がん登録は、2012年に東京都と宮崎県が開始し、すべての都道府県(全国47都道府県1市)で行われています。群馬県では1994年から開始されました。ここでは主に2の院内がん登録について説明したいと思います。

院内がん登録は、これまで病院毎に独自に実施してきました。全国がん(成人病)センター協議会(以下、全がん協)加盟施設では、1980年代から院内がん登録の研究を行い、各施設から院内がん登録のデータを収集して生存率を算定してきました。その後もがん登録の研究を進め、2007年には部位別施設別に5年生存率を公表しました(全がん協加盟施設の生存率協同調査について(外部リンク) )。

一方、群馬県では2004年に地域がん登録、県医師会、拠点病院が協力して地域がん登録の精度向上を目指して活動を開始しました(地域がん登録全国協議会(外部リンク))。

院内がん登録とはカルテなどからその患者さんのがんについての情報を調べ、いつ診断されて、がんの進行具合はどの位で、どんな治療を行ったのか、病理検査の結果はどうだったのかを診療科を問わず、病院全体で集めて記録します。病院にかかった時にがん登録を実施している施設の場合、院内に掲示されていると思いますのでご確認下さい。これまでは医師が書いた退院サマリを用いて登録している病院が多かったのですが、最近では外来で化学療法を行う患者さんが増えてきているので、外来に通院する患者さんを把握するには忙しいお医者さんの力に頼ることはできません。お医者さんにはしっかりと患者さんに向き合っていただき、がん登録は専門家が行う必要があります。国立がん研究センターではそうしたがん登録の専門家を養成するために講習会を開催しています。

院内がん登録のデータは群馬県のがん診療連携拠点病院や推進病院では定期的に群馬県地域がん登録にデータを提出しています。拠点病院では2007年収集データからは年一回、国立がん研究センターへのデータ提出が義務づけられています。

3臓器がん登録

学会や研究会で行われているがん登録です。昭和47年に当時の胃癌研究会から「全国胃がん登録調査報告」が刊行され、これまで多くの報告書が刊行されました。その後、いくつかの臓器においてがん登録が始まりました。ところが、個人情報保護の流れの中で、臓器がん登録が一時停滞してしまいました。最近になって再開されましたが、登録精度向上には多くの課題が残されています。それぞれ各臓器の専門家がデータ収集、解析を行っていますので、細かな情報が収集可能ですが、登録項目が多く、臨床医の負担になっています。特に予後調査が困難で、院内がん登録の連携を含め、こうした分野への病院のサポート体制が不可欠です。

日本胃癌学会(外部リンク)

日本乳癌学会(外部リンク)

大腸癌研究会(外部リンク)

日本肝癌研究会(外部リンク)

4全国がん登録

2013年12月6日、「がん登録等の推進に関する法律」が成立しました。この法律の下、2016年1月1日から全国がん登録がスタートする予定です。
これまでがん登録を行ってきた施設にとって、生存率を算定する際に重要な患者さんのその後の転帰を把握する予後調査(生存確認調査)の困難さが問題となっており、地域がん登録、院内がん登録等のがん登録関係者から、がん登録の法制化の要望が出されていました。その後、2012年3月、日本医学会長、日本癌学会理事長、日本癌治療学会理事長、日本臨床腫瘍学会理事長より「がん登録の法制化に係る要望書」が提出され、2012年4月に「国会がん患者と家族の会」が中心となり、がん登録の法制化についての検討が開始されました。そして、2013年12月6日、「がん登録等の推進に関する法律」が成立しました(国会がん患者と家族の会:外部リンク)。この法律ではこれまでの拠点病院だけでなく20床以上のすべての病院にがん登録への届け出義務が生じます。拠点病院や推進病院では、国立がん研究センターと地域がん登録の2カ所に届ける仕組みは、これまでと何ら変わることはありません。しかし、全国がん登録では20床以上の病院にがん登録が義務づけられるので、これまで地域がん登録に届けていなかった施設では、届け出を行うための準備が必要です。各施設から地域がん登録に届け出をしてあれば、都道府県から国立がん研究センターにデータが送られ、後日、都道府県を通して予後調査の結果を受け取る仕組みができました。

