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公文書開示審査会答申第187号

更新日:2017年10月26日 印刷ページ表示

「県から当請求人に交付された通知書「住第○○-○号」(平成○年○月○日付)記載の、(株)○○に対する監督処分に関わる資料で、「(株)○○が、○○、○○に交付した『重要事項説明書一式』」外2件の公文書の存否を明らかにしない決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会第一部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、別表の(あ)欄に記載の年月日付けで、別表の(い)欄に記載の開示請求(以下「本件各請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、別表の(う)欄に記載の年月日に、本件各請求に係る公文書について、別表の(え)欄に記載の決定(以下「本件各処分」という。)を行い、それぞれ以下の理由を付して、請求人に通知した。
(1)別表項番1に係る決定について
特定個人が(株)○○の顧客であるという文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定個人が(株)○○の顧客かどうかという個人に関する情報(条例第14条第2号)を明らかにすることになるため。
(2)別表項番2に係る決定について
特定個人が(株)○○の顧客であるという文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定個人が(株)○○の顧客かどうかという個人に関する情報(条例第14条第2号)を明らかにすることになるため。
(3)別表項番3に係る決定について
特定個人が県から通知を受けたという文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定個人と県との関係という個人に関する情報(条例第14条第2号)を明らかにすることになるため。

3 審査請求

 請求人は、実施機関に対して、本件各処分を不服として平成28年10月28日付けで審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

4 審査請求書(補充)の提出

 請求人は、実施機関に対して、平成28年11月8日付けで審査請求書(補充)を作成し、提出した。

5 弁明書の送付

 実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成29年1月23日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。

6 反論書の提出

 請求人は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第30条第1項の規定に基づき、平成29年2月28日付けで反論書を作成し、実施機関に提出した。

7 反論書(補充)の提出

 請求人は、実施機関に対して、平成29年3月2日付けで反論書(補充)を作成し、提出した。

8 諮問

 実施機関は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成29年5月29日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

9 意見書の提出

 請求人は、審査会に対して、条例第32条に基づき、平成29年6月9日付けで意見書を作成し、提出した。

第3 争点

1 争点1(存否応答拒否決定の解釈について)

条例で定める存否応答拒否決定は適法なものとして認められるか。

2 争点2(開示請求者が誰であるかということについて)

請求者の個別的な事情を考慮することが適当であるか。

3 争点3(非開示理由の追加について)

処分時に記載されていない理由を審査請求時に主張することが認められるか。

4 争点4(存否応答拒否の理由について)

本件各処分で公文書の存否を明らかにしない理由が、条例第14条第2号に該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 請求人の書面における主張要旨

(1)争点1について

ア 「文書存否不回答決定」を行えば、消極的に当該文書を保持している事を示す為に、何らの当初目的を達成するものではない矛盾が有る事を、自ら露呈しているに過ぎない。この決定は、文書不開示決定と何ら大差ないイカサマの決定である。
拠って、本件決定事項の、根拠としての第17条規定自体には、「消極的文書保持を示す事でもあるので、本条本来の目的は、何ら達成されず、条文そのもの自体に瑕疵が存在する」ものを、本件では適用しているものであり、論理矛盾が存在する。
イ この「公文書の存否を明らかにしない決定通知書」の意味は、既に前述した如く、本審査請求人の求める当該文書を弁明人は保持している事実を、自ら既に自白したものである。何故ならば、保持していない場合では、「文書不存在通知」となるからである。
ウ この「存否不回答決定」は、弁明人の自己矛盾の実質上の「非開示決定」なのである。斯くの如く「ダマシ決定」の適用は、情報公開制度から排除すべきものであると、強く求める。

(2)争点2について

ア この条例の本義は、「情報開示請求は、資格を問わず何人も出来る」と言うものが「大前提」である。翻って、抑々の大前提として、情報開示請求者は、それなりの理由、根拠、動機があるものに限られる。何もない無関係の人間が、情報開示請求をする筈がない事は論を待たない。
この大前提の上に成り立っている情報公開制度を蔑ろにして、本条例文を盾に、一律に拒否する事は出来ない筈である。そうであれば、全くその情報開示請求の理由、根拠、動機を考慮せずに「何でも拒否できる事になってしまう」実に都合の良い根拠条文である。
イ 実際上は、「情報開示請求者は、何らかの開示請求の理由(動機)や利用の目的等が存するから、開示請求を行うものであって、全く何の根拠も無く『情報開示請求』を行う者など皆無で有る事も明白である。
即ち、条例では、情報開示請求の資格、根拠は、不問であるが、条例制定の根底に、これらが存する上で、本条例制度が成立している事を示しているものである事は衆知の前提事項である。

