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公文書開示審査会答申第149号
「平成○○年○月○○日付○○新聞記事によると、○○○○○の○○工場から出た鉄鋼スラグが有害物質の溶出が検出されるような状態であるにもかかわらずリサイクル資材として一般砕石にブレンドされ、公共事業の路盤材等に使用されていた問題が報じられている。このことに関する次の情報。(1)この鉄鋼スラグを使用して県が実施した全ての公共事業(当該鉄鋼スラグの使用量、使用場所がわかる情報を含む)(2)この鉄鋼スラグを公共事業に使用できると県が判断するに至った内部の意思決定の過程と結果がわかる情報」の公文書部分開示決定(平成26年3月17日付け農整第748-2号)に対する異議申立てに係る答申書
群馬県公文書開示審査会 第一部会
第1 審査会の結論
実施機関が行った本件処分は妥当ではなく、新たに確認された25工事のうち農政部が所管する3工事の工事関係書類及び平成25年4月3日付け工事打合せ書を改めて本件請求の対象公文書として特定すべきである。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成26年3月3日付けで、「平成○○年○月○○日付○○新聞記事によると、○○○○○の○○工場から出た鉄鋼スラグが有害物質の溶出が検出されるような状態であるにもかかわらずリサイクル資材として一般砕石にブレンドされ、公共事業の路盤材等に使用されていた問題が報じられている。このことに関する次の情報。」として、以下(1)及び(2)の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- この鉄鋼スラグを使用して県が実施した全ての公共事業(当該鉄鋼スラグの使用量、使用場所がわかる情報を含む)(以下「本件請求1」という。)
- この鉄鋼スラグを公共事業に使用できると県が判断するに至った内部の意思決定の過程と結果がわかる情報(以下「本件請求2」という。)
2 実施機関の決定
実施機関は、当該公文書を検索したところ建設企画課、森林保全課及び農村整備課において保有していたことから、それぞれ所属ごとに次のとおり決定した。
(1)建設企画課分
実施機関のうち建設企画課は、平成26年3月17日、本件請求1に係る公文書を「路線・河川名、箇所名、使用量(立法メートル)」が記載された「鉄鋼スラグをブレンドした路盤材等の使用実績」、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」であると判断し公文書部分開示決定を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
開示することにより、特定の個人を識別できるため。
群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
(2)森林保全課分
実施機関のうち森林保全課は、平成26年3月13日、本件請求1に係る公文書を「事業、箇所名、工区名、施行地、施工年度、使用量(立法メートル)、備考」が記載された「森林土木事業 再生砕石(○○スラグ混合)使用調査結果」、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」であると判断し公文書部分開示決定を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
開示することにより、特定の個人を識別できるため。
群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
(3)農村整備課分
実施機関のうち農村整備課は、平成26年3月17日、本件請求1に係る公文書を「施工年度、事業名、地区名、工事名、施工場所、使用量(立法メートル)、備考」が記載された「農業農村整備事業 再生砕石(○○スラグ混合)使用調査結果」(以下「本件公文書1」という。)、本件請求2に係る公文書を「工事打合せ書」(以下「本件公文書2」という。)であると判断し公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
(非開示部分)個人の氏名及び印影
開示することにより、特定の個人を識別できるため。
群馬県情報公開条例第14条第3号イ該当
(非開示部分)代表取締役の印影
開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
3 異議申立て
申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成26年4月4日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
4 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成26年5月12日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。
