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公文書開示審査会答申第160号
「群馬県警の警察職員(以下甲という)が、自分に都合の悪い法令(例:昭和35年7月20日の最高裁大法廷の判例)に従わなくてよい・又は従ってはならない、及び、甲の責任者が自分に都合の悪い法令を甲の関係警察職員に周知徹底しなくてもいい、又はしてはならない、という内容」の公文書不存在決定に対する審査請求に係る答申書
群馬県公文書開示審査会第二部会
第1 審査会の結論
群馬県警察本部長が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、平成27年1月22日付けで、「群馬県警の警察職員(以下甲という)が、自分に都合の悪い法令(例:昭和35年7月20日の最高裁大法廷の判例)に従わなくてよい・又は従ってはならない、及び、甲の責任者が自分に都合の悪い法令を甲の関係警察職員に周知徹底しなくてもいい、又はしてはならない、という内容」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
実施機関は、平成27年1月28日、本件請求に係る公文書について存在しないことを確認し、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(不存在の理由)
- 請求のあった公文書については、作成又は取得していないため
3 審査請求
請求人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定に基づき、平成27年2月14日付けで本件処分を不服として群馬県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
4 諮問
諮問庁は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成27年3月25日付けで本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。
第3 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
本件請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 請求人の主張要旨
- 条例第14条2のイ違反・群馬県内務規定違反であり、原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業・警察法違反・憲法違反を隠蔽するものであるため。
- 実施機関が請求人に対してした本件決定は条例第14条第2号のイ違反であることは請求人は熟知している。実施機関の職員らは共同謀議して集団で職権濫用及び怠業・憲法違反を行い、請求人に情報隠蔽及び請求人に対して逸失利益を生じさせたものである。
- 昭和35年7月20日の最高裁大法廷の判決では、憲法11条・13条・21条等を根拠として、人権を抑圧してくる公務員を侮辱・罵倒・批難することは合憲であるという結果が出ている。
- 平成27年1月中に実施機関の職員は上記判例を知らず、請求人に「あなたに馬鹿と言われる筋合いはありません」と言い放って請求人の架電を勝手に切ったことがあり最高裁判例違反・群馬県内規違反である。また、同じころ、当時群馬県警察の相談室の責任者に請求人が上記判例を説明しても、自身の関係部署に周知徹底しないと言い放った。
- 本件請求に係る公文書が存在しない理由として諮問庁は地方公務員法を挙げているが、例えば刑法その他の法で罰則があるから犯罪が発生しないかというとそうではなく実際に様々な犯罪が発生しており、諮問庁の主張は本件請求に係る公文書が存在しない証明にならない。
- 上記の不法行為は各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである。本件請求で実施機関がしたことは、群馬県の内務規定違反・職員の越権行為・条例違反・地方公務員法でいう職権濫用罪・怠業罪及び刑法犯である詐欺罪・偽計業務妨害罪・警察法違反・憲法違反を隠蔽するものである。
2 諮問庁の主張要旨
- 全ての地方公務員は、地方公務員法の適用を受け、同法第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められていることからしても、地方公共団体の一機関である実施機関に限らず、その他の行政機関においても、職員が法令に従わないこと及び職員に法令を周知しないことを良しとするはずがなく、請求人が開示を求める内容が記載されている公文書を作成することは、通常、想定し難いことである。実際、実施機関では、本件請求の内容に合致する公文書は、作成又は取得していない。
- 請求人がいう条例第14条第2号イでは、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」は、非開示情報である個人に関する情報から除外される情報とされる旨が定められているが、請求人の主張は、本件請求に係る公文書が存在することを前提としたものであり、そもそも、実施機関は、同公文書を作成又は取得しておらず、同公文書は存在しないのであるから、同公文書が同規定にいう情報に該当するか否かを検討することができない。
- 請求人によるその余の主張については、本件決定を取り消し又は変更させるものではない。
第5 審査会の判断
1 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
- 請求人は、大要、「(請求人が前述のとおり主張した)不法行為は各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはず」と主張している。一方、諮問庁は、「職員が法令に従わないこと及び職員に法令を周知しないことを良しとするはずがなく、請求人が開示を求める内容が記載されている公文書を作成することは、通常、想定し難いことである。実際、実施機関では、本件請求の内容に合致する公文書は、作成又は取得していない」と主張する。
- そこで、本件請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成又は取得されたか否かを検討する。実施機関における一般職に属するすべての地方公務員は地方公務員法(昭和25年法律第261号)の適用を受けるが、同法第32条には法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められている。実施機関は地方公共団体の一機関であるため、職員が法令に従うのは当然のことであるが、そもそも一般的に公的機関の職員が不法行為その他の信用を失墜するような行為を「してよい又はしなければならない」という趣旨の公文書を作成及び取得することは通常想定し難いことである。そのため、本件請求に係る公文書は存在しないとする諮問庁の説明に特段の不合理な点は認められない。
その他、請求人は「各職員の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである」と主張するが、この主張は実施機関が本件請求に係る公文書を作成又は取得したものというには根拠に乏しいものである。 - したがって、本件請求に係る公文書を不存在とする実施機関の判断は妥当であると認められる。
2 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、請求人は審査請求書において、本件処分は条例第14条第2号イに違反すると主張する。しかし、同規定は個人識別情報であっても一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。そのため、本件請求に係る公文書は不存在であるという実施機関の判断が妥当である以上、本件請求に係る公文書が存在することを前提とした請求人の当該主張は是認することはできない。
また、請求人は実際に不法行為が行われており、諮問庁の地方公務員法を根拠とした理由説明では、本件請求に係る公文書が存在しない証明にはならないとも主張するが、前述のとおり法令の趣旨に反するような公文書を作成及び取得することは通常想定し難いのであって、当該主張は諮問庁の合理的な説明を覆すに足る根拠とは言い難く、実施機関が本件請求に係る公文書を作成又は取得したと認めることはできない。
この外、請求人は種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成27年 3月25日 | 諮問 |
平成27年 4月 3日 | 諮問庁からの理由説明書を受領 |
平成27年 5月 7日 | 審査請求人からの意見書を受領 |
平成27年 7月16日 (第46回 第二部会) |
審議(本件事案の概要説明) |
平成27年 8月31日 (第47回 第二部会) |
審議(実施機関の口頭説明) |
平成27年10月26日 (第48回 第二部会) |
審議 |
平成27年11月 6日 | 答申 |