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吾妻川の水質(ヒ素)についてお答えします

更新日:2021年4月1日 印刷ページ表示

 ヒ素は自然界に広く分布し、火山の岩盤や温泉水に多く含まれているものです。国土交通省では、草津白根火山周辺を起源とする吾妻川支川で水質観測を実施していますが、湯川や大沢川のヒ素濃度の観測結果は、他の河川と比べ高い値を示しています。これは、ヒ素が自然由来のものであることを示すものです。

 しかし、国土交通省及び群馬県が湯川や大沢川などが合流する吾妻川本川で実施している水質調査結果では、ヒ素濃度は環境基準を満たしています。理由については、品木ダムでヒ素が堆積物と一緒に沈殿していることや、吾妻川の水と合流し希釈されていることなどが考えられます。

 現在、利根川と合流する吾妻川の水は『安全できれいな水』と判断できますが、県民や下流都県の方が抱くヒ素に関する疑問について、以下で詳しくお答えします。

1.吾妻川を流れる水のヒ素濃度は環境基準を満たしているのでしょうか?

 群馬県が監視している地点(吾妻川監視地点:新戸橋、吾妻橋)では、環境基準を満たしています。また、吾妻川と合流してから千代田町の利根大堰までの利根川の水質測定結果についても、すべての測定地点(9地点)でヒ素濃度は環境基準を満たしています。これらの測定データは群馬県の環境(常時監視・測定データ集)でご覧になれます。

環境基準点位置図画像

平成29年度及び平成30年度水質測定結果(年平均)…群馬県実施
区分

環境基準値

吾妻川上流(新戸橋)

吾妻川下流(吾妻橋)

(平成29年度)ヒ素濃度(ミリグラム/リットル)

0.01以下

0.005

0.0056

(平成30年度)ヒ素濃度(ミリグラム/リットル)

0.01以下

0.005未満

0.0054

 ※上記2地点では、毎月1回(年間12回)測定していますが、毎月の測定値においても環境基準値を超過した月はありません。(平成29年度及び平成30年度)

 また、国土交通省八ッ場ダム工事事務所の調査結果でも、吾妻川本川の与喜屋、滝見橋(ダムサイト)、岩島、原町、村上地点において環境基準を満たしています。(「吾妻川に関する水質調査データ」(国土交通省八ッ場ダム工事事務所ホームページ)<外部リンク>

平成29年度及び平成30年度水質測定結果(年平均)…群馬県作成(出典:国土交通省)
区分

環境基準値

与喜屋

岩島

村上

(平成29年度)ヒ素濃度(ミリグラム/リットル)

0.01以下

0.004

0.006

0.008

(平成30年度)ヒ素濃度(ミリグラム/リットル)

0.01以下

0.003

0.007

0.004

 なお、品木ダム中和工場付近(湯川・谷沢川・大沢川)の水質測定結果は、品木ダム水質管理所ホームページ<外部リンク>で公表されています。


 環境基準は、人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで「維持されることが望ましい基準」であり、行政上の政策目標です。

環境基本法

 第三節 環境基準

 第一六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。

一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府
二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
 イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長
 ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事
3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。

2.吾妻川の水はきれいな水なのでしょうか?

 河川の一般的な汚れの指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)では、吾妻川上流で0.5ミリグラム/リットル、吾妻川下流では0.7ミリグラム/リットル(平成30年度測定値)であるため、この指標で評価した場合、『きれいな水』といえます。

3.吾妻川で上水道の取水はしているのでしょうか?

 水道水源として取水している場所は、吾妻川にはありません。

 吾妻川からの水は渋川市で利根川と合流し、県内で水道水源として取水している場所は、さらに下流の邑楽郡千代田町になります。

4.飲料水として問題はないのでしょうか?

