ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 環境森林部 > 環境政策課 > 環境学習推進基本指針(第1章)

本文

環境学習推進基本指針(第1章)

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

第1章 基本的な考え方

1 背景

 我が国は、かつて深刻な公害を経験しました。工場などから排出された汚水や煙などによって、川や海、大気など私たちを取りまく環境が汚染され、人の健康に対しても甚大な被害がもたらされました。水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜん息、新潟水俣病がその代表例と言えます。

 こうした公害は、その後国民の公害問題に対する理解、国における法律の整備、企業の努力、技術開発等によって一定の解決が図られ、現在では昔のような公害が発生することは少なくなりました。

 しかし、近年、新たな環境問題が顕在化してきています。それは、地球温暖化問題に代表されるような、地球規模にまで及ぶ空間的な広がりをもった環境問題です。また、その影響は現在の私たちより将来の世代に対して一層深刻に現れるおそれがあります。こうした環境問題は、今日の経済や社会の仕組みとも深くかかわっており、特定の企業や地域の問題であった公害とは性質を異にし、私たちは、その解決に向けて新たな対応が求められています。

 そもそも「環境」とは何でしょうか。環境について正確な定義をすることは困難ですが、一般的には、水や空気、植物や動物など、私たちを取り巻いているすべてのものが「環境」であると考えてよいでしょう。私たちは、環境から影響を受け、また、環境に影響を与えながら生活をしています。環境と切り離した生活はあり得ず、環境はすべての生命の生存基盤であると言えます。

 私たちは、物質的な豊かさや便利さを求め、資源やエネルギーをたくさん使い今日の社会を築いてきました。その結果、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会システムや生活スタイルが定着し、環境に対して大きな負荷を与え続けてきたと言えます。生活排水による河川の汚濁や自動車による大気汚染、地球温暖化やオゾン増の破壊など、今日の環境問題は極めて多岐にわたりますが、その原因の多くは、私たちの生活や社会活動そのものにあると言えます。

 こうした今日の環境問題を解決するためには、これまでの社会の仕組みや生活スタイルを見直して、環境への負荷が少ない社会、いわゆる持続可能な社会を構築していく必要があります。持続可能な社会は、自然との共生を基本とし、有限な地球の中で、現代の私たちはもちろん、将来の世代にわたって、自然の恵みを享受しながら、継続して豊かな生活を送れる社会であり、こうした社会をつくっていくことは、かつての公害問題の解決とは違って、一企業や一地域のみでできることではありません。私たち一人一人の自覚と行動が不可欠です。そのためには、すべての人が環境と人間とのかかわりについて正しい理解を持つことが大切であり、今日、環境問題を解決するうえで、環境学習の推進が基本的かつ重要な課題となっています。

 群馬県は、海抜12メートル余から2,500メートル超までの変化に富んだ地形の中にたくさんの河川や湖があります。そこには、利根川を中心とした多様な水辺環境が形成され、尾瀬をはじめとする貴重な自然がたくさんあります。私たちはこうした豊かな自然を守り、次の世代に引き継いでいく責務があります。

 また、地球規模の環境問題に対しても、自らの問題として主体的に考え、行動していく必要があります。そのためには、群馬の環境に誇りと責任を持ち、環境と人間の関係に対する深い理解に基づいて行動できる人を育てていくことが極めて重要であると言えます。

環境学習とは

 本指針では、環境学習とは、単に環境問題について知識を得るだけでなく、環境に関心をもち、「人と環境」のかかわりについて自ら学び、考え、行動できる人を育てるための学習及び教育を言います。環境学習においては、科学的思考力と体験を通した総合的な理解力を深めることが重要です。このことによって、環境保全に対する自らの責任と役割を自覚し、進んで環境保全行動に参加する意欲を持ち、環境問題を解決するための能力を高めていくことが期待されます。

 今日、自然と共生した持続可能な社会の形成が求められています。そのためには、一人一人が「人と環境」の関係について学び、行動に移すことが必要です。環境学習は、見えにくい環境と私たちのつながりを理解し、適切な判断と行動ができる人を育てるものです。
 そのためには、次の視点が大切になります。

(1)環境に配慮した行動ができる「人」を育てる

 持続可能な社会をつくっていくためには、環境と私たちの生活や社会とのかかわりについて学び、自ら考え、環境に配慮した行動ができることが必要です。

 環境について考える人がふえる → 行動に移す人がふえる → (環境に配慮した施策への合意ができる) → 「持続可能な社会」ができる

(2)教え学ぶ、だれもが主役

 環境学習の主役は私たち一人一人です。だれもが環境について学び、そして教える立場にあります。

(3)環境学習のきっかけはどこにでも

 環境学習のきっかけはあらゆるところにあります。里山や川など身近な自然はもちろん、家庭の中にも環境学習のきっかけはあります。環境学習は、実際のものに触れ、感じながら進めることが大切です。

例えば
【自然に学ぶ】身近な自然の環境問題(里山、森林など)
【地球環境を知る】地球規模の環境問題(地球温暖化、オゾン層破壊など)
【社会のしくみを知る】都市や産業の社会環境(産業廃棄物、排ガスなど)
【地域で学ぶ】個人や家庭の生活環境(ごみ削減、リサイクルなど)

2 指針策定の趣旨

 群馬県の豊かな自然を守り、環境と調和した持続可能な社会をつくっていくためには、私たち一人一人の自覚と行動が不可欠です。そのためには、環境に関心をもち、自ら学び、環境と人間のかかわりについて正しい理解を持ち、主体的に行動できる人を育てていくことが必要です。

 現在、県内では、県民、ボランティア団体、NPO、企業、行政などさまざまな主体によって環境学習が実施されています。しかし、現状は必ずしも体系的な環境学習が行われているとは言えず、今日の複雑化した環境問題を正しく理解し、環境に責任をもつ人を育てていくためには、成長段階に応じた環境学習が体系的に継続して行われる必要があります。そのためには、それぞれの関係者が、共通の認識に立って、連携、協力して取り組んでいく必要があります。

 この指針は、こうした状況を踏まえ、県内における環境学習が、関係者の連携、協力により、一層体系的かつ総合的に推進できるようにするために策定するものです。

3 指針の位置づけ

 本県は、県民が力を合わせ、本県の良好な環境を保全、創造し、うるおいとやすらぎに満ちた群馬を築くことを目的として、「群馬県環境基本条例」(平成8年)を制定しました。同条例は、「環境学習の振興等による環境に責任を持つ人づくり」を目標の一つとしております(条例第9条)。

 また、国は、「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」(平成15年)を制定し、環境保全活動や環境教育の推進を図ることとしています。この法律により、県は、区域の自然的社会的条件に応じ環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する方針を定めることとされています。

 本指針は、この条例及び法律によって位置づけられるものです。