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公文書開示審査会答申第166号

更新日:2016年4月4日 印刷ページ表示

「●●警察署「受理番号」

  1. 平成●●年●月●日発生
  2. ●●市●●町●●番地・墓地・●●平方メートル
  3. 遺骨盗難事件
  4. 遺骨所有者・●●・●●市●●町●-●-●」の公文書の存否を明らかにしない決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、平成27年2月24日付けで、「●●警察署「受理番号」1 平成●●年●月●日発生 2 ●●市●●町●●番地・墓地・●●平方メートル 3 遺骨盗難事件 4 遺骨所有者・●●・●●市●●町●-●-●」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成27年3月2日、本件請求に関して、公文書の存否を明らかにしない決定(以下「本件処分」という。)を行い、公文書の存否を明らかにしない理由を次のとおり付して、請求人に通知した。

  • 条例第14条第2号該当(個人情報)
    本件請求は、特定の個人に関する情報を請求内容に含んでいる。当該情報の有無を明らかにすることで、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)を公にすることとなる。
  • 条例第14条第4号該当(公共安全情報)
    本件請求は、特定の犯罪に関する情報を請求内容に含んでいる。当該情報の有無を明らかにすることで、特定犯罪に対する捜査活動の有無等を公にすることとなり、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある。
  • 条例第17条該当(公文書の存否に関する情報)
    本件請求については、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、上記非開示情報を開示するのと同じ結果を生じさせることになるため、条例第17条の規定により公文書の存在を明らかにしないで、請求を拒否する。

3 審査請求

 請求人は、行政不服審査法第5条の規定に基づき、平成27年4月21日付けで、本件処分を不服として群馬県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し審査請求を行った。

4 諮問

 諮問庁は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成27年9月9日、本件審査請求事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点

争点1 条例第14条第2号ただし書イ該当性
争点2 条例第14条第4号該当性

第4 争点に対する当事者の主張

1 争点1(条例第14条第2号ただし書イ該当性)

(1)請求人の主張要旨

 ●●警察署は当然にも、本部長の承諾の下に裁判所に提出されることを認識(公開)の上、裁判所に提出したものは公開である。個人情報を裁判所に提出したことは公開である。

(2)諮問庁の主張要旨

  • 本件請求は、特定の窃盗事件に係る受理番号が記載された公文書の開示を求めるものであるが、同請求内容に特定の個人(遺骨所有者)名等が記載されており、請求内容全体が特定個人に関する情報であることは明らかである。さらに、特定の個人が盗難事件の被害者となったか否かという事実の有無は、「個人に関する情報」であり、当然に当該個人の識別性を有するものと認められることから、条例第14条第2号の非開示情報(個人情報)に該当する。
  • 民事訴訟法第91条第1項は、原則として訴訟記録を公開し、すべての人に閲覧請求権を認めているものの、同条第2項において、一定の場合に閲覧請求の主体を制限し、同条第3項において、閲覧以外の方法について主体を当事者及び利害関係を疎明した第三者に制限している。また、同法第92条は、一定の場合には、裁判所は当事者の申立てにより、第三者の訴訟記録の閲覧等を制限することができる旨定め、明確な要件と手続のもと、個人のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等との調整を図っている。このように閲覧等の請求主体や請求対象に限定が付されていることからすれば、訴訟記録の一部であることをもって、条例第14条第2号ただし書イに該当するとはいえないことは明らかである。
  • 本件請求は、被害の日付、被害場所、被害品及び被害者を特定してなされており、本件請求に対応する公文書の存否を答えるだけで、特定の個人が盗難事件の被害者となったか否かという事実の有無を答えることと同様の結果が生じ、条例第14条第2号に規定する非開示情報を開示することとなることから、条例第17条にいう公文書の存否に関する情報に該当する。

2 争点2(条例第14条第4号該当性)

(1)請求人の主張要旨

 ●●警察署は当然にも、本部長の承諾の下に裁判所に提出されることを認識(公開)の上、裁判所に提出したものは公開である。公共安全情報を裁判所に提出したことは公開である。