 水道水は、水質基準(ヒ素及びその化合物は0.01ミリグラム/リットル以下)に適合するものでなければならず、水道法により、水道事業体等に水質検査の義務が課されています。水道事業体の平成30年度の水質検査結果では、原水のヒ素濃度は0.001ミリグラム/リットル未満(検出限界以下)ですので、水質基準に適合した安全な水です。

5.ヒ素を含んだ水をどの程度飲むと人体に影響があるのでしょうか?

 ヒ素の毒性には、大量に摂取することにより急激な中毒症状を発現する『急性毒性』と長期間にわたって繰り返し摂取することにより徐々に生じる『慢性毒性』があります。人体に影響があるとされる摂取量は下記のとおりです。

人体に影響があるとされる摂取量
区分

摂取量

急性毒性

70~200ミリグラム

慢性毒性

3~6ミリグラム/リットル

(出典:日本環境管理学会『水道水質基準ガイドブック(2004)』より引用)

 水道水については水質基準に基づき安全性が確保されているため、人体への影響は考えられません。

 なお、急性中毒を発現するヒ素摂取量を水質基準の上限値(0.01ミリグラム/リットル)のヒ素を含む水に換算すると、7,000リットル(ドラム缶35本分)~20,000リットル(ドラム缶100本分)に相当します。

6.昔、吾妻川では魚が住んでいなかったようですが、今はどうなのでしょうか?

 吾妻川は、水質が酸性のため魚類は棲息せず、かんがい用水としても利用できませんでした。さらにこの酸性水の影響は利根川にも及び、吾妻川合流地点より下流の利根川本川から取水する農業用水及び水産業用水(養鯉業等)にも多大な被害を与えていました。

 吾妻川の水質が酸性であるのは、草津白根火山周辺のごく限られた地域から流出する酸性水に起因し、特に酸性が強い湯川水系(湯川、谷沢川、大沢川)がその主因でした。

 そこで吾妻川の上流にあり、火山の影響で強い酸性となっている湯川などの水を中和して、吾妻川を蘇らせようということになり、昭和39年に世界で初めての酸性河川中和事業がスタートしました。

 現在では、吾妻川には魚などの生物が棲むようになり、下流の人々も中和された河川の水の恵みを受けて生活しています。

7.品木ダムは、どのような目的でつくられたのでしょうか?

 湯川などの強酸性の河川を中和するために、品木ダムの上流で石灰が投入されています。品木ダムは、酸と石灰の化学反応を促進させること及び反応によって生じる中和生成物(硫酸カルシウムや塩化カルシウムなど)を沈殿・貯留させることを目的としたダムです。詳しくは、品木ダム水質管理所のホームページ<外部リンク>をご覧ください。

品木ダムの写真

品木ダムの概要

 群馬県渋川市で利根川に合流する吾妻川は、草津白根山に起因する酸性河川の流入によって酸性化し、古来より魚も棲まない『死の川』と呼ばれていました。

 このため、酸性河川であった吾妻川では、鉄やコンクリートで造られた河川構造物の劣化が急速に進行し、地域経済の発展や水利用に大きな影響を与えていました。そして、その影響は利根川本流にまで及んでいました。

 そこで群馬県は、昭和32年に吾妻川総合開発事業計画を策定し、酸性河川を中和するための水質改善を行うこととしました。

 昭和38年に中和工場が完成し、昭和39年より本格的に水質改善が開始された結果、吾妻川の河川水にさらされる橋脚や護岸にコンクリートを使用することができるようになりました。そして、昭和41年3月に品木ダムが完成し、草津町の中和工場から各河川に投入される石灰乳液によって生じる中和生成物を沈殿・堆積させる機能を果たすことになりました。

 なお、昭和43年5月に品木ダムの運営管理は群馬県から国土交通省(当時、建設省)へ移管され、現在は国土交通省品木ダム水質管理所で水質改善事業(中和事業)を行っています。

水質改善の概要イメージ画像

 ※出典:国土交通省品木ダム水質管理事務所「中和事業とは」(拡大)」<外部リンク>

8.品木ダムの堆積物には、ヒ素が含まれているということですが、その濃度はどの程度なのでしょうか?

