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公文書開示審査会答申第198号

更新日:2018年8月3日 印刷ページ表示

「提出した筆跡鑑定書に関する件
1、提出した筆跡鑑定書について、犯罪があると思料したのか、あるいは、犯罪がないと思料したのか分かる情報。
2、犯罪があると思料した場合は、いつ公務員の告発義務をはたすのか分かる情報。
3、犯罪がないと資料(ママ)した場合は、○○市長の公金流用を庇う理由が分かる情報。」の公文書の存否を明らかにしない決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成29年8月28日付けで、「提出した筆跡鑑定書に関する件
1、提出した筆跡鑑定書について、犯罪があると思料したのか、あるいは、犯罪がないと思料したのか分かる情報。
2、犯罪があると思料した場合は、いつ公務員の告発義務をはたすのか分かる情報。
3、犯罪がないと資料(ママ)した場合は、○○市長の公金流用を庇う理由が分かる情報。」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 開示決定期間の延長

 実施機関は、平成29年9月7日、本件請求に対して開示決定等の期間を延長し、その理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(延長の理由)
 対象公文書の特定や、開示・非開示の判断等に時間を要するため。

3 実施機関の決定

 実施機関は、平成29年10月27日に、本件請求に係る公文書について、公文書の存否を明らかにしない決定(以下「本件処分」という。)を行い、理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(公文書の存否を明らかにしない理由)
 条例第17条該当 当該開示請求内容は、特定の個人が、介護高齢課へ筆跡鑑定書を送付したことを前提としており、当該文書が存在しているか否かを答えるだけで、個人に関する情報(条例第14条第2号)を明らかにすることになるため。

4 審査請求

 請求人は、実施機関に対し、本件処分を不服として平成29年11月1日付け審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

5 弁明書の送付

 実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成29年12月28日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。

6 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成30年2月6日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)

 1 争点1(条例第14条第2号本文該当性について)
 公文書の存否を明らかにしない理由が条例第14条第2号本文に該当するか。
 2 争点2(条例第14条第2号ただし書該当性について)
 公文書の存否を明らかにしない理由が条例第14条第2号ただし書イに該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 請求人の主張要旨

(1)本件請求について、いずれも条例第17条に該当するとして、当該開示請求内容は、特定の個人が、介護高齢課へ筆跡鑑定書を送付したことを前提としており、当該文書が存在しているか否かを答えるだけで、個人に関する情報(条例第14条第2号)を明らかにすることになるため、を挙げている。しかし、このような能書きは一切不要である。
(2)請求人は、ケアプランを偽造されたのである。このことは、裁判長も認めている。○○市長の行為は、要介護者への心理的虐待である。
(3)群馬県知事は、介護保険法第5条2の規定に基づき、○○市長に対し、「助言」が義務付けられているにも拘わらずに、「前提」も「クソ」もない。とっとと、情報を開示せよ。
(4)群馬県は、介護保険法を遵守せよ。

2 実施機関の主張要旨

(1)本件請求の内容は、特定の個人である請求人を識別できる情報である。また、当該事実は慣行として公になっているものではないため、条例第14条第2号ただし書イには該当せず、性質上同号ロ又はハにも該当しない。
(2)本件請求は、特定の個人の行為(すなわち審査請求人の行為)が明示されており、当該請求に係る公文書の存否を明らかにすることにより、明示された特定の個人を識別することができる情報が明らかになる。
(3)審査請求人は、審査請求人本人が自分自身の情報を得るのだから、保護すべき法益がない旨の反論を行うかもしれないが、群馬県の情報公開制度は開示請求者が本人であるか第三者であるかを区別していないため、その反論は失当である。
(4)審査請求に係る開示請求における個人情報の一部については、インターネットブログで広く紹介され、又は電子媒体若しくは映像として容易に閲覧可能な状態に置かれているので公にされている旨の反論を行うかもしれないが、仮にインターネットブログで広く紹介されていることなどが事実であるとしても、これらの情報を公表すべき法令の規定又は慣行もないため、公となっている情報であるとはいえない。いうまでもなく、特定の者が法令の規定や慣行によらず一方的に発表しているからといって、単にその事実だけをもって公になっている情報であるということはできない。審査請求人の所属する団体のインターネットブログに掲載され、またインターネットで閲覧可能な膨大な映像情報のうちの1つに過ぎない現状では、公知の状態にあるとはいえない。

第5 審査会の判断

1 争点(条例第14条第2号本文該当性について)

(1)本件請求内容は、特定の個人である開示請求者が筆跡鑑定書を県に提出したことが前提となっており、当該公文書の存否を明らかにすることにより、特定の個人が筆跡鑑定書を県に提出したことの事実の有無(以下「本件存否情報」という。)を明らかにするものであると認められる。
(2)そして、これは特定の個人を識別することができる情報として、条例第14条第2号本文に該当すると認められる。
(3)情報公開条例において、特定の個人を識別することができる情報は、開示請求者本人に係る情報であっても条例第14条第2号に該当することは、答申第187号で述べたとおりである。

2 争点(条例第14条第2号ただし書該当性について)

 (1)実施機関の弁明書を見ると、本件請求に係る個人情報の一部がインターネット上で公開されている旨の反論を行うかもしれない旨記載している。そこで、当該情報について、条例第30条第4項に基づき、審査会をして事務局職員に確認させたところ、確かにインターネット上で本件請求に記載された筆跡鑑定書に関して、特定の個人と県の職員が話をする動画が動画共有サイトに掲載されていることを確認した。そこで、本件存否情報が既に公になっているものとして条例第14条第2号ただし書に該当するか否かを検討する。
 (2)条例第14条第2号ただし書イは「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」と定められており、それぞれ以下のように解釈されている。

ア「法令等の規定」

 何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。

イ「慣行として」

 公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。
 当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

ウ「公にされ」

 当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることを意味するが、現に公知(周知)の事実であることまでは必要としない。
 過去に公にされたものであっても、時の経過により現に公衆が知り得る状態に置かれていなければ、開示決定等の時点では公にされているとはいえない場合があり得る。
(3)審査会で存在を確認した動画は、特定の個人が群馬県庁において特定の職員と話をする様子を撮影した動画であって、何人も閲覧可能な動画共有サイトに掲載されているものであり、現に公衆が知り得る状態に置かれており、「公にされ」ているといえそうである。しかし、当該動画は特定の個人が自主的に掲載しているものであって、法令等の規定により掲載されているものとは認められない。また、そうした特定の職員と話をする様子を撮影した動画を公にすることが事実上の慣習として行われたものともいえない。したがって、当該動画はあくまで特定の個人が自主的に掲載した個別的な事例であって、「法令等の規定により又は慣行として公にされ」ているとはいえない。
(4)上記(1)ないし(3)より本件存否情報は条例第14条第2号ただし書イに該当せず、性質上同号ロ及びハにも該当しない。したがって、本件請求は、公文書が存在するか否かを答えることで、条例第14条第2号で定める非開示情報である本件存否情報を明らかにすることになるため、実施機関が行った決定は妥当である。

3 結論

以上より、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
また、審査請求人はその他種々主張するが、本答申の結論を左右するものではない。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成30年2月6日 諮問
平成30年2月14日
(第66回第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成30年3月16日
(第67回第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成30年5月17日
(第68回第一部会)
審議
平成30年6月12日 答申

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