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公文書開示審査会答申第147号

更新日:2015年4月21日 印刷ページ表示

「平成○○年○月○○日付○○新聞記事によると、○○○○○の○○工場から出た鉄鋼スラグが有害物質の溶出が検出されるような状態であるにもかかわらずリサイクル資材として一般砕石にブレンドされ、公共事業の路盤材等に使用されていた問題が報じられている。このことに関する次の情報。(1)この鉄鋼スラグを使用して県が実施した全ての公共事業(当該鉄鋼スラグの使用量、使用場所がわかる情報を含む)(2)この鉄鋼スラグを公共事業に使用できると県が判断するに至った内部の意思決定の過程と結果がわかる情報」の公文書部分開示決定(平成26年3月17日付け建企第629-7号)に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 実施機関が行った本件処分は妥当ではなく、本件通知一式に加え、新たに確認された25工事のうち県土整備部が所管する22工事の工事関係書類を改めて本件請求の対象公文書として特定すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成26年3月3日付けで、「平成○○年○月○○日付○○新聞記事によると、○○○○○の○○工場から出た鉄鋼スラグが有害物質の溶出が検出されるような状態であるにもかかわらずリサイクル資材として一般砕石にブレンドされ、公共事業の路盤材等に使用されていた問題が報じられている。このことに関する次の情報。」として、以下(1)及び(2)の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

  1. この鉄鋼スラグを使用して県が実施した全ての公共事業(当該鉄鋼スラグの使用量、使用場所がわかる情報を含む)(以下「本件請求1」という。)
  2. この鉄鋼スラグを公共事業に使用できると県が判断するに至った内部の意思決定の過程と結果がわかる情報(以下「本件請求2」という。)

2 実施機関の決定

 実施機関は、当該公文書を検索したところ建設企画課、森林保全課及び農村整備課において保有していたことから、それぞれ所属ごとに次のとおり決定した。

(1)建設企画課分

 実施機関のうち建設企画課は、平成26年3月17日、本件請求1に係る公文書を「路線、河川名、箇所名、使用量(立法メートル)」が記載された「鉄鋼スラグをブレンドした路盤材等の使用実績」(以下「本件公文書1」という。)、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」(以下「本件公文書2」という。)であると判断し公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
 開示することにより、特定の個人を識別できるため。
 群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
 開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。

(2)森林保全課分

 実施機関のうち森林保全課は、平成26年3月13日、本件請求1に係る公文書を「事業、箇所名、工区名、施工地、施工年度、使用量(立法メートル)、備考」が記載された「森林土木事業 再生砕石(○○スラグ混合)使用調査結果」、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」であると判断し公文書部分開示決定を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
 開示することにより、特定の個人を識別できるため。
 群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
 開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。

(3)農村整備課分

 実施機関のうち農村整備課は、平成26年3月17日、本件請求1に係る公文書を「施工年度、事業名、地区名、工事名、施工場所、使用量(立法メートル)、備考」が記載された「農業農村整備事業 再生砕石(○○スラグ混合)使用調査結果」、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」であると判断し公文書部分開示決定を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
 開示することにより、特定の個人を識別できるため。
 群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
 開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成26年4月4日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成26年5月12日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

5 前提事実

 実施機関は、県土整備部監理課建設政策室長名で県土整備部内所属長、土木事務所長及び関係機関の長あて下記の文書(以下「本件通知」という。)を通知している。

  1. 平成22年6月11日付け監第647-003号「砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をブレンドした骨材の取扱いについて(通知)」(以下「本件通知1」という。)
  2. 平成22年10月15日付け監第647-003-1号「砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をブレンドした骨材の取扱いについて(通知)」(以下「本件通知2」という。)