(3)争点3について

「当初とは異なる理由」と「弁明人の手続き」の瑕疵があり、弁明人自らに取って都合の良い「弁論のすり替えは」不当で、無効であり到底認められない。審査請求人は「住第○○-○○号」、「住第○○-○○号」に基づいて申し立てを行っているものである。異なる存否不回答理由に付いての弁明は、「無効」である。
当初理由と弁明書での理由がすり替えられていて、全く異なる。弁明人は、本審査請求人に対して、当初に於いて下したその決定内容と理由に付いて、本弁明では、全く異なる理由を述べており、つまり、弁明人の理由内容、及び手続的に瑕疵があり、それは、「論理のすり替えであって、弁明とはなっておらず、手続き的に無効」であり、騙しの論理展開と弁明である。
「弁明理由のすり替え」は、不当であり無効であり、到底認められないものである。このインチキが認められるのであれば、何でも通用してしまう事になり、弁明人の「本件すり替え弁明」が通用するので有れば、審査会の体を為さない。

(4)争点4について

ア 別表項番1ないし3に係る開示請求について

 「住第○○-○○号」における弁明人の下りにおいて、「当該個人」が、請求人を指すのか、(株)○○を指すのか不明である。
一般的社会常識、社会通念として、「特定の個人が当庁から特定の文書の通知を受けたこと」と言う事は、その通知に拠り当該不動産業者(株)○○が群馬県知事よりの「処分があった事実を知り得た」と言うことである。
 本審査請求人は、抑々当該不動産業者○○の「処分に関わる全ての資料一式」の開示を求めたのであって、「特定個人が県から通知を受けたという文書」、つまり「通知文書の開示」を求めているのではない。
 此処で県の意味する「通知」を「県からの処分通知」とするのであれば、話の論点がズレており、全く異常なる理由付けである。本審査請求人の開示請求文書は、当該不動産業者○○が、県からの処分通知を受けたそのものでは無い事は明白である。更に、「県からの処分通知を意味するもの」で無ければ、「只の通知」である筈であるから、尚更の事、開示拒否に値するものでは無い事も明白である。
 そして仮に、「県からの処分通知を意味するもの」であったとしても、県が「処分申立を行った本審査請求人に対して、その処分事実を教えてしまうから」と主張する事は、実に本末転倒した「屁理屈」である。抑々、本審査請求人の処分申立が無ければ、県はどうやって当該不良不動産業者○○に対して、監督処分を行えたのか。此処に、県は、この監督処分が出来た道理を明確に示さなければならない。

イ 別表項番1及び2に係る開示請求について

 (ア)当該土地登記簿謄本、群馬県○○町○○番○○に拠れば、その土地取得原因は、「売買」と明記され、登記簿は、万人が何時でも、法務局にて取得出来るものである。即ち、公表されているものである。
 (イ)大前提として、当該不動産業者(株)、○○に対する処分の申立を行った者が、本審査請求人であって、違法行為事実等の事情を知っているからこそ、処分申立をしたものである。
 事情を知らない者の、本情報開示請求の必然性は可成り低い事は当然である。そうであるのに、本情報開示請求に対して、「本件対象文書の存否を答える事は、事実の有無を明らかにする結果」という、「全く本末転倒した詭弁とインチキ理論」である。
 「存知している者に対して知らせてしまう」からと言う、「本末転倒理論」であり、仮に不知の者の本情報開示請求であったとしたら、本情報開示請求は、本審査請求人のものと、文書特定する為に、同一記載請求内容とは為らない筈であり、只単に、一通に纏めた場合には、「群馬県知事が保持する、不動産業者(株)、○○に関係する、土地売買契約書、重要事項説明書、及び関係文書一式の情報開示請求」となる筈である。
 その場合には、当該不動産業者(株)、○○の処分事実とは全くの無関係事由であるから、須らく群馬県知事はその開示に応じなければならない事になる。
 (ウ)偶々、その当該不良宅地建物取引業者が、違法行為事由により、監督権者の群馬県知事から処分を受けたとしても、その当該事件の「顧客」であって処分を受けた当事者ではなく、何らその顧客の違法行為や過失を問うものではない事も明白である。本件は、不動産取引が行われる中で発生した事象であることは明白であり、誰も否定は出来ない。相手方がある事は当然である。
 もしそれが問題であるならば、顧客に付いての情報は、所謂「黒塗り」等を行い「部分開示」とも出来る筈のものである。「存否の不回答」は、公平公正の見地からも、不当決定である。

