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地球温暖化防止に向けて

更新日:2018年11月13日 印刷ページ表示

1地球温暖化の現状

(1)地球温暖化とは

私たちの暮らしには、水や空気、食料、そして安定した気候が欠かせません。その気候は、地球規模で変わりつつあり、産業革命以降、急速に気温が上昇しています。
地球温暖化とは、人間の活動による化石燃料の使用などにより、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が増加し、地球全体の平均気温が急激に上がりはじめていることをいいます。
日本における平均気温は、過去100年間で1.19度上昇し、特に東京では、ヒートアイランド現象も加わり3.2度上昇しています。環境省によると、「陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年の期間に0.85度上昇しました。また、最近30年の各10年間は、1850年以降のどの10年間よりも高温でした。1880年に観測が始まって以来、2015年は世界の平均気温が過去最高を記録し、最も暑い1年になりました。(NOAA/NASA発表)」と報告されています。
 ※出典:COOL CHOICE ウェブサイト<外部リンク> http://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/ondanka/

(2)地球温暖化がもたらす影響

地球温暖化が原因と考えられる氷床や氷河の融解による海面上昇や、海水温度の上昇等に起因する大雨や干ばつなどは、世界各地で問題となっています。日本においても、日本近海での台風の発生や集中豪雨などにより、多くの人的・物的な被害が生じてきていることから、被害防止に向けた取組が求められています。
また、地球温暖化はこのような災害をもたらすほか、農作物の種類や作付け・収穫時期や、その他地域固有の動植物種の変化など、生物多様性に大きな影響を及ぼすものと懸念されています。

(3)地球温暖化に対する国際的な取組

ア 京都議定書

京都議定書は、気候変動枠組条約に基づき、1997(平成9)年12月11日に、京都市で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択され、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)及び六ふっ化硫黄(SF6)の6種類の温室効果ガスについて、先進国の排出削減として法的拘束力のある数値目標などを定めています。
2005(平成17)年2月16日に京都議定書が発効し、1990(平成2)年の温室効果ガスの排出量を基準に、2008(平成20)年から2012(平成24)年の5年間に、先進国全体で少なくとも5.2%の削減を目指すこととされました。
我が国は、同期間(5年間)中に、1990(平成2)年比で6%削減(うち3.8%は森林吸収源)する目標を掲げました。

イ パリ協定

2015(平成27)年12月12日に、パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択されたパリ協定は、条約に加盟する196の全ての国・地域が参加する、2020年以降の温室効果ガス排出削減に向けた新たな枠組みを定めたもので、2016(平成28)年11月4日に発効しました。日本は2016(平成28)年11月8日にパリ協定を締結しています。
協定では、産業革命前からの平均気温上昇を2度未満に抑えることを目指し、今世紀後半に人為起源の温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。全ての国が温室効果ガスの削減目標を作成(5年ごとの見直し)し、取組状況を国際連合に報告することが義務付けられました。
我が国においては、2030年度に2013(平成25)年度比で温室効果ガス排出量を26%削減するとした約束草案を国連気候変動枠組条約事務局に提出しています。私たちの暮らしに関係する家庭部門の排出量については、約40%の削減目標を掲げています。

ウ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

1988(昭和63)年に、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、国際連合環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織です。
IPCCでは、気候変動に関する研究から得られた知見を数年おきに評価し、「評価報告書」として公表しています。2013(平成25)年に公表された第5次評価報告書では、温暖化の原因として、「1人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い(可能性95%以上)。2大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素は、過去80万年間で前例のない水準まで増加している。」と指摘しています。

(4)地球温暖化に対する国内の取組

ア 地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

1998(平成10)年に温室効果ガスの排出量を削減するための国、地方自治体、企業などの責任と取組を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律」(地球温暖化対策推進法)が施行されました。2016(平成28)年改正では、国連に提出した約束草案の「2030年度に2013年度比で26%削減する」との目標達成において、家庭・業務部門は約4割の大幅な排出削減が必要なため、国民一人ひとりの自発的な行動を促進するための普及啓発を強化するという国の方針を明示し、所要の規定を整備するとともに、温暖化対策推進のために必要な措置を規定しました。
国は、温暖化対策を推進するため、温室効果ガスの排出抑制・吸収の量の目標、事業者・国民等が講ずべき措置に関する基本的な事項、目標達成のために国・地方公共団体が講ずべき施策等を内容とする地球温暖化対策計画を策定(少なくとも3年ごとに検討を加え、必要に応じ変更)するものとし、2016(平成28)年5月に地球温暖化対策計画を閣議決定しました。
この計画は、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地球温暖化対策推進法に基づいて策定する我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画です。

イ 再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組

国(環境省)においては、温室効果ガスを大幅削減することを目標に掲げた長期低炭素ビジョンを踏まえ、2050年を見据えて、再生可能エネルギーの導入を拡大・加速化する方策を検討し、
「再生可能エネルギー活用によるCO2削減加速化戦略(中間報告)」として取りまとめたところです。
この中間報告では、固定価格買取制度による国民負担の増大や開発に伴う自然環境への負荷の増大、地元社会との不調和などの再エネの拡大における課題、エネルギーの自給率向上、防災・減災や地域経済の活性化などの課題を踏まえて、1省エネ・再エネ・蓄エネの推進、2地域の豊富な再エネ供給ポテンシャルの活用、という2つの方向性を提示し、関係省庁、地方自治体、企業、国民各層と幅広く連携した取組を行うこととしています。

