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公文書開示審査会答申第183号
「消費生活課の消費者支援係員(嘱託相談員も含む)が、一般県民の新品のテレビが購入して1年程で火を噴いたというのに、それの報告を受けたり経産省の職員からこの事案に係る連絡があっても、そのテレビの製造業者に消費生活用製品安全法35条に基づく首相への報告を時効になってないのに促さなくてよい・または促してはならない、という内容」外2件の公文書不存在決定に対する審査請求
群馬県公文書開示審査会第一部会
第1 審査会の結論
群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、別表の(あ)欄に記載の年月日付けで、別表の(い)欄に記載の開示請求(以下「本件各請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
実施機関は、別表の(う)欄に記載の年月日に、本件各請求に係る公文書について存在しないことを確認し、別表の(え)欄に記載の決定(以下「本件各処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(不存在の理由)
開示を請求された公文書の内容又は件名に関する公文書は保有していないため。
3 審査請求
請求人は、実施機関に対し、本件各処分を不服として平成28年9月13日付け審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
4 弁明書の送付
実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成28年10月12日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。
5 口頭意見陳述の実施
実施機関は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第31条第1項の規定に基づき、平成28年12月8日、口頭意見陳述を実施した。
6 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成29年1月17日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。
第3 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
本件各請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 請求人の主張要旨
条例第14条(2)イ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業等の地方公務員法違反・憲法違反を隠蔽するものであるため。
2 実施機関の主張要旨
- 消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第35条第1項の規定は、消費生活用製品の製造又は輸入事業者に対し、重大製品事故が生じた際の内閣総理大臣への報告義務を定めているが、同法において、消費生活センターから製造又は輸入事業者に対し、内閣総理大臣への報告催促に関する規定は存在しない。したがって、消費生活センターはそもそもそうした権限を有していない以上、事業者に対して報告を促さなくてもよい・または促してはならないという趣旨の公文書を作成又は取得することはない。
- 消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条第1項で、都道府県には「消費生活センター」の設置義務があり、同法第8条第1項第2号で消費者安全の確保に関する事務を行うこととされている。
- あっせんは、当事者間の合意により迅速かつ円満に紛争を解決することが期待できる一方、行政処分や裁判手続と異なりあっせん案に法的拘束力がないこと、当事者のあっせん手続への参加が任意であり、一方が参加を拒否した場合、手続が打切りとならざるを得ない等の特徴がある。したがって、苦情の内容を踏まえ、あっせんを行うことが適当と認められる場合には、あっせんを行うこととなる。このように、苦情相談の内容に応じあっせんを行うことが群馬県消費生活センター(以下「県センター」という)の役割である。したがって、あっせんを行わなくてもよい・又は行ってはならないというような内容の文書を作成又は取得することはない。
- 事業者が定める修理規約について、県センターが修正を命じ、又は要望することができるとする法令上の規定はなく、県センターで対応可能であるのは苦情の内容に応じたあっせん対応までである。このため、仮にその相談等の対応の結果が事業者に対して消費者からの意見を述べるに留まることになるとしても、それにより相談を放置したということではない。あくまで、その事案についてより適当な対応があるにもかかわらず、その対応をとらないことが「放置」である。したがって、それを認める公文書を消費者からの苦情相談等に応じることをその役割としている県センターが作成又は取得することはない。
- また、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められており、また、群馬県非常勤嘱託職員就業要領第13条第2項には、非常勤嘱託職員の法令等に従う義務が定められている。
- 消費生活課職員及び相談員は消費者安全法その他の法令を遵守する義務があり、法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない。したがって、いずれの公文書についても作成又は取得していない。
3 口頭意見陳述における請求人の主張要旨について
