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公文書開示審査会答申第181号

更新日:2017年3月29日 印刷ページ表示

「現在、○○市○○地区の水源地帯約140ヘクタールで、○○によるゴルフ場計画跡地に、事業者である○○合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち○○月○○日付け〔原文まま〕で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。

 〈最優先で開示を請求するもの〉
1林地開発許可申請書 4工程表 5申請者の信用及び資力に関する書類 8地域住民又は市町村の長との協定書 9残置森林等の保全に関する協定の締結について 10残置森林等の保全に関する協定書 13隣接土地所有者の同意書」の公文書部分開示決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 別表1に掲げる文書につき、その一部を非開示とした決定について、実施機関がなお非開示とすべきとしている部分は、非開示とすることが妥当である。また、本件処分1で本件公文書1を特定したことは妥当である。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成28年6月8日付けで、「現在、○○市○○地区の水源地帯約140ヘクタールで、○○によるゴルフ場計画跡地に、事業者である○○合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち○○月○○日付で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。1林地開発許可申請書 2地番明細表 3開発行為に関する計画書(1)及び(2) 4工程表 5申請書の信用及び資力に関する書類 6保証書又は工事誓約書 7他法令の許認可申請又は許認可書の写し 8地域住民又は市町村の長との協定 9残置森林等の保全に関する協定の締結について 10残置森林等の保全に関する協定書 11当該開発行為により影響を受ける者の同意書 12土地所有者等関係権利者の同意書 13隣接土地所有者の同意書 14各構造物の安定計算書、度量計算書及び調査試験報告書等」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 開示決定等の期間の延長

 実施機関は、平成28年6月21日、本件請求に対して開示決定等の期間を延長し、その理由を次のとおり付して、請求人に通知した。

(延長の理由)

 開示請求文書の一部に群馬県情報公開条例(以下、「条例」という。)第14条に規定する非開示情報が存在し、開示請求文書が大部(約5,500頁)となるため、非開示部分を特定するのに相当の時間を要する(条例第13条による第三者保護に関する手続(意見照会)を実施するか否かの判断を含む。)ほか、他の事務(当該開示請求文書等の審査を含む)による業務繁忙により、条例第19条第1項の規定による決定期間内に開示決定が困難であり、開示決定を行うには、条例第19条第2項の期間延長期限程度までの期間を要すると見込まれるため。

3 実施機関の決定

(1)請求人は、平成28年6月30日、実施機関に対して、本件請求を次のとおり補正するとして「公文書開示請求書(補正書)」を送付した。

 (開示を請求する公文書の内容又は件名〈補正後〉)
「現在、○○市○○地区の水源地帯約140ヘクタールで、○○によるゴルフ場計画跡地に、事業者である○○合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち○○月○○日付で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。

〈最優先で開示を請求するもの〉
1林地開発許可申請書 4工程表 5申請書の信用及び資力に関する書類 8地域住民又は市町村の長との協定 9残置森林等の保全に関する協定の締結について 10残置森林等の保全に関する協定書 13隣接土地所有者の同意書
〈それ以外のもの〉
2地番明細表 3開発行為に関する計画書(1)及び(2) 6保証書又は工事誓約書 7他法令の許認可申請又は許認可書の写し 11当該開発行為により影響を受ける者の同意書 12土地所有者等関係権利者の同意書 14各構造物の安定計算書、度量計算書及び調査試験報告書等

(2)実施機関は、平成28年7月1日、本件請求に係る公文書のうち、その一部を「現在、○○市○○地区の水源地帯約140ヘクタールで、○○によるゴルフ場計画跡地に、事業者である○○合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち○○月○○日付け〔原文まま〕で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。〈最優先で開示を請求するもの〉1林地開発許可申請書 4工程表 5申請者の信用及び資力に関する書類 8地域住民又は市町村の長との協定書 9残置森林等の保全に関する協定の締結について 10残置森林等の保全に関する協定書 13隣接土地所有者の同意書」(以下「本件公文書1」という。)であると判断し、公文書部分開示決定(以下「本件処分1」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を別表1のとおり付して、請求人に通知した。

