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公文書開示審査会答申第123号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「平成○年○月○日、○○で行われた速度取締りの 1行われた時間帯 2検挙台数及び各違反車両の違反状況 についての文書」の存否を明らかにしない決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会

第1 審査会の結論

 実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、平成22年3月3日付けで、「平成○年○月○日、○○で行われた速度取締りの 1行われた時間帯 2検挙台数及び各違反車両の違反状況 についての文書」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成22年3月10日、本件請求に関して、公文書の存否を明らかにしない決定(以下「本件処分」という。)を行い、公文書の存否を明らかにしない理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
 ○条例第14条第4号該当
 本件開示請求は、場所を特定した速度取締りについての請求であり、公にすることにより、将来の犯行を容易にし、又は犯罪の鎮圧を困難ならしめる情報であり、条例第14条第4号(公共安全情報)に該当する。
 ○条例第14条第6号該当
 本件開示請求は、場所を特定した速度取締りについての請求であり、速度取締りの性質上、公にすることにより、違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれのある情報であり、条例第14条第6号(事務事業情報)に該当する。
 ○条例第17条該当
 本件開示請求については、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、上記非開示情報を開示するのと同じ結果を生じさせることになるため、条例第17条の規定により公文書の存否を明らかにしないで、請求を拒否する。

3 審査請求

 請求人は、行政不服審査法第5条の規定に基づき、平成22年3月29日付けで、本件処分を不服として群馬県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し審査請求を行った。

4 諮問

 諮問庁は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成22年5月26日、本件審査請求事案の諮問を行った。

第3 争点(条例第14条第4号及び第6号該当性)

 本件請求内容が条例第14条第4号及び第6号に該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 請求人の主張要旨

 行政の主張する「おそれ」や「蓋然性」は開示の有無に関わらず、速度取締りが公に行われる以上は常にそのような「おそれ」や「蓋然性」があり、改めて開示をしたところで速度取締りの目的の達成が困難になるものではなく非開示理由にはあたらない。
 行政は「指定した日付の指定した番地の開示も多くのおそれに該当し応答拒否に値する」と主張するが、その「おそれ」が現実となるなら、速度取締事実を知らない県民が一番地ずつずらした無数の住所に年・月・日を乗じた数の開示請求を繰り返し行った場合に、将来の速度取締場所を推測される可能性がでてくることになり、ひいては悪質な運転者等に悪用され、その結果としてそこで初めて、取締り場所で交通法規を守り、それ以外の場所で交通法規を無視する弊害が生じる可能性があるが、そのような無数無作為の開示請求は社会通念上、合理性は無く、当該請求に関しては弊害の可能性の保護ではなく、公文書を享受する権利の保護が依然ある。
 一方、検挙者には交通反則告知書等により取締りの日時、場所を明かしており、そもそも速度取締りを公にしている以上、不特定多数の者が取締りの事実を確認でき、更に第三者に取締り事実の報告をすることもできる事は予想される。
 そのことからも開示を行ったところで公共の安全等の維持への支障は無く、条例第14条第4項の「相当の理由」には値せず、行政の主張は著しく妥当性を欠く。
 また、そのため日付・場所の指定に限った速度取締開示請求は既に何らかの方法で速度取締りの事実を確認しているものと推定でき、その場合は既に行政の主張する速度取締りの心理効果、安全性、住民の静穏、時間場所の制約、その他多くの制約等は開示に起因することなく起こっており、又、速度取締りは、その他追尾式測定、無人速度違反取締装置、車載式速度監視記録装置等の方法があり、過去のレーダー速度取締りの場所が公にされたところで心理効果等の目的の達成等が困難になる蓋然性は無く、条例第14条第6号の適用はない。
 以上のように非開示理由に該当しない限り条例第17条にも該当しない。
 仮に該当するとすれば、群馬県公安委員会が主張する「答えるだけで交通取締り(公権力の行使)の事実を明らかにしてしまう」という考えの行政がこれからも起こり続けてしまう。
 行政の主張する目的は大変素晴らしいものであるが、その目的の達成には行政行為の瑕疵を始めとする違法・不当があってはならず、公正・透明であるものでなければならない。
 そのためには取締時の映像化や公文書の開示等を積極的に行い、公益性を保護する必要がある。

