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公文書開示審査会答申第190号

更新日:2017年12月5日 印刷ページ表示

「群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての土地売買契約書(写)一式。」外2件の公文書の存否を明らかにしない決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、別表の(あ)欄に記載の年月日付けで、別表の(い)欄に記載の開示請求(以下「本件各請求」という。)を行った。

2 本件各請求の内容に係る補正

 実施機関は平成29年2月28日付けで、条例第12条第2項の規定により別表項番1ないし3に係る開示請求についてそれぞれ補正依頼(以下「本件各補正依頼」という。)を行い、これに対して、請求人は平成29年3月9日付けでそれぞれ補正書(以下、「本件各補正書」という。)を提出し、以下のとおり補正を行った。

(1)別表項番1に係る請求について

ア 開示を求める公文書は、「住宅政策課が保有する公文書」である。
イ 住宅政策課が保有する公文書である場合、それは「宅建業者の指導」及び「宅建業者の監督処分」に係る文書である。
ウ 開示の実施方法は、「送付による交付を受ける。」

(2)別表項番2に係る請求について

ア 開示を求める公文書は、「住宅政策課が保有する公文書」である。
イ 住宅政策課が保有する公文書である場合、それは「宅建業者の指導」及び「宅建業者の監督処分」に係る文書である。
ウ 「関係する」とは、「(株)○○が作成したものである。」及び「(株)○○が受領したものである。」
エ 開示の実施方法は、「送付による交付を受ける。」

(3)別表項番3に係る請求について

ア 開示を求める公文書は、「住宅政策課が保有する公文書」である。
イ 住宅政策課が保有する公文書である場合、それは「宅建業者の指導」及び「宅建業者の監督処分」に係る文書である。
ウ 開示の実施方法は、「送付による交付を受ける。」

3 実施機関の決定

 実施機関は、別表の(う)欄に記載の年月日に、本件各請求に係る公文書について、別表の(え)欄に記載の内容について、別表(お)欄記載の決定を行い、それぞれ以下の理由を付して、請求人に通知した。

(1)別表項番1に係る決定について

ア 別表項番1-1に係る決定について

条例第17条該当
 特定法人の行政指導に関する文書は、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定法人が行政指導を受けたかどうかという法人に関する情報であって、当該法人の権利、競争上の地位を害するおそれがある情報(条例第14条第3号イ)を明らかにすることになるため。

イ 別表項番1-2に係る決定について

 (株)○○に対して、宅建業法に基づく監督処分を行ったことがないため。

(2)別表項番2に係る決定について

ア 別表項番2-1に係る決定について

条例第17条該当
 特定法人の行政指導に関する文書は、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定法人が行政指導を受けたかどうかという法人に関する情報であって、当該法人の権利、競争上の地位を害するおそれがある情報(条例第14条第3号イ)を明らかにすることになるため。

イ 別表項番2-2に係る決定について

 (株)○○に対して、宅建業法に基づく監督処分を行ったことがないため。

(3)別表項番3に係る決定について

ア 別表項番3-1に係る決定について

条例第17条該当
 特定法人の行政指導に関する文書は、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定法人が行政指導を受けたかどうかという法人に関する情報であって、当該法人の権利、競争上の地位を害するおそれがある情報(条例第14条第3号イ)を明らかにすることになるため。

イ 別表項番3-2に係る決定について

 (株)○○に対して、宅建業法に基づく監督処分を行ったことがないため。

4 審査請求

 請求人は、実施機関に対して、別表項番1-1、別表項番2-1及び別表項番3-1に係る決定(以下「本件各処分」という。)を不服として平成29年4月20日付けで審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

5 審査請求書の補正

 実施機関は平成29年5月1日付けで、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第23条の規定により補正依頼を行い、請求人はそれに対して平成29年5月5日に補正書を提出した。

6 弁明書の送付

 実施機関は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成29年5月31日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。

7 反論書の提出

 請求人は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第30条第1項の規定に基づき、平成29年6月28日付けで反論書を作成し、実施機関に提出した。

