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議第5号議案(平成28年)

ぐんまの家庭教育応援条例

 子どもは豊かな個性と限りない可能性を持ってこの世に生をうける。その個性と才能は愛情あふれる家庭で育まれ、磨かれていく。
 家庭教育は全ての教育の出発点であり、子どもに基本的な生活習慣、自立心、礼儀、社会のルール等を身につけさせるとともに、心身の調和のとれた人格の完成を目指すためにも極めて重要である。
 群馬県は、古くから養蚕、製糸、織物業等が盛んであり、これらに関連する文化財が、日本遺産「かかあ天下―ぐんまの絹物語―」として国に認定されている。群馬県では絹産業などで広く活躍する女性をたたえ「かかあ天下」と呼び、「からっ風」とともに上州の名物となっている。
 このような風土の中で、群馬の子どもたちは、一生懸命に働く親や家族の姿を見ながら、親や祖父母を敬うこと、働くことの尊さを学び、たくましく育ってきた。
 いつの時代においても、子どもを大切に育てることは、家庭の責務であるが、現代では少子化、核家族化などの家族形態の多様化、地域とのつながりの希薄化などに加え、経済格差による貧困問題等、家庭を取り巻く環境は大きく変化している。
 更に、子育てに対する不安や問題を抱え、孤立化する保護者も増加しており、その結果、過保護や過干渉、放任や虐待など、家庭の教育力の低下が指摘されている。
 これまでも、行政、学校等において、家庭教育の支援のための取組が行われてきた。家庭の教育力向上のためには、ワークライフバランスへの配慮等も含め、更に充実した取組が求められており、各家庭が家庭教育の意義を改めて認識し、責任を自覚するとともに、家庭を取り巻く学校等、地域住民、地域活動団体、事業者、行政その他関係者が、各家庭の自主性を尊重しつつ、連携を図り家庭教育を支えていくことが必要である。
 ここに、各家庭が主体的に家庭教育に取り組むための環境整備に努めるとともに、家庭教育を社会全体で応援し、地域の宝である子どもたちが、将来に希望を持ち健やかに成長することをともに喜びあえる群馬県を目指して、この条例を制定する。

目的

第一条 この条例は、家庭教育の支援についての基本理念及びその実現を図るために必要な事項を定め、家庭教育への支援策を総合的に推進することにより、保護者が親として学び成長していくこと及び子どもが将来親になることに備え学ぶことを促すとともに、子どもの健全な成長のために必要な生活習慣の確立、自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図り、もって群馬の子どもたちが生涯にわたって、幸福で豊かな生活を営めることを目的とする。

定義

第二条 この条例において「家庭教育」とは、家庭において保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護するものをいう。以下同じ。)がその子どもに対して行う教育をいう。
2 この条例において「子ども」とは、おおむね十八歳以下の者をいう。
3 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項に規定する認定こども園をいう。
4 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第十条に規定する社会教育関係団体、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十条の二第一項に規定する地縁による団体その他の団体で地域的な活動を行うものをいう。

基本理念

第三条 家庭教育の支援は、保護者がその子どもの教育について第一義的責任を有するという認識の下に、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者、行政その他社会の全ての構成員が、家庭の自主性を尊重しつつ、それぞれの役割を果たすとともに、相互に協力しながら、一体的に取り組むことを旨とする。
2 家庭教育の支援は、一人一人の子どものかけがえのない個性を尊重するとともに、多様な家庭環境に配慮して行わなければならない。

県の責務

第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育の支援を目的とした体制を整備するとともに、家庭教育を支援するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項の規定により施策を策定し、及び実施しようとするときは、保護者をはじめ、市町村、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者と連携して取り組むとともに、保護者及び子どもの障がいの有無、保護者の経済状況その他の家庭の状況に配慮するものとする。

市町村との連携

第五条 県は、市町村が家庭教育を支援するための施策を策定し、又は実施しようとするときは、市町村に対して情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

保護者の役割

第六条 保護者は、子どもに愛情をもって接するとともに、幼少期において親子間での安定した愛着の形成が図られるよう努めるものとする。
2 保護者は、一人一人の子どもの個性を尊重し、子どもの健全な成長のために必要な生活習慣の確立、自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らも成長していくよう努めるものとする。

祖父母の世代の役割

第七条 祖父母の世代は、子育てに関する知恵や経験を生かし、家庭教育に対する支援や協力を行うよう努めるものとする。

学校等の役割

第八条 学校等は、基本理念にのっとり、保護者、地域住民等と連携して、子どもの健全な成長のために必要な生活習慣の確立、自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図り、子どもたち一人一人が多様な個性や能力を発揮できるよう育むことに努めるものとする。
2 学校等は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

地域住民等の役割

第九条 地域住民及び地域活動団体は、基本理念にのっとり、保護者等と連携し、地域の歴史、伝統、文化、スポーツ等の行事、学習支援活動等を通じて、子どもの健全な育成を図るとともに、家庭教育を支援するための取組を積極的に行うよう努めるものとする。
2 地域住民及び地域活動団体は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

事業者の役割

第十条 事業者は、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、基本理念にのっとり、従業員の仕事と家庭生活の両立が図られるよう必要な就業環境の整備に努めるものとする。
2 事業者は、県及び市町村が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

親としての学びの支援

第十一条 県は、親としての学び(保護者が、子どもの発達段階に応じて大切にしたい家庭教育の内容、子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援するため、その学びの方法の情報収集、研究及び普及を図るものとする。
2 県は、親としての学びの学習機会を提供するとともに、学校等、地域住民、地域活動団体その他の関係者の取組に対し支援するものとする。

親になるための学びの支援

第十二条 県は、親になるための学び(子どもが、家庭の役割、子育ての喜びや大切さその他の将来親になるために必要なことを学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援するため、その学びの方法の情報収集、研究及び普及を図るものとする。
2 県は、親になるための学びの学習機会を提供するとともに、学校等、地域住民、地域活動団体その他の関係者の取組に対し支援するものとする。

人材養成等

第十三条 県は、大学等、専門的知識を有する関係機関と連携を図り、家庭教育の支援を行う人材の養成及び資質の向上に努めるとともに、家庭教育の支援を行う関係者相互の連携を推進するものとする。

連携した活動の促進

第十四条 県は、保護者をはじめ、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者が相互に連携して取り組む家庭教育を支援するための活動の促進を図るものとする。

相談体制の充実等

第十五条 県は、家庭教育及び子育てに関する相談に応ずるため、相談体制の整備及び充実、相談窓口の周知その他の必要な施策を実施するものとする。

広報及び啓発

第十六条 県は、科学的知見に基づく家庭教育に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
2 県は、家庭教育における保護者の果たす役割及び社会の全ての構成員が家庭教育を支援することの重要性について、県民の理解を深め、かつ、意識を高めるための啓発を行うものとする。

財政上の措置

第十七条 県は、家庭教育を支援するための施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

年次報告

第十八条 知事は、毎年度、家庭教育を支援するための施策の実施状況を取りまとめ、議会に報告するとともに、公表するものとする。

附則

 この条例は、平成二十八年四月一日から施行する。

提案理由

 ぐんまの家庭教育応援条例を制定しようとするものである。