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令和元年度答申第8号

更新日:2020年5月1日 印刷ページ表示

件名

 一時保護委託処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

  1. 審査請求書において、◯◯年◯◯月◯◯日付け◯◯児童相談所長(以下「処分庁」という。)が行った一時保護委託処分(以下「本件処分」という。)により審査請求人は保護者としての権利を侵害されているため、本件処分の取消しを求めると主張した。
  2. 令和元年12月17日に審査請求人が提出した反論書においては、処分庁から提出された弁明書の記載に対し、審査請求人は一度も虐待をしていない、子どもがうそをついている、子どもが家出したがっていた、子どもの受験が終わったら母宅に帰る予定であった(だまされた)、◯◯への入所は子どもが高校を卒業するため必要ないと主張した。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。
1 児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第33条第1項の規定より、「児童相談所長は、必要があると認めるとき」に一時保護を「行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。」とされており、一時保護を行うか否かの判断は、児童相談所長の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきであり、本件処分は、裁量の範囲を逸脱又は濫用したと認められる場合に限り、違法となると解するのが相当である。
2 審査請求人の子(以下「本児」という。)については、法第27条第1項第3号による委託が必要であったものの、親権者である審査請求人がこれに同意しないため、本児の居所が確保できず、安心・安全な生活が担保されない状態であった。このため、処分庁は、法第33条第1項の規定により「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため」本件処分を行ったものであると解され、処分庁の判断に裁量の範囲の逸脱又は濫用があったと認められるような事情は存在せず、本件処分の決定に係る手続についても適正なものであると認められることから、これを違法又は不当と評価することはできない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和2年2月12日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和2年2月20日 調査・審議
 令和2年3月16日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 審査会の判断について

(1) 本件に係る法令等の規定について

ア 法第33条第1項には「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。」と規定されている。
イ 法27条第1項には「都道府県は、前条第1項第1号の規定による報告又は少年法第18条第2項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。」と規定され、同項第3号には「児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。」と規定され、同条第4項には「第1項第3号又は第2項の措置は、児童に親権を行う者(第47条第1項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。」と規定されている。
ウ 法31条第2項には「都道府県は、第27条第1項第3号の規定により小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託され、又は児童養護施設、障害児入所施設(第四十二条第一号に規定する福祉型障害児入所施設に限る。)、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所した児童については満20歳に達するまで、引き続き同項第3号の規定による委託を継続し、若しくはその者をこれらの児童福祉施設に在所させ、又はこれらの措置を相互に変更する措置を採ることができる。」と規定されている。
エ 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第13条第1項には「都道府県知事は、児童虐待を受けた児童について施設入所等の措置が採られ、及び当該児童の保護者について児童福祉法第27条第1項第2号の措置が採られた場合において、当該児童について採られた施設入所等の措置を解除しようとするときは、当該児童の保護者について同号の指導を行うこととされた児童福祉司等の意見を聴くとともに、当該児童の保護者に対し採られた当該指導の効果、当該児童に対し再び児童虐待が行われることを予防するために採られる措置について見込まれる効果その他厚生労働省令で定める事項を勘案しなければならない。」と規定されている。

(2) 本件処分について

ア 法第33条第1項の規定に基づく一時保護は、親権者の同意を要件としていないが、これは子どもの安全の迅速な確保など、子どもの最善の利益を守るために行われるものであることによるものと解される。
イ 法第33条第1項の規定により、「児童相談所長は、必要があると認めるとき」に「一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。」とされており、一時保護を行うか否かの判断は、児童相談所長の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきであり、本件処分は、裁量の範囲を逸脱又は濫用したと認められる場合に限り、違法となると解するのが相当である。
ウ 本件処分は、審査請求人が法第31条第2項の規定による措置延長の処分に対して不服を申し立てたことから、法第27条第1項第3号に基づく本児に対する◯◯への委託に対する同意を審査請求人が撤回したため、◯◯への委託措置を解除したうえで行われた一時保護処分である。
エ 処分庁においては、審査請求人が同意を撤回したことにより、本児の家庭復帰が可能かどうかを改めて評価することになったが、法第27条第1項第3号の規定による委託の措置を解除する際は、児童虐待の防止等に関する法律第13条第1項において「当該児童の保護者に対し採られた当該指導の効果」等を勘案すべきとされ、その指導効果等を踏まえた措置解除の在り方についての基本的なルールとして、「児童虐待を行った保護者に対する指導・支援の充実について(平成20年3月14日付け雇児総発第0314001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知)」において「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」が示され、子どもの家庭復帰を検討する段階を迎えた時に最低限押さえておくべき事項として「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」が整理されている。
オ 処分庁は、◯◯年◯◯月◯◯日に行われた審査請求人と本児との面会で、審査請求人の大声での発言に本児が萎縮し過呼吸症状となり面会が中止に至ったことや本児が家庭復帰するつもりがない旨を発言したこと、この面会の結果を受け、同年◯◯月◯◯日に処分庁の職員が審査請求人に対し本児の家庭復帰は難しい旨を伝えたところ審査請求人は本児の過呼吸は自分で操作したもので意図的に起こすことができると主張したこと、同年◯◯月◯◯日の審査請求人から処分庁への電話においても自らの正当性を主張するのみであったこと等の経過を、「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」中の「面会・外泊等を計画的に実施し、経過が良好であるか」、「子どもが家庭復帰を望んでいるか」、「保護者に対する恐怖心はなく、安心・安定した自然な接触ができるか」、「保護者が虐待の事実を認め、問題解決に取り組んでいるか」、「保護者が子どもへの怒りや衝動を適切にコントロールできるか」に照らし合わせ、客観的かつ適正に評価を行い、本児の家庭復帰は不可能との判断に至ったものである。
カ 以上のことから、本児については、法第27条第1項第3号による委託が必要であったものの、親権者である審査請求人がこれに同意しないため、本児の居所が確保できず、安心・安全な生活が担保されない状態であった。このため、処分庁は、法第33条第1項の規定により「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため」本件処分を行ったものであると解され、このことに裁量の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められない。
キ また、一時保護の実施にあたっては、本児がこれまでに育んできた人間関係や育ってきた環境などの連続性を保障することや本児の高校への通学の利便性を確保すること等、本児の安定した生活及び通学を実現する観点から措置委託先であった◯◯に一時保護を委託しており、この判断についても適正と認められる。
ク 以上のとおり、本件処分については、処分庁の判断に裁量の範囲の逸脱又は濫用があったと認められるような事情は存在せず、本件処分の決定に係る手続についても適正なものであると認められることから、これを違法又は不当と評価することはできない。

(3) 上記以外の違法性又は不当性についての検討

 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

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