 品木ダムの堆積物に含まれているヒ素は、天然の成分として河川水に元々含まれていたもので、酸を中和する過程で、河川水から中和生成物と一緒に除去され沈殿したものです。詳しくは、品木ダム水質管理所のホームページ<外部リンク>をご覧ください。

9.品木ダムの堆積物は、浚渫(しゅんせつ)され、ダム近くの処分場に埋め立てられているということですが、処分場から浸出した水により、土壌が汚染される恐れはないのでしょうか?

 堆積物と浸出した水に含まれるヒ素濃度は、廃棄物処理法で定める基準値(埋立基準と排水基準)を下回っています。(※「埋立基準」は、堆積物に関する溶出試験結果に基づく基準値です。また、「排水基準」は、処分場から浸出する水に関する水質の基準値です。)

 浚渫(しゅんせつ)された堆積物の性状は、概ね、天然の土砂が6割、中和生成物が2割、未反応の石灰が2割となっています。中和のために投入される石灰は天然の鉱物であり、中和生成物についても元々の河川水に含まれていた成分と石灰が反応して生じた化合物で、天然にも存在する鉱物です。

 処分場は、ダム湖の集水域に立地していることから、処分場から浸出した水は再びダム湖に戻ります。また、ヒ素に着目すると、ダム湖に流入する湯川のヒ素濃度は、処分場からの浸出水のヒ素濃度を大幅に上回っています。以上のことから、処分場から浸出する水により土壌が汚染される心配はないと考えられます。

処分場からの浸出水に関するデータ(ヒ素濃度)

 下表に記載しているとおり、測定値は排水基準値以下です。

(品木ダム水質管理所から県への報告数値)
区分 排水基準値 平成24年4月11日

平成24年9月12日

平成25年4月17日

平成25年10月2日

A処分場(埋立終了)

0.1ミリグラム/リットル以下

0.002

0.002

0.002

0.002

B処分場(埋立終了)

0.1ミリグラム/リットル以下

0.008

0.016

0.041

0.052

C処分場(埋立中)

0.1ミリグラム/リットル以下

0.042

0.035

0.061

0.056

 ※この測定結果は、品木ダム水質管理所のホームページ<外部リンク>で公表されています。

品木ダム処分場の概要

 酸性の河川を中和するため上流で石灰が投入されており、ダム湖には中和反応で生じた中和生成物が沈殿します。また、河川や山地からは土砂も流入することから、ダムの機能を維持するため、定期的に浚渫(溜まった土砂などをさらって取り除くこと)が行われています。浚渫された堆積物は、脱水処理された後に、ダム近くの処分場へ運ばれ、セメントと混合され埋め立てられます。

品木ダム処分場の概要
設置者 国土交通省関東地方整備局(品木ダム水質管理所)
施設の種類 産業廃棄物の管理型最終処分場
埋め立てる産業廃棄物の種類(品目上の位置付け) 汚泥
規模・埋立期間
区分

面積・容量

埋立期間

A処分場

10,277平方メートル 107,000立方メートル 平成元年9月~平成7年11月(終了)

B処分場

13,143平方メートル 119,472立方メートル 平成7年4月~平成18年3月(終了)

C処分場

35,986平方メートル 326,989立方メートル 平成18年11月~埋立中

連絡先

群馬県庁 〒371-8570 前橋市大手町1-1-1

  • 健康福祉部食品・生活衛生課(水道水質管理関係)…電話027-226-2446 Fax027-220-4300 E-mail:eiseisuidou@pref.gunma.lg.jp
  • 環境森林部環境保全課(河川水質関係)…電話027-226-2835 Fax027-243-7704 E-mail:kanhozen@pref.gunma.lg.jp
  • 環境森林部廃棄物・リサイクル課(廃棄物処理関係)…電話027-226-2861 Fax027-223-7292 E-mail:haikibutsu@pref.gunma.lg.jp
  • 県土整備部河川課…電話027-226-3621 Fax027-224-1368 E-mail:kasenka@pref.gunma.lg.jp