ウ 条例第14条ただし書ロの適用について

 条例第14条第2号但し書ロの適用を主張して、開示を強く要求する。
 1度目の訴訟は(株)○○の、本審査請求人に対する器物損壊・損害賠償事件であり、2度目は(株)○○が、宅地建物取引業法違反を犯して、何らの接道要件等に付いての、確認、取決を為さずに、怠った為に訴訟に至ったものである。そしてそれが原因で、今後の将来に渡り、本審査請求人は未だに損害を蒙り、係争中であり、何らの解決を見ていない。
 これらは、全て(株)○○の違法行為が原因、責任であり、本審査請求人が開示を求めている文書により、「事実関係を確認」されなければならない。

2 実施機関の書面における主張要旨

(1)争点1について

公文書の開示請求があった場合、当該公文書の存否を明らかにした上で、存在する場合は開示又は非開示を回答し、存在しない場合は存在しない旨を回答することが原則である。しかし、公文書の内容によっては、存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示した場合と同様に、個人や法人の権利利益を侵害したり、県の機関または国の機関が行う事務または事業に支障を及ぼす場合があり、このような場合は、例外的に公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否できる。

(2)争点2について

請求人は、既に知っている、本人である、あるいは、利害関係があることを理由に、存否応答拒否が不当だと主張する。しかし、条例は、公文書の開示請求権を「何人」に対しても認めており、開示請求者に対し、開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく、開示請求者が誰であるか、又は開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的事情によって、当該公文書の開示決定等の結論に影響を及ぼすものではない。

(3)争点3について

ア 別表項番1ないし3に係る開示請求について

 別表項番1ないし3に係る開示請求は、特定の個人が当庁から特定の文書の通知を受けたことを前提とするものであり、別表項番1に係る開示請求の対象公文書は特定の法人が特定の個人に交付した「重要事項説明書一式」、別表項番2に係る開示請求の対象公文書は特定の法人が特定の個人と取り交わした「土地売買契約書一式」、別表項番3に係る開示請求の対象公文書は特定の法人に対する行政処分に関わる資料一式であると考えられる。そして、本件対象公文書の存否を答えることは、別表項番1ないし3に係る開示請求により前提とされた事実の有無を明らかにする結果になる。
 「通知書『住第○○-○号』」は、特定の個人に対して「宅地建物取引業者への文書指導について」通知したものであるが、当該個人が当庁からその通知を受けたという事実の有無(以下「本件存否情報1」という。)は、条例第14条第2号に規定する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報である。また、本件存否情報1は、これを広く一般に公にする制度ないし慣行があるものとは認められず、また、そのような性質を有するものとは考えられないことから、条例第14条第2号ただし書きイに該当しない。

イ 別表項番1及び2に係る開示請求について

 別表項番1及び2に係る開示請求は、当庁による特定の法人に対する監督処分に関して、処分事由となった宅地建物取引業者の相手方等が特定の個人であることを前提としたものであり、別表項番1に係る開示請求の対象公文書は当該法人が特定の個人に交付した「重要事項説明書一式」、別表項番2に係る開示請求の対象公文書は当該法人が特定の個人と取り交わした「土地売買契約書一式」であると考えられる。そして、本件対象公文書の存否を答えることは、別表項番1及び2に係る開示請求により前提とされた事実の有無を明らかにする結果になる。
 また、前記の前提についてさらに詳しく述べるが、これは単に宅地建物取引業者の相手方等が特定の個人であるということにとどまらず、宅地建物取引業者の相手方等が当該取引に関する何らかの特殊な事情により、当該取引に関して当庁と当該法人との間で監督処分に係るやりとりが発生した事案に関わっているということを意味する。そして、その前提とされた事実の有無(以下「本件存否情報2」という。)は、条例第14条第2号に規定する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報である。また、本件存否情報2は、これを広く一般に公にする制度ないし慣行があるものとは認められず、そのような性質を有するものとは考えられないことから、条例第14条第2号ただし書イに該当しないものである。

