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平成29年度答申第3号

更新日:2017年8月8日 印刷ページ表示

1 件名

群馬県中央児童相談所長が行った平成28年8月29日付け在宅指導措置決定処分についての審査請求

2 処分庁

群馬県中央児童相談所長

3 審査会の結論

 本件審査請求のうち、在宅指導措置の決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求める部分については審査請求人の主張には理由がないことから行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により棄却すべきものであり、児童虐待の事実確認の取消しを求める部分については不適法であることから同条第1項の規定により却下すべきものである。

4 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 平成○○年○○月○○日夜に審査請求人○○○○(以下「母」という。)が行った県が設置している相談電話窓口(以下「こどもホットライン24」という。)への電話は、処分庁への当てつけのつもりで行ったものである。当該電話をした後の行動も、児童相談所と連絡をとりながら過ごしていたのであり、子の身には全く危険がないものであった。処分庁が自らの対応の不十分さを棚に上げて、事実ではない虐待の汚名を審査請求人に着せることは到底受容できない。
 したがって、本件処分の取消しを求めるとともに、本件処分の原因として説明を受けた「虐待」の事実確認についても取消しを求める。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件処分の取消しを求める部分については理由がないから棄却することが、児童虐待の事実確認の取消しを求める部分については不適法であるから却下することが適当である。

5 審理員意見書の要旨

 本件審査請求のうち、本件処分の取消しを求める部分については、児童福祉司による指導が必要であるという処分庁の判断は妥当であり、処分庁が本件処分を行ったことについて違法又は不当な点はないことから、審査請求人の請求には理由がないので、棄却されるべきである。
 また、児童虐待の事実確認の取消しを求める部分については、児童虐待の事実確認は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しないことから、審査請求人の請求は不適法であり、却下されるべきである。

6 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

  • 平成29年6月21日 審査庁から諮問書を収受
  • 平成29年6月27日 調査・審議
  • 平成29年7月31日 調査・審議

7 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

本件審査請求に係る審理手続は適正に行われたものと認められる。

2 審査会の判断について

(1) 本件処分の取消しについて

ア 本件における法令等の規定について

(ア) 児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)において、要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならず(法第25条第1項)、通告を受けた児童相談所長は、当該要保護児童について、児童福祉司等による指導その他の法第27条の措置が必要であると認めたときは、これを知事に報告しなければならない(法第26条第1項第1号)とされている。当該通告を受けた児童相談所長は、必要があると認めるときは、同号の規定による知事への報告の措置を採るに至るまで、当該要保護児童の一時保護を行うことができる(法第33条第1項)が、当該一時保護の期間は、一時保護を開始した日から2月を超えてはならない(法第33条第3項)とされている。そして、知事は、同号の規定による報告を受けた児童について、法第27条第1項各号のいずれかの措置を採らなければならない(法第27条第1項)とされている。

(イ) 上記法第27条第1項の規定による知事の権限は、群馬県中央児童相談所長に委任されている(群馬県事務委任規則(昭和43年群馬県規則第72号)第4条第1項)。

(ウ) 児童相談所運営指針(平成2年児発133号厚生省児童家庭局通知。以下「指針」という。)において、児童福祉司指導は、複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対して行う(指針第4章第2節2(1)ア)とされている。

イ 本件処分の違法性について

 まず、本件処分に至った経緯については、平成○○年○○月○○日の夜に母からこどもホットライン24に母と子の飛び込み自殺を想起させる電話があったことを発端として、警察への援助要請及び警察からの通告を経て、同月○○日から法第33条第1項の規定により一時保護を行い、子と家庭の状況等の調査を経て同年○○月○○日付けで当該一時保護を解除するとともに本件処分を行ったというものである。本件処分について、審査請求人は、当該電話において母が子に危害を加えるような言葉を口にしたことは本心ではなく児童相談所への当てつけであり、実際には児童虐待を行っておらず、児童虐待の事実がないのにもかかわらず行われた本件処分については違法である旨主張しているが、本件処分の児童福祉司指導は、「複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対して行う」(指針第4章第2節2(1)ア)とされており、必ずしも児童虐待の事実を必要としているものではなく、同年○○月○○日夜の母の一連の言動のことやこれまでの処分庁による継続した支援の経過を踏まえれば、児童福祉司指導が必要であるという処分庁の判断は妥当であり、処分庁が本件処分を行ったことについて違法又は不当な点はない。したがって、本件審査請求のうち、本件処分の取消しを求める部分については理由がないことから棄却すべきものである。

(2) 児童虐待の事実確認の取消しについて

 行政不服審査法における不服申立ての対象は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(同法第1条第2項)」であり、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)における抗告訴訟の対象である「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と同一の規定となっている。抗告訴訟の対象について争われた最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決によれば、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、「行政庁による公権力の行使であり、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を具体的に確定する行為」であると解されているところ、審査請求人が取消しを求めている「児童虐待の事実確認」については、処分庁が当該事実確認を行ったとしても、直接審査請求人の権利義務を形成し又はその範囲を具体的に確定するものではないため、行政不服審査法における「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しない。したがって、「児童虐待の事実確認の取消し」を求めるとする請求は不適法なものであるから、本件審査請求のうち、児童虐待の事実確認の取消しを求める部分については却下すべきものである。

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