8 諮問

 実施機関は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成29年7月14日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

9 意見書の提出

 請求人は、審査会に対して、条例第32条に基づき、平成29年7月26日付けで意見書を作成し、提出した。

第3 争点

1 争点1(存否応答拒否の解釈について)

条例で定める存否応答拒否決定は適法なものとして認められるか。

2 争点2(補正の適法性について)

実施機関の行った補正が適当であるか。

3 争点3(存否応答拒否の理由について)

本件各処分で公文書の存否を明らかにしない理由が、条例第14条第3号イに該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 請求人の主張要旨

(1)争点1について

 ア 「存否応答拒否決定」を行えば、「文書不存在決定」ではないのであるから、演繹的に当該文書を保持している事になる為、何らの本決定の当初目的を達成するものではない矛盾が有る事を、自ら露呈しているに過ぎない。この存否応答拒否決定は、文書不開示決定と何ら大差ないインチキ決定である。
 イ 本件決定事項の根拠としての第17条規定自体には、「文書保持を示すものであるので、本条本来の目的は何ら達成される事なく、条文そのもの自体に瑕疵が存在する」ものを、本件決定では適用しているものであり、ここに論理矛盾が存在する。
 ウ 拠って、群馬県情報公開条例第17条の援用は、抑々瑕疵ある条文を適用するものであるから、当然に不当で無効である。

(2)争点2について

 ア 弁明人の「宅建業法に基づく指導を受けたことを前提とするもの」とあるが、本審査請求人の開示請求書に於いて、何ら一切「指導」などの意味する文言を使用した覚えはない。
 イ 本開示請求は、当該不動産業者○○が(行政)指導などの処分を受けたかどうかを調べる為のものでは無い事は、これに拠り明白である。
 ウ 県実施機関の「文書特定の為の」補正依頼により、それに答えただけのものであって、本審査請求人の積極的意志ではない事も又明らかである。
 エ つまり、県が本審査請求人に対して、文書特定の為の「誘導」を行ったものであり、その「誘導した結果を理由」に開示拒否する事は不当である。

(3)争点3について

 ア 当該不動産業者○○が、違法行為に拠り行政指導処分を受けたとしても、それは許可免許制度の権利義務、社会的責任に於いて、その指導処分結果を広く世間で認知されても仕方のない事である。
 イ 「取引先との関係が悪化することが予想されるなど、…」と言うが、抑々取引先とは何を意味するものか。不動産業者に於ける取引先とは、仲間の不動産業者と一般人、一般消費者である。ここで開示、不開示結果を比較衡量すれば、「取引先との関係悪化」については、当然に仲間内だけのものであり、県は一般消費者に対する保護を優先する事は明白であり、注意喚起をも行う必要があると考える。従って、県の主張する根拠に合理的理由はなく開示されるべきである。
 ウ 法人として群馬県知事から免許許可を得て事業を営んでいる以上、それ相当の社会的義務や責任などが当然に問われるものであり、当該不動産業者○○も了知済み事項である。当該不動産業者○○は、群馬県知事より許可を得て、不動産業を、広く不特定多数の者、県民を対象に営業している以上、社会的責任、義務、信用などが問われるものであるから、幾ら事業者保護の観点があると謂えども、監督権者から行政指導処分を受けている事実があるとしたら、消費者保護の観点からも公表されるべきである。
 エ 免許事業者は、一般の非免許事業者とは異なり、その営業上の権益を保護されるのと同時に、ある一定の社会的規範と責任を負う事は明白である。更には、違法行為が認められれば懲罰的に、県のホームページで、全世界に向けて、公表されている通りである。この事実は、一般消費者保護の観点からも重要な点である。
 オ 本件は、条例第14条第3号但し書きに該当する。県が保持する情報を、請求人や一般消費者に適切に開示を行うことで、業界全体として信用性、透明性などが高まり、特定の消費者である請求人に対する被害が防止されるだけでなく、一般消費者が未然に被害を防止するための行動(当該業者と契約をする時には、「より慎重」に行うことになる)を取る事ができるようになり、結果的に業界全体として、消費者の被害を少なくすることによって、行政指導の実効性を高めて、業界全体の信用も得る事になる。

