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公文書開示審査会答申第184号
「消費生活課の消費者支援係員(○○、嘱託相談員も含む、以下丙という)が、電子メールの内容はいくらでも改竄可能だというのに、一般県民(以下甲という)から消費トラブル(以下乙という)が起きてから連絡を受け、甲と乙を起こした業者が乙が起きた後に丙に送ってきた電子メールの定型文の内容を妄信し、それを以って甲の申告を疑ってもよい・又は疑わなくてはならない、という内容」の公文書不存在決定に対する審査請求
群馬県公文書開示審査会第一部会
第1 審査会の結論
群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成28年9月27日付けで、「消費生活課の消費者支援係員(○○、嘱託相談員も含む、以下丙という)が、電子メールの内容はいくらでも改竄可能だというのに、一般県民(以下甲という)から消費トラブル(以下乙という)が起きてから連絡を受け、甲と乙を起こした業者が乙が起きた後に丙に送ってきた電子メールの定型文の内容を妄信し、それを以って甲の申告を疑ってもよい・又は疑わなくてはならない、という内容」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
実施機関は、平成28年10月11日に、本件請求に係る公文書について存在しないことを確認し、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(不存在の理由)
開示を請求された公文書の内容又は件名に関する公文書は保有していないため。
3 審査請求
請求人は、実施機関に対し、本件処分を不服として平成28年10月19日付け審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
4 弁明書の送付
実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成28年11月30日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。
5 口頭意見陳述の実施
実施機関は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第31条第1項の規定に基づき、平成28年12月8日、口頭意見陳述を実施した。
6 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成29年1月17日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。
第3 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
本件請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 請求人の主張要旨
条例第14条(2)イ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業等の地方公務員法違反・憲法違反を隠蔽するものであるため。
2 実施機関の主張要旨
- 消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条第1項で、都道府県には「消費生活センター」の設置義務があり、同法第8条第1項第2号で消費者安全の確保に関する事務を行うこととされている。そして、群馬県消費生活センター(以下「県センター」という。)は、消費者からの苦情相談等に応じることをその役割としている。
- 県センターが消費者から相談を受け、又はあっせんを行うにあたり、苦情の合理性や収集した資料の信憑性については、事案に応じ個別に判断されることは言うまでもない。そのため、事業者が提出した証拠資料を理由もなく一律に信じ、それを根拠として消費者の申告を疑うことを定めた公文書を作成又は取得することは消費者安全法の趣旨及び目的から考えてあり得ないことである。
- また、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められており、また、群馬県非常勤嘱託職員就業要領第13条第2項には、非常勤嘱託職員の法令等に従う義務が定められている。
- 消費生活課職員及び相談員は消費者安全法その他の法令を遵守する義務があるため、事業者が提出した証拠資料を理由もなく一律に信じ、それを根拠として消費者の申告を疑ってよいというような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない。
3 口頭意見陳述における請求人の主張要旨について
前記第2の5の口頭意見陳述について、実施機関から提出された口頭意見陳述聴取結果記録書には、請求人の主張として、おおむね以下のことが記されている。
- 消費生活課の職員は、本件請求にある内容のことを、行っている。
- 自分の責任を逃れることに終始している。不正行為もやった。一般県民を軽く見て役人風を吹かしている。
第5 審査会の判断
1 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)
- 請求人は、「条例第14条(2)イ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業等の地方公務員法違反・憲法違反を隠蔽するものである」と主張している。一方、実施機関は、消費者からの苦情相談等に応じることが県センターの役割であり、消費者安全法その他の法令を遵守する義務があるため、事業者が提出した証拠資料を理由もなく一律に信じ、それを根拠として申請者の申告を疑ってもよい、というような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはないと主張する。そこで、本件請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成又は取得されたか否か検討する。
なお、本審査会の判断に当たっては、本件請求の記載内容に照らして、不特定多数の県民に対しての公文書が存在するか否かの観点から判断する。 - 消費者安全法第10条第1項により都道府県に設置義務がある「消費生活センター」は、同法第8条第1項のとおり消費生活相談等の事務を実施する役割がある。そうした事務を行う中で、県センターは相談を受け、あっせんを行うに際し、相談の内容に応じ必要な助言を行うとともに、あっせんを行うことが妥当であるかを判断するため、消費者及び事業者に説明を求め、又は資料の提出を求めることがある。その際、苦情の合理性や収集した資料の信憑性については、事案に応じて適切に処理する必要性から、自然と個別に判断せざるを得ないものであり、同趣旨の実施機関の説明は合理的なものである。
- そのため、上記のような役割がある県センターにおいて、不特定多数の県民からの相談の解決に向けた業務を行うなかで、一般的に、事業者が提出した証拠資料を理由もなく一律に信じ、それを根拠として消費者の申告を疑うことを定めた趣旨の公文書を作成又は取得することは、法の趣旨や規定からは通常あり得ないことである。
- さらに、実施機関における一般職に属するすべての地方公務員は地方公務員法の適用を受けるが、同法第32条には法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められている。また、非常勤嘱託職員についても同様に群馬県非常勤嘱託職員就業要領第13条第2項で法令等に従う義務が定められている。県センターは地方公共団体の一機関であるため、職員が法令に従うのは当然のことであり、法の趣旨や規定に反する本件請求に係る公文書を作成又は取得することは通常想定し難いことである。
- したがって、本件請求に係る公文書を不存在とする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められず、判断は妥当であると認められる。
2 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、請求人は審査請求書において、本件処分は条例第14条第2号イに違反すると主張する。しかし、同規定は個人情報であっても一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。そのため、本件請求に係る公文書は不存在であるという実施機関の判断が妥当である以上、本件請求に係る公文書が存在することを前提とした請求人の当該主張は是認することはできない。
また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。
第6 審査の経過
当審査会の処理経過は、以下のとおりである。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成29年1月17日 | 諮問 |
平成29年2月7日 (第58回 第一部会) |
審議(本件事案の概要説明) |
平成29年3月15日 (第59回 第一部会) |
審議 |
平成29年3月22日 | 答申 |