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【平成24年12月10日付け】金井東裏遺跡に関する報道提供資料

古墳時代の甲(よろい)着装人骨の出土について(金井東裏遺跡(渋川市)

1 出土遺跡の概要

(1)遺跡名

 金井東裏(かないひがしうら)遺跡(渋川市金井地内)

(2)調査原因

 国道353号金井バイパス(上信自動車道)建設工事に伴う調査

(3)委託者

 中部県民局渋川土木事務所

(4)調査主体

 公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団

(5)調査期間

 平成24年9月~平成25年3月調査予定

2 内容

  1. 6世紀初頭(古墳時代後期)に噴火した榛名山二ツ岳の火山灰で埋まった溝から、甲(よろい)を着装した成人男性人骨1体と、乳児頭骨1点、甲(よろい)の部品1点が出土した(以下写真1・2参照)。
  2. 甲(よろい)を着装した人骨は、ほぼ全身の骨が残っている(以下写真3・4参照)。榛名山の方向を向き、後頭部を上にし顔を伏せている。下肢(かし)の状態から膝(ひざ)立ちの姿勢のあと前方に倒れたと推定できる。
  3. 古墳時代人が榛名山二ツ岳の火山災害(火砕流(かさいりゅう))に遭遇し、その場でうつ俯せ状態で死亡したと考えられる。
  4. 甲(よろい)を着装した人骨の他に乳児頭骨1点も出土しており、複数の人が火砕流に巻き込まれて死亡したと考えられる。
1 溝状遺構内の甲と人骨の出土状況(西方より)の写真

1 溝状遺構内の甲と人骨の出土状況(西方より)

2 同上部分拡大(西方より)の写真

2 同上部分拡大(西方より)

3 甲を着装した人骨の状況(東方より)の写真

3 甲を着装した人骨の状況(東方より)

4 甲の下位から出土した大腿骨(北方より)の写真

4 甲の下位から出土した大腿骨(北方より)


3 要点

  1. 古墳時代の甲(よろい)が、実際に人が着装した状態で出土したのは全国初である。
  2. 古墳時代において、火山噴出物の下から被災人骨が発見されたのも全国初である。

4 一般向け現地公開(終了しました)

平成24年12月12日(水)午前10時から午後3時まで(雨天中止)

5 補足説明

(1) 発掘調査の概要

 金井東裏(かないひがしうら)遺跡の発掘調査は、国道353号金井バイパス(上信自動車道)建設工事に伴い、平成24年9月より公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団が実施している。遺跡内には、6世紀中頃の榛名山二ツ岳(はるなやまふたつだけ)噴火による厚さ約2メートルに及ぶ軽石層が堆積し、さらにその下位に同山が6世紀初頭に噴火した時の火山灰や火砕流(かさいりゅう)が、層の厚さ約30センチメートルで堆積している。
 今回発見された甲(よろい)着装の人骨や乳児頭骨および甲部品は、6世紀初頭の火山灰で直接埋没した幅2メートル、深さ1メートルの溝内からの出土である。また現在のところ、5世紀後半の竪穴住居群は検出されているが、これらの人骨と同時期のものが検出されていないことから、今後の調査による発見が期待される。
 尚、これら人骨や甲の出土確認は11月19日であるが、その後の専門研究者からの指導・助言や詳細調査を行う必要上、今日の発表・公開に至った。

(2)甲と人骨の出土状況

 甲および人骨の溝内の出土状況は、共に火砕流堆積物で埋没しており、詳細は以下の通りである。

  (ア) 甲を着装した人骨を中心に見ると、その上流(西側)に約1メートル離れて甲の部品1点があり、また下流(東側)に約3メートル離れて乳児頭骨1点が存在する。
  (イ) 甲着装の人骨及び甲部品は、溝の底面から10センチメートルほどの高さで出土し、また乳児頭骨は溝の法面(のりめん)に貼り付いた状態で出土しているが、共に同一の火砕流堆積物で埋没していることから、同一時期に被災して埋没したと判断される。

(3)甲と人骨の特徴

 (ア) 人骨に伴う甲は背中側が表に露出しており、高さ60センチメートル、幅50センチメートルとやや寸詰(すんず)まっているが、草摺(くさずり)が長側(なががわ)方向にずり上がった状態と考えられる。また、この甲は破片断面に長さ5センチメートル前後、幅約2センチメートル、厚さ1ミリメートルの小鉄板複数枚が相互に重なり合う状況が観察され、これにより小札甲(こざねよろい)と判断される。