(3)実施機関は、平成28年8月5日、本件請求に係る公文書のうち、その一部を「現在、○○市○○地区の水源地帯約140ヘクタールで、○○によるゴルフ場計画跡地に、事業者である○○合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち○○月○○日付け〔原文まま〕で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。〈それ以外のもの〉2地番明細表 3開発行為に関する計画書(1)及び(2) 6保証書又は工事誓約書 7他法令の許認可申請又は許認可書の写し 11当該開発行為により影響を受ける者の同意書 12土地所有者等関係権利者の同意書 14各構造物の安定計算書、土量計算書及び調査試験報告書等」(以下「本件公文書2」という。)であると判断し、公文書部分開示決定(以下「本件処分2」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を別表2のとおり付して、請求人に通知した。

4 審査請求

 請求人は、実施機関に対して、本件処分1を不服として平成28年8月10日付けで審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

5 弁明書の送付

 実施機関は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成28年9月16日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。

6 反論書の提出

 請求人は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第30条第1項の規定に基づき、平成28年10月12日付け反論書を作成し、実施機関に提出した。

7 諮問

 諮問庁は、平成28年群馬県条例第25号附則第2項の規定により、なお従前の例によることとされる同条例による改正前の条例第26条の規定により、平成28年8月3日、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対し、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(本件請求に係る公文書の公文書不存在決定について)

1 争点1(非開示情報該当性について)

 本件処分1で非開示とされた部分が、条例第14条第2号又は同条第3号イに該当するか。

2 争点2(本件公文書1の特定について)

 本件処分1で本件公文書1を特定したことは妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 審査請求書における請求人の主張要旨

(1)非開示情報該当性について

  1. 「4工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所、氏名が黒塗りされているが、資本金1円の○○合同会社の代表社員である○○社はタックスヘイブンで知られる米国デラウェア州ウィルミントン市で設立登記をしているペーパー会社であり、開発事業者の得体は非常に怪しいので、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
  2. 「○○に関する事業スキーム図(詳細)」中、各業務委託契約等の相手方企業名が黒塗りされているが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんと事業スキームを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
  3. 「融資意向表明書」中、金融機関名、当該金融機関印影及び融資極度額が黒塗りされているが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんと融資が履行なされるのかどうかを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。

(2)本件公文書1の特定について

 森林法で定めた申請書類である「申請者の信用及び資力に関する書類」として「20年間のキャッシュフロー表」が含まれていない。これが不存在なのか、不開示なのかは請求人として判断できない。もし不存在であるとすれば、森林法で定めた「申請者の信用及び資力に関する書類」として、事業者に提出を求めていないことが想定されるが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんとこの事業のキャッシュフローを提出させてそれを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。

2 弁明書における実施機関の主張要旨

(1)非開示情報該当性について

  1. 「工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所、氏名及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「○○に関する事業スキーム図(詳細)」中の各業務委託契約等の相手方企業名について、取引先を示す情報であるが、法人の事業活動における取引先は、法人が自らの事業活動を適切かつ有効に実行するために開拓した取引相手であり、その情報は法人の内部管理情報であって、一般的には公にすることを予定していないことから、公にすることにより、当該法人が取引先からの信用を失う、当該法人の事業戦略が競争同業者に知られるなど、権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものである。
  2. 特定の法人がどのような金融機関からどのような融資を受ける予定であるかなどの金融取引に関する情報は、法人の事業の中でも取り分け重要かつ機微な情報で、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報である。
  3. 融資限度額は、金融機関の与信判断の度合いを端的に示すものである。また、これは、申請者の事業戦略の深度、熟度を示すものといえ、これが他の同種競争企業に公にされることになると、借入元である申請者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。
  4. 金融機関の法人印影は、当該金融機関名を端的に示すものであるので、上記の理由により秘匿すべきものであると同時に、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであって、当該法人において、むやみに公にしていないものである。これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、当該法人の正当な利益が害されるおそれがあるものである。