ウ 気候変動の影響への適応計画の策定

地球温暖化に伴い、国内においても、気温や水温の上昇、降水日数の減少などにより、米が白濁するなど農作物の収量の変化や品質の低下、デング熱の媒介生物であるヒトスジシマカの分布域の北上やニホンジカの生息範囲の拡大など、動植物の分布域の変化をはじめ様々な影響が生じているといわれています。
このため、国においては、気候変動による様々な影響に対し、政府全体として整合のとれた取組を総合的かつ計画的に推進するため、2015(平成27)年11月に「気候変動の影響への適応計画」を閣議決定しました。
この計画では、温室効果ガスの削減を進めても世界の平均気温が上昇すると予測し、気候変動の影響に対処するためには、「適応」を進めることが必要であり、目指すべき社会の姿として「気候変動の影響への適応策の推進により、当該影響による国民の生命、財産及び生活、経済、自然環境等への被害を最小化あるいは回避し、迅速に回復できる、安全・安心で持続可能な社会の構築」としています。
なお、気候変動への適応を推進するため、政府による気候変動適応計画の策定、環境大臣による気候変動影響評価の実施などを内容とする「気候変動適応法」が、2018(平成30)年6月6日に可決、成立しました。

2 本県の地球温暖化対策を巡る課題

(1)温室効果ガス排出量の削減

2015(平成27)年度の県内の温室効果ガス排出量は1,815万トンで、「群馬県地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」で定める基準年(2007(平成19)年度)と比較すると、9.7%減少(二酸化炭素排出量は4.3%減少)しています。
一方、産業部門では、この間、景気の回復傾向が続き企業活動が堅調に推移したことにより、基準年比0.8%の増加、家庭部門では家電保有台数の増加等によるエネルギー消費量の増加により5.2%増加しています。
温室効果ガス排出量の削減をさらに進めるためには、家庭部門及び産業部門における排出削減の取組を進めることが重要であり、事業者や県民への意識啓発をはじめとした効果的な削減策を検討することが課題となっています。

(2)再生可能エネルギー普及促進

温室効果ガスを減らし地球温暖化を防止するためには、二酸化炭素等の排出源となっている石油、天然ガスなどの化石燃料の使用を抑えるほか、太陽光や水力などによって生み出される「再生可能エネルギー」の普及を推進し、利用を拡大していく必要があります。
太陽光発電については普及が進んでいますが、小水力発電や風力発電などその他の再生可能エネルギーについても、地域の特性を考慮しながら導入を進めることが課題となっています。

ア 太陽光発電

群馬県は、内陸型の気候で晴天の日が多く、平地では冬でも降雪が少ないこともあり、全国でも有数の日照時間を誇ります。また、全国平均よりも一戸建て住宅の割合が高く、太陽光発電の導入ポテンシャルが高い地域となっています。最近では設備増加率は減少傾向にありますが、2015-2016(平成27-28)年度の増加率は、全国と比較して6ポイント高い125%となっています。
住宅用太陽光発電については、2019(平成31)年度から、固定価格買取期間が満了する設備が発生します。買取期間満了後の家庭は、電力会社と個別に新契約を結ぶことで売電を継続できますが、買取価格は多くの場合で低下することが見込まれています。そのため、余剰電力の売電に加えて、自家消費への転換などの活用方法について、設備設置者に情報提供等を行う必要があります。
また、太陽光発電設備の設置に伴う景観や生態系への影響、林地開発等による災害等の発生も懸念されることから、施設のあり方について検討を進めることが課題となっています。

イ 小水力発電

小水力発電は、運転コストが低く電力の安定供給性にも優れていることから、中小河川や農業用水路における導入を促進しています。県では、民間企業等による事業化検討の一助となるよう、2016(平成28)年度に小水力発電の有望地点調査を実施し、導入可能性のある地点として13地点を選定し公表しています。
小水力発電は、事業者にとって多大な初期投資が必要であること、発電適地の選定や河川流量調査に長期間を要することなどから、引き続き、適切な情報提供に努めることなどが課題となっています。

ウ バイオマス発電

バイオマス発電は、未利用間伐材や一般廃棄物などのバイオマス資源をエネルギー源として活用するもので、2009(平成21)年に「バイオマス活用推進基本法」が施行され、2010(平成22)年には国の「バイオマス活用推進基本計画」が決定されました。県では、これを受けて、県内に豊富に存在するバイオマス資源を有効活用し、環境への負荷が少ない低炭素・循環型社会の実現や、農林業の振興、地域の活性化及び新たな産業の育成にも資するため、県の取組方針、バイオマスの種類ごとの利用量及び利用率の目標を定めた「群馬県バイオマス活用推進計画」を策定し、導入を促進しています。
バイオマス発電は、燃料や技術が多種多様であることから、間伐材等の燃料となる資源の安定供給体制の構築を進めることが課題となっています。