画像:小札甲復元図

小札甲復元図


(イ) (ア)の上流側にある甲部品については、表面の腐食が激しくそれが本体のどの部位に該当するのか、また、両者が一体のものか否かについても、現段階では不明である。
(ウ) 甲着装の人骨は、後頭部や四肢骨(ししこつ)の一部が欠失(けっしつ)するものの遺存状態は良好であり、骨格の状況から成人男性と判断される(上記写真3)。
(エ) 乳児骨については、頭部の一部が残存するのみだが、その大きさと骨質から生後数ヶ月の乳児のものと判断される。
 

(4)摘要

(ア) 群馬県地域では、5世紀後半以降、前方後円墳やそれに準ずる支配者層の古墳の副葬品として小札甲の出土が顕著になる。これまで県内では54点が出土しており、全国的に見ても最も数が多い。ヤマト王権との新たな、密接な関係が急速に進んだ結果と考えられている。
(イ) 本遺跡のすぐ西側には、丸山古墳(墳形不明)があり、堅固な竪穴式石槨(たてあなしきせっかく)から鉄剣3振り等が出土している。今回の小札甲着装男性と関係する可能性もある。また、本遺跡の南東の利根川沿いに数多く所在する同時期の古墳も関係が推測される。
(ウ) 本遺跡と前後する時期の古墳で小札甲を伴う古墳は、前方後円墳かこれに準ずる有力古墳に限られている。今回の人物像を考えていく上で参考になる。
(エ) 今後、出土状況を詳細に観察して、これらの遺体がどのようにしてこの位置に存在するに至ったのかを確認する必要がある。また、甲着装男性と乳児との血縁関係や甲の着装方法、居住地としていた集落等さまざまなテーマを追究でき、さらに火砕流との関係から災害・防災面からも重要な発見である。 

6 問い合わせ先

公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団
電話 0279-52-2511  

7 用語解説

小札甲(こざねよろい)(挂甲(けいこう))

 小札とよばれる小さな薄い長方形の鉄板を縦に用い、これにあけられた綴孔(とじあな)に革紐の綴革を通して、左右横一段に強固に綴合わせ、これを上下に威孔(おどしあな)に通した威革でブラインド状に屈伸する様に組みあげたもの。古墳出土のものに特徴的な胴丸式のものは、胸や腹部をおおう竪上(たてあげ)や長側(なががわ)とよばれるいわゆる胴と、腰をおおう草摺(くさずり)とを一体に組みあげたもので、前開きになっており、正面で左右に引き合わせて、それぞれについている革紐の引合緒(ひきあわせお)を結んで装着する様になっている。胴と草摺とは、ウエストの部分に用いられた長さが普通の小札の倍近くあり、その中央をウエストの線に合わせて内側にゆるく彎曲させた腰小札(こしこざね)の上下に威付(おどしつ)けているが、挂甲着用の埴輪ではこの部分に帯を結んでいる。

金井丸山(かないまるやま)古墳

 渋川市金井字東裏1806番地1に所在した古墳で、金井東裏遺跡に近接する。1978年に渋川市教育委員会が調査を行ったが、墳丘の規模は不明である。埴輪は調査時には検出されていない。埋葬施設の主体部は、長軸長1.85メートルの竪穴状小石槨(たてあなじょうしょうせっかく)であり、調査報告書では箱式棺状と表現されている。副葬品は、剣3点、鑷子(ちょうし(毛抜き))1点を出土している。調査段階では、榛名山二ツ岳軽石の降下以前の築造であることが確認されているが、榛名山二ツ岳火山灰との関係は不明である。鉄剣の出土ともあわせ遺物の様相から、5世紀後半から6世紀初頭の築造と考えられる。

榛名山二ツ岳火山灰(Hr-FA)

 6世紀初頭(古墳時代後期)に噴火した、榛名山二ツ岳の火山灰。細粒の火山灰、火砕流堆積物、軽石などからなる15層のユニットが確認されている。金井東裏遺跡では、約30センチメートルの堆積が認められる。給源から東~南東の方向に火山灰を降下させ、東側は栃木県宇都宮市、南東側は埼玉県鴻巣市で確認され、それぞれ給源から約100キロメートルの距離にある。県指定史跡の中筋(なかすじ)遺跡は、この火山灰で埋没した集落遺跡である。

榛名山二ツ岳軽石(Hr-FP)

 6世紀中頃(古墳時代後期)に噴火した、榛名山二ツ岳の軽石。主に軽石からなる19層のユニットが確認されている。金井東裏遺跡では約2メートルの堆積が認められる。給源から北東の方向に軽石を降下させ、最も遠い地点では宮城県多賀城市で確認され、給源からの距離は約300キロメートルに達する。国指定史跡の黒井峯(くろいみね)遺跡(渋川市)は、この軽石で埋没した集落遺跡である。なお、二ツ岳はこの噴火の後に出てきた溶岩ドームである。

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このページについてのお問い合わせ

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〒371-8570 前橋市大手町1-1-1
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