(2)本件公文書1の特定について

  1. 本件請求の内容から、請求に係る情報の内容が、群馬県林地開発許可申請要領(平成12年3月23日付け森第212号、各林業事務所長あて林務部長通知。)に定める「1 申請に必要とする書類」のうち「許可申請」に必要とされる書類を全て網羅していることから、○○合同会社による平成○○年○○月○○日付け申請の林地開発許可申請書の一切の書類と特定した。
  2. 請求人から、「最優先で開示を請求するもの」として項目を指定し、決定期間の延長に関わらず、早急に開示すべき旨の申し出がされたことから、実施機関は、「最優先で開示を請求するもの」については、申請要領に規定する該当文書であると特定した。
  3. 「20年間のキャッシュフロー」について、請求人は「申請者の信用及び資力に関する書類」に存在すべきとするが、当該書類については、林地開発許可申請書中の「開発行為に関する計画書(1)」の「事業経費内訳書」を補足する書類として「○○太陽光発電所 事業計画(20年間のキャッシュフロー)」として添付されている。
  4. 「20年間のキャッシュフロー」は、請求人が「それ以外のもの」とした書類の一つで、平成28年8月5日付け公文書部分開示決定をしている。
  5. 「20年間のキャッシュフロー」に関連して審査請求が具体的に行われていないので、本弁明書においては、当該書類に一部非開示部分はあるものの、当該非開示部分についての弁明等は行わないものとする。

3 反論書における請求人の主張要旨

(1)非開示情報該当性について

  1. 「工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所、氏名及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「○○に関する事業スキーム図(詳細)」の各業務委託契約等の相手方企業名について、この事業計画がどのような資金で作られるのかを知るのは、事業の実現性、妥当性、健全性、信頼性等を計るために不可欠な情報である。
  2. 周辺を外資系特別目的会社である開発事業者が買い占められることになり、事業の実現性等を知ることは、土地所有者の生活や財産の保護の観点から、公にしてもらうことが必要不可欠である。
  3. この事業計画のエリアは、周囲に耕作地や居住地が点在しており、ここから流れ出す水は○○川と○○川となって下流に流下している。この事業がきちんとした資金計画に基づいているかどうかを知ることは、水害や獣害など、地元住民が最も懸念している災害事件が発生した場合でも、きちんと対応能力があるかどうか、関係住民らの生命、健康、生活及び財産保全のための資金面でのチェックは不可欠だからである。よって、条例第14条第3号ただし書に該当するため、開示すべき情報である。
  4. 実施機関は、事業主体の○○合同会社の「取引先」や「競争同業者」とはいったいどれを指すのか明らかにされたい。
  5. 実施機関のいう当該法人の事業戦略の機密保持の重要性よりも、この得体の知れない外資法人によるメガソーラー開発事業によって、地元住民等の生命、健康、財産の保護の方が、比較衡量的にはるかに重要であると考えている。
  6. 「融資意向表明書」中の金融機関名、当該金融機関印影及び融資限度額について、得体の知れない外資系の特別目的会社に対して、どのような金融機関が何を担保に融資をしたのかを確認することは、県民等の生命、健康、財産の保護の観点等から重要であり、条例第14条第3号ただし書に該当する。
  7. 得体の知れない外資系の合同会社が提出した文書が偽造書類でないことを証するためにも、金融機関の法人印影の開示は条例第14条第3号ただし書に則って、正しく判断されなければならない。
  8. 実施機関が当該法人のことを「我が国において適法な法律的手続により設立された法人」であり、得体の知れた会社と判断したのであれば、当然、当該情報は公開されるべきである。なぜなら、日本の社会で認知された法人であれば、当然、法人情報は明らかにされるべきであり、とくに今回のような水源地域における大規模な開発事業の場合には社会的責任を伴うことから、当該情報の秘匿に行政である実施機関が加担することはあってはならないからである。
  9. ただちに、当該事業情報を全面的に開示することにより、今回の開発事業者の素性を広く世間に知らしめ、誰がどれほどの融資をこのペーパー会社に対して行ったのかを明らかにし、ひろく世論の判断を仰ぐ必要があると考えられる。

(2)本件公文書1の特定について

 平成28年8月5日付け公文書部分開示決定通知書には、「3-1開発行為に関する計画書中(1)中、1所要経費(総事業費)、2工事施工者住所、氏名、3事業経費内訳書金額及び事業計画(20年のキャッシュフロー)金額」について、条例第14条第3号イ該当として別表2のとおり記してあった。このため、仮に開示を受けたとしても、黒塗りになることから、この情報についても不開示情報として扱われることは誰の目にも明らかであるとして、請求人は8月19日の開示手続に応ずる意義を見出せなかったのである。この件も今回の審査請求に含まれなければならない。

