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令和4年度答申第6号

更新日:2022年11月7日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 処分庁が行った令和4年3月7日付け審査請求人に対する精神障害者保健福祉手帳の障害等級の更新決定処分(以下「本件処分」という。)を取り消すことを求めるものであり、その理由は次のとおりである。

  • 納得がいかない。
  • 診断医からは前回の診断書と内容は変わっていないと聞いており、薬の量も増えているにもかかわらず障害等級が下がるのは不思議である。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 審査請求人の精神疾患(機能障害)の状態についてみると、主たる精神障害が神経症であることから、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」(平成7年9月12日健医発第1133号厚生省保健医療局長通知。以下「判定基準」という。)別添1(1)8「その他の精神疾患」に該当する精神疾患があることが認められる。そして、審査請求人の神経症の程度については、審査請求人が令和4年○○月○○日に行った精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)第45条第4項の規定による認定の申請において提出された診断書(以下「本件診断書」という。)の「4 現在の症状及び状態像等」及び「5 4の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」の記載からは、判定基準別紙の表2級の「精神疾患(機能障害)の状態」1から7までに準ずるものであると認めるに足りる記載は見受けられず、また、「2 日常生活能力の判定」において、多くの項目で「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」に該当していることを考慮すると、精神疾患(機能障害)の状態は、障害等級3級に該当すると判断できる。
 次に、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態についてみると、「3 日常生活能力の程度」については、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」に該当するとされており、「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準の運用に当たって留意すべき事項について」(平成7年9月12日付け健医精発第46号厚生省保健医療局精神保健課長通知。以下「留意事項」という。)3(6)の表では、おおむね2級程度の区分となる。一方、「2 日常生活能力の判定」では、8項目のうち6項目が判定基準において3級とされる「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」とされており、また、「上記の具体的程度、状態像」には、「なんとか日常生活は過ごせている。」との記載がある。
 これらのことからすると、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態は、判定基準別添2において2級とされる「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」や「日常生活が困難な程度のもの」に至っているとまではいえず、障害等級3級に該当すると判断できる。
 以上から、精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態を総合的に判断すると、審査請求人は障害等級2級についての要件を満たしておらず、障害等級3級に該当すると認めることができる。
 また、法令に基づき、医師により作成された本件診断書を、処分庁が審査及び判定した本件処分について、違法又は不当な点は認められない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和4年9月8日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和4年9月16日 調査・審議
 令和4年10月11日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 都道府県知事は、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等を添付)があった場合において、当該申請に基づいて審査し、申請者が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号。以下「施行令」という。)第6条に規定する精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならず(法第45条第1項及び第2項並びに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号。以下「施行規則」という。)第23条第2項)、また、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、2年ごとに、施行令第6条に規定する精神障害の状態にあることについて、都道府県知事の認定(申請に当たっては、医師の診断書等を添付)を受けなければならないとされている(法第45条第4項及び施行規則第28条第1項)。
(2) 施行令第6条に規定する精神障害の状態とは、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、障害等級1級の障害の状態として「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、障害等級2級の障害の状態として「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」、障害等級3級の障害の状態として「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」とされている(同条第3項)。
(3) 障害等級の判定の具体的な基準については、国から「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」(平成7年9月12日付け健医発第1132号厚生省保健医療局長通知。以下「実施要領」という。)が発出されており、「障害等級の判定に当たっては、精神疾患(機能障害)の状態とそれに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に判定を行うものとし、その基準については、別に通知するところによる。」とされている(実施要領第2の2(2))。
(4) この実施要領を受けて、判定基準が発出され、また、この判定基準の運用について留意事項が発出されている。
(5) 判定基準及び留意事項によれば、障害等級の判定は、精神疾患の存在の確認、精神疾患(機能障害)の状態の確認、能力障害(活動制限)の状態の確認、精神障害の程度の総合判定という順をおって行われることとされている。
 また、判定に際しては、診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応することとされている。(判定基準別紙の頭書)。
 その他の精神疾患の精神疾患(機能障害)の状態については、判定基準別紙の表1級の精神疾患(機能障害)の状態の1から7までに準ずるものは1級と、同表2級の精神疾患(機能障害)の状態の1から7までに準ずるものは2級と、同表3級の精神疾患(機能障害)の状態の1から7までに準ずるものは3級とされている(判定基準別紙の表)。
 能力障害(活動制限)の状態については、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」、「金銭管理と買い物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続や公共施設の利用」及び「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目について、「できない」等にいくつか該当するものは1級と、「援助なしにはできない」等にいくつか該当するものは2級と、「行うことができるがなお援助を必要とする」等にいくつか該当するものは3級とされている(判定基準別紙の表)。
 また、診断書の「3 日常生活能力の程度」欄が、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる」である場合は障害等級非該当と、「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」である場合はおおむね3級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする」である場合はおおむね2級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする」又は「精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない」である場合はおおむね1級程度とされている(留意事項別紙3(6)の表)。
 そして、障害等級の基本的なとらえ方として、「精神障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの」である場合は1級と、「精神障害の状態が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものである。この日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は困難な程度のもの」である場合は2級と、「精神障害の状態が、日常生活又は社会生活に制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」である場合は3級とされている(判定基準別添2)。
 (6) なお、申請者が施行令第6条に規定する精神障害の状態にあるかどうかの判定は、都道府県に設置されている法第6条第1項に規定する精神保健福祉センターに行わせるものとされ、当該判定を行う者については、原則として、法第18条第1項の精神保健指定医(以下「指定医」という。)を含めるものとされ、群馬県においては、処分庁が精神保健福祉センターの事業を行っている(実施要領第2の3(2))。

