ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 総務部 > 総務課 > 令和元年度答申第3号

本文

令和元年度答申第3号

更新日:2019年9月19日 印刷ページ表示

件名

 障害児福祉手当支給停止決定処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

(1) 審査請求人

 処分庁が事前に連絡せず、いきなり支給停止の通知を発送してきたことに納得がいかない。親の所得と子の障害の程度は無関係であり、親の所得によって支給停止がされることは、不公平である。

(2) 審査庁

 棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

(1) 支給停止に係る事前連絡の必要性について

 支給停止の手続については、障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令(昭和50年厚生省令第34号。以下「省令」という。)第6条において、手当の支給機関は、省令第5条の規定により提出された障害児福祉手当所得状況届を受理した場合において、特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年法律第134号。以下「法」という。)第20条又は第21条の規定により障害児福祉手当を支給しないときは、当該受給資格者に、文書でその旨を通知しなければならないことが定められているが、事前に連絡することは、法令上定められていない。
 処分庁は、支給停止通知書を受給資格者である審査請求人に郵送で交付しており、当該手続について何ら違法性は認められない。

(2) 扶養義務者の前年の所得と支給制限額について

 審査請求人の主張である、「親の所得と子の障がいは無関係である」ことについて、扶養義務者の前年の所得額により障害児福祉手当の支給を制限することについては、法で定められており、支給を制限することとなる前年の所得額についても特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和50年政令第207号。以下「政令」という。)で定められていることから、処分庁に裁量の権限はない。

(3) 前年の所得額と支給制限額の計算について

 処分庁による、扶養義務者の前年の所得額及び障害者福祉手当の支給制限額の計算内容を確認したところ適正であり、審査請求人の扶養義務者の前年の所得額は、障害者福祉手当の支給制限額を超過していた。
 よって、処分庁が、○○から提出された特別障害者手当及び障害児福祉手当所得状況届関係連名簿(以下「連名簿」という。)に基づいて審査を行い、障害児福祉手当の支給を停止すると判断したことについて、何ら違法又は不当な点は認められない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和元年7月18日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和元年7月26日 調査・審議
 令和元年8月28日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

(1) 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

(2) 審査会の判断について

ア 本件処分に係る法令等の規定について

(ア) 障害児福祉手当とは、法に基づき、精神又は身体に重度の障害を有する児童(以下「重度障害児」という。)に手当を支給することで、福祉の増進を図ることを目的として支給されるものである。
(イ) 重度障害児とは、法第2条第2項において20歳未満であって、障害等級が1級及び2級程度の障害の状態にある障害児のうち、重度の障がいの状態にあるため、日常生活において、常時の介護を必要とする者であるとされ、また、法第17条において都道府県知事は、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に住所を有する重度障害児に対し、障害児福祉手当を支給するとされている。
(ウ) 障害児福祉手当の支給の制限について、法第21条において受給資格者の配偶者の前年の所得又は受給資格者の民法(明治29年法律第89号)第877条第1項に定める扶養義務者で当該受給資格者の生計を維持するものの前年の所得(以下「前年の所得」という。)が、その者の扶養親族等の有無及び数に応じて、政令で定める額(以下「支給制限額」という。)以上であるときは、その年の8月から翌年の7月までは、支給しないと規定されている。前年の所得の計算方法については政令第8条第2項において準用する政令第4条及び政令第8条第4項において準用する政令第5条によることと、支給制限額の計算方法については政令第8条第1項において準用する政令第2条第2項によることと規定されている。
(エ) 支給停止の手続については、省令第5条において、障害児福祉手当の支給を受けている者は、障害児福祉手当所得状況届を支給機関に提出し、省令第6条において、手当の支給機関は、前条の規定により提出された障害児福祉手当所得状況届を受理した場合において、法第20条又は第21条の規定により障害児福祉手当を支給しないときは、当該受給資格者に、文書でその旨を通知しなければならないことが定められている。

イ 事前連絡の必要性について

 審査請求人の主張である、「事前に連絡せず、いきなり支給停止の通知を発送してきた」ことについて、上記ア(エ)のとおり、支給停止の手続において事前に連絡することは、法令上定められていない。支給停止通知書を受給資格者である審査請求人に郵送で交付しており、当該手続について何ら違法性は認められない。

ウ 扶養義務者の前年の所得額による障害児福祉手当の支給の制限について

 審査請求人の主張である、「親の所得と子の障がいは無関係である」ことについて、扶養義務者の前年の所得額による障害児福祉手当の支給の制限は、「改訂 特別障害者手当等支給事務の手引(平成10年4月30日発行。厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課監修。)」27頁によれば、「この制度が費用の全てを公費により賄う福祉措置であることから、かなりの所得を有する者までもその対象とすることは問題があること、及び他の福祉制度、年金制度その他の制度についても同様の趣旨から所得による制限が行われていることを考慮し」て法で定められたものであり、支給を制限することとなる前年の所得額についても政令で定められていることから、処分庁に裁量の権限はない。

