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平成30年度答申第7号

更新日:2019年2月5日 印刷ページ表示

件名

不動産取得税課税処分に対する審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

(1)審査請求人

 不動産取得税課税対象土地(以下「本件土地」という。)は「直接教育の用に供する」目的で取得したものであり、地方税法(昭和25年法律第226号。以下「法」という。)第73条の4第1項第3号の非課税規定に該当するため、処分庁の行った不動産取得税課税処分(以下「本件処分」という。)は不適切な処分であるとして、その取消しを求めるもの。
 審査請求人は、本件土地の取得に当たり、本件土地が審査請求人が設置する◯◯大学◯◯学部において取得できる◯◯の実地研修地として適格であるかについて、平成27年12月上旬に◯◯の研究員である◯◯氏に理論・文献での検討を依頼した。その後、同年12月18日付けで◯◯氏から提出された本件土地が◯◯の実地研修地として適格である旨の報告書「群馬県◯◯市◯◯町の土地取得にあたってその地質概要と◯◯研修用地としての適格性の検討」を受け、同月22日に開催された理事会後に審査請求人である学校法人及び審査請求人が設置する◯◯大学の理事長・学長等が協議の上、「直接教育の用に供する」ために本件土地を現物寄附として受け入れることを決定した。したがって、本件土地を取得した時点での使用目的により判断されるべき不動産取得税については、非課税の適用が妥当と主張する。また、本件土地の取得後に初めて開催された平成28年2月23日の審査請求人の理事会において、本件土地を「学校としては、◯◯学部の◯◯、◯◯の実習地として活用する」として、本件土地の寄附による受入れも報告しており、当理事会においても適正な手続を経ているものと主張する。そのほか、利用実績がないことをもって不動産取得税が用途非課税となる「教育のためにのみ使用されることを常態とする」ための取得に該当しないとの処分庁の主張に対し、このことは固定資産税に関する判断基準であり、本事案には当てはまらないとも主張する。

(2)審査庁

 審理員意見書のとおり、棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

  1. 不動産取得税、固定資産税及び特別土地保有税の用途非課税規定は、公共的性格を有する団体が、公益を目的とした不動産を取得又は保有する際に政策的に非課税とする点で同一の性格を持つものと認められ、各根拠条文に規定される「直接教育の用に供する」については、同様に解釈することが妥当と認められる。
  2. ◯◯資格取得のための実習も法第73条の4第1項第3号に規定する「教育」に該当するものといえる。また、平成28年2月23日に開催された審査請求人の理事会において、「学校としては、◯◯学部の◯◯、◯◯の実習地として活用する」として、本件土地の寄附受入れを報告していることから、審査請求人において本件土地を◯◯の実習地として使用する意図はあったものと見受けられる。
  3. しかしながら、審査請求人から、平成29年5月1日に法第73条の4第1項第3号の規定に該当することを証する書面として提出された、「◯◯市の山林等に関する利用計画」においては、今後の利用計画として年1回の頻度で利用することが記載されており、「学校教育の目的とする教育活動が実施されることを常態」となっているものとは認められない。
  4. 審査請求人は不動産取得税の非課税規定の適用については、「当該不動産を取得した時点での使用目的により判断されるべき」と主張しているが、大阪地方裁判所平成24年7月5日判決によれば、「当該不動産が非課税用途に現実に供されたか否か」などの「諸般の事情を踏まえて、認定されるべきもの」とされており、審査請求人の主張は採用し難い。
  5. 以上の点から、審査請求人による本件土地の取得は、法第73条の4第1項第3号の適用を受けるとは認められず、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 平成30年11月30日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 平成30年12月6日 調査・審議
 平成31年1月30日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

