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公文書開示審査会答申第199号

更新日:2018年8月2日 印刷ページ表示

「別紙公文書(○○市・第○○-○号)において、○○市長は、次のとおり施設サービス計画の作成が適切に行われていない事例を確認しています。
 『平成○○年○○月○○日から○○月○○日までの施設サービス計画が未作成であった。』
 しかし、○○市長は介護給付費を支給しています。
 つきましては、この件に係る次の情報。
 1施設サービス計画が未作成であっても介護給付費が支給されることが適正なのか、あるいは、不適正なのかが分かる情報。
 2施設サービス計画の作成が適正に行われていない不適正な施設サービスに対し介護給付費を支給する○○市長であります。
 この○○市長の介護保険事業の運営に対して、群馬県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、○○市に対し必要な助言をしなければならないが、必要な助言を「行うのか」あるいは、「行わないのか」が分かる情報。
 3 2の根拠法令が分かる情報。」の公文書不存在決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成○○年○○月○○日付けで、「別紙公文書(○○市・第○○-○号)において、○○市長は、次のとおり施設サービス計画の作成が適切に行われていない事例を確認しています。『平成○○年○○月○○日から○○月○○日までの施設サービス計画が未作成であった。』しかし、○○市長は介護給付費を支給しています。つきましては、この件に係る次の情報。
 1施設サービス計画が未作成であっても介護給付費が支給されることが適正なのか、あるいは、不適正なのかが分かる情報。
 2施設サービス計画の作成が適正に行われていない不適正な施設サービスに対し介護給付費を支給する○○市長であります。この○○市長の介護保険事業の運営に対して、群馬県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、○○市に対し必要な助言をしなければならないが、必要な助言を「行うのか」あるいは、「行わないのか」が分かる情報。
 32の根拠法令が分かる情報。」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 開示決定期間の延長

 実施機関は、平成29年8月21日、本件請求に対して開示決定等の期間を延長し、その理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
 (延長の理由)
 対象公文書の特定や、開示・非開示の判断等に時間を要するため。

3 実施機関の決定

 実施機関は、平成29年10月6日に、本件請求に係る公文書について、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
 (公文書が存在しない理由)
 1~3の請求内容に関する情報の取得及び資料の作成はしていないため。

4 審査請求

 請求人は、実施機関に対し、本件処分を不服として平成29年10月23日付け審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

5 弁明書の送付

 実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成29年12月28日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。

6 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成30年2月6日、本件審査請求事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点(本件請求に係る公文書不存在決定について)

本件請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 請求人の主張要旨

 (1)請求人は、1~3の請求内容に関する情報の提供を下記のとおりに行っている。
 ア 平成○○年○○月○○日付、「公開情報提供書」
 イ 平成○○年○○月○○日付、「偽造ケアプランに対し介護保険の財源を流用した○○市長の告発を求める要望書」
 ウ 1~3の請求内容に関する情報提供を行っている証拠の画像
 このことは、群馬県知事が代理人として認めた弁護士も認めている。「寝とぼけた言い訳」はしないで頂きたい。
 (2)また、資料の作成をしていないのは、群馬県知事が介護保険法(以下、「介護法」という。)第5条の規定を蔑ろにしていることと、○○市長の不正給付を黙認しているからである。つまり、群馬県の介護法第5条違反である。
 (3)群馬県知事は、「1~3の請求内容に関する情報の取得をしていない。」としているが、早急にこれを撤回するべきである。また、1~3の資料の作成をしていないのなら、早急に作成し公開せよ。「1~3の請求内容に関する情報の取得及び資料の作成はしていないため」などと、スッ呆けていないで、とっとと、作成しサッサと公開せよ。

2 実施機関の弁明書における主張要旨

(1)公文書の特定について

 請求内容1、2については、請求人が取得したと思われる、「別紙の公文書(○○市・第○○-○号)」に対しての、県の対応状況について群馬県が保有する情報の開示を求めていると特定した。請求内容3については、請求内容2に記載された、助言を行うのか否かの判断の根拠法令を求めていると特定した。

(2)請求内容1について

 本件開示に係る請求公文書については、上記(1)のとおり特定した。まず、別紙公文書は○○市が介護法第23条に基づき実地検査を行った結果について、調査法人へ通知した内容である。中核市である○○市が対応すべきことを法令に則り実施したことであって、群馬県が対応する内容ではない。
 したがって、群馬県がこの件に関して対応すべき立場にない以上、介護給付費の適正性について判断することはないため、群馬県がこの件に関して請求内容1に係る公文書を作成する必要性はなく、当該公文書は作成又は取得をしていない。

