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令和3年度答申第3号

更新日:2021年9月7日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

審査請求人は、本件処分の取り消しを求める理由として、次のとおり主張している。

  1. 収入があることを知った日が令和2年10月20日にもかかわらず、同年8月7日から資力が発生したとされたことに不服がある。
  2. 令和2年8月7日まで遡って返還となること、医療費が返還対象に含まれることについてもっと早く教えてくれることはできなかったのか。

2 審査庁

審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 処分庁は、「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)問13-6(答)(2)で、相続は死亡によって開始され、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するもの(民法(明治29年法律第89号)第882条、第896条)とされており、また、共同相続人は、協議によって遺産の分割をすることができ、その効力は相続開始のときに遡って生ずること(民法第909条)とされていることから、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第63条に基づく費用返還の対象となる資力の発生時点は、被相続人の死亡時と解すべきであり、遺産分割手続により被保護者が相続することとなった財産の額を限度として、被相続人死亡時以後支給された保護費について返還請求の対象となるとされている。
 なお、問答集問13-6(答)(5)において、保護開始時点で資産の保有認否が明らかにされていない場合について、「文書により資産保有の否認、処分指導等を通知した時点以降の保護費が返還額決定の対象となる」とされているが、これはあくまで保護開始時の取扱いであり、相続した財産の認否を行うまでの間、保護開始時において保有が容認された資産と同様の取扱いを行うこととする法令等の規定はない。
 よって、返還対象期間の開始日となる資力の発生時点については、被相続人の死亡日とされており、本件処分においても資力の発生時点は、被相続人の死亡日とした処分庁の判断は妥当なものであった。
 本件処分において、処分庁による法第63条による返還義務の明示がされていないが、問答集問8-31(答)で「本来保有を認められない資産については、費用返還が円滑に行われるよう予め法第63条による返還義務が生じることを文書により明らかにした上で保護を開始することに留意する必要がある」とされている。
 費用返還が円滑に行われるよう、処分庁は審査請求人に法第63条による返還義務が生じることを明らかにすべきであったが、違法性はなく、本件処分に影響はない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和3年7月8日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和3年7月20日 調査・審議
令和3年8月25日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件に係る法令等の規定について

  1. 法第63条は、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施期間の定める額を返還しなければならない」と規定している。
  2. 問答集の問13-6(答)(2)で、「相続は死亡によって開始され、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するもの(民法第882条、第896条)とされており、また、共同相続人は、協議によって遺産の分割をすることができ、その効力は相続開始のときに遡って生ずること(民法第909条)とされている。したがって、法第63条に基づく費用返還の対象となる資力の発生時点は、被相続人の死亡時と解すべきであり、遺産分割手続により被保護者が相続することとなった財産の額を限度として、被相続人死亡時以後支給された保護費について返還請求の対象とすることとなる。」とされている。
  3. 民法第882条は「相続は、死亡によって開始する。」と、同法第896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に專属したものは、この限りでない。」と、同法第909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定している。

3 本件処分の妥当性について

  1. 問答集問13-6(答)(2)で、返還対象期間の開始日となる資力の発生時点については、被相続人の死亡時とされており、本件処分においても資力の発生時点は、被相続人の死亡時としている。
     なお、本件処分においては、処分庁による資産の保有認否が明らかにされていない。問答集問13-6(答)(5)において、「保護開始時において保有が容認された資産(土地等)については、保有が容認されている限りは、法第63条の「資力があるにもかかわらず」の要件に該当しない状態にあるといえる。しかしながら、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合、ケース診断会議において処分指導が適当と認められた場合等、保有を否認された時点以降は、当該資産は活用すべき資産となり、法第63条にいう資力の発生があったものとして取り扱うこととなる。具体的には、文書により資産保有の否認、処分指導等を通知した時点以降の保護費が返還額決定の対象となる。」とされているが、問答集問13―6(答)(5)は、あくまでも保護開始時の取扱いであり、相続した資産を保有の認否を行うまでの間、保護開始時において保有が容認された資産と同様の取扱いを行うこととする法令等の規定は存在しない。
    以上から、保有認否が明らかにされていなくとも、資力の発生時点は、被相続人の死亡日とした処分庁の判断に違法又は不当な点はない。
  2. 本件処分において、処分庁から提出された証拠によれば、処分庁が法第63条による返還義務が生じる可能性があることを口頭にて説明したのは令和2年10月20日、被相続人の死亡日まで遡って返還すること及び医療費が返還対象に含まれることを口頭にて説明したのは令和2年12月3日とされている。
    この点につき、審査請求人は、被相続人の死亡日まで遡って法第63条による返還義務が生ずる可能性があること及び医療費が返還対象に含まれることを早期に明らかにすべきであった旨を主張する。
    費用返還が円滑に行われるよう、被相続人の死亡日まで遡って法第63条による返還義務が生ずる可能性があること及び医療費が返還対象に含まれることを早期に明らかにすべきであったと考えられるが、保護の開始後に相続により財産を取得した場合に、法第63条による返還義務が生じることを明示することを求める法令等の規定は存在しないことから、本件処分が違法又は不当であったとまではいえない。
  3. 以上のことから、審査請求人は被相続人の資産を令和2年8月7日に相続しており、同日を資力の発生時点とした本件処分に、違法又は不当な点はない。

4 その他

上記のほか、本件処分に違法又は不当な点は見受けられない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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