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令和2年度答申第6号

更新日:2020年11月2日 印刷ページ表示

件名

 生活保護廃止処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 令和2年2月25日付け処分庁による生活保護廃止処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるものであり、その理由は次のとおりである。

  1. 書類先行の下に、行ってもいないのに行ったという受給者を無視した行為等がある。
  2. 年金事務所に確認したところによれば、年金生活者支援給付金(以下「給付金」という。)の申請は、行わなくとも法令違反でないとのこと。通帳を汚したくないので、給付金の申請はしない。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第4条の規定により、他法他施策の扶助は、生活保護に優先して行われるものとされている。
 被保護者に対する保護の変更、停止又は廃止は、法第27条に基づく指導指示を行ったものの被保護者が当該指導指示に従わなかった場合であり、さらに法第62条第4項に基づく弁明の機会を与えた上でなければならない。
 本件において、給付金の申請を行わなかった審査請求人に対し、処分庁は、口頭又は文書により、申請を行うよう複数回、指導指示を行っている。
 しかしながら、審査請求人がこれら指導指示に従わなかったことから、処分庁は聴聞通知書を交付し弁明の機会を与えた上で、本件処分を行っている。
 以上のことから、本件処分は、法に基づく指導指示に従う義務に違反するものであり、法にのっとった手続きを行った上で行われたものであることから、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和2年9月3日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和2年9月11日 調査・審議
 令和2年10月6日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 生活保護の補足性

 法第4条は、第1項で「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と、第2項で「民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と規定している。

(2) 保護受給中の指導指示

 法第27条第1項は、「保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。」と規定している。
 「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)第11-2は、保護受給中の指導指示として、「特に次のような場合においては必要に応じて法第27条の規定による指導指示を行うこと。」とし、カにおいて「アからオに掲げる場合のほか、資産、扶養、他法他施策による措置等の活用を怠り、又は忌避していると認められるとき。」と規定している。

(3) 指導指示違反による生活保護の変更、停止又は廃止

 法第62条第1項は、「被保護者は、保護の実施機関が(中略)第27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。」と規定し、これに従わなかった場合として、同条第3項は、「保護の実施機関は、被保護者が前2項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。」と規定している。
 法第27条第1項の規定による指導指示に従わない場合の取扱いの基準については、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知。以下「課長通知」という。)第11-問1-3において、「2の規定にかかわらず、次のいずれかに該当する場合は保護を廃止すること。」とし、(3)において、「保護の停止を行なうことによっては当該指導指示に従わせることが著しく困難であると認められるとき。」と規定している。
 法第62条第3項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分を行う場合には、保護の実施機関は、「当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。」と同条第4項で規定している。

(4) 給付金の取扱い

 「年金生活者支援給付金制度の施行に伴う円滑な請求手続及び保護費への反映処理を実施するための生活保護担当部局と国民年金担当部局との連携について」(令和元年8月22日付社援保発0822第2号厚生労働省社会・援護局保護課長、年管管発0822第2号厚生労働省年金局事業管理課長通知)において、「1(ローマ数字).4給付金の取扱い」として、「生活保護の実施に当たっては、年金・手当等の公の給付を含む資産を活用することが前提となっている。(中略)給付金対象者である被保護者が、その活用を怠り、又は忌避していると認められるときは、保護の実施機関においては、当該被保護者に対して、法第27条に基づき文書による指導指示を行い、それでもなお従わなかったときは、必要に応じて法第62条に基づき所定の手続を経た上で保護の変更、停止又は廃止を行う必要がある。」としている。

3 本件処分の違法性について

  1. 2(1)に記載のとおり、生活保護は、他法他施策の扶助を優先して活用しなくてはならず、また、本件は2(2)及び(4)の指導指示を行う場合に該当することから、処分庁が法第27条第1項の規定により行った給付金の申請を行うことを内容とする指導指示に、違法又は不当な点はない。
  2. なお、審査請求人は、指導指示が実施される前に処分庁から給付金の申請について案内されたことがないことや、指導指示の際審査請求人宅を処分庁職員が訪問したことがない旨主張しているが、仮に審査請求人の主張のとおりであったとしても、複数回の指導指示により給付金の申請の必要性について知らされていることや、審査請求人は審査請求書の添付書類として指導指示書を添付しており、実際に指導指示書の交付を受けていることが認められることから、審査請求人の主張は、審査請求の結論に影響しない。
  3. 当該被保護者に対する保護の変更、停止又は廃止を行うことができるのは、法第27条に基づく指導指示を行ったものの被保護者が当該指導指示に従わなかった場合であり、さらに法第62条第4項に基づく弁明の機会を与えた上でなければならない。
  4. 本件において、給付金の申請を行わなかった審査請求人に対し、処分庁は、口頭又は文書により、申請を行うよう複数回、指導指示を行っている。しかしながら、審査請求人がこれら指導指示に従わなかったことから、処分庁は聴聞通知書を交付し弁明の機会を与えており、法に規定する手続にのっとって本件処分を行っている。
  5. なお、審査請求人は、給付金の申請をしない理由として、「年金事務所に確認したところによれば、給付金を申請するかしないかは、自由である。」旨主張をしているが、給付金制度上は、確かに申請するかしないかは自由であるが、生活保護制度上は、(1)に記載のとおり、他法他施策の扶助を優先して活用しなくてはならないから、給付金の申請は、生活保護制度上行わなくてはならず、審査請求人の主張は失当である。
  6. また、審査請求人は、弁明の実施の際、処分庁事務所のカウンターで対応されたため、弁明の機会は付与されていない旨主張しているが、法令上、どこで弁明を実施するかについて規定はなく、また、実際に審査請求人は弁明を行っていることから、審査請求人の主張は失当である。
     なお、処分庁に確認したところによれば、本件に限らず、弁明の実施は、カウンターで行うこともあるとのことである。
  7. 指導指示に従わなかった場合の取扱いについては、2(3)に記載のとおり、「保護の停止を行なうことによっては当該指導指示に従わせることが著しく困難であると認められるとき。」は、保護を廃止することとされている。審査請求人は、一貫して指導指示に従う意思はないことを主張しており、また、給付金を申請しない理由が正当性のあるものとはいえないから、「保護の停止を行なうことによっては当該指導指示に従わせることが著しく困難であると認められるとき。」に当たるとして、生活保護を廃止したことについて、違法な点があるとまではいえない。
  8. 以上のことから、本件処分は、法に基づく指導指示に従う義務の違反に対し、法にのっとった手続を行った上で行われたものであることから、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

4 その他

 審査請求人は、反論書等において、処分庁の謝罪と賠償を求める旨主張しているが、行政不服審査制度は、処分の取消しを争うものであり、本件審査請求において謝罪と賠償を求めることはできないので、申し添える。
 また、本件処分後、審査請求人が生活困窮に陥っている可能性があると見受けられるが、仮に生活困窮に陥るようなことがあれば、処分庁に相談し、また、給付金の申請をされたいことを申し添える。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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