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水試だより48号

更新日:2016年5月1日 印刷ページ表示

【巻頭】群馬県水産業の発展に向けた水産試験場の取り組み

水産試験場 場長 重田 英男

場長の写真

場長 重田 英男

このたび、水産試験場長として着任いたしました重田と申します。皆様のご指導、ご協力をいただきまして、職責を果たしてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
水産試験場は、県内水産業の振興を図るため昭和5年に設置され、今日に至るまで、研究員が日々努力を重ねてまいりました。近年においては、「ギンヒカリ」をはじめとしたマス類の育種、アユ漁獲量の復活を目指した優良種苗の供給、不漁原因の究明、放射性物質の影響等の研究等に取り組んでいるところです。
内水面養殖業では、養鯉、養鱒、および養鮎に関する研究を行い、特にマス類の育種に関しては、大型食用ニジマスとして3年成熟系を選抜し、「ギンヒカリ」として種苗供給を行っています。ぐんまのブランド魚としての認知度をあげ、徐々に生産が拡大しています。さらに、第2のぐんまブランド魚として、系統間の交配により新たに遊漁用ニジマス、「ハコスチ」を作出しました。引きが強く釣りに適した特徴があります。近いうちに河川や管理釣り場で多くの人が楽しめるよう、普及拡大につとめてまいります。
次に、河川湖沼漁業では、「県の魚」アユ、渓流魚のイワナ、ヤマメ、さらにワカサギの増殖に取り組むとともに、ヤリタナゴの保護や外来種のコクチバス、カワウの対策などに取り組んでいるところです。
アユの冷水病については、冷水病検査技術を確立し防疫体制を構築するとともに、漁獲量の回復に向けて、本県河川に適した系統のアユの優良種苗の安定的供給、また、イワナ、アユの効果的な増殖方法を提案するとともに、ワカサギのふ化技術の改良等により資源の安定化に繋げたいと考えています。このためにはカワウやコクチバス対策も重要であり。カワウについては、鳥獣被害対策支援センターと連携し、効果的な水際における駆除技術の開発に取り組みます。
継続的な環境問題として、放射性物質対策がありますが、水産試験場では、放射性物質の動態解明に向けて、群馬大学、国立環境研究所等と共同で、魚類を中心とした水圏生態系における放射性物質に関する調査手法について検討を進めています。
その他にも課題はたくさんありますが、群馬県の河川、湖沼がたくさんの遊漁者で賑わえるよう、水産試験場職員が一丸となり全力で取り組んでいく所存であります。皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

【特集】ハコスチ実証試験(2016年1月8日付けで商標登録されました)

はじめに

飼育しやすくヒレが欠損しにくい系統に、引きが強くて姿形のきれいな系統を交配し、新たに遊漁用ニジマスを作出しました。作出魚は、「ハコスチ」の名称にて2016年1月8日付けで商標登録されました。この魚について、食用対象のギンヒカリに続く遊漁を対象とした第2のブランド魚としての普及をめざし、県内の民間管理釣り場で釣獲時の感想をとりまとめた実証試験を2回行いました。

アンカータグで標識したハコスチ写真
写真 アンカータグで標識したハコスチ

材料および方法

 第1回の試験は、2014年4月25日、アンカ-タグ(写真)で標識した500グラムサイズのハコスチ490尾(平均体重:577グラム)を民間管理釣り場に放流しました。その直後から実際に釣った時の印象についてアンケートを行い、47名から回答を得ました。第2回の試験は、2014年7月11日、1キログラムサイズのハコスチ445尾(平均体重:988グラム)を用いて、前回と同様な方法で37名から回答を得ました。
回答者の釣獲方法は、ルア-(第1回77%、第2回83%)とフライ(第1回23%、第2回17%)でルア-が多く、また多くが男性(第1回96%、第2回92%)であり、釣り歴も1年以上が多く(第1回91%、第2回82%)、年齢は10代から60代以上まで多岐にわたっていました。

試験結果から

 引きの強さについては、「良い」が500グラムサイズで89%、1キログラムサイズで87%あり、強い引きの強さを示す結果(図)で、「良く引いて、気持ちのいいほど走ってくれた」との感想もありました。
見た目の良さについては、「良い」が500グラムサイズで70%、1キログラムサイズで72%でした。「形がスマ-トでかっこが良い」との感想が聞かれました。
ヒレの形状については、「良い」が500グラムサイズで68%、1キログラムサイズで70%でした。姿形についても良好な結果を得られました。
かかりやすさについては、「良い」が500グラムサイズで58%、1キログラムサイズで49%であり比較的釣れやすいとの結果となりました。
遊漁者から、「走りかた、首の振り方がひと味ちがう」「刺身で食べたがおいしかった」などの感想も聞くことができ、また最後に、この魚について、「是非また釣ってみたい」が500グラムサイズで89%、1キログラムサイズで78%と好評を得たことから、「ハコスチ」として、普及に繋がる手応えを感じました。なお、その後に行った試験的な河川放流も良い結果が得られており、今後は安定した種苗供給を目指したいと考えています。
(川場養魚センタ- 松岡栄一)