5 前提事実
実施機関は、県土整備部監理課建設政策室長名で県土整備部内所属長、土木事務所長及び関係機関の長あて下記の文書(以下「本件通知」という。)を通知している。
- 平成22年6月11日付け監第647-003号「砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をブレンドした骨材の取扱いについて(通知)」(以下「本件通知1」という。)
- 平成22年10月15日付け監第647-003-1号「砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をブレンドした骨材の取扱いについて(通知)」(以下「本件通知2」という。)
第3 争点に対する当事者の主張
1 申立人の主張
(1)異議申立書における主張要旨
申立人が開示請求した内容は本件請求1及び本件請求2であるが、本件請求1しか開示されず、本件請求2が含まれていなかったことから、写しの交付の際にそのことを指摘したら、本件通知2がその場で提出された。しかし、この文書の発出に至るまでの過程を示す情報が開示されていない。本件請求2は本件通知であるが、このような重大な判断結果を県庁全体の関係部署に発出するにあたっては、関係部署と従前に十分な協議を重ね、国の方針や通達、他の自治体の実施状況等を勘案して決定しているはずである。
本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しと、不開示とされたあらゆる情報の開示を求める。
(2)意見書における主張要旨
ア 本件請求2は、なぜ有害物質を含む土木資材が公共事業で使用を承諾されて、流通しているのを実施機関が見過ごしたのか、その理由が分かる情報を開示請求したのである。
イ 申立人が請求した本件請求で、実施機関が作成し、あるいは受領したはずの文書は本件通知だけにとどまらないはずである。
ウ 本件通知1及び本件通知2をよく読むと、内部で判断された形跡をうかがわせる記述があるので、それら記述箇所を次のとおり列挙する。さらに、申立人が入手した資料にもとづき、実施機関が当然対応した形跡をうかがわせる事項や、実施機関内部で、それぞれの関係部署において当然為されたであろう協議資料についても、次に追記する。
- 今回の○○○○○○○工場から出た有毒物質の含有と溶出が基準値以上検出された鉄鋼スラグ(以下「○○有毒スラグ」という)(原文ママ)は、アーク式電気炉から出たスラグだが、県内ではこうした鉄鋼スラグは同工場しか出していない。
- ○○有毒スラグをブレンドした骨材が、近年、中毛地区及び北毛地区において流通しているとしているが、なぜブレンドした骨材が流通しているのを実施機関は知っているのか、また、なぜ流通していてよいと判断したのか。この点について、当然に事前に調査をして、有毒スラグ混合骨材が「再生資源の利用に関する実施要領」及び「建設副産物から生産した再生材の使用に関する仕様書」に合致した製品であることを確認したはずであるので、その経緯が分かる情報があるはず。
- 今回の○○有毒スラグ不法投棄事件では、○○○○○○が有毒スラグ混合砕石を再生砕石と偽って販売しているが、実施機関は、この有毒スラグ混合砕石が近年流通していることを知っていて、それを公共事業に使用できるようにしたわけだから、なぜそのような判断をしたのか内部資料が存在しなければならない。
- 本件公文書2を見ると、試験結果報告書の試料名が「再生砕石40~0」にし、末尾に有毒スラグ混合砕石の試験表を忍ばせる手口で、建設副産物から生産した再生材(RC)を装っている。このような偽装資材にもかかわらず、なぜ実施機関は「流通している」だの「国、県、市町村が発注する公共工事での使用実績も多数あるとの報告を受けております」というふうに判断したのか。その流通実績や使用実績の報告をもとに、判断した経緯がわかる内部資料があるはず。
- 電気炉クラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材(=○○有毒スラグ混合骨材)に関する規定は、群馬県工事必携に記載されていないにもかかわらず、「使用実績が多数ある」と判断した根拠を示す内部資料があるはず。
- 「使用実績が多数あるとの報告を受けております」のであれば、その○○有毒スラグ混合骨材なる代物の中身を予め吟味するのが、県民の安全な暮らしを守る実施機関の責務であるはずであり、実施機関による○○有害スラグ混合骨材なる代物の調査分析結果に関する情報があるはず。
- 「砕石骨材(クラッシャラン)にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材は、積算基準(地区単価)、出来形管理基準、品質管理基準を再生骨材と原則同様に取扱う」と実施機関は勝手に決めている。