ウ 条例14条2号ただし書ロ適用について

 具体的に請求人の生命、健康等の保護の必要性を示さず、将来に渡る権利関係に大きく影響するというだけでは条例第14条第2号ただし書ロの人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報には、該当しない。

3 実施機関の口頭説明における主張要旨

(1)別表項番1及び2に係る開示請求の請求内容によれば、単に○○氏、○○氏が(株)○○の顧客であるということにとどまらず、(株)○○に対する監督処分の原因となった取引に、○○氏・○○氏が顧客として関係していた、ということを意味している。宅地建物取引業者の監督処分を行うにあたり、その処分事由となった取引の相手方についての情報は、これを広く一般に公にする制度ないし慣行があるものとは認められない。したがって、当該文書の存否を明らかにするだけで、その前提となる事実、つまり、○○氏、○○氏という特定の個人が、(株)○○という特定の法人に対する監督処分の原因となった取引の相手方、すなわち顧客として関係していたかどうかが明らかとなり、条例第14条第2号に該当する特定の個人を識別できる情報を開示することになる。
(2)決定にあたり、個々の請求に即した理由を付すべきものと考え、別表項番1及び2については弁明書4(2)記載の主旨により、別表項番3については弁明書4(1)記載の主旨により決定通知書を作成した。
(3)当課は宅地建物取引業法を所管しているが、売買を行うにあたって、宅地建物取引業として行った売買なのか、単に自社物件を売却しただけなのか、色々な捉え方がある。いわゆる商品としての土地を売却したのか、それとも商品として捉えていない単なる自社物件を売却したのか、色々なケースが存在し、ただ単に売却したという事実であれば登記簿謄本を見れば明らかではあるが、業としての顧客かどうかということに関しては、請求書を見ただけではわからず、登記簿謄本を見てもわからないと考えられる。

第5 審査会の判断

1 争点1(存否応答拒否決定の解釈について)

(1)請求人は、存否応答拒否決定を情報公開制度から排除すべき旨主張する。その理由として、開示請求に係る公文書が存在しない場合には不存在決定がなされることから、存否応答拒否決定をすることで文書の存在を認めることになり、存否さえ答えないことで、非開示情報を開示しないようにするという目的を達成できない瑕疵が存在していることをあげている。これに対して実施機関は、条例第17条により開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することになるときは、存否応答拒否決定ができる旨主張しているため、この点について検討する。
(2)確かに請求人の主張するとおり、公文書が存在しない場合には不存在決定を行い、存在する場合には存否応答拒否を行ったのでは、開示請求者に当該公文書の存在を推認させることになり、存否を答えないことで非開示情報を開示しないという目的を達成できない。しかし、存否応答拒否決定は、公文書の存否を答えるだけで非開示情報を開示することになる場合において、常に存否を明らかにしないで請求を拒否するものであり、文書の存否に応じて決定が変わるものではない。すなわち、仮に開示請求に係る公文書が不存在であっても、不存在決定を行うのではなく存否応答拒否決定を行うものである。したがって、いずれの場合にも存否応答拒否決定が行われることによって、非開示情報が明らかになることはなく、条文に瑕疵があるとする請求人の主張には理由がない。
 したがって、条例第17条に基づいて、開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否できる。

2 争点2(開示請求者が誰であるかということについて)