(2)3つの病期分類

(1)UICC(国際対がん連合)のTNM悪性腫瘍の分類による病期分類

これは腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移の有無と拡がり(N)、遠隔転移の有無(M)から、これらの組み合わせによりI期~IV期に分類されます。数字が大きいほどがんが進行していることを示します。

UICCによる病期分類には、治療開始前の診断時にがんの進行具合を分類する臨床病期と、手術をした時点でがんがどこまで進んでいたかを摘出臓器やリンパ節転移の拡がりを確認して登録する病理病期があります。病理病期は手術で摘出した臓器やリンパ節転移を調べて決定するので、病期の進行具合がより的確に把握できます。病理病期で問題なのは、手術前に抗がん剤治療を受けていると、治療前のがんの拡がりを示す正確な病期がわからなくなってしまう点です。抗がん剤治療後に手術をするとリンパ節転移がほとんど消えることもあり、その患者さんはもともと何期だったのかわからなくなってしまいます。ですから治療開始前に臨床病期を把握することはとても大事です。

がん患者さんの場合、この臨床病期や後述の進行度によって治療方法の説明を受けると思います。また病理病期によって追加治療の必要性も示されることと思います。また手術中にリンパ節転移の有無を確認して、手術の術式が決まることもあります。

(2)各臓器の学会のがん取扱規約による進行度(ステージ分類)

臓器がん登録は主に学会主体で行っているがん登録です。学会毎にがん取扱規約によりがんの進行度を定めています。日本独特のものであり、多くの臨床医はこちらを用いています。

拠点病院でも肝がんに関してはこの病期分類を用いています。

詳しくは各学会のホームページをご覧下さい。

臓器がん登録は診療科毎に医師がボランティアで情報の収集と整理をしていることが多く、患者さんの細かなデータを集めることができますが、手術を担当する外科が中心になることが多く、放射線療法や化学療法を受けている患者さんなどのデータを反映しにくいというデメリットがあります。ただ手術所見が反映されるため、病期毎の治療成績を評価するためには貴重なデータとなります。院内がん登録との連携が課題です。

(3)地域がん登録で用いられている進展度(臨床進行度)

進展度(臨床進行度)とは、米国国立がん研究所、SEERプログラムの Summary Staging(Extent of Disease)を「地域がん登録」研究班が改変したものです。先進国以外でも簡単に病期分類ができるように、上皮内がん、限局、所属リンパ節転移、隣接臓器浸潤、遠隔転移に分類されています。所属リンパ節転移と隣接臓器浸潤をあわせて、限局、領域浸潤、遠隔転移の3群で比較する場合もあります。

UICCのTNM分類による病期分類が英語だとすると、取扱規約のステージ分類は日本語と考えられます。病期分類は改正がつきもので、現在はUICCのTNM悪性腫瘍の分類第6版を用いていますが、今後は第7版を用いることになります。 進展度は時代の趨勢をみるために原則的に改訂しないため、UICCのTNM分類との矛盾を生じていますが、国立がんセンター研究班で、UICCのTNM分類第7版と進展度の変換表を作成中です。

(3)拠点病院における院内がん登録

群馬県の拠点病院から2009年に国立がん研究センターに提出された件数は2007年症例で9,458例でした。2007年に群馬県地域がん登録に登録された数は12,045例(上皮内がんを含む)でした。2010年に提出された2008年症例は全国で428,196例(上皮内がん含む)、群馬県は10,217例(男5,932例、女4,285例:2.4%)でした。2009年症例は全国で487,441例(上皮内がん含む)群馬県は9,935例(男5,694例、女4,241例:2.0%)、2010年症例は全国で530,363例(上皮内がん含む)群馬県は10,808例(男6,159例、女4,649例:2.0%)でした。群馬県の人口からすると、提出数は多いと思います。これも、地域がん登録の精度向上の取り組みの成果と考えます

