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公文書開示審査会答申第154号
「群馬県消費生活課の男性職員が、一般県民(以下甲という)からの懲戒請求を免れるために偽名を、甲に名のってよい、又は名のらなければならない、という内容」外7件の公文書不存在決定に対する異議申立てに係る答申書
群馬県公文書開示審査会 第一部会
第1 審査会の結論
群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、別表の(あ)欄に記載の年月日付けで、別表の(い)欄に記載の開示請求(以下「本件各請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
実施機関は、別表の(う)欄に記載の年月日に、本件各請求に係る公文書について存在しないことを確認し、別表の(え)欄に記載の決定(以下「本件各処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
(不存在の理由)
○開示を請求された公文書の内容又は件名に関する公文書は保有していないため。
3 異議申立て
申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成26年9月26日付けで本件各処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
4 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成26年12月18日、本件異議申立て事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。
第3 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
本件各請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 申立人の主張要旨
- 条例第14条2のイ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業・憲法違反である。
- 申立人は群馬県消費生活課の職員らが実際に本件各請求の言動があったことを見聞・体験している。申立人は群馬県消費生活課の利用者であり、条例第14条2のイで定められたように本件各請求で特定した公文書があることが容易に推測される。
- 昭和35年7月20日の最高裁大法廷の判例では、憲法11条・13条・21条等を根拠として、人権を抑圧してくる公務員を侮辱・罵倒・非難することは合憲であるという結果が出ている。また申立人は憲法16条を基に損害の救済を求めているわけである。群馬県消費生活課は、嘱託も含むとはいえ公務員で構成されており、おまけに本件各請求の通り人権を抑圧するのであるから、上記判例が適用される。
- 本件各請求で実施機関がしたことは、群馬県の内務規定違反・条例違反の隠蔽・地方公務員法でいう職権濫用罪・怠業罪及び憲法違反にあたる。
- 総合的にみると、上記の不法行為は各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである。
2 実施機関の主張要旨
消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条第1項で、都道府県には「消費生活センター」の設置義務があり、同法第8条第1項第2号で消費者安全の確保に関する事務を行うこととされている。そして、群馬県消費生活センター(以下「県センター」という。)は、消費者からの苦情相談等に応じることをその役割としている。
また、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められており、また、群馬県非常勤嘱託職員就業要領の第13条第2項には、非常勤嘱託職員の法令等に従う義務が定められている。
消費生活課職員及び相談員は消費者安全法その他の法令を遵守する義務があり、苦情相談等を断ってよい又は断らなければならないというような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない。
第5 審査会の判断
1 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
- 申立人は、大要、「(申立人が前述のとおり主張した)不法行為は各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはず」と主張している。一方、実施機関は、「消費者からの苦情相談等に応じることが県センターの役割であり、消費者安全法その他の法令を遵守する義務があるため、苦情相談等を断ってよい又は断らなければならないというような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない」と主張する。そこで、本件各請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成・取得されたか否か検討するものとする。
なお、本件各請求には、「一般県民」とあるが、個人情報開示請求ではなく公文書開示請求であるため、不特定多数の「一般県民」に対してのものが存在するか否かという観点から審査するものとする。 - 消費者安全法第10条第1項により都道府県に設置義務がある「消費生活センター」は、同法第8条第1項のとおり消費生活相談等の事務を実施する役割がある。そのため、県センターでは県民等から消費生活に関する相談を受けた場合、その内容を聴取し必要な助言や情報提供のほか相談者と事業者との間に立って交渉する、あっせんをおこなうなど相談内容の解決に向けた業務を行っている。また、県センターに対する相談内容は、「契約・取引に関する相談」や「製品トラブルに関する相談」、「多重債務の相談」など多種多様なものがあり、不特定多数の県民から広く相談が寄せられるものである。
