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平成28年度群馬県感染症流行予測調査結果について

 感染症流行予測調査事業では、定期予防接種の対象となっている疾患(ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎、風しん、麻しん、ヒトパピローマウイルス感染症、水痘、B型肝炎、インフルエンザ菌感染症、肺炎球菌感染症)について、次のような調査を行っています。

  • 感受性調査(疾患に対する免疫を国民がどれくらい保有しているか:集団免疫の現状把握)
  • 感染源調査(どのような型の病原体が流行しているか、あるいは、流行する可能性があるか:病原体の検索)

 これらの結果と他のいろいろな疫学的情報(地域、年齢、性別、予防接種歴など)を併せて検討し、予防接種が効果的に行われているかを確認すること、さらに長期的な視野で疾患の流行を予測することを目的としています。
 この調査では、厚生労働省、国立感染症研究所、都道府県および都道府県衛生研究所などが、それぞれの地域に住んでいる方に事業の目的を説明し、同意が得られた場合に調査に御協力いただいています。

 群馬県では今年度、感受性調査として麻しん・風しん・インフルエンザについて、感染源調査として日本脳炎(ブタ)・インフルエンザ(ブタ)について調査しました。

感受性調査

 感受性調査では、さまざまな年代の方々の血液中に含まれる抗体の量を測定し、感染症に対抗できる免疫をどれくらい保有しているか調べます。
 今年度は、麻しん・風しん・インフルエンザの3疾患について、血液中に十分な抗体を持っている人の割合(抗体保有率)の調査を行いました。なお、本調査への同意の得られた0歳から76歳の計457名を調査対象者とし、調査にあたっては、健康診断あるいは医療機関受診時に採取した血液の残余を利用しました。

 本県で実施した調査の結果は以下の通りです。

 PDFファイル:平成28年度群馬県感染症流行予測調査(感受性調査)の概要(PDF:147KB)

麻しん

  • 対象:0~76歳の457名の血清
  • 方法:ゼラチン粒子凝集法(PA法)
  • 判定:PA法では、PA抗体価が1:16以上で陽性と判定しますが、1:16~1:64では十分な発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、麻しんに対して十分な免疫があると考えられている1:128以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:PA抗体価1:128以上の抗体保有率は全体の82.1%で、昨年度(82.6%)と同程度の保有率でした(図1)。年齢群別では、4-9歳(98.1%)や10-14歳(91.2%)で90%以上の抗体保有率を示しました。抗体価が1:16未満の抗体陰性者は全体の5.0%で、昨年度(3.5%)よりもやや高い割合でした。抗体陰性者の割合について年齢群別では、0-1歳が最も多く45.5%でした。
図1 年齢群別麻しんPA抗体保有状況

風しん

  • 対象:0~76歳の457名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験(HI法)
  • 判定:HI法ではHI抗体価が1:8以上の場合に陽性と判定しますが、1:8及び1:16では十分な風しんの発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、抗体価が1:32以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:HI抗体価1:32以上の抗体保有率は全体の86.7%で、昨年度(74.9%)よりも10%以上高い保有率でした(図2)。年齢群別では、30-34歳(95.3%)で最も保有率が高く、4-9歳(92.3%)及び20-24歳(94.1%)と併せて3年齢群で抗体保有率が90%を上回っていました。抗体価が1:8未満の抗体陰性者の割合は全体の6.1%でした。
図2 年齢群別風しんHI抗体保有状況

インフルエンザ

  • 対象:0~76歳の454名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験(HI法)
     インフルエンザの感受性調査では、今シーズン(2016/17シーズン)のインフルエンザ流行開始前であり、かつ当該シーズンのインフルエンザワクチン接種前の血清について調査を実施しました。今年度は以下のインフルエンザウイルス4種類の抗原について調査しました。これら4抗原は、いずれも今シーズンのワクチン株として選定されている抗原です。

     A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
     A/香港/4801/2014(H3N2)
     B/プーケット/3073/2013[山形系統]
     B/テキサス/2/2013[ビクトリア系統]