- 「再生資源」とは「建設副産物のうち有用なもの」と規定されているが、こうした建設副産物を差し置いて、一民間企業である○○○○○が出す有毒スラグを再生資源と独自に判断することは、本来であれば建設資材リサイクル法が完全施行されたので、法律に違背すると思われるにもかかわらず、なぜ○○有毒スラグ混合骨材が有用なものと独自で判断したのか、その経緯を示す情報があるはず。
- ○○有毒スラグ(CS-40)と砕石骨材(クラッシャラン:C-40及びC-100)にブレンドした骨材とあるが、具体的な混合比率について本件通知ではなにも触れていない。どちらも天然砕石由来である再生骨材(RC-40)と砕石骨材とのブレンドの場合は、ブレンド比率による性状の変化には影響がないと考えられる。しかし、○○有毒スラグと砕石骨材のブレンドの場合は、もともと似て非なるもの同士なので、混合比率による変化は性状にも大きく影響するはず。○○有毒スラグ混合骨材を、再生骨材と「原則同等に取扱う」と判断するに至った根拠を示す内部資料があるはず。
- ブレンドされる前に膨張性試験結果を提出させるのに、なぜ○○有毒スラグに残留の恐れのある5品目(六価クロム化合物及びセレン、鉛、ふっ素、ほう素とそれらの化合物)については、「ブレンドした後」の溶出、含有試験結果を提出させることにしたのか、しかも骨材プラントの試験成績表での代用も可としたのか、それらの判断に至った内部討議の経緯を示す情報があるはず。
- 本件通知2において、なぜ「路床工、路面敷砂利には使用しない」と追記したのか。一旦、○○有毒スラグ混合骨材を無制限に使えるように通知した本件通知1から、「路床工、路面敷砂利には使用しない」とした本件通知2における判断への過程について何らかの内部協議の情報があるはず。
エ 申立人が入手した意見書に添付した情報(○○○○○とその子会社の○○○○○○○及び○○○○○○が平成○○年○○月○○日に行った3者合同会議資料)によると、「赤本に入れてもらう(何回でも通う)」、「建設工事必携の修正」、「スラグ混合路盤材での上層銘柄拡大の感触を聞きに県訪問(11月4日)→上層路盤はバージン材のみ使用にて認可ハードル高い」ので「県議も使う」などと記載されているメモがある。このことから、○○○○○らが実施機関を訪問した際の面談メモがあるはず。さらに、○○○○○らは実施機関に対して、県議会議員を使って口利きを恒常的に依頼していた可能性も窺えることから、そうした議員からの口利きを記録していたはずである。
オ 農村整備課は、「通常は県土整備部からの通知により、同一方針で行っている」ので、既に開示した公文書以外の本件情報は存在しないという主張だが、有害物質を含んでいる可能性の高い鉄鋼スラグの取扱いについて、慎重を期すべきであり部内で事前に十分検討することは、安全な水と土が不可欠な農地の維持と営農環境の保全のために必要不可欠である。したがって、県土整備部からの一方的な通知を鵜呑みにすることなど、到底ありえない。県土整備部からの通知に対して、何らかの内部協議が行われたことを示す情報があるはず。仮に、「通常、同一方針で行っている」場合であっても、同一方針とした判断の根拠を示す内規なり、方針決定に関する事務要領の類があるはず。
カ 公開条例は原則開示が基本である。その中で不開示とすることができる場合が規定されているが、県民の財産や生命にかかわることは、但し書きで開示することができるとしている。
2 本件処分に係る実施機関の主張要旨
(1)公文書の特定について
ア 農業農村整備工事の使用材料
群馬県発注の農業農村整備工事の受注者は、建設工事請負契約約款及び群馬県土木工事標準仕様書等に基づいて工事を施工している。工事に使用する材料は設計図書に品質規格を特に明示した場合を除き、共通仕様書に適合したもの、または同等以上のものとしている。受注者は、工事で使用する骨材等の品質を証明する資料を発注機関の監督員に提出している。
イ 本件公文書について
本件請求1は、「農業農村整備事業 再生砕石(○○スラグ混合)使用調査結果」に記載されている4件の工事である。本件請求2は、工事の受注者から工事を発注した県地域機関(農業事務所)の監督員に、材料の品質試験結果が添付された工事打合せ書が提出され、監督員は、その内容を確認し材料として使用を認めており、受注者から提出された工事打合せ書が材料として使用できると判断した資料である。
(2)申立人の主張に対する意見
異議申立書には本件通知の発出に至るまでの過程を示す情報が開示されていないと記載されているが、農政部が独自に作成する基準を除いて、通常は県土整備部からの通知により同一方針で行っている。そのため、上記文書の発出に至るまでの過程を示す公文書は存在しない。
(3)条例第14条第2号該当性
「氏名及び印影」について、特定の個人を識別することができるため非開示とした。
(4)条例第14条第3号該当性
「代表取締役の印影」について、法人の利益を害するおそれがあるため非開示とした。
第4 争点
1 争点1(対象公文書の特定について)
本件請求に関する公文書がほかに存在するか。
2 争点2(条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書該当性)