(1)請求人は、開示請求者は、何らかの開示請求の理由や利用の目的等が存するから、開示請求を行うものであって、全く何の根拠もなく開示請求を行う者など皆無であり、請求者の理由や目的等を考慮すべきと主張する。それに対し実施機関は、条例は、公文書の開示請求権を「何人」に対しても認めており、開示請求者に対し、開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく、開示請求者が誰であるか、又は開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的事情によって、当該公文書の開示決定等の結論に影響を及ぼすものではないと主張しており、この点について検討する。
(2)条例は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わずに開示請求を認めていることから、開示、非開示の判断に当たっては、本人からの自己情報についての開示請求である場合も含め、開示請求者が誰であるかは考慮されないものである。このことは、個人に関する情報については条例第14条第2号ただし書イからハまでに該当するものを除き、これを非開示とするのみで、本人からの開示請求のあった場合については特段の規定を設けていないことからも明らかである。
また、請求人の主張するとおり、開示請求者が誰であるかや、目的や動機を考慮することになれば、開示請求者の本人確認を厳格に行った上で開示することが必要となるが、現在の条例においてはそのような規定は一切存在しない。これは、条例の非開示情報の規定や手続に関する規定が、不特定多数の者に開示されることを前提として設定されているものであり、開示請求者が誰であるかや、目的や動機を考慮しないこととしているためである。
(3)公文書開示制度は、上記のとおり、何人に対しても等しく情報の開示を行うことで説明責任を果たすことを目的とする制度であり、自己に関する情報の開示を請求する権利を認めることで、個人の権利利益の保護を目的としている個人情報保護制度とは性格を異にするものである。
(4)したがって、条例に基づく公文書開示請求においては、開示請求者が本人であるか、又は開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的な事情は、非開示情報の判断に影響しない。

3 争点3(非開示理由の追加について)

(1)請求人は、当初に於いて下したその決定内容と理由に付いて、全く異なる理由を述べており、つまり、弁明人の理由内容、及び手続的に瑕疵があり、それは、「論理のすり替えであって、弁明とはなっておらず、手続き的に無効」であり、騙しの論理展開と弁明であり、「弁明理由のすり替え」は、不当であり無効であり、到底認められないものであると主張するため、この点について検討する。
(2)公文書の存否を明らかにしない決定は、群馬県行政手続条例(平成7年12月20日条例第44号)第8条でいう「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当し、ここでは「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」とされている。この理由付記制度の趣旨は、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立の便宜を与えることにあると考えられる。これについて、上記趣旨を害しない範囲における理由の追加についてまで、一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を審査請求において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である。
(3)では、本件において上記趣旨を害しないと認められる事情が存するか否かを検討するが、処分庁の判断の慎重、合理性を担保して恣意を抑制する趣旨は非開示の理由を具体的に記載して通知させること自体をもってひとまず実現される。そして、不服申立の便宜は請求者の利益を図ることを趣旨としているところ、本件においては、弁明書において実施機関から原決定とは異なる理由が主張され、請求人は反論書を提出する際に、それに対して反論する機会を与えられたものであり、実際に請求人は反論書において反論を行っている。つまり、追加された理由について、判断の資料としたとしても、請求人にとって反論の機会がおよそ与えられなかったといった実質的な不意打ちになる事情は認められない。
(4)さらに、理由の追加を認めた方がかえって紛争の一回的解決に資するという、請求者の利益に適う場合があると考えられる。すなわち、仮に当初の理由についてのみ判断を行い、決定が妥当ではなかったという結論に至り、決定を取り消してやり直す場合には、その決定は処分としては当初の決定とは別個のものとして扱われることになり、実施機関は裁決の拘束力により当初の理由を非開示理由とすることはできないが、別の理由で再度存否応答拒否決定を行うことができ、これは裁決の効力に抵触するものではないと考えられる。このように同一人からの同一文書についての一個の請求事案という紛争が一回で解決されないという可能性があるわけである。そのようなことを踏まえると、実施機関が当初の理由だけではなく別の理由について主張する意思があるならこれを許し、できるだけ少ない回数で同一文書の最終決定まで行われるようにすることが開示請求者の利益に適うものである。もちろん、このようにすると、当初とは異なる理由による判断の公正妥当を担保し不服申立ての便宜を与えるという理由付記制度の趣旨が完全には維持されないことになるが、それでも、当初の理由に基づく存否応答拒否決定の適否を審理判断した後に、別の理由で再度存否応答拒否決定がされ、これにつき改めて審理判断することに比べれば、全体としてみれば、なお優るということである。
本件においても、仮に原決定が妥当ではないと判断したとしても、実施機関が改めて異なる理由により再度存否応答拒否をすることは、裁決の効力には影響しないものである。したがって、追加の主張を認めた方が一回的解決に資するという請求者の利益に適う関係にあるといえる。
(5)上記(3)(4)より、本件においては、理由付記制度の趣旨を害しないと認められる事情が存すると考えられる。したがって、本件においては、実施機関による理由の追加を認めないとする事情はなく、審査会に提出されている全ての事情を考慮し判断を行うものとする。