(4)その他請求人の主張について

 開示請求者には何らかの事情や背景が存在するからこそ、開示請求を為すものであって、個々にその事情を考慮し慎重に決定を下すべきものである。
 「例え本人から本人に関する情報の開示請求があったとしても開示拒否する」のでは、県が「ある特定目的の為に個人情報を本人の知らない間に、無断勝手に収集し保持している場合」に於いて、本人請求の場合でも、開示すると都合が悪い場合には「開示拒否」する事になる。これは「秘密警察行政を容認する事」になり、民主主義を否定する由々しき大問題である

2 実施機関の主張要旨

(1)争点1について

 公文書の開示請求があった場合、当該公文書の存否を明らかにした上で、存在する場合は開示又は非開示を回答し、存在しない場合は存在しない旨を回答することが原則である。しかし、公文書の内容によっては、存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示した場合と同様に、個人や法人の権利利益を侵害したり、県の機関または国の機関が行う事務または事業に支障を及ぼす場合があり、このような場合は、例外的に公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否できる。

(2)争点3について

 別表項番1ないし3に係る開示請求は、特定の法人が当庁から宅建業法に基づく指導を受けたことを前提とするものであり、別表項番1に係る開示請求の対象公文書は特定の法人が宅建業法に基づく業務として関係した「土地売買契約書一式」、別表項番2に係る開示請求の対象公文書は特定の法人が宅建業者の相手方等に交付した、または特定の法人が交付を受けた「重要事項説明書一式」、別表項番3に係る開示請求の対象公文書は特定の法人に対する行政指導に関わる資料一式であると考えられる。そして、本件対象公文書の存否を答えることは、別表項番1ないし3に係る開示請求により前提とされた事実(以下「本件存否情報1」という。)を明らかにする結果になる。
 本件存否情報1の非開示情報該当性についてであるが、本件存否情報1にかかる指導とは、宅建業法第71条に規定する行政指導である。行政指導は広く一般に公にする制度ないし慣行は認められない。そもそも行政指導とは、指導を行おうとする行政機関がその掌握事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため、相手方の任意の協力に基づき一定の作為又は不作為を求めるものであり、必ずしも違法状態を是正する目的により行うものに限られない。しかし、本件存否情報を明らかにすることは、特定の法人が宅建業法上違法な行為を行ったのではないかとの憶測を呼び、当該法人に対する信用・社会的評価を低下させ、取引先との関係が悪化することが予想されるなど、事業活動に支障を及ぼし、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。

第5 審査会の判断

1 争点1(存否応答拒否の解釈について)

(1)請求人は、存否応答拒否決定を情報公開制度から排除すべき旨主張する。その理由として、開示請求に係る公文書が存在しない場合には不存在決定がなされることから、存否応答拒否決定をすることで文書の存在を認めることになり、存否さえ答えないことで、非開示情報を開示しないようにするという目的を達成できない瑕疵が存在していることをあげている。これに対して実施機関は、条例第17条により開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することになるときは、存否応答拒否決定ができる旨主張しているため、この点について検討する。
(2)確かに請求人の主張するとおり、公文書が存在しない場合には不存在決定を行い、存在する場合には存否応答拒否を行ったのでは、開示請求者に当該公文書の存在を推認させることになり、存否を答えないことで非開示情報を開示しないという目的を達成できない。しかし、存否応答拒否決定は、公文書の存否を答えるだけで非開示情報を開示することになる場合において、常に存否を明らかにしないで請求を拒否するものであり、文書の存否に応じて決定が変わるものではない。すなわち、仮に開示請求に係る公文書が不存在であっても、不存在決定を行うのではなく存否応答拒否決定を行うものである。したがって、いずれの場合にも存否応答拒否決定が行われることによって、非開示情報が明らかになることはなく、条文に瑕疵があるとする請求人の主張には理由がない。
 したがって、条例第17条に基づいて、開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否できる。