4 実施機関の口頭説明における主張要旨

  1. 「○○に関する事業スキーム図(詳細)」中の各業務委託契約等の相手方企業名については、事業主等が開催した地元説明会等において、当該相手方企業名が明らかにされたこと等から、非開示とする必要が消滅したと判断して、今後開示する。
  2. 「工程表」中の連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)住所及び氏名欄に記された情報について、個人の氏名は条例第14条第2号に規定する個人に関する情報に当たると判断して非開示と考えているが、その余の情報については、上記(1)と同様に、今後開示する。

第5 審査会の判断

1 争点1(非開示情報該当性について)

(1)本件審査請求について

 本件請求は、本件公文書1及び本件公文書2の開示を求めるものであるが、実施機関は本件公文書1について、その一部を条例第14条第2号及び第3号イに該当するとして、部分開示とする本件処分1を行った。これに対し、請求人は条例第14条第3号イによる非開示部分の開示等を求めているが、実施機関は、上記第4の4のとおり、当審査会における実施機関の口頭説明において、非開示部分のうち、「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄に記載された情報(個人の氏名を除く。)及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「○○に関する事業スキーム図(詳細)」の各業務委託契約等の相手方企業名は開示するものの、その余の非開示部分(以下「本件非開示維持部分」という。)はそれを維持するとしていることから、以下、本件公文書1を実際に見分した結果を踏まえ、本件非開示維持部分であって請求人が開示を求めると主張する部分の非開示情報該当性について検討する。

(2)個人の氏名について

  1. 「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄には個人の氏名が記されているが、当該個人は林地開発許可申請書を作成した法人における担当者であることが認められる。
  2. 本件処分1は、当該個人の氏名も含めてこの連絡先の住所及び氏名欄に記された情報の全てを条例第14条第3号イに該当すると判断されたものであるが、上記第4の4(2)のとおり個人の氏名以外を開示するという判断に伴い、当該個人の氏名については「特定の個人を識別することができる情報として条例第14条第2号に該当する」として、実施機関はなお非開示を維持すると主張するため、当該情報の条例第14条第2号該当性について判断する。
  3. 林地開発許可申請書を作成した法人の担当者の氏名は、特定の個人を識別することができる情報であると認められる。また、当該情報は法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報とはいえないことから条例第14条第2号ただし書イに該当せず、その性質上、同条第2号ただし書ロ及びハにも該当しない。
  4. したがって、「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄にある個人の氏名は、条例第14条第2号に該当し非開示とすることが妥当である。

(3)金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について

  1. 「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「融資意向表明書」には、金融機関名並びに印影及び「融資極度額」が記されている。実施機関は、当該情報について「開発事業に関する通常一般に入手できない情報であり、公にすることで、当該申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と主張するため、条例第14条第3号イの該当性について判断する。
  2. この「融資意向表明書」は、特定の金融機関が特定の条件を前提として、○○合同会社に対して、記載された概要による融資を行う意向であることを表明したものであることが認められる。
  3. 一般に、特定の法人がどこの金融機関からどのような融資を受けるかなどの金融取引に関する情報は、当該法人の事業に関する情報の中でも重要かつ機微な情報であって、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報であると考えられる。そして、この特定の法人名を既に明らかにしている以上、当該取引先金融機関名を公にすることにより当該特定の法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
  4. 次に、金融機関の印影であるが、当該印影は当該金融機関を識別することができる情報であると認められる。そのため、上記3と同様に、公にすることにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
  5. 次に、「融資極度額」であるが、一般に、特定の法人がどこの金融機関からどのような融資を受けるかなどの金融取引に関する情報は、当該法人の事業に関する情報の中でも重要かつ機微な情報であって、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報であると考えられる。そして、この特定の法人名を既に明らかにしている以上、「融資極度額」を公にすることにより当該特定の法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
  6. 一方、請求人は、「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について条例第14条第3号ただし書に該当する旨を主張するため、その点について判断するが、当該規定は、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときにはこれを開示する趣旨である。そこで「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について考えるが、これらの情報を公にする場合、○○合同会社に著しい不利益を甘受せしめることになると判断されるため、そうである以上、公にするときは、人の生命、健康等に対する危険又は損害が現実に発生している場合又は将来それらが侵害される「おそれ」があり、その「おそれ」が法的保護に値する蓋然性が高い場合に限定されるものと解する。しかしながら、現時点において危険又は損害が発生していることは確認できず、また、請求人の主張する「おそれ」は法的保護に値する蓋然性があるとまではいえず、さらに、審査会もそれを見出すことはできなかった。そのため、当該情報は、条例第14条第3号ただし書に該当しないと判断する。
  7. したがって、「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」は、条例第14条第3号イに該当し、非開示とすることが妥当である。

