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平成30年度群馬県感染症流行予測調査結果について

更新日:2019年4月1日 印刷ページ表示

 感染症流行予測調査事業では、定期予防接種の対象となっている疾患(ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎、風しん、麻しん、ヒトパピローマウイルス感染症、水痘、B型肝炎、インフルエンザ菌感染症、肺炎球菌感染症)について、予防接種法に基づいて、次のような調査を行っています。

  • 感受性調査(疾患に対する免疫を国民がどれくらい保有しているか:集団免疫の現状把握)
  • 感染源調査(どのような型の病原体が流行しているか、あるいは流行する可能性があるか:病原体の検索)

 これらの結果と他のいろいろな疫学的情報(地域、年齢、性別、予防接種歴など)を併せて検討し、予防接種が効果的に行われているかを確認すること、さらに長期的な視野で疾患の流行を予測することを目的としています。
 この調査では、厚生労働省、国立感染症研究所、都道府県および都道府県衛生研究所などが、それぞれの地域に住んでいる方に事業の目的を説明し、同意が得られた場合に調査に御協力いただいています。
 群馬県では今年度、感受性調査として麻しん・風しん・インフルエンザについて、感染源調査として日本脳炎(ブタ)・インフルエンザ(ブタ)について調査しました。

感受性調査

 感受性調査では、さまざまな年代の方々の血液中に含まれる抗体の量を測定し、感染症に対抗できる免疫をどれくらい保有しているか調べます。
 今年度は、麻しん・風しん・インフルエンザの3疾患について、血液中に十分な抗体を持っている人の割合(抗体保有率)の調査を行いました。なお、本調査への同意の得られた0歳から69歳の計488名を調査対象者とし、調査にあたっては、健康診断あるいは医療機関受診時に採取した血液の残余を利用しました。
 本県で実施した調査の結果は以下のとおりです。

平成30年度群馬県感染症流行予測調査(感受性調査)の概要(PDFファイル:163KB)

麻しん

  • 対象:0~69歳の488名の血清
  • 方法:ゼラチン粒子凝集法(PA法)
  • 判定:PA法では、PA抗体価が1:16以上で陽性と判定しますが、1:16~1:64では十分な発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、麻しんに対して十分な免疫があると考えられている1:128以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:PA抗体価1:128以上の抗体保有率は全体の87.1%で、昨年度(86.6%)よりやや高い保有率でした(図1)。年齢群別では、2-3歳(95.2%)、4-9歳(96.6%)、10-14歳(98.3%)や20-24歳(93.8%)で90%以上の抗体保有率を示しました。抗体価が1:16未満の抗体陰性者は全体の4.1%で、昨年度(6.0%)よりもやや低い割合でした。抗体陰性者の割合について年齢群別では、0-1歳が最も多く54.5%でした。また、2-3歳(4.8%)、15-19歳(7.3%)、25-29歳(3.8%)、40歳以上(1.0%)の4つの年齢群でも抗体陰性者が認められ、4-9歳、10-14歳、20-24歳、30-39歳では認められませんでした。

図1:麻しん結果グラフ画像

風しん

  • 対象:0~69歳の488名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法ではHI抗体価が1:8以上の場合に陽性と判定しますが、1:8及び1:16では十分な風しんの発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、抗体価が1:32以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:HI抗体価1:32以上の抗体保有率は全体の78.9%で、昨年度(69.1%)よりも高い保有率でした。(図2)年齢群別では、4-9歳(94.9%)で最も保有率が高く、10-14歳は73.3%、15-19歳は78.2%、20-24歳は75.0%でした。しかし、25-29歳(60.4%)では特に保有率が低く、1:16以下の低い抗体価の者(抗体陰性者を含む)が、39.6%という結果となりました。
    なお、抗体価が1:8未満の抗体陰性者の割合は全体の6.1%でしたが、0-3歳(25.6%)を除く全年齢群で抗体陰性者は4.2%でした。

図2:風しん結果グラフ画像

インフルエンザ

  • 対象:0~69歳の483名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
    インフルエンザの感受性調査では、今シーズン(2018/19シーズン)のインフルエンザ流行開始前であり、かつ当該シーズンのインフルエンザワクチン接種前に採取した血清について調査を実施しました。今年度は以下のインフルエンザウイルス4種類の抗原について調査しました。これら4抗原は、いずれも今シーズンのワクチン株として選定されている抗原です。
    A/シンガポール/GP1908/2015(H1N1)pdm09
    A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)
    B/プーケット/3073/2013[山形系統]
    B/メリーランド/15/2016[ビクトリア系統]
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合に陽性と判定されますが、インフルエンザの感染リスクを50%に抑える目安と考えられている抗体価1:40以上の対象者の割合を抗体保有率としました。また、抗体保有率60%以上を「高い」、40%以上60%未満を「比較的高い」、25%以上40%未満を「中程度」、10%以上25%未満を「比較的低い」、5%以上10%未満を「低い」、5%未満を「きわめて低い」としました。
  • 結果:A/シンガポール/GP1908/2015(H1N1)pdm09(図3)
    全体の抗体保有率は40.8%で比較的高い保有率でした。年齢群別では、10-14歳(69.0%)で最も高い保有率を示し、15-19歳(48.1%)、20-29歳(51.8%)、30-39歳(44.2%)で比較的高い保有率で、5-9歳(34.7%)、40-49歳(30.0%)、60歳以上(36.0%)で中程度の保有率でした。最も低い保有率を示したのは0-4歳(5.9%)で、次いで50-59歳(22.9%)であり、比較的低い保有率でした。