2 争点2(補正の適法性について)

(1)請求人は、本件各補正依頼において実施機関による誘導が行われており、そうした補正依頼は不当であると主張しているため、この点について検討する。

(2)形式上の問題点について

 ア 条例第12条は、「開示請求書に形式上の不備があると認められるとき」には、補正を求めることができる、と定める。この「開示請求書に形式上の不備があると認められるとき」とは、第1項で定める記載事項が記載されていない場合のほか、同項第2号の公文書を特定するために必要な事項の記載が不十分であるため開示請求に係る公文書が特定されていない場合を含む。さらに、実施機関は補正を求める場合には、開示請求者に対し、補正の参考となる情報を提供する義務があると定められている。
 イ これについて、まず補正前の開示請求書の記載が公文書を特定するために不十分であったかを検討する。実施機関の本件各補正依頼書には、「『群馬県が保持する』、『全ての』、との記載があります。群馬県のどのような業務に関するものなのか、群馬県の保有するどのような文書なのか、対象となる公文書を絞り込めなければ、開示請求に係る公文書を特定することは、困難です。」と記載されている。
 ウ 確かに補正前の開示請求書の記載を見ると、いずれも「群馬県が保持する…に関係する、全ての…」となっている。このような記載だと、群馬県が(株)○○と直接取引を行ったものや、(株)○○が仲介となって行った取引に関するもの、そのほか指導や処分をするために取得したもの等、多くの種類の公文書が請求されているものと考えられる。そのため、それらの公文書を特定する為には、各所属の保有する文書を網羅的に検索する必要があり、このままの記載だと検索対象があまりに広範かつ曖昧であって、実施機関をして公文書を特定させるのが非常に困難であると認められる。したがって、補正前の開示請求書は、公文書を特定する為に必要な事項の記載が不十分であるため、開示請求に係る公文書が特定されていない場合にあたるといえる。
 エ では次に、実施機関の送った本件各補正依頼が適正であったかを検討する。

(ア)本件各請求における本件各補正書記載の項目1について(※注 項目の数字はローマ数字だが、機種依存文字のためアラビア数字で表記。以下同じ)

 ここでは、「住宅政策課が保有する公文書である」という項目に○印を付ける欄があり、該当しない場合には、具体的に記載する欄が設けてある。これは、開示請求書の宛て名に括弧書きで「住宅政策課」とあったことから、開示請求に係る公文書を保有する所属を確認しているものであり、公文書を特定する為に行ったものとして不適切な点はない。

(イ)本件各請求における本件各補正書記載の項目2について

 ここでは、開示請求に係る公文書を保有する所属が住宅政策課である場合に、どの業務に関するものかを確認しているものであって、1~8まで業務内容が記載されており、同じく○印を付ける欄がある。更に、いずれにも該当しない場合には、具体的に記載する欄が設けてある。その下には、「参考」として、住宅政策課各係の主な業務が挙げられており、それぞれの係が上で挙げた1~8のどの業務を行っているかの情報が記載されている。これらも公文書を特定する為に行ったものであり、不適切な点はない。また、「参考」として挙げられた情報によって、住宅政策課の各係がどのような業務を行っているかが網羅されており、補正の参考のために提供義務がある情報として十分な記載といえる。
(※注 業務内容についている数字1~8は数字に○囲みが付いているが、環境依存文字のため○なしで表記。以下同じ)

(ウ)別表項番2に係る開示請求における補正書記載の項目3について

 ここでは、「関係する」という言葉の意味を確認しており、「作成したもの」か「受領したものか」、いずれにも該当しない場合には、具体的に記載する欄が設けられている。こちらでも、新たな情報提供は行っていないが、請求者の表現の意味するところを確認しているものであり、補正をするために新たな情報提供が必要とは考えられないため、不適切な点はない。