- そのため、そもそも相談に応じることが役割の県センターにおいて、不特定多数の一般県民からの苦情相談等を「打ち切らなければならない」というような趣旨の公文書を作成及び取得することは通常はあり得ないことである。さらに、実施機関における一般職に属するすべての地方公務員は地方公務員法の適用を受けるが、同法第32条には法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められている。県センターは地方公共団体の一機関であるため、実施機関が主張するとおり消費者安全法のほか地方公務員法その他の法令に従うのは当然のことであるが、そもそも一般的に公的機関の職員が不法行為その他の信用を失墜するような行為を「行ってよい又は行わなければならない」という趣旨の公文書を作成及び取得することは通常想定し難いことである。そのため、本件各請求に係る公文書は存在しないとする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められない。
- その他、申立人は「各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである」と主張するが、この主張は実施機関が本件各請求に係る公文書を作成・取得したものと言うには根拠に乏しいものである。
- したがって、本件各請求に係る公文書を不存在とする実施機関の判断は妥当であると認められる。
2 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、申立人は異議申立書において、本件各処分は条例第14条第2号イに違反すると主張する。しかし、同規定は個人識別情報であっても一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。そのため、本件各請求に係る公文書は不存在であるという実施機関の判断が妥当である以上、本件各請求に係る公文書が存在することを前提とした申立人の当該主張は是認することはできない。
また、申立人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。
第6 審査の経過
当審査会の処理経過は、以下のとおりである。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成26年12月18日 | 諮問 |
平成27年 1月22日 | 実施機関からの理由説明書を受領 |
平成27年 2月16日 | 異議申立人からの意見書を受領 |
平成27年 4月20日 |
審議(本件事案の概要説明) |
平成27年 5月18日 (第49回 第一部会) |
審議(実施機関の口頭説明) |
平成27年 7月 1日 (第50回 第一部会) |
審議 |
平成27年 7月 6日 | 答申 |
項番 | (あ) 請求年月日 |
(い) 開示を請求する公文書の内容又は件名 |
(う) 決定年月日 |
(え) 決定 |
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1 | 平成26年8月15日 | 群馬県消費生活課の○○○○男性職員が、一般県民(以下甲という)からの懲戒請求を免れるために偽名(○○・○○○・○○○○等)を、甲に名のってよい、又は名のらなければならない、という内容 | 平成26年8月29日 | 公文書不存在決定 |
2 | 平成26年8月15日 | 群馬県消費生活課の○○○○男性職員(以下甲という)が、ある業者(以下丙という)からの不正請求の事案(以下丁という)がある一般県民(以下乙という)に対して、丙の言い分を何の証拠もなしに鵜呑みにし、乙がそれに異議を唱えると、甲は乙に自分で調べろと言い放ち、その結果丁はやはり証拠がなかったと乙が甲に報告しても、甲はそれを信じずに丁を打ち切ってもいい、又は打ち切らなければならない、という内容 | 平成26年8月29日 | 公文書不存在決定 |
3 | 平成26年8月15日 | 群馬県消費生活課の○○○○男性職員(以下甲という)が、一般県民(以下乙という)に架電された際、甲が乙に最高裁判例に基いて侮辱・罵倒・非難されると、甲は群馬県内務規定に背いて勝手に電話を切ってもいい、又は切らなければならない、という内容 | 平成26年8月29日 | 公文書不存在決定 |
4 | 平成26年8月26日 | 群馬県消費生活センター(以下甲という)の○○○相談員(以下丙という)が、個人情報の保護に関する法律(以下乙という)は甲では所管していないと言い放ち、丙を含む相談員が国の消費者行政の強化の方針に背いて乙に係る相談・連絡調整をしなくてよい、又はしてはならない、という内容 | 平成26年9月9日 | 公文書不存在決定 |
5 | 平成26年8月26日 | 群馬県消費生活センター(以下甲という)の○○○相談員(乙という)が、乙の明らかに誤った法解釈(製造物責任法に消費者が立証義務がある、等)を一般県民(以下丙という)に押し付け、それを以って丙の申告・要請をはねつけてよい・又ははねつけなければならない、という内容 | 平成26年9月9日 | 公文書不存在決定 |
6 | 平成26年8月26日 | 群馬県消費生活センター(以下甲という)の○○相談員が、甲の○○○相談員が担当していた事案を、消費生活課○○○の当該事案について詳細を知らない○○○○男性職員にたらい回しにしてよい・又はしなければならない、という内容 | 平成26年9月9日 | 公文書不存在決定 |
7 | 平成26年8月27日 | 群馬県消費生活課○○○○男性職員と○○○女性職員(以下甲という)が一般県民(以下乙という)との電話のやり取りで、甲から乙に言い逃したり、乙の話を甲が聞き逃した際、甲から乙に架電し直して確認しなくてもよい・又はしてはならない、という内容 | 平成26年9月9日 | 公文書不存在決定 |
8 | 平成26年9月8日 | 群馬県消費生活センターの相談員が、一般県民からの相談電話を何でもかんでも消費生活課の○○○○○○にたらい回しにしてよい、又はしなければならない、という内容 | 平成26年9月22日 | 公文書不存在決定 |