(1)審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

(2)審査会の判断について

ア 本件における法令等の規定について

(ア)法第73条の2第1項は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の道府県において、当該不動産の取得者に不動産取得税を課すと規定している。
(イ)群馬県県税条例(昭和25年群馬県条例第32号)第70条は、不動産取得税は、不動産の取得に対し、不動産の取得者に課すと規定している。
(ウ)法第73条の4第1項第3号は、道府県は学校法人等がその設置する学校において直接保育又は教育の用に供する不動産として使用するために取得した場合には、当該不動産の取得に対しては、不動産取得税を課すことができないと規定している。
(エ)不動産取得税の用途非課税を定めた法第73条の4第1項の適用については、「当該不動産の取得時の事情のみで取得目的を認定するとすれば、真実は当該不動産を非課税用途に用いる意思がないにもかかわらず、かかる意思があるものと仮装して、不動産取得税の課税を免れるという弊害が生じかねない」、そのため「非課税用途に供するため不動産を取得したか否かについては、当該不動産の取得に係る契約書、事業計画書、不動産の取得者の財産状況等不動産取得までに生じた事情のほか、当該不動産が非課税用途に現実に供されたか否か、仮に当該不動産が非課税用途に供されなかった場合にはその経緯や理由などの諸般の事情を踏まえて、認定されるべきもの」と解されている(大阪地方裁判所平成24年7月5日判決)。
(オ)不動産取得税と同様に、固定資産税及び特別土地保有税について、用途非課税の規定がある。法第348条第2項第9号は、固定資産税について、市町村は学校法人等がその設置する学校において直接保育又は教育の用に供する固定資産に対しては課すことができないと規定している。また、法第586条第2項第28号は、特別土地保有税について、市町村は法第348条第2項の規定の適用がある土地に対しては課すことができないと規定している。
(カ)この固定資産税及び特別土地保有税の用途非課税の規定については、「学校法人等が『直接保育及び教育の用に供する固定資産』について特別土地保有税が課されない」とされており、「『直接保育又は教育の用に供する』とは、直接保育又は教育のためにのみ使用されることを常態とするものをいい、単に教育の用に供されることがあるというだけではこれに該当しない」と解されている(神戸地方裁判所平成5年11月29日判決)。
(キ)また、固定資産税が非課税となる「直接教育の用に供する固定資産」とは、学校法人等がその設置する学校において、「学校教育の目的とする教育活動が実施されることを常態」としていることが必要で、その「活動が不断に実施されている場合に限られるものではないが、間接的又は一時的にそのような活動の用に供されることがあるというだけでは足り」ないものと解されている(東京地方裁判所平成25年2月6日判決)。

イ 法第73条の4第1項第3号の規定の適用の有無について

(ア)不動産取得税の用途非課税を定めた法第73条の4第1項第3号及び固定資産税の用途非課税を定めた法第348条第2項第9号は文言が同一であるとともに、特別土地保有税の用途非課税を定めた法第586条第2項第28号は、固定資産税の用途非課税を定めた法第348条第2項の規定の適用がある土地に対しては課すことができないと規定していることから、不動産取得税、固定資産税及び特別土地保有税の用途非課税規定の趣旨は、公共的性格を有する団体が、公益を目的とした不動産を取得又は保有する際に政策的に非課税とする点で同一であると認められる。
(イ)審査請求人は、「教育のためにのみ使用されることを常態とすることが必要」という処分庁の主張については固定資産税に関する判断基準であると主張するが、上記(ア)を踏まえると、不動産取得税の用途非課税を定めた法第73条の4第1項第3号及び固定資産税の用途非課税を定めた法第348条第2項第9号に規定される「直接教育の用に供する」については同じ趣旨を持つものであることから、同様に解釈を行うことが妥当であり、審査請求人の主張は採用し難い。
(ウ)審査請求人が設置する◯◯大学◯◯学部の独自検定として◯◯の資格試験が設けられていることから、◯◯の実習も法第73条の4第1項第3号に規定する「教育」に該当するものといえる。また、平成28年2月23日に開催された審査請求人の理事会において、「学校としては、◯◯学部の◯◯、◯◯の実習地として活用する」として、本件土地の寄附受入れを報告していることから、審査請求人において本件土地を◯◯の実習地として使用する意図はあったものと見受けられる。しかし、平成29年5月1日に法第73条の4第1項第3号の規定に該当することを証する書面として審査請求人から提出された「◯◯市の山林等に関する利用計画」において、今後の利用計画として年1回の頻度で本件土地を利用するとされており、上記(2)ア(カ)の神戸地方裁判所判決及び(キ)の東京地方裁判所判決で判示されている「学校教育の目的とする教育活動が実施されることを常態」にあるとは認められない。
(エ)処分庁は、審査請求人が本件土地を取得したことを知った時から約2年をかけて、その使用方針、取得時及び取得後の事情、実際の使用実績等を審査請求人から聴取等しており、慎重に事実を把握した上で、非課税規定の適用の可否について検討したことが認められる。しかしながら、約2年の間に審査請求人から「学校教育の目的とする教育活動が実施されることを常態」にあると認められる事情が示されることはなかった。
(オ)また、審査請求人は不動産取得税の非課税規定の適用については、「当該不動産を取得した時点での使用目的により判断されるべき」と主張しているが、上記(2)ア(エ)の大阪地方裁判所の判決によれば、「当該不動産の取得時の事情のみで取得目的を認定するとすれば、真実は当該不動産を非課税用途に用いる意思がないにもかかわらず、かかる意思があるものと仮装して、不動産取得税の課税を免れるという弊害が生じかねない」とされており、審査請求人の主張は採用し難い。
(カ)以上の点から、審査請求人による本件土地の取得は、法第73条の4第1項第3号の適用を受けるとは認められない。
(キ)他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

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