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令和3年度答申第11号

更新日:2022年3月9日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和3年7月19日付けこセ第30143-36号による精神障害者保健福祉手帳に係る申請の不承認処分(以下「本件不承認処分」という。)及び同年9月17日付けこセ第30143-63号による精神障害者保健福祉手帳に係る申請の不承認処分(以下「本件再不承認処分」という。)を取り消すことを求めるものであり、その理由は次のとおりである。

  • 今まで○○年何回もほぼ同じ内容の診断書を提出して受理されたにもかかわらず今回は、2度も不受理になったため。
  • 今回の診断書には最終発作は平成○○年○○月とあるが、それは、今までとは全然違い、自分が目を覚ますと記憶障害、言語障害、半身不随で立ち上がることもできず、助けを呼ぶこともできなかった(約2日間)。その時の発作が診断書に書かれている最終発作である。それ以前は、(発作が)人前で起きたようで救急搬送され、気が付くと病院のベッドの上だった(数10回以上)。そのほか人前で数分ぐらいで治まる発作が数回あったようである。それ以外は道路上であったようで(気が付くと警察署の保護房に入れられていた。)、帰宅時には裸足で家まで歩いて帰ったこともある。
  • 現在一人暮らしなので、いつてんかん発作が発生したか分からない。知らない間に意識を失うこともあるし、就寝中やくつろいでいる時、何か突然無意識になり違和感に思うこともあったため、その時にてんかん発作が起きていたかもしれない。
  • 今後不安なのは一人暮らしで生活していく上で、1入浴中:溺死、2気温の低いところ:凍死、3気温の暑いとき:熱中症、4料理を作っている時:ガスコンロの火が衣服に燃え移り火災となり焼死及び5人気がないところ:徒歩でも十分危険(助けを呼ぶことができない)という危険がある。また、現在、診断書で自動車及び自転車の運転は禁止されているが、上記1~5は十分危険だと思うので、在宅時は玄関の鍵は開けてある。
  • 診断書には最終発作は平成○○年○○月とあるが、その他にないとは言いきれない。医師の診察の時「発作はありませんでしたか」と聞かれ、「たぶんなかったと思います」と答えているので、カルテにはてんかん発作はなく落ち着いていると記入していると思う。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 令和3年○○月○○日に、審査請求人が行った精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)第45条第4項の規定による認定の申請(以下「本件申請」という。)及び同年○○月○○日に、審査請求人が行った法第45条第1項の規定による精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(以下「本件再申請」という。)において提出された各診断書(以下「各診断書」という。)とも、主たる精神障害が症候性てんかんであることが確認でき、特に再申請書に添付した診断書においては、てんかん発作再燃の可能性は否定できないとしているものの、各診断書からは、てんかんの最終発作は平成○○年○○月であり、従たる精神障害もないことが認められることから、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」(平成7年9月12日健医発第1133号厚生省保健医療局長通知。以下「判定基準」という。)に規定されている「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」には該当せず、精神疾患(機能障害)の状態は障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 次に、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態の判定を行うと、日常生活能力の各判定では、各診断書とも、全8項目が「自発的にできる」又は「適切にできる」とされていることから、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準の運用に当たって留意すべき事項について」(平成7年9月12日付け健医精発第46号厚生省保健医療局精神保健課長通知。以下「留意事項」という。)により障害等級3級の要件を満たしていないと判断できる。しかし、「日常生活能力の程度」については、各診断書とも、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」に該当するとされており、各診断書の「上記の具体的程度、状態等」の欄では、体調不良により、てんかん発作を起こすことがあり、生活に制限を受ける。治療の継続が必要であり、自動車・自転車の運転も禁止され、公共交通機関の利用をすることを説明している旨記載があることから、留意事項によりおおむね2級程度と判断できる。
 これらを総合的に判定すると、「日常生活能力の程度」についてはおおむね2級程度であるものの、治療及び服薬によりてんかん発作は○○年以上抑えられていること及び「日常生活能力の判定」の全8項目が「自発的にできる」又は「適切にできる」であることを考慮すると、日常生活又は社会生活が制限を受けるとまではいえず、障害等級3級に該当しないと判断できる。
 また、審査請求人は、反論書により、各診断書に記載されている最終発作の年月について、事実とは異なる可能性について主張しているものの、障害等級の判定は、法第45条第2項に「申請に基づいて審査し」と規定されており、提出された診断書に基づく書面審査を行った処分庁の本件不承認処分及び本件再不承認処分について、違法又は不当な点は認められない。
 以上から、精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態を総合的に判断し、審査請求人は障害等級3級についての要件を満たしておらず、障害等級非該当と認めることができる。
 したがって、法令に基づき、医師により作成された各診断書を、処分庁が審査及び判定した本件不承認処分及び本件再不承認処分について、違法又は不当な点は認められない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和4年1月14日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和4年1月20日 調査・審議
 令和4年2月17日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件不承認処分及び本件再不承認処分に係る法令等の規定について