本件処分で非開示とされた部分が、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当するか。
第5 審査会の判断
1 条例の基本的な考え方について
条例は、公文書の開示を請求する権利を明らかにし、もって県が県政に関し県民に説明する責務を全うすることにより、県民の理解と信頼の下に公正で透明な行政を推進し、県民による県政への参加を進めていくことを目的として制定されたものである。よって、当審査会は、情報公開の理念を尊重し条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
2 争点1(対象公文書の特定について)
(1)はじめに
申立人は、本件処分において本件請求2に関する文書が含まれていなかったため、開示の時にそれを指摘したら、本件通知2がその場で提出されたと主張する。この申立人の主張について、実施機関は本件請求2から本件通知の伺い文、起案説明及び通知文(以下「本件通知一式」という。)を特定することができるため、当該文書は改めて開示すると述べている。そのため、当審査会では本件通知一式以外に本件請求から特定すべき公文書が存在するか否かを審査する。
(2)本件通知について
本件通知1は、平成22年6月11日付け県土整備部監理課建設政策室長名で県土整備部内所属長、土木事務所長及び関係機関の長あてに通知されたもので、「鉄鋼スラグの使用も再生資源の有効活用に繋がる」として、砕石骨材にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材の取扱いについて周知することを目的としたものである。その具体的な取扱いとは、砕石骨材にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材は、積算基準等を再生骨材と原則同様に取り扱うことや、クラッシャラン鉄鋼スラグがブレンドされていることから膨張性試験結果や土壌汚染対策防止法における第2種特定有害物質(重金属等)のうち鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目についての試験結果を提出させることなどである。
本件通知2は、平成22年10月15日付け県土整備部監理課建設政策室長名で本件通知1と同じあて名に通知されたもので、本件通知1の記述内容に、若干の加除修正がされたものと認められる。その具体的な加除修正内容は、「路床工、路面敷砂利には使用しない。」という一文を本件通知1に追記したものと、鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目に関して、ブレンドした後の溶出、含有試験結果を提出させることにしているが、当該試験方法についてのJIS規格を明記したものなどが認められる。
なお、本件通知に関して平成26年群馬県議会第3回定例会で一般質問されているが、環境森林部長は「この通知の発出に当たりましては、環境森林部に事前の相談はございませんでした」と答弁している。
(3)申立人及び実施機関の主張からの考察
申立人は、大要、「有害物質を含む可能性の高い鉄鋼スラグの取扱いについて、部内で事前検討することは必要不可欠であり、県土整備部からの一方的な通知を鵜呑みにすることなど、到底ありえない」と主張する。一方、実施機関は、「農政部が独自に作成する基準を除いて、通常は県土整備部からの通知により同一方針で行っているため、上記文書の発出に至るまでの過程を示す公文書は存在しない」と主張する。そこで、実施機関に改めてその点を確認したところ、平成19年10月1日から環境森林部及び農政部は県土整備部と共に基準を統一しており、原則として同一方針で行っているということであった。そのため、「平成22年度に県土整備部から発出された本件通知に対しても、同一方針として内部での協議は行っていない」とも実施機関は説明する。確かに、実施機関が主張するとおり各部局ごとに定められていた仕様書や基準、要領といった技術基準を統一した実施機関内部において、本件通知が各部局の工事自体の特殊性を考慮する必要のないものであれば、環境森林部及び農政部が本件通知と同一方針として取り扱うと判断したとしても不自然ではない。また、申立人が主張するような「同一方針とした判断の根拠」についても、前述のような実施機関の体制を踏まえれば、必ずしもそれを公文書として作成しなくても当該事務処理が不当であったとは認め難く、申立人が主張するような文書は「存在しない」とする実施機関の説明に特段不合理な点は認められない。
(4)検証
さらに、申立人は「有害物質を含んでいる可能性の高い鉄鋼スラグの取扱いについては、部内で事前に十分検討することは、安全な水と土が不可欠な農地の維持と営農環境の保全のためには必要不可欠である」ため「何らかの内部協議が行われたことを示す情報があるはず」と主張する。そのため、当審査会は実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、申立人が主張する公文書の作成、保有の有無を確認するため農村整備課において公文書の確認を行ったが、本件公文書として特定すべき文書の存在は認められなかった。したがって、本件請求2に関して実施機関が作成した公文書がほかに発見できない以上、当審査会としては実施機関が当該文書を作成又は取得していると判断することはできない。