  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合に陽性と判定されますが、インフルエンザの感染リスクを50%に抑える目安と考えられている抗体価1:40以上の対象者の割合を抗体保有率としました。また、抗体保有率60%以上を「高い」、40%以上60%未満を「比較的高い」、25%以上40%未満を「中程度」、10%以上25%未満を「比較的低い」、5%以上10%未満を「低い」、5%未満を「きわめて低い」としました。
  • 結果:A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09 (図3)
     全体の抗体保有率は72.0%で、高い保有率でした。年齢群別では、15-19歳(93.8%)で最も高い保有率を示し、5-9歳(82.9%)、10-14歳(86.8%)、20-29歳(84.8%)、30-39歳(71.6%)及び50-59歳(69.2%)でも高い保有率でした。最も低い保有率を示した0-4歳(28.3%)でも、中程度の保有率でした。
図3 年齢群別A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09 HI抗体保有状況
  • 結果:A/香港/4801/2014(H3N2)(図4)
     全体の抗体保有率は44.9%で、比較的高い保有率でした。年齢群別で見ると5-9歳(65.9%)、10-14歳(72.1%)及び15-19歳(72.9%)の3年齢群で高い保有率を示しました。一方で0-4歳(17.0%)、40-49歳(20.0%)及び50-59歳(19.2%)の3年齢群では比較的低い保有率を示し、年齢群によって抗体保有率のばらつきが見られました。
図4 年齢群別A/香港/4801/2014(H3N2) HI抗体保有状況
  • 結果:B/プーケット/3073/2013[山形系統](図5)
     全体の抗体保有率は34.1%で、中程度の保有率でした。年齢群別では20-29歳(58.2%)が最も高く、10-14歳(45.6%)、15-19歳(45.8%)とともに比較的高い保有率を示しました。その一方で40-49歳(17.1%)、50-59歳(23.1%)及び60歳以上(17.4%)は比較的低い保有率、0-4歳(7.5%)は低い保有率となり、A/香港/4801/2014(H3N2)株と同様に年齢群別で差が認められました。
図5 年齢群別B/プーケット/3073/2013 HI抗体保有状況
  • 結果:B/テキサス/2/2013[ビクトリア系統](図6)
     全体の抗体保有率は9.3%で、4抗原の中で最も低い保有率でした。年齢群別では、全年齢群で抗体保有率が20%未満でした。最も保有率が高かった10-14歳(17.6%)や、15-19 歳(16.7%)、30-39歳(13.6%)であっても比較的低い保有率であり、0-4歳(0.0%)、50-59歳(3.8%)及び60歳以上(0.0%)では保有率5%未満のきわめて低い保有率でした。
図6 年齢群別B/テキサス/2/2013 HI抗体保有状況

感染源調査

 感染源調査では、人や動物の体中あるいは環境中に病原体(感染症の原因)が存在しているか、存在している場合にはどのような種類かを調べます。
 今年度は、県内産のブタを対象に日本脳炎・インフルエンザの2疾患について、調査を行いました。

 本県で実施した調査の結果については以下の通りです。 

日本脳炎(ブタ)

 日本脳炎とは、主にコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し、その後ヒトを刺すことによって起こる感染症です。ヒトが発症した場合は、重篤な急性脳症を起こすこともあります。
 日本脳炎の抗体価が高い場合は、そのブタが日本脳炎に感染している可能性が高いと考えられます。全体のブタの抗体保有率が上昇している場合、感染したブタを蚊が吸血し媒介することによって、ヒトに感染するリスクが高くなります。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計80頭の血清
  • 調査期間:平成28年7月11日から9月30日まで(計8回)
  • 方法:赤血球凝集抑制試験(HI法)
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合を陽性と判定し、さらに1:40以上の場合には2-メルカプトエタノール(2-ME)処理を実施しました。なお、2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられます。
  • 結果:80頭について調査を実施したところ、HI抗体価1:10以上を示したブタは1頭(1.3%)でした。なお、1:40以上のブタは確認されなかったため、2-ME処理は実施しませんでした(表1)。
表1 ブタの日本脳炎ウイルスHI抗体及び2-ME感受性抗体保有状況

* 抗体価1:10以上を陽性とする。
** 2-メルカプトエタノール(2-ME)処理は、HI抗体価1:40以上で実施する。2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられる。2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して3管(8倍)以上低かった場合を陽性、2管(4倍)低かった場合を疑陽性、不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定する。

インフルエンザ(ブタ)

 ブタは、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの両方に感染することがあり、ブタの体内でウイルスが変異すると新しいインフルエンザウイルスが発生する可能性があります。そこで、新たなインフルエンザウイルスの出現監視を目的として調査を実施しています。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計100頭の鼻腔拭い液
  • 調査期間:平成28年11月から平成29年2月まで(計5回)
  • 方法:細胞培養法
  • 判定:ウイルスが細胞で分離された場合には、ウイルス同定検査を実施します。
  • 結果:インフルエンザウイルスは、1検体からも分離されませんでした。

 

謝辞

 感受性調査の実施にあたり、調査へ同意し検体を御提供いただいた0~76歳の457名の対象者の皆様、及び検体収集に御尽力いただいた各学校の先生方、桐生厚生総合病院、公立藤岡総合病院、地域医療機能推進機構群馬中央病院、国立病院機構高崎総合医療センター、前橋赤十字病院、県立小児医療センター、公益財団法人群馬県健康づくり財団、医療法人社団三愛会三愛クリニック、その他各関係機関の皆様に厚く御礼申し上げます。
また、感染源調査の実施にあたり、ブタの検体採取に御協力いただいた株式会社群馬県食肉卸売市場及び群馬県食肉衛生検査所の皆様に深謝致します。

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