2 争点2(本件公文書1の特定について)

  1. 請求人は、審査請求書において、「森林法で定めた申請書類である『申請者の信用資力に関する書類』として、20年間のキャッシュフロー表が含まれていない。これが不存在なのか、不開示なのかは請求人として判断できない。」と主張する。これに対して、実施機関は、当該書類(20年間のキャッシュフロー)については、「林地開発許可申請書中の『開発行為に関する計画書(1)』の『事業経費内訳書』を補足する書類として『○○太陽光発電所 事業計画書(20年間のキャッシュフロー)』として添付されている。当該書類については、平成28年6月30日付け公文書開示請求書(補正書)中の『それ以外のもの』とした書類の一つで、平成28年8月5日付け-公文書部分開示決定通知書により-審査請求人に通知している」と主張する。
  2. そこで、それぞれの主張を踏まえた上で本件処分1で本件公文書1を特定したことの妥当性について判断する。実施機関は、「20年間のキャッシュフロー」が「開発行為に関する計画書(1)」の「事業経費内訳書」を補足する書類として添付されているものであると説明するため、当審査会事務局職員をして実施機関に確認させたところ、その説明のとおりに「20年間のキャッシュフロー」が綴られていたということであった。そのため、「20年間のキャッシュフロー」を請求人が最優先で開示を求めるもの以外のものとして本件処分2で特定したことに、特段不合理な点は認められない。
  3. また、本件審査請求日は平成28年8月10日付けのものであるが、本件処分2は、それ以前の平成28年8月5日に決定されたものであることから、仮に、請求人の主張が「20年間のキャッシュフロー」を本件処分1に含めて特定するべきであったというものだとしても、審査請求日時点において本件処分2が既になされていることを踏まえると、本件審査請求書における請求人の「20年間のキャッシュフロー」が不存在なのか不開示なのか請求人として判断できないという主張には理由が認められない。
  4. したがって、本件処分1で「20年間のキャッシュフロー」を特定しなかったことに問題は認められず、本件処分1で本件公文書1を特定したことは妥当である。
  5. なお、請求人は、反論書において、「平成28年8月5日付け-公文書部分開示決定通知書には、-(20年のキャッシュフロー)金額-について、-【情報公開条例第14条第3号イ該当】-と記してあった。このため、仮に開示を受けたとしても、黒塗りになることから、この情報についても不開示情報として扱われることは誰の目にも明らかであるとして、請求人は8月19日の開示手続に応ずる意義を見出せなかったのである。-従って、この件も今回の審査請求に含まれなければならない。」と主張する。この点について当審査会は、請求人が作成した審査請求書における「2 審査請求に係る処分の内容」の記載が本件処分1のみを特定させているものと明確に認めることができることから、本件処分1の妥当性についてのみ審査したものである。