第3 争点に対する当事者の主張

1 申立人の主張

(1)異議申立書における主張要旨

 申立人が開示請求した内容は本件請求1及び本件請求2であるが、本件請求1しか開示されず、本件請求2が含まれていなかったことから、写しの交付の際にそのことを指摘したら、本件通知2がその場で提出された。しかし、この文書の発出に至るまでの過程を示す情報が開示されていない。本件請求2は本件通知であるが、このような重大な判断結果を県庁全体の関係部署に発出するにあたっては、関係部署と従前に十分な協議を重ね、国の方針や通達、他の自治体の実施状況等を勘案して決定しているはずである。
 本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しと、不開示とされたあらゆる情報の開示を求める。

(2)意見書における主張要旨

ア 本件請求2は、なぜ有害物質を含む土木資材が公共事業で使用を承諾されて、流通しているのを実施機関が見過ごしたのか、その理由が分かる情報を開示請求したのである。
イ 申立人が請求した本件請求で、実施機関が作成し、あるいは受領したはずの文書は本件通知だけにとどまらないはずである。
ウ 本件通知1及び本件通知2をよく読むと、内部で判断された形跡をうかがわせる記述があるので、それら記述箇所を次のとおり列挙する。さらに、申立人が入手した資料にもとづき、実施機関が当然対応した形跡をうかがわせる事項や、実施機関内部で、それぞれの関係部署において当然為されたであろう協議資料についても、次に追記する。

  1. 今回の○○○○○○○工場から出た有毒物質の含有と溶出が基準値以上検出された鉄鋼スラグ(以下「○○有毒スラグ」という)(原文ママ)は、アーク式電気炉から出たスラグだが、県内ではこうした鉄鋼スラグは同工場しか出していない。
  2. ○○有毒スラグをブレンドした骨材が、近年、中毛地区及び北毛地区において流通しているとしているが、なぜブレンドした骨材が流通しているのを実施機関は知っているのか、また、なぜ流通していてよいと判断したのか。この点について、当然に事前に調査をして、有毒スラグ混合骨材が「再生資源の利用に関する実施要領」及び「建設副産物から生産した再生材の使用に関する仕様書」に合致した製品であることを確認したはずであるので、その経緯が分かる情報があるはず。
  3. 今回の○○有毒スラグ不法投棄事件では、○○○○○○が有毒スラグ混合砕石を再生砕石と偽って販売しているが、実施機関は、この有毒スラグ混合砕石が近年流通していることを知っていて、それを公共事業に使用できるようにしたわけだから、なぜそのような判断をしたのか内部資料が存在しなければならない。
  4. 本件公文書2を見ると、試験結果報告書の試料名が「再生砕石40~0」にし、末尾に有毒スラグ混合砕石の試験表を忍ばせる手口で、建設副産物から生産した再生材(RC)を装っている。このような偽装資材にもかかわらず、なぜ実施機関は「流通している」だの「国、県、市町村が発注する公共工事での使用実績も多数あるとの報告を受けております」というふうに判断したのか。その流通実績や使用実績の報告をもとに、判断した経緯がわかる内部資料があるはず。
  5. 電気炉クラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材(=○○有毒スラグ混合骨材)に関する規定は、群馬県工事必携に記載されていないにもかかわらず、「使用実績が多数ある」と判断した根拠を示す内部資料があるはず。
  6. 「使用実績が多数あるとの報告を受けております」のであれば、その○○有毒スラグ混合骨材なる代物の中身を予め吟味するのが、県民の安全な暮らしを守る実施機関の責務であるはずであり、実施機関による○○有害スラグ混合骨材なる代物の調査分析結果に関する情報があるはず。
  7. 「砕石骨材(クラッシャラン)にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材は、積算基準(地区単価)、出来形管理基準、品質管理基準を再生骨材と原則同様に取扱う」と実施機関は勝手に決めている。
  8. 「再生資源」とは「建設副産物のうち有用なもの」と規定されているが、こうした建設副産物を差し置いて、一民間企業である○○○○○が出す有毒スラグを再生資源と独自に判断することは、本来であれば建設資材リサイクル法が完全施行されたので、法律に違背すると思われるにもかかわらず、なぜ○○有毒スラグ混合骨材が有用なものと独自で判断したのか、その経緯を示す情報があるはず。
  9. ○○有毒スラグ(CS-40)と砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にブレンドした骨材とあるが、具体的な混合比率について本件通知ではなにも触れていない。どちらも天然砕石由来である再生骨材(RC-40)と砕石骨材とのブレンドの場合は、ブレンド比率による性状の変化には影響がないと考えられる。しかし、○○有毒スラグと砕石骨材のブレンドの場合は、もともと似て非なるもの同士なので、混合比率による変化は性状にも大きく影響するはず。○○有毒スラグ混合骨材を、再生骨材と「原則同等に取扱う」と判断するに至った根拠を示す内部資料があるはず。
  10. ブレンドされる前に膨張性試験結果を提出させるのに、なぜ○○有毒スラグに残留の恐れのある5品目(六価クロム化合物及びセレン、鉛、ふっ素、ほう素とそれらの化合物)については、「ブレンドした後」の溶出・含有試験結果を提出させることにしたのか、しかも骨材プラントの試験成績表での代用も可としたのか、それらの判断に至った内部討議の経緯を示す情報があるはず。
  11. 本件通知2において、なぜ「路床工、路面敷砂利には使用しない」と追記したのか。一旦、○○有毒スラグ混合骨材を無制限に使えるように通知した本件通知1から、「路床工、路面敷砂利には使用しない」とした本件通知2における判断への過程について何らかの内部協議の情報があるはず。

