ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 総務部 > 総務課 > 令和3年度答申第7号

本文

令和3年度答申第7号

更新日:2021年11月2日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和3年3月18日付け生活扶助(移送費)支給申請却下処分(以下「本件処分」という。)の却下の理由について「また犯罪等の被害を受け、生命及び身体の危険性があり緊急的に転居が必要と判断する事ができない為」とあるが、どこをどう判断して決定したのか分からないため、本件処分の取消しを求める。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 審査請求人はうつ病等により薬物療法等を継続していることが認められるものの、主治医の意見書では病気療養の観点から転居が必要とされているものではない。また、審査請求人が、本件処分に係る申請において転居を求める理由も、病気療養を目的とするものではない。
 また、審査請求人は、自宅に出入りしている人物がいることを主張する一方で、具体的な被害があるわけではないので警察が取り合ってくれないこと、嫌がらせもいたずらも物的証拠がないことなどを話しており、さらに、処分庁が○○警察署に聴取した結果によると、審査請求人世帯について犯罪被害などの可能性の高い世帯であるとは認識していないとのことであった。
 以上のことから、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日厚生省社会局保護課長通知。以下「課長通知」という。)第7問30の「病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合であって設備構造が居住に適さないと認められる場合」又は「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合」に該当するとは認められない。
 したがって、本件処分に係る申請は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の4(1)のカにおける「被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合」に該当するとは認められず、本件処分に違法又は不当な点は認められない。
 なお、本件処分通知の「1.却下の理由」において、「なお、今後犯罪被害等が認められ、現在の住居での生活が危険と判断される場合、県外地域への転居を検討する。」とされているが、今後犯罪被害等が認められ、現在の住居での生活が危険と判断される場合の転居先については、県外地域に限定する合理的理由はない。しかし、これは、今後の可能性について言及しているに過ぎず、本件処分の直接の理由ではないことから、本件処分に影響を与えるものではない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和3年9月22日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和3年9月30日 調査・審議
 令和3年10月21日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

(1)申請は移送費としてなされているが、実際に審査請求人が求めているのは敷金、礼金等であるので、以下敷金、礼金等を必要とする場合について検討する。
(2)局長通知第7の4(1)のカにおいて、「被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合」は、一定の範囲で必要な額を認定することができると規定されている。
(3)課長通知第7問30において、「局長通知第7の4の(1)のカにいう「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、次のいずれかに該当する場合で、敷金等を必要とするときに限られるものである。」として、18要件が列挙されている。
 このうち、本件処分にかかわるものは、答12「病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合であって設備構造が居住に適さないと認められる場合」及び答18「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合」の2点である。
(4)課長通知第7問30の答12については、札幌地方裁判所平成16年11月25日判決において「「法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通達、乙イ25)問第4の30を総合すれば、転居の際の住宅扶助(法14条1号)の受給要件としては、原告に当てはめてみれば、〈1〉病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合であって、設備構造が居住に適さないと認められる場合」と示されており、当該要件に該当するのは1、病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合であって、設備構造が居住に適さないと認められる場合、又は、2、高齢者若しくは身体障害者がいる場合であって、設備構造が居住に適さないと認められる場合である。
(5)課長通知第7問30の答18については、「生活保護問答集について」(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)の第7問7-104-2において、課長通知第7問30の答18により敷金等が認定される場合として、「次のいずれかに該当するような者のうち、一時保護の施設等の他法他施策を活用出来ない特別な事情があって、かつ、配偶者暴力相談支援センターや各地方自治体における高齢者の保護、養護者に対する支援等の担当部署、警察等の関係機関からの要請があった場合やそれらの関係機関に被害相談等を行った事実がある場合で、安全確保のために転居が必要と認められる場合が考えられる。(中略)(4)犯罪被害者等基本法の規定による犯罪被害者」と示されている。

3 本件処分の妥当性について

(1)課長通知第7問30の答12「病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合であって設備構造が居住に適さないと認められる場合」に該当するかについて

 審査請求人の主治医の意見書によれば、審査請求人はうつ病等により薬物療法等を継続していることが認められる。
 しかし、事件記録によれば、審査請求人の現在の住居が、審査請求人の病気療養上著しく環境条件が悪く、設備構造が居住に適さないと認めるに足りる客観的事実は確認できない。
 以上のことから、課長通知第7問30の答12「病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合であって設備構造が居住に適さないと認められる場合」に該当するとは認められない。

(2)課長通知第7問30の答18「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合」に該当するかについて

 審査請求人は、自宅に出入りしている人物がいることを主張する一方で、具体的な被害があるわけではないので警察が取り合ってくれないこと、嫌がらせもいたずらも物的証拠がないことなどを主張している。
 また、処分庁が○○警察署に聴取した結果によると、審査請求人世帯について犯罪被害などの可能性の高い世帯であるとは認識していないとのことであった。
 さらに、審査請求人において、問答集第7問7-104-2において示されている「一時保護の施設等の他法他施策を活用出来ない特別な事情」があるとは認められない。
 以上のことから、生命及び身体の安全の確保を図るための転居が必要とされるほどの具体的な犯罪被害があるとは認められず、課長通知第7問30の答18「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合」に該当するとは認められない。

(3)結論

 以上のとおり、本件処分に係る申請は、局長通知第7の4(1)のカにおける「被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合」に該当するとは認められず、本件処分に違法又は不当な点は認められない。

(4)補足

 なお、本件処分通知の「1.却下の理由」において、「なお、今後犯罪被害等が認められ、現在の住居での生活が危険と判断される場合、県外地域への転居を検討する。」(以下「なお書き」という。)とされているが、今後犯罪被害等が認められ、現在の住居での生活が危険と判断される場合の転居先については、県外地域に限定する合理的理由はない。
 しかし、なお書きについては、今後の可能性について言及しているに過ぎず、本件処分の直接の理由ではないことから、本件処分に影響を与えるものではない。

4 その他

 上記のほか、本件処分に違法又は不当な点は見受けられない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

群馬県行政不服審査会答申集ページへ戻る群馬県行政不服審査会ページへ