(2)諮問庁の主張要旨

ア 本件請求は特定の窃盗事件に係る受理番号が記載された公文書の開示を求めるものであるが、特定の窃盗事件について、警察が認知しているか否かは、警察の捜査活動に関する情報であり、本件請求に対応する公文書の存否を答えることにより、警察の事件着手の有無及び捜査活動の内容が露呈することとなる。
 このような情報が明らかになることとなった場合、被疑者が検挙を免れるため逃走を図ることや、盗品を処分し証拠隠滅を図るなどの対応・防衛措置を講じることにより、窃盗事件の被疑者検挙や証拠品の収集及び保全に支障を及ぼすおそれが生じるなど犯罪の予防、鎮圧又は捜査、その他公共の安全と秩序の維持に支障が生じるおそれがあると認められることから、条例第14条第4号の非開示情報(公共安全情報)に該当する。
イ 本件請求は、被害の日付、被害場所、被害品及び被害者を特定してなされており、本件請求に対応する公文書の存否を答えるだけで、特定の窃盗事件について警察の認知の有無を答えることと同様の結果が生じ、条例第14条第4号に規定する非開示情報を開示することとなることから、条例第17条にいう公文書の存否に関する情報に該当する。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 本件対象公文書について

 諮問庁によると、本件対象公文書は、仮に存在するとしたならば、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第62条に基づき作成する犯罪事件受理簿(以下「本件対象公文書」という。)であると主張する。これは、警察署等で犯罪事件を受理したときに、特定の事件ごとに被害者の氏名や被害の状況等を記載し、さらに、その後の捜査の進展により、被疑者名や送致(付)先等を書き加えることによって捜査の進捗状況を明らかにする文書である。本件対象公文書への登載は、告訴、告発、自首、被害届の受理、現行犯逮捕、その他捜査に着手したとき等により、警察が事件を認知したときになされるもので、本件対象公文書の存在によって、告訴を始めとする犯罪事件の受理が明らかになるものである。

2 争点1(条例第14条第2号ただし書イ該当性)

  • (1)条例は第13条で原則開示をうたい、第14条で例外的に非開示を認めている。また、条例第17条は、開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで非開示情報を開示することとなるときは、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができると規定している。
  • (2)また、条例は非開示とすべき個人情報の類型について、個人の権利利益の十分な保護を図るため、特定の個人を識別できる情報は、原則として非開示とする方式を採用している。条例第14条第2号本文にいう「個人に関する情報」であって「特定の個人を識別することができるもの」とは、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることになる氏名その他の記述の部分だけでなく、特定の個人情報全体を指すほか、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても含まれると解される。
  • (3)さらに、条例は、公文書の開示請求権を「何人」に対しても認めており、開示請求者に対し、開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく、開示請求者が誰であるか、又は開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかどうかなどの個別的事情によって、当該公文書の開示決定等の結論に影響を及ぼすものではない。
  • (4)本件請求は、特定の窃盗事件に係る受理番号が記載された文書を求めるものであるが、請求内容に特定の個人名が記載されており、請求内容全体が、特定個人に関する情報であることは明らかである。
  • (5)したがって、本件請求に係る情報が存在しているか否かを答えることは、特定個人に関する情報を開示することになり、条例第14条第2号ただし書イないしハ又は条例第16条で規定する公益上の理由による裁量的開示に該当しない限り、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することとなる。
  • (6)請求人は、「裁判所に提出したものは公開である」旨を主張している。これは、憲法第82条(裁判の公開)の規定から、公開の法廷で審理されたものは、条例第14条第2号ただし書イに該当する旨の主張と思われるため、以下、この点について判断する。
  • (7)そもそも裁判の公開は,裁判の公正と司法権に対する国民の信頼を確保する要請に基づくものであり,条例に基づく開示請求制度とは趣旨・目的を異にするものである。そのため、裁判において証拠として提出されたからといって,特定の個人が盗難事件の被害者となったか否かという情報が,あらゆる場面において一般に公にされるべきものとは認められない。
  • (8)また、民事訴訟法第91条には、訴訟記録の閲覧について規定されているが、同条第2項には公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧制限や、同法第92条には秘密保護のための閲覧等の制限といった例外規定も同時に定められており、訴訟記録に記載された情報が、そのことをもって直ちに、公にされている情報と判断することはできない。よって、本件請求に係る情報は、条例第14条第2号ただし書イに定める「法令等の規定により又は慣行として公にされ、公にすることが予定されている情報」に該当するとはいえない。

3 争点2(条例第14条第4号該当性)

 前記2(7)で述べたとおり、本件請求は、条例第14条第2号に該当し、同号ただし書イに該当しないと認められるため、同条第4号該当性について判断するまでもなく、実施機関が公文書の存否を明らかにしない決定としたことは妥当である。

4 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 なお、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成27年9月9日 諮問
平成27年10月27日 諮問庁からの理由説明書を受領
平成27年11月13日 審査請求人からの意見書を受領
平成27年12月9日
(第51回 審査会)
審議(本件事案の概要説明)
平成28年1月27日
(第52回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成28年3月22日
(第53回 第一部会)
審議
平成28年3月29日 答申

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