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リポーター番号27 としゆき(高橋俊之さん・渋川市)のページ36
◇ ボールドウインの汽笛が聞こえる(1月24日 伊勢崎市・沼田市)
伊勢崎市・華蔵寺公園の大観覧車の下で、豆汽車「ボールドウイン号」を見つけて、沼田市利根町の林野庁・森林技術総合研修所林業機械化センター(川添峰夫所長)に保存されている、森林鉄道の蒸気機関車「ボールドウイン3号」を思い出した。
1921年(大正10)から58年(昭和33)までの36年間、北海道・北見地方の置戸(おけと)営林署で林業機械化の先駆けとして原生林の木材を運搬し、地元の生活の足として親しまれたボールドウイン。地元関係者が別れに際して発行した記念誌から、次代に託す熱いメッセージが伝わってきた。
1919(大正8)年に米国視察中の道庁の技師が、サトウキビの運搬に使われていたボールドウイン社製の蒸気機関車に着目。それまで馬曳(ひ)きや河川の流送に頼っていた木材輸送を近代化して、収益を北海道開発に投入しようと導入した。愛称「カボチャ」の由来でもある煙突は、火の粉を撒(ま)き散らして山火事が起きぬよう、煙突内に渦の流れを発生させ、火の粉を下に落とす構造になっている。
置戸森林鉄道は、本支線合わせて77.6キロ。伐採現場から貯木場まで幾筋も布設した鉄路を、エゾマツ、トドマツ、カツラ、センノキ(ハリギリ)などの丸太を満載した運搬車を引いて輸送。ボールドウインはマキを燃料に、「ピーピー」と甲高く、可愛(かわい)らしい汽笛を鳴らし、ごう音を響かせて走り続けた。
何しろ置戸駅から30キロ、40キロ以上の山奥から運材するが、20両に木材を満載して、しかもマキを燃料としてどこにあの力があるのかと思われるくらいだった。山へ上る時は前向き、下る時は後ろ向きで、その格好がおもしろかった。
仕事以外でも、「カボチャ」の世話になることが多く、置戸の町から米、味噌、酒、雑貨を山奥の危険な谷間まで運んでもらった。自動車は一台もなかったので大変有難く、一層の愛着を感じます。
緑の大原始林をぬうように延々と丸太を積んで走る林鉄のごう音は山々にこだまし、特異な音色の汽笛は今もなお町民の心底にのこされている。
1922年(大正11)の大水害で全線の橋がほとんど流されたことがあった。冬輸送の途中大雪にあい、立ち往生して一夜を過ごしたこともありました。町へ出ても乗務員はハバがきき、町のチンピラ連中とけんかする者もいて苦労しました。
5月を迎えると、毎日飯場前の線路に出て「カボチャ」の来る日を待つ。今日か明日かと仕事も手につかぬ有様。懐かしい「カボチャ」の汽笛を耳にすると、転げるように飛び出した線路。みな感激の万歳の声だけだった。(置戸営林署発行「官行のやまと豆汽車」)
1939年(昭和14)秋、空車20両を牽引して山土場に向かって走行中、100メートル前方の線路上に大きな熊を発見。汽笛を鳴らすと、立ち上がって「ウオー」と叫んだ後、一目散に逃げ出し笹(ささ)ヤブに入った。笹は一尺ほどなのに姿が見えない。古老から「熊が笹ヤブに入ったら狩人といえども追わない」と聞いていたので、機関車を降りて確かめることもできず、その場を後にした。
ボールドウインは運転手の乗る所に、出入り口もふさぐほどマキをびっしり積んで走った。予備のマキは運搬車の一番後ろに箱車というものを連結して積んでいった。(北見林友会発行『森林鉄道―北見地方における45年の記録』)
沼田市内の林業機械化センターで昨年、ボールドウイン復活の夢を描く市民グループが修復作業と記念イベントを開いた。川添所長は「日本の林業機械化の幕開けを象徴するボールドウインを後世に伝えたい。多くの人が修復にたずさわることで、かつて林業で栄えた根利地区の活性化につながれば」と話している。
【写真の説明】
(左上)華蔵寺公園の豆汽車
(左中)ボールドウイン3号
(左下)ボールドウイン3号のプレート
(右)森林鉄道を走る蒸気機関車(資料写真)
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