エ 前年の所得額と支給制限額について

(ア) 前年の所得額
a 政令第8条第2項において準用する政令第4条に規定する所得額
 ○○が処分庁に提出した連名簿によれば、審査請求人の平成29年度の所得額は○○円、審査請求人の扶養義務者である○○の平成29年度の所得額は○○円である。
 連名簿の記入に当たっては、所得額欄には障害児福祉手当(福祉手当)所得状況届(省令様式第3号)の「9」欄に記入すべき所得額、すなわち、政令第8条第2項において準用する政令第4条に規定する「地方税法(昭和25年法律第226号)第4条第2項第1号に掲げる道府県民税(中略)についての同法その他の道府県民税に関する法令の規定による非課税所得以外の所得」の額を記入することとされている。
 また、連名簿の記入に当たっては、特別障害者手当等支給事務の手引きに基づき、審査請求人及びその扶養義務者に係る県民税の賦課徴収を行う○○が公簿により確認した事項を記入することとされていることから、連名簿の金額は政令第8条第2項において準用する政令第4条に規定する所得額と一致していると思量する。
b 政令第8条第4項において準用する政令第5条に規定する控除
 政令第8条第4項において準用する政令第5条第1項の規定により、前年の所得の額の計算は、まず、その所得が生じた年の翌年の4月1日の属する年度分の道府県民税に係る地方税法第32条第1項に規定する総所得金額等の合計額から80,000円を控除し(政令第5条第1項)、次に、同条第2項各号に該当する者については、その額から、当該各号に掲げる額を前項の規定によって計算した額からそれぞれ控除するものとされている。
 処分庁は、政令第5条第2項各号の該当の有無について、連名簿により確認を行っていた。
 連名簿の記入に当たっては、連名簿の扶養親族等の数欄に障害児福祉手当(福祉手当)所得状況届(省令様式第3号)の8、10及び11欄に記入すべき人数並びに12欄から14欄に記入すべき控除の種類を記入することとされている。すなわち、8欄には地方税法に定める控除配偶者、扶養親族の合計数、10欄には8欄の控除対象配偶者及び扶養親族のうち地方税法に定める特別障害者以外の障害者である人の数、11欄には8欄の控除対象配偶者及び扶養親族のうち地方税法に定める特別障害者である人の数を記入するほか、政令第5条第2項第1号に該当する場合は該当する控除の種類、同項第2号から第4号までに該当する場合は該当する控除の種類、受給資格者が地方税法に定める社会保険料控除を受けたときは控除に該当する旨を記入することとなる。
 また、連名簿の記入に当たっては、特別障害者手当等支給事務の手引きに基づき、審査請求人及びその扶養義務者に係る県民税の賦課徴収を行う が公簿により確認した事項を記入することとされている。
 審査請求人に係る連名簿には、扶養義務者の扶養親族等の数の欄に、扶養親族等の人数として○人、特別障害者の人数として○人の記入がされているのみである。
 よって、政令第5条第2項各号に掲げる道府県民税の所得割の課税標準額に係る控除のうち上記年度分の審査請求人の扶養義務者について該当するものは、同項第2号に規定する地方税法第34条第1項第6号のみであり、同号に規定する控除に際し、その控除の対象となった特別障害者の数は○人であると思量する。
 政令第5条第2項第2号において、道府県民税につき地方税法第34条第1項第6号に規定する控除(障害者である扶養親族を有する者に対する控除)を受けた者については、その控除の対象となった障害者1人につき270,000円(当該障害者が同号に規定する特別障害者であるときは、400,000円)を控除して算出するものとされている。
c 審査請求人の扶養義務者の前年の所得額
  上記a及びbから、前年の所得額は、総所得金額等の合計額である○○円から、80,000円及び扶養親族等のうち特別障害者である者○人につき400,000円を控除した金額である○○円となる。
(イ) 支給制限額
  政令第8条第1項において準用する政令第2条第2項により障害児福祉手当の支給の制限となる所得額は、6,536,000円に、扶養親族等のうち1人を除いた扶養親族○人につき213,000円を加算した額となる。上記アのとおり、連名簿によれば、扶養親族等は○人である。
 以上から、支給制限額は、6,536,000円に、扶養親族等○人のうち1人を除いた○人につき213,000円を加算した○○円となる。
(ウ) 前年の所得額と支給制限額の比較
 上記(ア)の前年の所得額(○○円)が、上記(イ)の支給制限額(○○円)を超過しており、処分庁が、○○から提出された連名簿に基づいて審査を行い、障害児福祉手当の支給を停止すると判断したことについて、何ら違法又は不当な点は認められない。

オ その他

 上記の他にも本件処分に違法又は不当な点は認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

群馬県行政不服審査会答申集ページへ戻る群馬県行政不服審査会ページへ