エ 申立人が入手した意見書に添付した情報(○○○○○とその子会社の○○○○○○○及び○○○○○○が平成○○年○○月○○日に行った3者合同会議資料)によると、「赤本に入れてもらう(何回でも通う)」、「建設工事必携の修正」、「スラグ混合路盤材での上層銘柄拡大の感触を聞きに県訪問(11月4日)→上層路盤はバージン材のみ使用にて認可ハードル高い」ので「県議も使う」などと記載されているメモがある。このことから、○○○○○らが実施機関を訪問した際の面談メモがあるはず。さらに、○○○○○らは実施機関に対して、県議会議員を使って口利きを恒常的に依頼していた可能性も窺えることから、そうした議員からの口利きを記録していたはずである。
オ 公開条例は原則開示が基本である。その中で不開示とすることができる場合が規定されているが、県民の財産や生命にかかわることは、但し書きで開示することができるとしている。

2 本件処分に係る実施機関の主張要旨

(1)公文書の特定について

ア 資材の使用に至る経緯
 公共工事の発注において、発注者(県)は規格や仕様を示すが、土木資材の指定までは行わず、受注者が自ら土木資材を選定できるものである。本件請求において写しを交付した「工事打合せ書」は、受注者が土木資材の使用承諾願いを発注者に提出するものであり、これにより発注者は、土木資材が所定の品質を有しているか確認し使用を承諾しているところである。
イ 本件請求にかかる文書の特定
 実施機関は、本件請求1については使用場所及び使用量の一覧表である「路線、河川名、箇所名、使用量(立法メートル」が記載された「鉄鋼スラグをブレンドした路盤材等の使用実績」とし、本件請求2については「工事打合せ書」を特定したものである。
ウ 本件請求の解釈の相違について
 申立人は本件請求2について、「3月25日の部分開示の際、全く開示情報に含まれていなかった」と主張するが、実施機関としては本件公文書2をその対象公文書として特定したのである。しかし、当該文書の写しの交付の際に、別途申立人からの質問に応じて示した本件通知2は、たしかに申立人が主張するとおり本件請求2の「この鉄鋼スラグを公共事業に使用できると県が判断するに至った内部の意思決定の過程と結果がわかる情報」であることは認め得るものである。したがって、本件通知の伺い文、起案説明及び本件通知自体は改めて特定して開示することとする。