(5)実施機関による報道発表について
ところで、実施機関は平成○○年○月○○日に、「○○○○○○への聞き取り調査の結果について」と題する内容の報道発表をしている。当該内容は、実施機関による○○○○○○からの聞き取り調査により、鉄鋼スラグを含む材料の使用工事箇所の調査を行った結果であり、この調査により新たに平成21年度以降の県施工43工事への出荷記録があったことを実施機関が発表したものである。そして、そのうち25工事(以下「新たに確認された25工事」という。)については、実施機関の設計書や工事関係書類により当該鉄鋼スラグの使用が確認され、環境基準に対する品質規格証明書が提出されていたということである。つまり、新たに確認された25工事の工事関係書類は、本件請求にある「(○○○○○○○工場から出た)鉄鋼スラグを使用して県が実施した公共事業」であるため、本件請求により特定すべき公文書であると判断される。よって、新たに確認された25工事のうち農政部が所管する3工事の工事関係書類は、改めて本件請求の対象公文書として特定すべきである。
(6)工事打合せ書の追加提出について
さらに、審査会が事務局を通して確認したところによると、「平成24年度(地域)県営農地整備事業(耕作放棄地解消、発生防止基盤整備)萩生川西地区 補完3工事」分の工事打合せ書については、実施機関が特定したもの(平成25年4月25日付け)の前に、平成25年4月3日付けで当該工事の工事打合せ書(以下、「平成25年4月3日付け工事打合せ書」という。)が実施機関に別途提出されていることが判明した。そこで当該文書について審査会が判断するに、本件請求2は「内部の意思決定の過程と結果が分かる情報」を請求していることをふまえると、当該文書は監督員が材料として使用できると判断した過程の文書であることは否定できないものである。そのため、平成25年4月3日付け工事打合せ書は改めて本件請求の対象公文書として特定すべきである。
3 争点2(条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書該当性)
申立人は、「県民の財産や生命にかかわることは、但し書きで開示することができる」と主張するため、本件処分において非開示とされた部分について、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当するか否か検討する。
条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書の規定は、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときにはこれを開示する趣旨である。そこで、本件処分における非開示部分である「個人の氏名及び印影」と「代表取締役の印影」について考えるが、そもそも当該非開示部分を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益の内容やその程度が明確でなく、それを公にする必要性を認めるだけの特段の事情もないため、これらを公にしない利益との比較衡量により人の生命、健康等を保護する利益が優先し、何人にも公にすることが必要であると判断することはできない。よって、条例第14条第2号ロ及び第3号ただし書に該当しない。
4 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、実施機関が主張する、鉄鋼スラグを「公共工事に使用できると判断するのは当然」であることの是非や、本件通知にある「鉄鋼スラグに残留のおそれのある5品目についてブレンドした後の溶出、含有試験結果を提出させる」ことの是非については、当審査会の判断するところではないことを申し添える。
第6 審査の経過
当審査会の処理経過は、以下のとおりである。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成26年5月12日 | 諮問 |
平成26年6月16日 | 実施機関からの理由説明書を受領 |
平成26年7月23日 | 異議申立人からの意見書を受領 |
平成26年9月19日 (第43回 第一部会) |
審議(本件事案の概要説明) |
平成26年11月21日 (第44回 第一部会) |
審議 |
平成27年1月9日 (第45回 第一部会) |
審議(実施機関の口頭説明等) |
平成27年2月12日 (第46回 第一部会) |
審議(条例第30条第4項による調査を実施) |
平成27年3月17日 (第47回 第一部会) |
審議 |
平成27年4月20日 (第48回 第一部会) |
審議 |
平成27年5月8日 | 答申 |