アンケート調査結果の画像 
図 アンケート調査結果

【水産行政から】アメリカナマズの早期発見と被害対策に向けて

チャネルキャットフィッシュ(別名:アメリカナマズ)は、食用を目的として1971年にアメリカから国内に移入され、一部が観賞用でも流通していました。本県では1983年に多々良沼における幼魚の採捕記録が最初です。本種はその後谷田川、渡良瀬遊水地、城沼、烏川、鏑川でも採捕記録があります。本種は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」により、運搬、放流、飼育等が禁止されている「特定外来生物」に指定されています。

基本情報

  • 分類:ナマズ目イクタルルス科
  • 学名:Ictalurus punctatus
  • 英名:Channel catfish
  • 和名:チャネルキャットフィッシュ
  • 別名:アメリカナマズ
  • 原産地:北アメリカ
  • 特徴:大型個体では体色が黒ずみ斑点も不明瞭になる。口ヒゲは4対8本、体長1メートル、体重10キログラムに及ぶ(在来ナマズの口ヒゲは2対4本)。

生態的特徴

湖沼と河川の流れが緩やかで、水底が砂泥質の場所を好んで生息します。生存可能水温は1~35度(成長適水温28~30度)であり、食性は雑食性(動物プランクトン、エビ類、魚類、魚卵、死魚、ミミズ類、昆虫類)であり、体サイズに応じて捕食し易いものを利用します。
霞ヶ浦では3~4年(体長40センチメートル程度)で成熟し、5~7月(水温24度以上)、窪地や障害物の近くに産卵床を作り雄が卵を守ります。有用水産生物の捕食、肉食性の在来魚(ナマズ、ギバチ、ウナギ等)との競合の他、鋭い棘による怪我、漁網や漁獲物の損傷など、深刻な被害を及ぼします。

アメリカナマズの写真
写真 館林市史より

現状と課題

 本種は県東部から、現在では中部にも侵入しており、冷水域でも生息可能で、分布がさらに拡大することが危惧されています。現状では県内の生息情報等が十分でないことに加え、特に河川での生態はほとんど調査されておらず、駆除法も未だに確立していません。

対応

 本種を採捕したときには、その場で蚕糸園芸課や水産試験場に情報をお寄せください。また、特定外来生物であるため、生きたままでの移動、飼育は禁止されていますのでご注意ください。

 (蚕糸園芸課水産係 神澤裕平)

【試験研究から】アユ冷水病の伝播経路の解明

はじめに

群馬県ではアユ冷水病防疫対策指針(群馬県版)に基づき、冷水病の保菌検査で陰性を確認したアユ種苗のみを扱っていますが、アユ冷水病は未だに河川で発生してい

ます。そこで、アユ冷水病の伝播経路を解明するために、放流種苗、おとり用アユ種苗および河川生息魚の保菌状況を調査しました。

材料および方法

1 調査方法

 神流川を調査河川に選定し、2015年4月から2016年2月まで調査しました。河川生息魚は電気ショッカー等を用いて毎月採捕し、神流湖で自然繁殖が確認されているアユ(以下「神流湖産アユ」)は稚魚期に神流湖、遡上期に神流川で採捕しました。放流種苗は放流時、おとり用アユ種苗は入荷時に採取し、河川の病魚・死亡魚は適宜採取しました。

河川生息魚の採捕の写真
写真 河川生息魚の採捕

2 検査方法

 検査はPCR法と培養法で行い、検査部位は鰓・腎臓・病変部を用いました。陽性を確認した検体は、PCR-RFLP法を用いて遺伝子型を識別し、その遺伝子型を組合わせて16種類(1~16)に分類しました。

結果および考察

放流種苗(アユ、ヤマメ、ウグイ)とおとり用アユ種苗は全て陰性を確認しました。河川生息魚は16魚種(アユ、ヤマメ、イワナ、ニジマス、ニゴイ、ウグイ、オイカワ、アブラハヤ、カワムツ、カマツカ、カジカ、ギバチ、ヨシノボリ、ドジョウ、シマドジョウ、ワカサギ)の993尾を検査したところ、8~10月に採捕したアユ、9月に採捕したドジョウで陽性を確認しました。神流湖産アユは4、5、7月に採捕した検体で陽性を確認し、河川で採取した死亡アユも陽性を確認しました。

 PCR-RFLP法による分析では1.3.5.6.7.11.15の7種類に分類できました(表)。神流湖産アユのタイプ5は河川死亡アユのタイプと一致したことから、感染源の可能性が高いと推察されました。また、9月には複数のタイプが確認され、これらは釣り人等により流域外から感染源が持ち込まれた可能性があります。なお、アユで確認されたタイプ15はドジョウでも確認され、水平感染が疑われました。

 神流湖産アユが感染源の一因となる可能性から、今後も継続的に保菌状況を確認するとともに、保菌タイプに対する耐性アユを放流し、被害軽減効果を検討することが必要と考えています。

表 陽性検体の遺伝子型識別結果画像
表 陽性検体の遺伝子型識別結果

(水産環境係 新井肇)

平成28年度職員の配置

  • 場長 重田英男
  • 次長(総務係長)戸塚正幸
  • 主席研究員 久下敏宏
  • 総務係 係長  戸塚正幸(次長兼務)、富山摂子、青柳久仁子
  • 水産環境係 係長 新井肇、鈴木究真、湯浅由美、渡辺峻
  • 生産技術係 係長 田中英樹、垣田誉志史、清水延浩、鈴木紘子
  • 川場養魚センターセンター長松岡栄一、松原利光、星野勝弘、山下耕憲

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