(3)気候変動への適応

 私たちが将来にわたり豊かな生活を享受するためには、温室効果ガスの削減に長期間にわたり継続して取り組むことはもとより、地球温暖化に伴う気候変動によって生じる、又は生じうる被害・影響を回避・軽減するための取組を進めることが必要となっています。
 気候変動の影響への適応に関する情報を一元的に発信するためのポータルサイトである「気候変動適応情報プラットフォーム」によると、本県の年平均気温は、21世紀半ばで+1~+2度、21世紀末には+2~+3度の上昇、年降水量については、21世紀半ばで1.0~1~1倍、21世紀末には1.1~1.2倍と予測されており、地球温暖化の影響を考慮した対策を講じることが必要となっています。
 なお、気候変動適応法では、地方自治体は国の気候変動適応計画を勘案して、地域気候変動適応計画(方針)の策定に努めることとされています。
気候変動適応情報プラットフォーム(環境省からの委託により国立研究開発法人国立環境研究所が運営)<外部リンク>
 http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/index.html

3 本県の地球温暖化防止に向けた取組の方向性

(1)温室効果ガス排出量の削減

地球温暖化を防止するためには、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減することが重要であり、県民、事業者、行政などの主体が、それぞれ温暖化防止活動を着実に実施することが求められます。
県では、群馬県地球温暖化防止条例に基づき、温室効果ガスを大量に排出する事業者に対し、「温室効果ガス排出削減計画等提出・公表制度」により、温室効果ガス排出量削減目標や具体的な取組の報告を求め、それを公表しています。さらに、県内事業者が、温室効果ガスを持続的に削減するための環境マネジメントシステムである「環境GS(ぐんまスタンダード)認定制度」を通じて、地球温暖化防止に配慮した事業活動の普及を図ることとしています。
また、マイカー利用から鉄道やバスなど公共交通利用へと転換することで二酸化炭素排出量の削減につながることから、パークアンドライド駐車場整備など鉄道利用を促すための緊急対策を取りまとめた“利用アクションプログラム”策定や、都市間を結ぶ新たな移動手段(BRT:バス高速輸送システム)の導入検討などに取り組んでいきたいと考えています。
このほか、ごみの減量化などの省資源化に関する取組や、「スマートムーブ(エコドライブ、公共交通利用など)」、高校通学時の公共交通利用を促進するためのリーフレット「エコ通学のススメ」の配布などの施策を通じて、一層の県民意識の向上に取り組みます。

(2)再生可能エネルギー等の普及拡大

再生可能エネルギーを普及拡大するためには、地域の自然資源を活用し、地域で必要とするエネルギーを地域で確保する自立・分散型エネルギー社会へ遷移すること、すなわち「地域におけるエネルギーの地産地消」を進めることが必要です。
太陽光発電では、昼間に得られた電力を、夜間や天候不良時にも使用できるようになると、電気の地産地消が進みます。そこで注目されるのが、蓄電池の活用です。
蓄電池は、小さいものでスマートフォンやパソコン、大きいもので自動車や工場設備など、生活の様々な場面で活用されています。蓄電池を家庭に設置すれば、自宅の太陽光発電電力を夜間だけでなく、停電などの緊急時にも使用することが可能となります。
例えば、「V2H(Vehicle to Home)」と呼ばれる仕組みでは、電気自動車などに搭載されている蓄電池を自動車の走行用の充電に用いるだけでなく、自動車から家庭に電力を供給することが可能になります。現在、蓄電池は、性能向上や技術革新が進んでおり、今後その有効性がさらに高まることが予測され、温暖化対策に向けた新たな活用法としても期待されます。
一方、太陽光発電については、設備の設置に伴い自然環境や生活環境に影響を及ぼすおそれもあることから、発電事業者による適切な事業実施のための自主的な取組を促し、防災、環境保全、景観保全等の面から太陽光発電施設と地域との調和を図ることができるよう取組を進めます。
県では引き続き、太陽光発電をはじめ小水力発電やバイオマス発電など、地域の実情を考慮しながら、再生可能エネルギーの導入を推進していくこととしています。

(3)気候変動への適応

地球温暖化に伴う気候変動による影響を最小化あるいは回避し、県民の生命を将来にわたり守るためには、多様な関係者の連携・協働のもと、持続可能な社会の構築に取り組むことが重要です。
環境省においては、2017(平成29)年度から3か年の計画で、農林水産省・国土交通省と連携し、「地域適応コンソーシアム事業」が実施されています。この事業では、各地域のニーズに沿った気候変動影響に関する情報の収集・整理や具体的な適応策の検討を進めることとしており、本県では、2018(平成30)年度から2か年の計画で、気候変動による高山・亜高山生態系への影響調査が実施されています。
県では、地域適応コンソーシアム事業で得られた知見等を踏まえつつ、農業や林業などをはじめ様々な分野における気候変動による影響を調査するなどし、これを踏まえて適応策を検討します。

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