(1)都道府県知事は、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等を添える。)があった場合において、当該申請に基づいて審査し、申請者が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号。以下「施行令」という。)第6条に規定する精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならず(法第45条第1項及び第2項並びに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号。以下「施行規則」という。)第23条第2項)、また、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、2年ごとに、施行令第6条に規定する精神障害の状態にあることについて、都道府県知事の認定(申請に当たっては、医師の診断書等を添える。)を受けなければならないとされている(法第45条第4項及び施行規則第28条第1項)。
(2)施行令第6条に規定する精神障害の状態とは、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、障害等級1級の障害の状態として「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、障害等級2級の障害の状態として「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」、障害等級3級の障害の状態として「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」とされている(同条第3項)。
(3)障害等級の判定の具体的な基準については、国から「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」(平成7年9月12日付け健医発第1132号厚生省保健医療局長通知。以下「実施要領」という。)が発出されており、「障害等級の判定に当たっては、精神疾患(機能障害)の状態とそれに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に判定を行うものとし、その基準については、別に通知するところによる。」とされている(実施要領第2の2(2))。
(4)この実施要領を受けて、判定基準が発出され、また、この判定基準の運用について留意事項が発出されている。
(5)判定基準及び留意事項によれば、障害等級の判定は、精神疾患の存在の確認、精神疾患(機能障害)の状態の確認、能力障害(活動制限)の状態の確認、精神障害の程度の総合判定という順をおって行われることとされている(判定基準別紙の頭書)。
 てんかんの精神疾患(機能障害)の状態については、「ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状が高度であるもの」は1級と、「ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」は2級と、「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」は3級とされている(判定基準別紙の表)。
 能力障害(活動制限)の状態については、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持」、「金銭管理と買物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続や公共施設の利用」及び「趣味・娯楽等への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目について、「できない」等にいくつか該当するものは1級と、「援助なしにはできない」等にいくつか該当するものは2級と、「行うことができるがなお援助を必要とする」等にいくつか該当するものは3級とされている(判定基準別紙の表)。
 また、診断書の「3 日常生活能力の程度」欄が、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる」である場合は障害等級非該当と、「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」である場合はおおむね3級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする」である場合はおおむね2級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする」又は「精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない」である場合はおおむね1級程度とされている(留意事項別紙3(6)の表)。
(6)なお、申請者が施行令第6条に規定する精神障害の状態にあるかどうかの判定は、都道府県に設置されている法第6条第1項に規定する精神保健福祉センターに行わせるものとされ、当該判定を行う者については、原則として、法第18条第1項の精神保健指定医(以下「指定医」という。)を含めるものとされ、群馬県においては、処分庁が精神保健福祉センターの事業を行っている(実施要領第2の3(2))。