前記第2の5の口頭意見陳述について、実施機関から提出された口頭意見陳述聴取結果記録書には、請求人の主張として、おおむね以下のことが記されている。
○消費生活課の職員は、本件各請求にある内容のことを、いずれも行っている。
第5 審査会の判断
1 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
- 請求人は、「条例第14条(2)イ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業等の地方公務員法違反・憲法違反を隠蔽するものである」と主張している。一方、実施機関は、本件各請求に係る公文書は法令等の規定から作成又は取得していないと主張する。そこで、本件各請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成又は取得されたか否か検討する。
なお、本審査会の判断に当たっては、本件各請求の記載内容に照らして、不特定多数の県民に対しての公文書が存在するか否かの観点から判断する。 - 消費者安全法第10条第1項により都道府県に設置義務がある「消費生活センター」は、同法第8条第1項のとおり消費生活相談等の事務を実施する役割がある。そのため、県センターでは県民等から消費生活に関する相談を受けた場合、その内容を聴取し必要な助言や情報提供のほか、相談者と事業者との間に立って交渉する「あっせん」を行うなど相談内容の解決に向けた業務を行っている。また、県センターに対する相談内容は、「契約・取引に関する相談」や「製品トラブルに関する相談」、「多重債務の相談」など多種多様なものがあり、不特定多数の県民から広く相談が寄せられるものである。
- そのため、上記のような役割がある県センターにおいて、不特定多数の県民からの相談の解決に向けた業務を行うなかで、一般的に、事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっせんをしなくてよいとか、放置してよいというような趣旨の公文書を作成又は取得することは通常はあり得ないことである。
- さらに、地方公務員法第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められており、また、群馬県非常勤嘱託職員就業要領第13条第2項には、非常勤嘱託職員の法令等に従う義務が定められている。そのため、消費生活課職員及び相談員は消費者安全法その他の法令を遵守する義務があり、法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することは通常想定し難いことであることから、別表項番2及び別表項番3に係る公文書は存在しないとする実施機関の説明に特段不自然な点はない。
- また、別表項番1に係る公文書については、実施機関があえて作成又は取得する理由がなく、その必要性も認められないため、当該請求に係る公文書を実施機関が作成又は取得することは通常想定し難いことである。
- したがって、本件各請求に係る公文書を不存在とする実施機関の判断は妥当であると認められる。
2 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、請求人は審査請求書において、本件各処分は条例第14条第2号イに違反すると主張する。しかし、同規定は個人情報であっても一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。そのため、本件各請求に係る公文書は不存在であるという実施機関の判断が妥当である以上、本件各請求に係る公文書が存在することを前提とした請求人の当該主張は是認することはできない。
また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。
第6 審査の経過
当審査会の処理経過は、以下のとおりである。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成29年1月17日 | 諮問 |
平成29年2月7日 (第58回 第一部会 |
審議(本件事案の概要説明) |
平成29年3月15日 (第59回 第一部会) |
審議 |
平成29年3月22日 | 答申 |
項番 | (あ) 請求年月日 |
(い) 開示を請求する公文書の内容又は件名 |
(う) 決定年月日 |
(え) 決定 |
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1 | 平成28年6月10日 | 消費生活課の消費者支援係員(嘱託相談員も含む)が、一般県民の新品のテレビが購入して1年程で火を噴いたというのに、それの報告を受けたり経産省の職員からこの事案に係る連絡があっても、そのテレビの製造業者に消費生活用製品安全法35条に基く首相への報告を時効になってないのに促さなくてよい・または促してはならない、という内容 | 平成28年6月23日 | 不存在 |
2 | 平成28年7月6日 | 消費生活課の消費者支援係員(嘱託相談員も含む、以下甲という)が、博士号を持つ者の特権も知らず、平成25年に民法が改正されたのも知らず、実際に博士号を持つ一般県民(以下乙という)から消費相談を受けた際、乙にそれらを指摘されても、甲は「それは関係ない」等と言い放って消費者保護法で斡旋の権限が甲にあるのに、乙の斡旋の依頼を断ってよい・または断らなければならない、という内容 | 平成28年7月19日 | 不存在 |
3 | 平成28年8月26日 | 消費生活課の消費者支援係員(○○・嘱託相談員も含む)が、大手家電メーカー(以下Sという)がSの勝手な理由で修理を断ることもあるという無茶苦茶な修理規約(以下甲という)を定め、甲を一般県民から指摘されても、Sにただ意見を言うだけで甲をその後放置してよい・又はしなければならない、という内容 | 平成28年9月7日 | 不存在 |