(2)本件通知について

ア グリーン購入法における特定調達品目の指定について
 鉄鋼スラグ混入路盤材については、平成14年度に国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)が定める特定調達品目に指定され、環境負荷を減らす資材という認識がなされていたものである。なお、このグリーン購入法とは、国や地方公共団体等による環境物品等の調達の推進、環境物品等に関する情報の提供及び需要の転換を促進するため必要な事項が定められたものであり、鉄鋼スラグ混入路盤材についても、こうした観点から指定されているものである。
イ JIS規格について
 資材の品質基準については、工業標準化法(昭和24年法律第185号)が定めるJIS規格がある。この法律は、適正かつ合法的な工業標準の制定及び普及により工業標準化を促進することによって、鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的として制定されている。そして、道路用鉄鋼スラグについても昭和54年に「JIS A5015」として制定されているところである。
ウ 独自の安全基準の設定について
 本県では、上記法令等の制定及び市場において鉄鋼スラグ混入路盤材が多数使用されるようになった状況を背景に、受注者が使用するにあたり環境省等による品質基準や環境基準を準用し取扱いを定め、関係所属に通知したものが本件通知1である。また、本件通知1において、使用箇所における「路床工、路面敷砂利について具体的な取扱い」及び「試験方法についてのJIS規格」が明確に記載されていなかったため、本件通知1の修正版である本件通知2を関係所属に通知した。そして、この本件通知を基にして、本件公文書2である「工事打合せ書」により確認し、使用について承諾しているものである。
エ 本件通知に関する公文書以外のもの
 上記のとおり鉄鋼スラグ混入路盤材の使用が法律により推奨されている以上、これを公共工事に使用できると判断するのは当然である。また、申立人が主張するような国の方針や通達その他の関係する公文書は存在しないものであるが故に、県独自で取扱いを定め、対応したものである。

(3)条例第14条第2号該当性

 個人の氏名及び印影については、特定の個人を識別することができるため、非開示とした。

(4)条例第14条第3号該当性

 代表取締役の印影については、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、非開示とした。

第4 争点

1 争点1(対象公文書の特定について)

 本件請求に関する公文書がほかに存在するか。

2 争点2(条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書該当性)

 本件処分で非開示とされた部分が、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当するか。

第5 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について

 条例は、公文書の開示を請求する権利を明らかにし、もって県が県政に関し県民に説明する責務を全うすることにより、県民の理解と信頼の下に公正で透明な行政を推進し、県民による県政への参加を進めていくことを目的として制定されたものである。よって、当審査会は、情報公開の理念を尊重し条例を厳正に解釈して、以下について判断する。

2 争点1(対象公文書の特定について)

(1)はじめに

 申立人は、本件処分において本件請求2に関する文書が含まれていなかったため、開示の時にそれを指摘したら、本件通知2がその場で提出されたと主張する。この申立人の主張について、実施機関は本件請求2から本件通知の伺い文、起案説明及び通知文(以下「本件通知一式」という。)を特定することができるため、当該文書は改めて開示すると述べている。そのため、当審査会では本件通知一式以外に本件請求から特定すべき公文書が存在するか否かを審査する。

(2)本件通知について

 本件通知1は、平成22年6月11日付け県土整備部監理課建設政策室長名で県土整備部内所属長、土木事務所長及び関係機関の長あてに通知されたもので、「鉄鋼スラグの使用も再生資源の有効活用に繋がる」として、砕石骨材にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材の取扱いについて周知することを目的としたものである。その具体的な取扱いとは、砕石骨材にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材は、積算基準等を再生骨材と原則同様に取り扱うことや、クラッシャラン鉄鋼スラグがブレンドされていることから膨張性試験結果や土壌汚染対策防止法における第2種特定有害物質(重金属等)のうち鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目についての試験結果を提出させることなどである。
 本件通知2は、平成22年10月15日付け県土整備部監理課建設政策室長名で本件通知1と同じあて名に通知されたもので、本件通知1の記述内容に、若干の加除修正がされたものと認められる。その具体的な加除修正内容は、「路床工、路面敷砂利には使用しない。」という一文を本件通知1に追記したものと、鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目に関して、ブレンドした後の溶出、含有試験結果を提出させることにしているが、当該試験方法についてのJIS規格を明記したものなどが認められる。
 なお、本件通知に関して平成26年群馬県議会第3回定例会で一般質問されているが、環境森林部長は「この通知の発出に当たりましては、環境森林部に事前の相談はございませんでした」と答弁している。

