協働の現場から

丸山龍一さんの写真

丸山 龍一(まるやま りゅういち)
沼田市在住 54歳
金属加工業
よみがえれボールドウィン実行委員会 会長

鉄道模型では「ものづくり立県ぐんま 1社1技術」にも選定され、その部品は全国の鉄道ファンから注文が寄せられる。
休日にはイベントなどで、自作の鉄道模型を家族で運行し、お客さんの子どもたちと一緒に楽しんでいる。


 沼田市の林野庁・林業機械化センターに展示されている、蒸気機関車”ボールドウィン”。林業の近代化に大きく貢献した「愛くるしい」車体も85歳。老朽化が進み、今後の保管に不安を抱えていました。

 そんな状況を見かねた鉄道ファンの有志らが、自分たちの手で往年の雄姿を取り戻そうと活動しています。官の資産を民のボランティアがケアするという新たな取り組み。
 今回は、「よみがえれボールドウィン実行委員会」の丸山会長にお話を伺いました。


ボールドウィン

 ボールドウィンとは、アメリカのフィラデルフィアにある蒸気機関車メーカー「ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス社」のこと。機関車の代名詞ともいわれ、鉄道ファンにはおなじみの名前です。

ボールドウィンの全景写真 林野庁、森林技術総合研修所・林業機械化センター(川添峰夫所長)にある車両は、大正10年(1921年)に製造されたもので、北海道の置戸森林鉄道で昭和32年まで運行されていた3号機です。その後、昭和44年に沼田に移管されました。カボチャのような特徴的な煙突を持つことから「カボチャ3号」の愛称で親しまれています。

出会い

第1回修復作業が、7月23日に行われました。
作業風景の写真1
みんなで修復作業。頑固なサビと格闘中。
作業風景の写真2
子どもたちも一所懸命お手伝い

 私は、生業の金属加工で、鉄道模型の部品製作や販売もしています。もともと鉄道が好きで、本物の1/6の大きさの動く鉄道模型を作ったりしていました。今ではその部品を求めて、日本中からお客さんが来てくれます。
 今年の4月にも名古屋からのお客さんが、ボールドウィンの鉄道模型を作るから部品がほしいと来ました。長野県の木曽にもボールドウィンがあり、それを見に行く予定だとういうことでした。ここの近くにもボールドウィンがあると伝えるとぜひ見たいといい、営林署の知り合いにお願いして見せてもらうことになりました。

偶然・・・必然

 事務所にあいさつに伺うと、たまたま川添所長さんがいらして、案内をしていただけることになりました。所長さんは「林業の近代化は軌道から」と言われ、「機械化を象徴する貴重な産業遺産だが、屋外保管のため傷みがひどく、何とかしなければと苦慮している」と胸の内を告げられました。「機関車から悲鳴が聞こえて来るようだ」と。
 危機感としてはそれほどありませんでしたが、今手を入れれば何とかなるという気持ちと所長さんがそれほどまでに思っているのなら何とかしたいという気持ちもあって、鉄道ファンの手でよみがえらせたいと提案しました。私の気持ちをくんでくれたのか、所長さんも乗り気になってくれて、話がとんとん拍子に進んだのです。
 名古屋からのお客さん。そして、あのとき偶然所長さんと会わなければ、こんなに早く話はまとまらなかったと思います。

実行委員会

 修復するのにあたり、「よみがえれボールドウィン実行委員会」を立ち上げ、ボランティアを募ることにしました。
 その際に思ったのは、どうせやるからには中途半端なことはしたくないということです。参加する方に責任を持ってもらおうと、食事代や保険料など毎回2,000円を負担してもらうことにしました。

実行委員会で会計をしている奥様と一緒に  妻や準備をしている人の中には、参加者が来ないんじゃないかと心配する人もいましたが、会員数は今も増えていて70人に手が届きます。当初考えていた倍以上の人が集まってくれました。
 上は74歳から、下は小学校に上がるか上がらないかぐらいの子まで、みんな新聞記事を見て来てくれました。
 やっている人たちは、これに参加できることが喜びなんですね。みんなで協力して、最高のものを残そうと話し合いながら頑張っています。

連携

 作業内容は、汚れやサビを落として、昔のように奇麗に塗装すること。集まってくれた人たちは素人ばかりなので、きちんとした知識がありません。だから専門家に指導してもらおうと高崎の産業技術専門校にお願いに行きました。塗装科の大石先生と山田先生、そして校長先生も快諾してくれました。修復作業には毎回先生が参加し、指導してくれるんです。
 県では、産官学の連携をやっています。意味は少し違うかもしれませんが、この取り組みもその一つなのかなと思っています。
 国の財産を民がボランティアで修復し、それを官が指導する。こういうやり方も面白いんじゃないかな、群馬県ならではの取り組みなのかなと思いました。
 いろんな人たちが、それぞれの持てる力を発揮し、協力して一つのことを成し遂げる。経費削減だと言われている時代だからこそ、こういうやり方が評価されてもいいのかなと思います。

思い

 昔からの景色というか、原風景というか、やっぱりそういうものを残していきたいという気持ちがあると思うんですよ。いろいろ便利な世の中になっているけど、誰だって忘れたくないものがあると思うんですよね。
 森林鉄道はただ材木を運んでただけじゃないんです。ある地域では子どもたちを学校へ運んだりして、生活に密着していた。とにかく人との距離がとても近かったんですね。
 今回ボランティアとして参加していただいている方の中には、子どものころ乗せてもらったとか、昔はよく機関車を見ていたとか、資料を持っているとかという人もいます。
 いろんな思いのある人が集まって、形にしていくのがいいんじゃないかなと思っています。


【 いつも笑顔が絶えない丸山さん。その笑顔の中には、強い意志と責任感を感じました。それを静かに見守って、雑務をこなしている奥様。息子さんは修復作業はもとより、鉄道模型を運行する時は、いつも運転手をしてくれるそうです。家族全員で一緒に楽しみ、一緒に頑張っている、とてもいい関係だと思いました。

 丸山さんとのお話で感じたのは、人と人との出会いを大切に考え、感謝していることです。「鉄道模型に乗っている時の子どもたちの笑顔は、本当に素晴らしい。楽しんでもらいに行っているのに、逆にこちらが元気をもらったり、楽しい気持ちになるんです」と笑顔で話していたのが印象的でした。
 これからも、われわれ日本人の大切な1シーンを守るため、皆さんで頑張ってください。 】

(聞き手 萩原)


<リンク>
 「よみがえれボールドウィン実行委員会」
 参加者のホームページ
 ◇ よみがえれボールドウィン  


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