4 争点4(存否応答拒否の理由について)

(1)別表項番1に係る開示請求について

ア 本件存否情報2について

 実施機関は本件存否情報2について、条例第14条第2号に該当する旨の主張をしているため、この点について検討する。
 別表項番1に係る開示請求は(株)○○から○○氏、○○氏に対して、「重要事項説明書」が交付されたことが前提となっている。これについて、請求人は○○氏、○○氏が(株)○○の顧客かどうかについては、土地登記簿謄本で公になっている旨を主張している。しかし、別表項番1に係る開示請求の請求内容をみるかぎり、当該公文書の存否を答えることで、単に○○氏、○○氏が(株)○○の顧客であるというだけにはとどまらず、(株)○○に対する監督処分の原因となった取引に、○○氏、○○氏が顧客として関係していた、という事実の有無を明らかにすることになってしまう。
 そしてこれは,特定の個人を識別することができるものと認められるから、条例14条2号に該当するところ、当該情報は、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されているとは認められないことから、同号ただし書イに該当しない。
 また実施機関の主張するとおり、単に売買があっただけでは、それは業として売買を行ったのか、又は自社物件を売却しただけなのかまでは分からず、顧客かどうかまでは登記簿謄本を見ても公になっていない。
 したがって、本件存否情報2は条例第14条第2号に該当し、非開示情報にあたる。

イ 本件存否情報1について

 実施機関は本件存否情報1について、条例第14条第2号に該当する旨の主張をしているため、この点について検討する。なお、この点について、請求人は弁明書における「当該個人」が誰を指すのか不明であるとしているが、(株)○○は法人であって、個人ではないため、ここでの「当該個人」とは請求人を指しているものである。
 別表項番1に係る開示請求の内容は、「県から当請求人に交付された通知書『住第○○-○号』…」と記載されており、県から特定の個人である請求人に特定の通知が交付されたことを前提としており、公文書が存在しているか否かを答えることで、県から特定の個人へ特定の通知が交付された事実の有無が明らかになってしまう。
 そしてこれは,特定の個人を識別することができるものと認められるから、条例14条2号に該当するところ、当該情報は、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されているとは認められないことから、同号ただし書イに該当しない。
 この場合、開示請求者に対して、当該開示請求者に係る個人情報が非開示になることになるが、公文書開示制度において、開示請求者が誰であるかによって結論が左右されないことは、上記2で述べたとおりであり、本人の情報であってもそれが条例第14条第2号で定める個人情報に該当する限り非開示情報となる。
 したがって、本件存否情報1は条例第14条第2号に該当し、非開示情報にあたる。

ウ 条例第14条2号ただし書ロ該当性について

 請求人は、訴訟提起を余儀なくされ、それを維持し判決を受けるのに大変な時間と費用と労力がかかっているうえに、接道要件がとれないおそれという不利益、そのほか様々な不利益を被っていることから、条例第14条2号ただし書ロの適用を主張しているため、この点について検討する。
 条例第14条2号ただし書ロは、プライバシーを中心とする個人の正当な権利利益を保護する一方で、公にすることにより保護される利益がそれに優越する場合には、例外的に当該情報を開示すべきことを定めたものである。条例上、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず開示請求を認めるという公文書開示制度においては、開示請求者が誰であるかは考慮されないことから、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは、人の生命等を保護するため、当該情報を開示請求者以外の者にも広く公開することが必要であると認められる情報をいうものと解される。
 これを本件についてみるに、公にすることにより保護される利益は、上記4(1)ア及びイで述べた個人情報である。それに対し請求人は、(株)○○が行った一連の取引及び対応等から2度の訴訟提起を余儀なくされたと主張している。1度目は器物損壊による損害賠償請求訴訟であり、2度目は、請求人所有の土地に関する損害賠償請求訴訟であり、これらの裁判を維持し判決を受けるのに大変な時間と費用と労力がかかるという不利益が請求人に生じている旨を主張する。また、請求人は、共有地について設備所有権・使用権、費用負担の確認、当該地を使用する場合の取決め、建築基準法に関連した取決め及び当該地の固定資産税に関する取決め等の取決めが一切明確にされず、継承もされず、又新たに何の取決めもなされなかったために多大なる不利益を被っており、請求人が開示を求めている文書による事実関係の確認の必要性を主張する。確かに、請求人からはこれら種々の不利益が主張されているものであるが、これらはあくまで請求人の個人的なものにとどまり、本件存否情報1及び2はそれぞれ個人に関する情報であって、人の生命等を保護するため、当該情報を開示請求者以外の者にも、広く公開することが必要であると認められる情報であるとまではいえない。
 したがって、条例第14条第2号ただし書ロを適用すべきとする請求人の主張は認められない。