(3)請求内容2について

 請求内容2は、介護保険給付に関して群馬県が○○市に助言を行うかどうかが分かる情報を求めているものであるが、介護保険給付の支給に係る、群馬県から○○市への助言・指導に関する権限を定めた規定は存在しない。
 また、介護保険給付に係る事務は、保険者である○○市が判断するものであって、群馬県が助言を行うかどうかについて検討もしていない。
 したがって、群馬県はこの件に関して請求内容2に係る、公文書を作成又は取得していない。

(4)請求内容3について

 請求内容3は、請求内容2の根拠法令を求めるものである。これについては、上記(3)で記載したとおり、権限を定めた規定が無いため、該当する公文書を作成又は取得していない。

(5)その他請求人の主張について

ア 介護法第5条違反という主張について

 介護法第5条第2項は、都道府県の責務を抽象的に宣言したものにとどまり、具体的な義務を課したものではないと解されるため、請求人の主張は失当である。

イ 文書を作成し公開せよとの主張について

 公文書開示制度は、請求日時点で保有している公文書を開示する制度であって、文書を作成して開示するものではないため、請求人の係る主張もまた失当である。

3 実施機関の口頭説明による主張要旨

(1)本件で問題となっている施設はもともと○○市にある施設であって、○○市の保険料について県が指導監督することは基本的に行っていない。介護保険制度の中で、介護報酬の県費用負担があるので、誤りがあれば直すということでやっているが、そもそも誤りがあったのかなかったのかの判断は○○市が行うものである。
(2)施設サービス計画が未作成であるが、それが適正であるかとか、施設サービス計画がどうであったかという判断及び確認は県はそもそも行っていない。○○市でやるべきことだと考えているため、公文書は作成していない。
(3)○○市の判断があって、そのうえで○○市から相談や助言を求められることがあれば当然検討するべきこともあるかとは考えるが、その判断がなされていないのであれば、県が出向いて何かするということはないため、公文書は作成していない。

第5 審査会の判断

1 争点(本件請求に係る公文書不存在決定について)

(1)公文書の特定について

 本件請求内容は、「別紙公文書…において、○○市長は…施設サービス計画の作成が適切に行われていない事例を確認しています。…しかし、○○市長は介護給付費を支給しています。つきましてはこの件に係る次の情報。」と記載している。「別紙公文書」は、○○市から、○○市にある介護老人施設を経営する法人に対して、介護法第23条に基づく実地調査の結果が通知されたものである。したがって、○○市にある介護老人保険施設において施設サービス計画の作成が適切に行われていないにもかかわらず、介護給付費の支給を受けている件に関して、県が保有する公文書を求めているものと解することができる。したがって、請求内容1及び2について、実施機関が第4、2(1)前段のとおり公文書を特定したことについて、不合理な点はなく妥当なものと認められる。
 また、請求内容3については、2に記載された助言を行うか否かの判断の根拠法令を求めているものと読むのが自然であり、実施機関が第4、2(1)後段のとおり公文書を特定したことについても不合理な点はなく妥当なものと認められる。