3 本件不承認処分及び本件再不承認処分の妥当性について

(1)審査請求人が障害等級に該当するかについて、判定基準及び留意事項に従って、以下検討する。
ア 精神疾患の存在の確認
 各診断書「1 病名」から、主たる精神障害として「症候性てんかん」が確認できる。また、従たる精神障害及び身体合併症はないことが確認できる。
イ 精神疾患(機能障害)の状態の確認
 各診断書「3 発病から現在までの病歴並びに治療の経過及び内容」では、昭和○○年○○月○○日交通事故にて受傷、脳挫傷の診断以降、症候性てんかんに対して治療が継続されている旨記載がある。「4 現在の病状及び状態像等」では、「(8)てんかん発作等(けいれん及び意識障害)」が該当有りとなっており、てんかん発作の発作型については「ニ:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」と、頻度については「数年に一度」と、最終発作については「H(平成)○○年○○月」との記載がある。
 また、「5 4の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」では、本件申請において提出された診断書には「両側側頭葉、右前頭葉に脳挫傷後の変化あり、発作は抗てんかん薬服用にし、H○○年○○月以降は落ち着いている」との記載があり、本件再申請において提出された診断書には「両側側頭葉、右前頭葉に脳挫傷後の変化あり、発作は抗てんかん剤内服による治療を要し、てんかん発作再燃の可能性は否定できない」との記載がある。
ウ 能力障害(活動制限)の状態の確認
 各診断書「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「1 現在の生活環境」では、在宅(単身)に該当し、「2 日常生活能力の判定」では、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」、「金銭管理と買物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続や公共施設の利用」、「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の8項目について「自発的にできる」又は「適切にできる」とされ、「3 日常生活能力の程度」では、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする」と判定されており、「上記の具体的程度、状態等」では、体調不良により、てんかん発作を起こすことがあり、生活に制限を受ける。治療の継続が必要であり、自動車・自転車の運転も禁止され、公共交通機関の利用をすることを説明している旨記載がある。
エ 精神障害の程度の総合判定
 上記(1)ア及びイを基に、審査請求人の精神疾患(機能障害)の状態についてみると、主たる精神障害として症候性てんかんが確認でき、本件再申請において提出された診断書においては、てんかん発作再燃の可能性は否定できないとしているものの、各診断書からは、てんかんの最終発作は平成○○年○○月であり、従たる精神障害もないことが認められることから、判定基準別紙の表の3級のてんかんに係る精神疾患(機能障害)の状態として規定されている「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」には該当せず、精神疾患(機能障害)の状態は障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 次に、上記(1)ウを基に、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態についてみると、各診断書「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「3 日常生活能力の程度」については、各診断書とも、留意事項別紙3(6)でおおむね2級程度とされる「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」に該当するとされているが、「2 日常生活能力の判定」では、各診断書いずれも、全8項目が「自発的にできる」又は「適切にできる」とされていることから、判定基準別紙の表の3級のてんかんに係る能力障害(活動制限)の状態として規定されている「行うことができるがなお援助を必要とする」等にいくつか該当するものには当たらない。
 これらを総合的に判断すると、各診断書「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「3 日常生活能力の程度」では、留意事項別紙3(6)でおおむね2級程度とされる項目に該当するとされているものの、治療及び服薬によりてんかん発作は○○年以上抑えられており、精神疾患(機能障害)の状態は障害等級3級の要件を満たしておらず、能力障害(活動制限)の状態についても、各診断書「精神障害者保健福祉手帳用記載欄」の「2 日常生活能力の判定」の全8項目が「自発的にできる」又は「適切にできる」であり、判定基準別紙の表の3級のてんかんに係る能力障害(活動制限)の状態に該当しないことを考慮すると、精神障害の程度の総合判定において、障害等級を非該当とした処分庁の判定が妥当性を欠くとはいえない。
(2)判定の手続について
ア 障害等級の判定の手続については、上記2(6)のとおり、実施要領の取扱いにのっとり指定医による判定が行われており、本件不承認処分及び本件再不承認処分を違法又は不当とすべき事実は認められない。
イ 審査請求人は、反論書により、各診断書に記載されている最終発作の年月について、事実とは異なる可能性について主張しているものの、障害等級の判定は、法第45条第2項に「申請に基づいて審査し」と規定されており、提出された各診断書に基づく書面審査を行った処分庁の本件不承認処分及び本件再不承認処分について、違法又は不当な点は認められない。
(3)結論
 よって、本件不承認処分及び本件再不承認処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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