エ まとめ

 上記アないしウより、別表項番1に係る開示請求は、公文書が存在するか否かを答えることで、条例第14条第2号で定める個人情報である本件存否情報1及び2を明らかにしてしまう関係にあるため、実施機関が行った決定は妥当である。

(2)別表項番2に係る開示請求について

ア 本件存否情報2について

 別表項番2に係る開示請求は(株)○○と○○氏、○○氏との間で、「売買契約書」が取り交わされたことが前提となっている。これについて、請求人は○○氏、○○氏が(株)○○の顧客かどうかについては、土地登記簿謄本で公になっている旨を主張している。しかし、別表項番2に係る開示請求の請求内容をみるかぎり、当該公文書の存否を答えることで、単に○○氏、○○氏が(株)○○の顧客であるというだけにはとどまらず、(株)○○に対する監督処分の原因となった取引に、○○氏、○○氏が顧客として関係していた、という事実の有無を明らかにすることになってしまう。
 そしてこれは,特定の個人を識別することができるものと認められるから,条例14条2号に該当するところ,当該情報は,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されているとは認められないことから,同号ただしイに該当しない。
 また、実施機関の主張するとおり単に売買があっただけではそれは、業として売買を行ったのか、自社物件を売却しただけなのかまでは分からず、顧客かどうかまでは登記簿謄本を見ても公になっていない。
 したがって、本件存否情報2は条例第14条第2号に該当し、非開示情報にあたる。

イ 本件存否情報1について

 上記4(1)イで述べたとおりである。

ウ 条例第14条2号ただし書ロ該当性について

 上記4(1)ウで述べたとおりである。

エ まとめ

 以上より、別表項番2に係る開示請求は、公文書が存在するか否かを答えることで、条例第14条第2号で定める個人情報である本件存否情報1及び2を明らかにしてしまう関係にあるため、実施機関が行った決定は妥当である。

(3)別表項番3に係る開示請求について

ア 本件存否情報1について

 上記4(1)イで述べたとおりである。

イ 条例第14条2号ただし書ロ該当性について

 上記4(1)ウで述べたとおりである。

ウ まとめ

 以上より、別表項番3に係る開示請求は、公文書が存在するか否かを答えることで、条例第14条第2号で定める個人情報である本件存否情報1を明らかにしてしまう関係にあるため、実施機関が行った決定は妥当である。

5 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成29年5月29日 諮問
平成29年6月19日
(第61回第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成29年8月9日
(第62回第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成29年10月4日
(第63回第一部会)
審議
平成29年10月16日 答申
別表
項番 (あ)
請求年月日
(い)
開示を請求する公文書の内容又は件名
(う)
決定年月日
(え)
決定
1 平成28年9月13日 県から当請求人に交付された通知書「住第○○-○号」(平成○年○月○日付)記載の、(株)○○に対する監督処分に関わる資料で、「(株)○○が、顧客の○○、○○に交付した『重要事項説明書一式』」 平成28年9月26日 存否応答拒否
2 平成28年9月14日 県から当請求人に交付された通知書「住第○○-○号」(平成○年○月○日付)記載の、(株)○○に対する監督処分に関わる資料で、「(株)○○が、顧客の○○、○○と取り交わした『土地売買契約書一式』」 平成28年9月26日 存否応答拒否
3 平成28年9月27日 県から当請求人に交付された通知書「住第○○-○号」(平成○年○月○日付)記載の、(株)○○に対する処分に関わる全ての資料一式 平成28年10月11日 存否応答拒否

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