3 本件処分の妥当性について

(1) 審査請求人の障害等級について、判定基準及び留意事項に従って、以下検討する。
ア 精神疾患の存在の確認
 本件診断書の「1 病名」から、主たる精神障害として「神経症」が確認できる。また、従たる精神障害はなく、身体合併症として「心房細動」が確認できる。
イ 精神疾患(機能障害)の状態の確認
 本件診断書の「3 発病から現在までの病歴並びに治療の経過及び内容」では、「平成○○年○○月から家庭内の問題でイライラしやすくなり、同年○○月○○日に当院を初診。クロルプロマジン内服が部分的に有効であった。現在も当院外来通院中。」との記載がある。
 次に、「4 現在の病状及び状態像等」では、「(1)抑うつ状態」の「易刺激性、興奮」及び「憂うつ気分」に、「(2)躁状態」の「感情高揚・易刺激性」に、「(6)情動及び行動の障害」の「暴力・衝動行為」に、「(7)不安及び不穏」の「強度の不安・恐怖感」に該当している。
 また、「5 4の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」では、「家庭内の問題が持続しており、その影響で易刺激性や衝動行為の悪化と軽快を繰り返している。」との記載がある。
ウ 能力障害(活動制限)の状態の確認
 本件診断書の「1 現在の生活環境」では、「在宅(家族等と同居)」に該当している。
 次に、「2 日常生活能力の判定」では、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」、「金銭管理と買い物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」及び「身辺の安全保持・危機対応」の6項目について「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」と判定されている。「社会的手続きや公共施設の利用」及び「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の2項目については「援助があればできる」と判定されている。
 また、「3 日常生活能力の程度」では、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」と判定されており、「上記の具体的程度、状態像」の欄には、「同居の○○の問題行動からのストレスをかかえやすい。また心房細動と身体的不調も増え、ささいなことで症状が悪化することがあるが、なんとか日常生活は過ごせている。」との記載がある。
エ 精神障害の程度の総合判定
 上記(1)アからウまでを基に、審査請求人の精神疾患(機能障害)の状態についてみると、主たる精神障害が神経症であることから、判定基準別添1(1)8「その他の精神疾患」に該当する精神疾患があることが認められる。そして、審査請求人の神経症の程度については、本件診断書の「4 現在の症状及び状態像等」及び「5 4の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」の記載からは、易刺激性や衝動行為が確認できるものの、判定基準別紙の表2級の「精神疾患(機能障害)の状態」の1から7までに準ずるものであると認めるに足りる記載は見受けられず、また、「2 日常生活能力の判定」において、多くの項目で「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」に該当していることを考慮すると、精神疾患(機能障害)の状態は、障害等級3級に該当すると判断できる。
 次に、上記(1)ウを基に、審査請求人の能力障害(活動制限)の状態についてみると、「3 日常生活能力の程度」については、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」に該当するとされており、留意事項別紙3(6)の表では、おおむね2級程度の区分となる。一方、「2 日常生活能力の判定」では、8項目のうち6項目が判定基準別紙の表における3級の能力障害(活動制限)の状態に相当する「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」とされており、また、「上記の具体的程度、状態像」には、「心房細動と身体的不調も増え、ささいなことで症状が悪化することがあるが、なんとか日常生活は過ごせている」との記載がある。
 これらを総合的に判断すると、精神疾患(機能障害)の状態については、本件診断書には、判定基準別紙の表2級に該当すると認めるに足りる記載は見受けられず、また、能力障害(活動制限)の状態についても、本件診断書の「3 日常生活能力の程度」では、留意事項別紙3(6)でおおむね2級程度とされる項目に該当するとされているが、「2 日常生活能力の判定」の8項目のうち6項目が判定基準別紙の表における3級の能力障害(活動制限)の状態に相当する「自発的にできるが援助が必要」又は「おおむねできるが援助が必要」とされており、「ささいなことで症状が悪化することがあるが、なんとか日常生活は過ごせている」とされていることを考慮すると、判定基準別添2において2級とされる「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」に至っているとまではいえず、障害等級3級に該当すると判断できる。
(2) 判定の手続について
ア 障害等級の判定の手続については、上記2(6)のとおり、実施要領の取扱いにのっとり指定医による判定が行われており、本件処分を違法又は不当とすべき事実は認められない。
イ 審査請求人は、診断医からは前回の診断書と内容は変わっていないと聞いており、薬の量も増えているにもかかわらず障害等級が下がるのは不思議であると主張するが、障害等級の判定は、法第45条第2項及び施行規則第23条第2項に、精神障害者保健福祉手帳の交付の申請(医師の診断書等を添付)に基づいて審査する旨規定されており、また、判定基準別紙の頭書には、判定に際しては、診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応することとされていることから、提出された本件診断書に基づく書面審査を行った処分庁の本件処分について、違法又は不当な点は認められない。
(3) 結論
 よって、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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