リポータートレードマーク(ゆうまちゃん)群馬県民リポーターのページ

リポーター番号19 八田信江さん(伊勢崎市)のページ14


◇ 夢の卵と向き合う建築家たち/女子中学生の職場体験から(8月26日 伊勢崎市)

女子中学生の職場体験
古い建物のもつ良さを生かした永井さんの仕事場
これまでに調査した市内の古い建築物について学ぶ
まちを歩いて丹念にスケッチした歴史ある建物
商店主から名物の話をきき、手作りの技にふれるふたり
まち歩きをする里保さん、芽久美さん、永井さん(右から)

 ふたりの女子中学生が、夏休みも終盤の8月下旬、永井福二さんの設計工房福(伊勢崎市大手町)に職場体験にやってきた。市立第三中学校2年の矢島里保さん、石原芽久美さんだ。設計の仕事や建築物に魅力を感じているふたりが、ここで体験したのは市街地の「散策マップ」制作の現場だった。それはふたりにとって、「夢」の扉を開く冒険でもあった。
栗原さんの説明で明治22年開業の伊勢崎駅を見学
 永井さんは「いせさき街並み研究会」(栗原昭矩代表)のメンバー。建築家たちが集まって、地域性の再生をテーマに、古い建物や地域文化財などに目を向け、その調査・再生・保存活用に心を砕いている。「散策マップ」は9月8日、伊勢崎市で開かれる県博物館連絡協議会の研修会に、協力するためのもの。博物館・美術館の関係者が、研修の一環として伊勢崎のまち歩きをする際に、資料として提供する。

 里保さんと芽久美さんは、このマップに盛り込まれる食事・みやげ処の取材と、歴史・文化スポットのスケッチをお手伝い。名残惜しげな残暑の日差しのなか、永井さんとともにまちなかを歩き、店の沿革や名物を店主にたずねては、メモを作った。そして永井さんから習いたての、美しいポーズでカメラを構える。と、大人たちは皆いい表情を向けてくれた。さらに栗原代表の解説で、歴史ある建築物を見学。古いものがもつ穏やかでなつかしい趣が、少女たちの表情をきらめかせていく。

 そのひとつがJR伊勢崎駅。明治22年に建てられ、昭和初期に増改築された駅舎には、貴賓室があったといわれる。鉄道は当時の主な交通手段。列車で移動する政治家などのために、主要駅はそうした備えをしたという。
 チョコレート色の意匠を施したレトロだがモダンな階段を上りつめると、2階は、白い漆喰の天井に浮き彫りの装飾、木製の大きな窓枠にも手仕事の跡が見られる。いまは別の用途に使われているが、洋館ふうの優雅さは貴賓室の面影をとどめていた。忙しく人が流れていく駅。停滞することがない鉄道の、その駅舎に、70年も時間の滞った空間がひそやかにあった。そのことに感動するという栗原さんの説明に、ふたりは撮影にメモに力がこもる。
 
 情報集めを終えた8月26日、いよいよマップの編集作業。永井さんのアドバイスでメモとスケッチを整理する。訪ねた店舗は和菓子や漬物、もんじゃの店など17軒。どこにもがんこなまでに、こだわりがある。「伝統を誇りにするひとが大勢いるのを知って、新しい体験をしました」と、芽久美さん。実はふたりとも和菓子にはなじみがなかった。今回初めて、郷土にも誇れる伝統の味があることを知ったという。そしてめぐった名所は14か所。「車で通り過ぎるだけでは気づなかかったこと、古いものがいろいろ残っているのを発見しました」と、里保さん。歩いた距離はデジタルの画像よりも鮮やかに心に焼きついた。
 こうして中学生の視点で切り取られたまちの風景は、永井さんたちが描き上げた市街図のなかに散りばめられる。ふたりが丹念に描き込んだ建物のスケッチ1枚1枚に、温かな目を向ける建築家たちは、若い視線がとらえた課題もまたまちづくりに反映しなければと考えている。
「小学生のとき家を増築しました。建築士さんの仕事を間近に見て、いいなぁと憧れて」
「建物はひとつひとつ大きさも形も違い、見るたびに圧倒されます」というふたり。彼女たちの夢の卵は、将来どんな翼を生やすのだろうか。築100年以上、天然木の天井や千本格子が美しい古い商家を、モダンにアレンジした永井さんの仕事場は、夏だというのにクーラーなしでも心地いい。工房に通いつめた4日間、ふたりは、人と自然が寄り添って暮らした時代の空気も体感したのだった。


八田信江さんのこれまでのリポート

◇ 七夕茶会「梶の葉に想いをこめて」(2005年7月16日 伊勢崎市)
◇ 「世界遺産ミーティング・イン・伊勢崎」に参加して(2005年7月6日 伊勢崎市)
◇ 「女の自立 男の自立」落合恵子さんの講演より(2005年6月26日 伊勢崎市)
◇ 座して見る花菖蒲も風流/旧秋元別邸で「花菖蒲お座敷鑑賞会」(2005年6月21日 館林市)
◇ 古楽器「クラヴィコード」の音色、ご存知ですか?(2005年5月28日 太田市)
◇ 豪農屋敷で「能に親しむつどい」(2005年5月15日 伊勢崎市)
◇ 心を澄ませて香りを聞く/相川考古館で香遊び(2005年5月5日 伊勢崎市)
◇ 春の花レポート伊勢崎編(2005年4月27日 伊勢崎市)
◇ 明治の洋館、市民の集いの場に(2005年4月23日 伊勢崎市)
◇ 上州の地酒が勢ぞろい、「群馬のお酒フェスタ」(2005年4月22日 伊勢崎市)
◇ 伝統文化、次の世代へ/伊勢崎茶道会が大茶会(2005年4月3日 伊勢崎市)
◇ 揺れる明かりのなかで、夜の茶会(2005年3月26日 桐生市)
◇ 骨董市は現代人のオアシス(2004年6月5日 桐生市)


県民リポーターのインデックスページへもどる / 県ホームページへもどる