(3)申立人及び実施機関の主張からの考察

ア 申立人は、本件通知に関して、「このような重大な判断結果を県庁全体の関係部署に発出するにあたっては、関係部署と従前に十分な協議を重ね、国の方針や通達、他の自治体の実施状況等を勘案して決定しているはずである」と述べ、本件通知には、「実施機関において内部で判断された形跡をうかがわせる記述がある」として前述のとおり主張する。これに対して実施機関は、JIS規格の制定やグリーン購入法で「使用が法律により推奨されている以上、これを公共工事に使用できると判断するのは当然である。また、申立人が主張するような国の方針や通達その他の関係する公文書は存在しないものであるが故に、県独自で取扱いを定め、対応したものである。」と主張する。
イ ところで、実施機関が主張する「公共工事に使用できると判断するのは当然」であることの是非や、本件通知にある「鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目についてブレンドした後の溶出、含有試験結果を提出させる」ことの是非については当審査会の判断するところではないが、「国の方針や通達その他の関係する公文書は存在しないものであるが故に、県独自で取扱いを定め、対応したものである」という主張に関しては、本件通知の取扱い基準等を定める過程において実施機関の内部で何らかの検討をした可能性を否定できないことからも、いささか疑問が残るところがある。むしろ、県独自で取扱いを定めたのであれば、それを定めるに至った明確な根拠があるはずであり、その根拠をもとにした判断であることを公文書として残しておくべきであると思われるが、本件通知一式からそのような情報は認められない。
ウ また、本件通知2は、本件通知1を発出した約4ヶ月後に当該文書を加除修正して発出したものであるが、この場合、本件通知2を発出するに至った何らかの「きっかけ」があったのではないかと推測される。この点について実施機関に確認したところ、「正確に工種を限定する意図で『路床工、路面敷砂利には使用しない。』という文言を追記した」ことと、「土壌を調べる試験方法と材料を調べる試験方法がそれぞれあり、若干違うものであるためJISの基準を明確に記載した」という説明があった。さらに、実施機関は「書類が残っていないので明確にこうだとは言えないですけれども、途中の段階での問合せに対応するため内容を明確にした」とも説明するが、通知を出し直さなければならなかった理由が何だったのか本件通知一式からは判然としない。
エ その他、申立人が提出した意見書には「○○○○○とその子会社の○○○○○○○及び○○○○○○が平成○○年○○月○○日に行った3者合同会議資料」であると申立人が主張する資料が添付されているが、当該資料には「赤本に入れてもらう(何度でも通う)」「建設工事必携の修正」「スラグ混合路盤材での上層銘柄拡大の感触を聞きに県訪問」「県議も使う」などの記述が認められる。そのため、申立人は、「このことから、○○○○○らが実施機関を訪問した際の面談メモがあるはず」と主張する。この点について実施機関に確認したところ、当時の担当者からは、○○○○○らが訪問した何らかの記憶は「ある」が、特にやり取りしたという記録は「ない」ということであったと説明し、その記録がない理由としては、実施機関における技術関係の部署には多くの資材メーカーが営業に来るため、特殊な状況でないと面談記録のような文書を作成することはないためということである。たしかに、実施機関が主張するように、様々な業者の営業を受けることが日常的な所属において、通常は面談記録を作成しないということ自体に不合理な点は感じられない。しかし、当時の担当者に何らかの記憶があることからも、「通常は面談記録を作成しない」という説明だけで当該文書の不存在が妥当であるとは判断しがたい。