図3:インフルエンザA/シンガポール/GP1908/2015(H1N1)pdm09結果グラフ画像

  • 結果:A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)(図4)
    全体の全体の抗体保有率は44.1%で、比較的高い保有率でした。年齢群別でみると10-14歳(81.0%)、15-19歳(68.5%)の2つの年齢群で高い保有率でした。また、5-9歳(49.0%)、20-29歳(40.0%)、40-49歳(45.0%)で比較的高い保有率でした。一方で50-59歳(22.9%)では比較的低い保有率、0-4歳(5.9%)では低い保有率を示しており、年齢群によって抗体保有率のばらつきが見られました。

図4:インフルエンザA/シンガポールINFIMH-16-0019/2016(H3N2)結果グラフ画像

  • 結果:B/プーケット/3073/2013[山形系統](図5)
    全体の抗体保有率は51.1%で、比較的高い保有率でした。年齢群別では20-29歳(81.2%)、30-39歳(61.6%)、50-59歳(62.9%)が高い保有率で、10-14歳(48.3%)、15-19歳(48.1%)、40-49歳(50.0%)、60歳以上(44.0%)が比較的高い保有率を示しました。その一方で0-4歳(5.9%)、は比較的低い保有率となり、こちらでも年齢群別に差が見られました。

図5:インフルエンザB/プーケット/3073/2013[山形系統]結果グラフ画像

  • 結果:B/メリーランド/15/2016[ビクトリア系統](図6)
    全体の抗体保有率は18.4%で4抗原の中で最も低い保有率でした。年齢群別では40-49歳(50.0%)で比較的高い保有率、50-59歳(34.3%)で中程度の保有率でした。一方、10-14歳(24.1%)、15-19歳(20.4%)、30-39歳(23.3%)、60歳以上(16.0%)で比較的低い保有率を示しており、20-29歳(8.2%)では低い保有率、0-4歳(0%)、5-9歳(2.0%)ではきわめて低い保有率でした。

図6:インフルエンザB/メリーランド/15/2016[ビクトリア系統]結果グラフ画像

感染源調査

 感染源調査では、人や動物の体中あるいは環境中に病原体(感染症の原因)が存在しているか、存在している場合にはどのような種類かを調べます。
 今年度は、県内産のブタを対象に日本脳炎・インフルエンザの2疾患について、調査を行いました。
 本県で実施した調査の結果については以下のとおりです。

日本脳炎(ブタ)

 日本脳炎とは、主にコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し、その後ヒトを刺すことによって起こる感染症です。ヒトが発症した場合は、重篤な急性脳症を起こすこともあります。
 日本脳炎の抗体価が高い場合は、そのブタが日本脳炎に感染している可能性が高いと考えられます。全体のブタの抗体保有率が上昇している場合、感染したブタを蚊が吸血し媒介することによって、ヒトに感染するリスクが高くなります。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計80頭の血清
  • 調査期間:平成30年7月13日から9月28日まで(計8回)
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合を陽性と判定し、さらに1:40以上の場合には2-メルカプトエタノール(2-ME)処理をします。なお、2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられます。
  • 結果:80頭について調査を実施したところ、HI抗体価1:10以上を示したブタは3頭(3.8%)でした。なお、1:40以上のブタは確認されませんでした。(表1)
表1 ブタの日本脳炎ウイルスHI抗体・2-ME感受性抗体保有状況
採血日 頭数 HI抗体価 2-ME感受性抗体※注2
<10 10 20 40 80 160 320 640≦ 陽性数※注1 抗体陽性率 処理数 陽性数 抗体陽性率
7月13日 10 10               0 0.0%      
7月27日 10 8 2             2 20.0%      
8月10日 10 10               0 0.0%      
8月17日 10 10               0 0.0%      
8月24日 10 10               0 0.0%      
9月7日 10 10               0 0.0%      
9月13日 10 9 1             1 10.0%      
9月28日 10 10               0 0.0%      
合計 80                 3 3.8% 0 0 0.0%

※注1 抗体価1:10以上を陽性とする。
※注2 2-メルカプトエタノール(2-ME)処理は、HI抗体価1:40以上で実施する。2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられる。2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して3管(8倍)以上低かった場合を陽性、2管(4倍)低かった場合を疑陽性、不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定する。

インフルエンザ(ブタ)

 ブタは、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの両方に感染することがあり、ブタの体内でウイルスが変異すると新しいインフルエンザウイルスが発生する可能性があります。そこで、新たなインフルエンザウイルスの出現監視を目的として調査を実施しています。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計100頭の鼻腔拭い液
  • 調査期間:平成30年11月から平成31年2月まで(計5回)
  • 方法:細胞培養法
  • 判定:ウイルスが細胞で分離された場合には、ウイルス同定検査を実施します。
  • 結果:平成31年1月に採取した1検体から、インフルエンザウイルスが分離されました。国立感染症研究所での精査の結果、インフルエンザウイルスA型(H1N2亜型)と同定されました。

謝辞

 感受性調査の実施にあたり、調査へ同意し検体を御提供いただいた0~69歳の488名の対象者の皆様、及び検体収集に御尽力いただいた各学校の先生方、桐生厚生総合病院、地域医療機能推進機構群馬中央病院、国立病院機構高崎総合医療センター、前橋赤十字病院、県立小児医療センター、公益財団法人群馬県健康づくり財団、その他各関係機関の皆様に厚く御礼申し上げます。
 また、感染源調査の実施にあたり、ブタの検体採取に御協力いただいた株式会社群馬県食肉卸売市場及び群馬県食肉衛生検査所の皆様に深謝致します。

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