(2)公文書が存在しない理由について

ア 請求内容1について

 (ア)請求内容1について実施機関は、○○市が対応すべきものであって、県が判断する立場にないため公文書を作成していない旨を主張している。したがって、以下、○○市にある介護老人保険施設において、施設サービス計画を未作成のままサービス提供を行い介護給付費の支給を受けている場合における関連規定を確認する。
 a 介護保険制度の概要
 介護保険制度における保険者は市町村及び特別区であって、保険者としての事務負担や費用負担が軽減されるように、国、都道府県、医療保険者、年金保険者等が重層的に支え合う仕組みになっている。
 b 介護給付費の支給について
 介護給付とは被保険者の要介護状態に関する保険給付をいい(介護法第18条第1号)、介護法において、第4章第3節に定めがある。ここでは、14種類の介護給付の内容や支給手続等が定められており、いずれも「市町村は、要介護認定を受けた被保険者が●●サービスを受けたとき、●●費を支給する」と規定している。別紙公文書において言及されている施設介護サービス費についても同様に規定されている(介護法第48条)。したがって、ここでの主体は市町村であり、本件においてそれは○○市である。
 c 施設サービス計画について
 介護法において、「地域密着型介護老人福祉施設」、「介護老人福祉施設」及び「介護老人保健施設」は、施設サービス計画に基づいてサービスを行うことを目的とする施設とされている(介護法第8条第22号、第27号及び第28号)。したがって、介護老人保健施設において、施設サービス計画がないままにサービスが提供されたとなると、不適正なサービス提供のおそれがある。
 d 不適正なサービス提供がなされたおそれがある場合の規定について
 介護老人保健施設における、都道府県知事又は市町村長の権限として介護法は、報告等を求める(介護法100条)、業務運営の勧告又は命令(介護法第103条第1項又は第3項)、許可の取消し(介護法第104条第1項)等を規定している。しかし、介護法第203条の2の規定により、地方自治法施行令第174条の49の11の2に規定されている事務については、都道府県ではなく中核市が処理するものとされている。これによって、介護法第4章第3節及び4節並びに第5章第2節及び第4節から6節までの規定は中核市に適用がある。上記で述べた都道府県知事又は市町村長の権限は第5章第5節に規定されているため、それらの権限は中核市に認められる。したがって、本件において上記権限を有しているのは、中核市である○○市であって、群馬県ではない。
 また、介護法第22条第3項において、「偽りその他不正の行為により…第48条第4項…の規定による支払を受けたときは、市町村は、…徴収することができる。」と定められており、主体は市町村である。すなわち、本件においてそれは○○市であって、群馬県ではない。
 (イ)以上より、介護法の規定上、介護給付費の支給を行うのは市町村である。また、中核市に存在する法人が経営する介護老人保健施設に対して、報告等を求める権限を有するのは中核市であって、本件においてそれは○○市である。そうである以上、○○市にある介護老人保健施設において、施設サービス計画の作成が適切に行われていないにもかかわらず、介護給付費の支給を受けている件に関して、群馬県がその適正性を検討したり、公文書を作成又は取得することは通常考えにくい。したがって、請求内容1に係る公文書を作成又は取得していないとする実施機関の説明に不自然な点はないと認められる。

イ 請求内容2について

 (ア)請求内容2について請求人は、資料を作成していないのは介護法第5条に違反する旨を主張している。一方、実施機関は、群馬県から○○市へ助言・指導等をする権限を定めた規定がなく、助言を行うかどうかも検討していないため文書を作成していない旨を主張している。したがって、以下、○○市にある介護老人保健施設において、施設サービス計画を未作成のままサービス提供を行い介護給付費の支給を受けている場合における、群馬県から○○市への助言に関連する規定を確認する。

a 介護法第5条第2項について

 同項の規定は、地域保険方式による介護保険事業の導入に伴って、保険者となって制度の中心的役割を担い、事務的・財政的負担が増すことになる市町村を、国、都道府県、医療保険者、年金保険者等が重層的に支えていくことを狙いとして、介護保険事業が健全かつ円滑に運営されるよう、都道府県の責務を抽象的に宣言したにとどまるものであり、都道府県に対して具体的に義務を課したものではないと解するのが相当である。したがって、「必要な助言及び適切な援助」の具体的実効性は、別途、同項の規定の趣旨を実現するために個別に規定された介護法の各条項によってはじめて与えられるものである。

b 介護法第197条第3項について

 同項の規定は、都道府県知事が市町村長に対し、必要があると認めるときに、報告を求め、助言若しくは勧告をすることができるという、具体的な権限を定めた規定と解される。ただし、同項は、対象となる市町村から中核市を除いている。また、同項は、「市町村長が第5章の規定により行う事務に関し」と定めているが、本件請求内容となっている介護給付費の支給に関する規定は第4章に定められていることから対象外となっている。したがって、当該具体的な権限を定めた規定を根拠としても、本件において群馬県は○○市に助言をする権限が認められないことになる。
 (イ)以上より、○○市にある介護老人保健施設において、施設サービス計画を未作成のままサービス提供を行い介護給付費の支給を受けた場合における、群馬県から○○市への助言を行う権限に関連する規定はない。したがって、権限を有さない群馬県が助言を行うか否か検討もしていないため、請求内容2に係る公文書を作成又は取得していないとする実施機関の説明に不自然な点はない。

ウ 請求内容3について

 請求内容3は、助言を行うか否かの判断の根拠法令を求めているものであるが、上記イで述べたとおり、実施機関は助言に関する権限を定めた規定がないため助言を行うか否か検討もしていないということである。そうである以上、請求内容3に係る公文書を作成又は取得していないとする実施機関の説明に不自然な点はない。

エ まとめ

 アないしウより、本件請求に係る公文書を作成又は取得していないとする実施機関の説明に不自然な点はなく、本件処分は妥当なものであったと認められる。

2 結論

 以上より、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 また、審査請求人はその他種々主張するが、本答申の結論を左右するものではない。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成30年2月6日 諮問
平成30年2月14日
(第66回第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成30年3月16日
(第67回第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成30年5月17日
(第68回第一部会)
審議
平成30年6月12日 答申

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