(4)検証

 以上のとおり、本件通知一式以外に申立人が主張するような関係する文書が全くないという実施機関の主張は、にわかに首肯しがたいところがある。そこで、当審査会は実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、前述の申立人が主張するような公文書の作成、保有の有無を確認するため建設企画課において公文書の確認を行ったが、本件請求に係る公文書として改めて特定すべき文書の存在は認められなかった。したがって、本件請求2に関して実施機関が作成した公文書がほかに発見できない以上、当審査会としては実施機関が当該文書を作成又は取得していると判断することはできない。

(5)実施機関による報道発表について

 ところで、実施機関は平成○○年○月○○日に、「○○○○○○への聞き取り調査の結果について」と題する内容の報道発表をしている。当該内容は、実施機関による○○○○○○からの聞き取り調査により、鉄鋼スラグを含む材料の使用工事箇所の調査を行った結果であり、この調査により新たに平成21年度以降の県施工43工事への出荷記録があったことを実施機関が発表したものである。そして、そのうち25工事(以下「新たに確認された25工事」という。)については、実施機関の設計書や工事関係書類により当該鉄鋼スラグの使用が確認され、環境基準に対する品質規格証明書が提出されていたということである。つまり、新たに確認された25工事の工事関係書類は、本件請求にある「(○○○○○○○工場から出た)鉄鋼スラグを使用して県が実施した公共事業」であるため、本件請求により特定すべき公文書であると判断される。よって、新たに確認された25工事のうち県土整備部が所管する22工事の工事関係書類は、改めて本件請求の対象公文書として特定すべきである。

3 争点2(条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書該当性)

 申立人は、「県民の財産や生命にかかわることは、但し書きで開示することができる」と主張するため、本件処分において非開示とされた部分について、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当するか否か検討する。
 条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書の規定は、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときにはこれを開示する趣旨である。そこで、本件処分における非開示部分である「個人の氏名及び印影」と「代表取締役の印影」について考えるが、そもそも当該非開示部分を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益の内容やその程度が明確でなく、それを公にする必要性を認めるだけの特段の事情もないため、これらを公にしない利益との比較衡量により人の生命、健康等を保護する利益が優先し、何人にも公にすることが必要であると判断することはできない。よって、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当しない。

4 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 付言

 本件事案に関する○○○○○○○○工場の鉄鋼スラグについては、多くの新聞報道がされているとおり県民の健康に関わる大変関心の高い事柄である。こうした事案に関して、実施機関にはより一層の説明責任を果たすことが求められることは言うまでもないが、本件通知一式には現時点で当時の判断の過程を検証するために必要な情報が足りないと感じるのは前述のとおりである。
 ところで、実施機関には、文書の収受、処理、保存その他文書の取扱いについて必要な事項を定めたものとして群馬県文書管理規程(昭和61年訓令甲第1号)があるが、同規程第20条に「起案に関する参考資料」についての定めがある。同条では、起案にあたっては、処分案等本文、起案理由等を記載するほか、「法令その他参考となる事項」や「その他決裁等の判断に参考となる事項及び資料」を記載し、又は添付するものとされている。さらに、この条文の趣旨は、条例第1条の目的にある「公文書の開示を請求する権利を明らかにし、もって県が県政に関し県民に説明する責務を全うする」ことにつながるものである。そのため、今後は県民に対する説明責任を全うするため、判断の過程を検証するために必要な情報を文書として記録しておくことを当審査会として要望する。

第7 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成26年5月12日 諮問
平成26年6月16日 実施機関からの理由説明書を受領
平成26年7月23日 異議申立人からの意見書を受領
平成26年9月19日
(第43回 第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成26年11月21日
(第44回 第一部会)
審議
平成27年1月9日
(第45回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成27年2月12日
(第46回 第一部会)
審議(条例第30条第4項による調査を実施)
平成27年3月17日
(第47回 第一部会)
審議
平成27年4月20日
(第48回 第一部会)
審議
平成27年5月8日 答申

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