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令和4年度答申第8号

更新日:2022年11月18日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 1 審査請求人

 処分庁が行った令和○年○月○日付け生活保護停止処分(以下「本件処分1」という。)及び同月○日付け生活保護変更処分(以下「本件処分2」という。)を取り消し、本件処分1及び本件処分2により生じた損害額を加えて支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。

・民法703条違反・業務妨害であり、本件処分1の理由には根拠がないため。

・生活保護費で支給していない年金額から返還させるのはおかしい。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 ​「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「別冊問答集」という。)問7―15において、「被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は刑事行政の一環として措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ない」とされている。

 処分庁は、○○○○課から令和4年3月15日付け及び同月31日付けで回答のあった審査請求人に関する勾留・釈放された期間を確認し、本件処分1を行った。これは別冊問答集問7―15に基づく事務処理であるといえる。

 また、本件処分2は、本件処分1に起因し行われた処分である。

 なお、審査請求人が勾留されている期間の収入額の認定については、日割り計算をしないことをもってして不適当とはいえず、処分庁の裁量の範囲内で適正に計算されたものといえる。

 したがって、本件処分1及び本件処分2は、法令等の定めるところに従って適法かつ適正になされたものであり、違法又は不当であるとはいえない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

   令和4年9月28日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受

   令和4年10月11日 調査・審議

   令和4年11月11日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 生活保護の補足性

 生活保護法(昭和25年法律第144号)第4条第1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と、同条第2項は、「民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と規定している。

(2) 保護の停止の規定

 生活保護法第26条は、「保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。」と規定している。

(3) 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の規定

 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)第182条第1項は、「被留置者の処遇(運動、入浴又は面会の場合その他の内閣府令で定める場合における処遇を除く。)は、居室(被留置者が主として休息及び就寝のため使用する場所として留置業務管理者が指定する室をいう。以下この条及び第212条において同じ。)外において行うことが適当と認める場合を除き、昼夜、居室において行う。」と規定している。

 また、同法第186条第1項は、「被留置者には、次に掲げる物品(書籍等を除く。以下この節において同じ。)であって、留置施設における日常生活に必要なもの(第188条第1項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は支給する。」と規定している。

 さらに、同法第199条では、「留置施設においては、被留置者の心身の状況を把握することに努め、被留置者の健康及び留置施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」と規定している。

(4) 被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合の最低生活費

 別冊問答集問7-15において、「被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は、刑事行政の一環として措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ない」とされている。

(5) 保護費の返納を次回支給月以後の収入充当額として計上して行う旨の規定

 生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第10―2―(8)において、「最低生活費又は収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は、(中略)当該事由に基づき扶助費支給額の変更決定を行なえば生ずることとなる返納額(中略)を、次回支給月以後の収入充当額として計上して差し支えないこと」とされている。

(6) 審査請求人が勾留されていた期間の収入額の認定

 最低生活費から差し引く収入充当額について勾留期間を日割りで除外する必要があるか否かについて法令等に規定がないため、審理員による審理において、令和4年8月10日付けで厚生労働省社会・援護局保護課に日割り計算の必要性について文書照会したところ、同年9月6日付けで口頭にて「日割り計算をしないことをもってして不適当とはいえない」旨の回答(以下「厚生労働省回答」という。)があった。

3 本件処分1及び本件処分2の妥当性について

(1) 本件処分1の妥当性

 処分庁は、○○○○課から令和4年3月15日付け及び同月31日付けで回答のあった審査請求人に関する勾留・釈放された期間を確認し、本件処分1を行った。

 被留置者については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律により、被留置者の状況に応じた適切な処遇がされることになっており、起居すべき居室が提供され、衣類及び寝具、食事及び湯茶、日用品、筆記用具その他の物品が貸与又は支給されるとともに、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき又はこれらの疑いがあるときは、医師による診療等が行われる。

 したがって、被留置者は、留置施設に留置されている期間において、最低限度の生活を維持することができない者には該当しないこととなるから、保護を行う必要性に欠けるといえる。

 審査請求人の勾留期間中における処遇は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づいて措置されることとなるため、生活保護法第26条に規定する「被保護者が保護を必要としなくなつたとき」に該当すると考えられ、処分庁が審査請求人に対する保護を停止する判断をし、過支給分の返還を求めたことは、違法又は不当であるとはいえない。

次に、審査請求人が年金額から返還させるのはおかしい旨主張するため、保護の停止により減額された金額について検討する。生活保護における生活費の支給は、当該月に必要とされる最低生活費の合計額から当該月の収入の合計額を引き、なお不足額が生じた場合、当該不足額を支給することにより行われるものである。

 審査請求人の場合、令和○年○月分の最低生活費の合計額は○○○○円であり、この額から当該月の収入充当額の合計額○○○○円(障害年金○○○○円及び年金生活者支援給付金○○○○円)を引くと、不足額は、○○○○円となり、既に生活保護費として支給済となっている。令和○年○月分も同様である。

 審査請求人が勾留された期間、保護は停止されるので、当該勾留期間を除き最低生活費を日割り計算すると、○月分は○○○○円となり、当該額から収入充当額の合計額○○○○円を引くと、マイナス○○○○円となり、収入が多くなって不足額は0円となる。同様に○月分は最低生活費が○○○○円となり、当該額から収入充当額の合計額○○○○円を引くと、マイナス○○○○円となり、収入が多くなって不足額は0円となる。以上の計算から既に生活保護費として支給された○月分○○○○円及び○月分○○○○円の合計額○○○○円が不要となり、保護の停止により減額され、戻入すべき金額となるので、年金額から返還させるのはおかしいという審査請求人の主張は採用することはできない。

 なお、審査請求人が勾留されている期間の収入充当額の認定については、日割り計算をしないことをもってして不適当とはいえないとの厚生労働省回答があり、処分庁の裁量の範囲内で適正に計算されたものといえる。

 以上のことから、本件処分1には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

(2) 本件処分2の妥当性

 本件処分2は、本件処分1により停止された○月分及び○月分の保護費の減額を○月以降に支給される保護費から差し引く方法により行われた。これは、局長通知第10―2―(8)に基づき、将来支給される保護費において審査請求人の収入充当額に減額分を計上して行うものであり、当該月に必要とされる最低生活費の合計額から、減額分を加算した収入充当額を引いて算出した額をもって支給額としたものであり、妥当な算出方法による保護費の変更処分であるといえる。

 具体的には、減額された金額○○○○円を6箇月分に分割して収入充当額に計上している。令和○年○月から○月まではそれぞれ○○○○円を当該月の収入充当額○○○○円に加算し、収入充当額の合計額○○○○円を必要な最低生活費○○○○円から引くと、○○○○円が当該月の保護費となる。○月分で残額の○○○○円を収入充当額に加算し保護費を支給することになり、計算方法は、局長通知に基づいたものであり、本件処分2にこれを取り消すべき違法又は不当な点はみられない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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