胃がん、肺がん、乳がん、大腸がん、肝がん、前立腺がんの2010年症例の拠点病院のデータをお示しします。

大腸がんは全国で71,662例、群馬県の拠点病院から1,318例(1.8%)でした。

胃がんは全国で63,718例、群馬県の拠点病院からは1,188例(1.9%)でした。

肺がんは全国で61,083例、群馬県の拠点病院から1,388例(2.3%)でした。

乳がんは全国で52,846例、群馬県の拠点病院から1,206例(2.3%)でした。

肝がんは全国で23,368例、群馬県の拠点病院から519例(2.2%)でした。

前立腺がんは全国で40,649例、群馬県の拠点病院から1,030例(2.5%)でした。

群馬県は全国と比較し、肺がん、乳がん、前立腺がんの比率が高いことがわかります。ただし、拠点病院の場合は個人情報を除いてデータを提出しているので、複数の施設で重複登録されている場合があることをご承知置きください。

グラフ:拠点病院における部位別院内がん登録数割合
拠点病院における部位別院内がん登録数割合

(4)がん登録と予後調査(生存確認調査)

 がん登録では、診断から5年後に、登録した患者さんが生存しているか、あるいは残念ながらお亡くなりになっているかを確認して5年生存率を計算します。この確認する作業を予後調査(生存確認調査、追跡調査)といいます。この確認作業が大変なのです。患者さんの予後調査は、これまで地域がん登録では人口動態死亡小票を利用していました。院内がん登録ではまず院内のカルテを調査して、患者さんの生死を確認します。不明な場合は市役所や町役場に問い合わせます。これを住民票照会といいます。引っ越ししていた場合はさらなる調査が必要になります。日本ではこの予後調査の仕組みが確立していませんでした。しかし、群馬県では2010年12月にがん対策推進条例が成立し、その11条にがん登録推進が明記され、県による地域がん登録の実施、県による予後調査の実施が明記された全国初の条例となりました。群馬県地域がん登録では2011年に住民票照会による予後調査を実施しました。群馬県では群馬大学に重粒子治療センターが設置され、治療が始まっています。国内では3番目、大学病院としては全国初です。群馬県、群馬大学には、こうした重粒子によるがん治療の治療成績を明らかにする責務があります。群馬県では、最近の治療技術を反映した生存率を算定するためにも、毎年の予後調査が実施できるようなな方法を検討した結果、山形県等で実施している住基ネットによる予後調査が望ましいということになり、2013年2月住民基本台帳法施行条例が改正され、住基ネットによる予後調査の道が開かれました。そして2013年に2007年症例の5年予後調査および2009年症例の3年予後調査を行っていますので、近いうちに2007年症例の5年生存率が公表できると思います。

(5)今後の課題

群馬県における予後調査の方法が整いつつあり、地域がん登録、拠点病院の院内がん登録の精度が向上しているので、今後は県民の皆様にわかりやすいがん登録のデータをお示ししていきたいと考えています。2016年1月1日から全国がん登録が開始される予定です。全国がん登録が軌道に乗るまでは、地域がん登録もこれまで以上に精度向上に努めていく必要があります。また、これまで地域がん登録にデータを届けていなかった病院では、全国がん登録に対応するためにも、地域がん登録への届け出をお願いいたします。

執筆者紹介

群馬県立がんセンター院長 猿木 信裕(さるきのぶひろ)

昭和31年、静岡県に生まれる。
昭和58年群馬大学医学部を卒業。
その後、群馬県立がんセンター麻酔科部長、手術部長、副院長を経て、平成24年、群馬県立がんセンター院長に就任。医学博士。

画像:猿木信裕先生
猿木信裕先生

(更新日:平成26年1月20日)

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