3 結論

以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成28年12月22日 諮問
平成29年1月11日
(第57回 第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成29年2月7日
(第58回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明等)
平成29年3月15日
(第59回 第一部会)
審議
平成29年3月22日 答申
別表1
文書名 非開示部分 非開示理由
申請者○○合同会社による平成○○年○○月○○日付け林地開発許可申請に係る文書中の次の文書
1林地開発許可申請書、4工程表、6申請者の信用及び資力に関する書類、8地域住民又は市町村の長との協定書、9残置森林等の保全に関する協定の締結について、10残置森林等の保全に関する協定書、13隣接土地所有者の同意書
※附番数字は、開示請求書に記載された開示請求文書の附番数字である。
「1林地開発許可申請書」中、印影 【情報公開条例第14条第3号イ該当】
登録された法人印であり、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであるとともに、これにふさわしい形状のものであって、申請者において、むやみに公にしていないものであり、これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、申請者の正当な利益を害するおそれがあるため。
「4工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所・氏名 【情報公開条例第14条第3号イ該当】
申請者の取引内容に関する事項で内部管理情報であり、公にすると、取引先から信用を失うなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
「5申請者の信用及び資力に関する書類」中、
  • 会社定款の事業者印影
  • 「○○に関する事業スキーム図(詳細)」中、各業務委託契約等の相手方企業名
  • 融資意向表明書中金融機関名、当該金融機関印影及び融資限度額
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
  • 印影については「1林地開発許可申請書」に記載した非開示理由と同様
  • 「○○に関する事業スキーム図(詳細)」は開発事業における取引関係を記述した文書で、当該取引先の情報は、内部管理情報であり、公にすると、取引先から信用を失うなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
  • 「融資意向表明書」は、申請者の金融機関との取引関係に関する情報を含む文書であり、取引金融機関名及び融資限度額は、開発事業に関する通常一般に入手できない情報であり、公にすることで、当該申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
「13隣接土地所有者の同意書」中、個人名、住所及び印影、隣接地地番、事業者印影 【情報公開条例第14条第2号該当】
  • 承諾書は、個人の住所・氏名及び同意に係る個人の意思表示の有無を含む文書である。個人名は個人を識別することができるものであると同時に当該意思表示を示す個人を特定するものであり、これを公表すると当該個人の権利利益を害するおそれがあるため。地番については、他の情報(登記事項証明書)と照合することにより、当該土地の所有者個人を識別することが可能となるため。
  • 印影については「1林地開発許可申請書」に記載した非開示理由と同様
別表2
文書名 非開示部分 非開示理由
申請者○○合同会社による平成○○年○○月○○請に係る文書中の当該請書の図書目次(別紙)に掲げるもの(ただし、平成28年7月8日に開示済みのものを除く) 2-1及び2-2地番明細書中、法人以外の所有者の氏名及び住所並びに当該所有者の所有に係る土地地番 【情報公開条例第14条第2号該当】
氏名及び住所は、特定の個人を識別することができるものであり、また、地番は他の情報(登記事項証明書)と照合することにより、当該土地の所有者個人を識別することが可能となるため。
3-1開発行為に関する計画書中(1)中、1所要経費(総事業費)、2工事施工者住所・氏名、3事業経費内訳書金額及び事業計画(20年のキャッシュフロー)金額 【情報公開条例第14条第3号イ該当】
1及び3:申請者の開発事業に関する財務計画であって、申請者は内部情報として管理しており、それが公にされると申請者の資金調達力や経営戦略が明らかとなるなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
2:申請者の取引内容に関する事項で内部管理情報であり、公にすると、取引先から信用を失うなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
5-2工事誓約書中、施行者住所・氏名・法人印影 3-1文書の2の非開示理由と同様
6-1他法令の許可申請又は許認可書の写し中、1法人印影、2「農地法第5条第1項の規定による許可申請書」中「5資金調達についての計画」中資金等の金額 【情報公開条例第14条第3号イ該当】
1:登録された法人印であり、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであるとともに、これにふさわしい形状のものであって、申請者において、むやみに公にしていないものであり、これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、申請者の正当な利益を害するおそれがあるため。
2:3-1文書の1及び3の非開示理由と同様
9-1土地所有者等関係権利者の同意書中、1法人印影、2「関東財務局前橋財務事務所長の国有地使用承諾書」の附属図面(公図等転写連続図)中、法人以外の所有に係る地番、3法人以外の関係権利者の住所・氏名・印影・当該権利者の権利に係る土地の地番 1:6-1文書の1の非開示理由と同様
2及び3:2-1及び2-2の非開示理由と同様
10-2堤体の安定計算書中、調査会社社名・電話番号、調査主任技師等氏名 3-1文書の2の非開示理由と同様
10-3長大切土、高盛土安定計算書中、調査会社社名 3-1文書の2の非開示理由と同様
10-4土質調査試験報告書中、調査会社社名・電話番号、調査主任技師等氏名 3-1文書の2の非開示理由と同様
11-4公図・造成計画平面図複合図中、地番(法人以外が所有するものに限る) 2-1及び2-2文書の非開示理由と同様

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