(エ)別表項番3に係る開示請求における補正書記載の項目3について

ここでは、項目2で1~5を選んだ場合には、「関係図書」とはどのような関係かを具体的に記載する欄が設けられている。ここでは新たな情報提供はされていないが、請求者の表現の意味するところを確認しているものであり、項目2で提供した情報に基づき公文書の特定に足りる記載をすることができるものと考えられるため、不適切な点はない。

(オ)別表項番1に係る開示請求における補正書記載の項目3及び、別表項番2及び3に係る開示請求における補正書記載の項目4について

開示の実施方法について、補正前の記載のままだと、「閲覧」と「送付による交付」両方を希望していたため、方法の確認を行っているものであり、形式的な不備を補正するものとして不適切な点はない。
オ したがって、本件各補正依頼は公文書を特定するために行ったものであり、補正に際して行う必要な情報提供についても適正なものとして認められ、形式的な問題はない。

(3)実施機関による誘導が行われたという主張について

 ア 本件各補正書の項目を見てみると、○印を付ける欄を設けることによって、確かに開示請求に係る内容を特定の情報に限定できるようになっている項目がある。しかし、これらはあくまで文書の特定の為に作られた項目であり、単に住宅政策課の業務内容を網羅的に挙げているものであって、実施機関の意図する項目に限定したものではない。更に、いずれにも該当しない場合には、具体的に記載する欄が設けられており、必ずいずれかに○印を付けなければならないというわけでもない。したがって、本件各補正書の記載内容を見る限り、請求人は自らの自由な意思に基づいて、「7宅建業者の指導」及び「8宅建業者の監督処分」の欄に○印を付けたものであり、実施機関に誘導されたとする請求人の主張を裏付ける事実は認められない。
 イ そのほか、実施機関が意図的に誘導したとすることを裏付けるような事実は認められない。また、実施機関の補正によって、もともと求めていた文書の範囲が限定されたものであるが、結果として請求人が求めていた範囲外のものに誘導されたという事情もない。
 ウ 請求人の利益を考慮すると、本件各補正書の記載内容について、仮に「7宅建業者の指導」に○印を付けた場合には、存否応答拒否になる旨の記載をしておくことがより望ましいと考えられるが、それをしなかったからといって本件各補正依頼が不当であるとまではいえない。
(4)したがって、本件各補正依頼は条例の趣旨に沿った適正なものと認められる。

3 争点3(存否応答拒否の理由について)

(1)別表項番1-1、2-1及び3-1に係る開示請求に共通する事項について

 別表項番1-1、2-1及び3-1に係る開示請求は、補正に従うと、(株)○○を名指ししたうえでその法人の行政指導に関連して群馬県が保有している売買契約書(写)一式、重要事項説明書類(写)一式、及び関係図書類一式(以下「売買契約書等」という。)を求めるものである。そうすると、それぞれ(株)○○に対する行政指導に関連して群馬県が売買契約書等を取得したことが前提となっており、本件対象文書の存否を答えることは、特定の法人が宅建業法違反の嫌疑がかけられたこと等により、処分庁が当該法人に行政指導を行ったという事実の有無(以下「本件存否情報2」という。)を明らかにするものであると認められる。

(2)別表項番1-1に係る開示請求について

 ア 請求人は、許可を得て業務を行っている法人は、社会的責任として行政指導を受けた事実を公表される不利益を甘受すべきと主張している。処分庁はこれに対して、行政指導を行った事実の有無を明らかにすることは法人の正当な利益を害すると主張しているため、この点について検討する。
イ 実施機関の説明によれば、住宅政策課の宅建業係の行う宅建業法違反の嫌疑がかけられたこと等により行政指導を行った場合にそれを公表する制度や慣行はないということである。したがって、本件存否情報2が明らかにされた場合、特定の法人が違法な行為を行ったのではないかとの憶測を呼び、当該法人に対する信用を低下させ、取引先との関係が悪化することが予想されるなど、当該法人の事業活動に支障を及ぼし、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
 これについて請求人は、県から処分を受けた場合には、県のホームページにその旨掲載されるものであり、業者側はその不利益を事前に了知しているものであって、「指導監督処分」を受けた場合の不利益を斟酌する必要はない旨主張している。しかし、「行政指導」とは「行政機関がその任務又は掌握事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないもの」(行政手続法(平成5年11月12日法律第88号)第2条第6号)をいい、「処分」にあたる監督処分とは明確に異なる概念である。したがって、両者はそれぞれ別に考慮すべきであり、「行政指導」は、「処分」と異なり、違法状態を是正するものに限られず、それに至らない状態を是正するためにもされるものである。県が一定の「処分」に限ってホームページで公表していることを踏まえれば、「行政指導」を受けた場合についても、その事実の有無を開示される不利益を甘受すべきとはいえない。
 ウ 請求人の主張する条例第14条第3号ただし書は、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等の権利利益を比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないとするものである。本件存否情報2は、あくまで処分庁が行政指導を行ったという事実の有無であって、行政指導といってもその内容や態様は様々であり、本件存否情報2を開示することにより人の生命、健康等の利益に直結するものではないし、請求人が主張する利益はあくまで一般的・抽象的なものであって、人の生命、健康等を守るために公にすることが必要とまでは認められないものである。
 エ したがって、同号ただし書を適用すべきとの請求人の主張は認められないため、本件存否情報2は同号イに該当し、非開示情報にあたる。

(2)別表項番2-1に係る開示請求について

上記3(1)で述べた理由と同様の理由により、本件存否情報2は条例第14条第3号イに該当し、非開示情報にあたる。

(3)別表項番3-1に係る開示請求について

上記3(1)で述べた理由と同様の理由により、本件存否情報2は条例第14条第3号イに該当し、非開示情報にあたる。

(4)まとめ

 以上より、別表項番1-1、2-1、及び3-1に係る開示請求は、公文書が存在するか否かを答えることで、条例第14条第3号イで定める法人情報である本件存否情報2を明らかにしてしまう関係にあるため、実施機関が行った決定は妥当である。

4 その他請求人の主張について

 (1)請求人は、開示請求者の個々の事情を考慮して判断すべきと主張する。答申第187号で示したとおり、開示請求者が本人であるか、又は開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的な事情は、非開示情報の判断に影響しない。
 (2)請求人は更に、本人から本人に関する開示請求を拒否することになれば、それは秘密警察行政を容認する事になり民主主義の否定であると主張する。しかし、本人情報の開示請求の可否は、個人情報保護制度によって判断されるものであって、公文書開示制度において開示できないからといって、問題ではない。

5 結論

以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成29年7月14日 諮問
平成29年8月9日
(第62回第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成29年10月4日
(第63回第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成29年11月21日
(第64回第一部会)
審議
平成29年11月30日 答申
別表
項番 (あ)
請求年月日
(い)
開示を請求する公文書の内容又は件名
(う)
決定年月日
(え)
開示を請求された公文書の内容又は件名
(お)
決定
1 1-1 平成29年2月17日 群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての土地売買契約書(写)一式。 平成29年3月15日 宅建業者の指導に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての土地売買契約書(写)一式。 存否応答拒否
1-2 平成29年3月15日 宅建業者の監督処分に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての土地売買契約書(写)一式。 不存在
2 2-1 平成29年2月17日 群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての重要事項説明書類(写)一式。 平成29年3月15日 宅建業者の指導に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての重要事項説明書類(写)一式。 存否応答拒否
2-2 平成29年3月15日 宅建業者の監督処分に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての重要事項説明書類(写)一式。 不存在
3 3-1 平成29年2月19日 群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての関係図書類一式。 平成29年3月15日 宅建業者の指導に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての関係図書類一式。 存否応答拒否
3-2 平成29年3月15日 宅建業者の監督処分に関して、群馬県が保持する、(株)○○(不動産業者、現住所:○○、電話○○)に関係する、全ての関係図書類一式。 不存在

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