2 実施機関の主張

(1)条例第14条第4号(公共安全情報)該当性
 交通取締りに関しては、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする道路交通法の趣旨に従い、交通事故の未然防止、危険運転者の早期排除を主眼として実施しているものである。
 速度取締りにあっても、取締現場付近及びその周辺の交通事故の発生による自動車運転過失致死傷罪等の犯罪の予防、鎮圧を図るとともに、違反運転者に対し罰金などの刑事上の刑罰を科すこと、反則金や違反点数による行政上の措置を行い、違反者や処分者に対する講習などによる運転教育を通じて交通法令の遵守や反復違反の抑制を図り、さらには、反復して違反等を敢行する悪質・危険運転者の道路交通からの一時的な排除等の目的を達成するために行われるものである。
 本件開示請求に係る公文書を開示すれば、過去に実施された取締りの場所が明らかになり、さらには、同様の開示請求が繰り返し行われ、これが公にされた場合、これら情報を分析すれば、将来行われる取締りの場所等が容易に推測されることとなり、悪質な運転手等に悪用され、その結果、取締場所でのみ交通法規を守り、それ以外の場所においては交通法規を無視するという弊害が生じる蓋然性が高く、交通モラルの低下や法秩序の形骸化を招くとともに、悪質・危険な運転者を道路交通の場から排除することが困難となるなど、犯罪の予防、鎮圧等の目的が危ぶまれ、その結果として、道路交通上の危険性が高くなるなど、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすこととなる。
 以上のことから、速度取締りの場所を公にすることは、犯罪の予防、鎮圧、その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認める相当な理由があると認められることから、条例第14条第4号に規定する非開示情報に該当する。
(2)条例第14条第6号(事務事業情報)該当性
 速度取締りは、特定の場所に警察官がレーダー等の速度測定機器を設置して行う「定置式測定」による取締り、白バイ・パトカーが違反車両を追尾して速度測定を行う「追尾式測定」による取締り、国道等の主要幹線道路に設置して行う「無人速度違反取締装置」による取締り、取締機器を車両に搭載して行う「車載式速度監視記録装置」による取締り等があり、運転者にとっては、いつ、どこで取締りが行われるのかが予測できないという心理的効果をもたらすところに意味があると考えられる。
 しかし、速度取締りの実施場所や時間は、速度取締りの方法によっては、通行者、通行車両、違反者や警察官等の安全性の確保を図り、更に速度測定機器の設置に適する地形や場所を選定しなければならず、加えて、実施場所の付近住民の静穏を害さずに実施するためには実施時間も限られるなど、幾多の制約が伴い、この様な状況において、取締場所を公にすることにより、当該場所における取締りを困難にするおそれがあり、それによって違法若しくは不当な行為が容易となる。
 以上のことから、特定の場所における速度取締りに関する情報を公にすることは、違法若しくは不当な行為を容易にするおそれがあると同時に、速度取締り自体の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる相当な理由があることから、条例第14条第6号に規定する非開示情報に該当する。
(3)条例第17条(公文書の存否に関する情報)該当性
 本件開示請求では、その内容に、特定地点の番地という公共安全情報及び事務事業情報を含んでいる。そのため、開示請求に係る公文書の存否を答えるだけで、特定の場所における速度取締りを実施した事実の有無を明らかにすることとなり、公共安全情報及び事務事業情報を開示した場合と同様の結果となる。
 したがって、実施機関は、条例第17条の規定により、本件開示請求に係る公文書については、その存否を明らかにせずに開示請求を拒否したものである。

第5 審査会の判断

1 本件請求に係る公文書について

 本件請求に係る公文書は、特定の日、特定の場所における速度取締りの実施時間帯、検挙台数等の違反状況がわかる文書である。

2 争点(条例第14条第4号及び第6号該当性)

(1)条例は第13条で原則開示をうたい、第14条で例外的に非開示を認めている。また、条例第17条は、開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで非開示情報を開示することとなるときは、当該公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができると規定している。
 本件請求に関して、諮問庁は、対象となる公文書の存否を答えるだけで、条例第14条第4号及び第6号に該当する非開示情報を開示することとなるため、条例第17条に該当すると主張するので、その適否について検討する。
(2)条例第14条第4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を非開示情報として規定している。
 公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために国及び地方公共団体に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。
 本号に規定する情報の開示・非開示の判断においては、犯罪などに関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、実施機関の第一次的な判断を尊重するものであるが、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか否かを審理・判断するものである。
(3)条例第14条第6号は、「県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。さらに、県の機関等に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的なものについて、「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げており、イにおいて、「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」と規定している。
 本号に規定する「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。これを前提にして、本号該当性を審理・判断するものである。
(4)速度取締りは、取締現場及びその周辺の交通事故の防止を図るとともに、違反運転者に対し反則金や罰金などの刑事上の刑罰を科すことや違反点数による行政上の措置を行うこと、違反者や処分者に対する講習などによる運転教育を通じて、交通法令の遵守や反復違反の抑制を図ること、さらには、反復して敢行する悪質・危険運転者の道路交通の場からの一時的な排除等の目的を達成するため行われるものである。
(5)速度違反を取り締まる上では、いつ、どこで取締りが行われるのか、運転者が予測できないことに意味があると考えられる。しかし、速度取締りの場所や時間は、通行者、通行車両、違反者や警察官等の安全の確保を図ること、機器の設置に適する地形や場所を選定しなければならないこと、また、付近住民の静穏を害さずに実施しなければならないこと、などの制約を伴うものであって、場所や時間を問わずに実施できるものではないとする諮問庁の説明には合理性がある。
(6)本件請求に係る公文書は、特定の日、特定の場所における速度取締りの実施時間帯、検挙台数等の違反状況がわかる文書であるが、仮に対象となる公文書の存否を答えたとすれば、過去の特定の日、特定の場所において速度取締りが実施されたか否かが明らかになる。
 たとえ一箇所であっても、特定の場所で速度取締りが実施されたことが公にされるとすれば、他の場所についても、開示請求が行われれば、速度取締りが実施されたことが公にされるということとなり、無数の同様な開示請求が行われないにしても、一定数繰り返し開示請求が行われた場合に、その情報をもとにして、将来行われる速度取締りの場所や時間が推測され、その結果、速度取締りが予想される場所では回避行動をとるものの、それ以外の場所においては交通法規を順守しない運転者が増加するなどのおそれがあるとする諮問庁の主張には理由があると認められる。
 よって、取締場所を公にすることは、交通犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があると判断されるので、条例第14条第4号に該当すると認められる。
(7)特定の場所で速度取締りが実施されたことが公にされた場合、その情報を知った運転者の多くは、今後もその場所で速度取締りが行われうるであろうと予測し、その場所でのみ減速するなどの回避行動を取ることが考えられ、その結果、当該場所における速度取締りの目的達成が困難になるおそれがあると認められる。
 請求人が主張するとおり、特定の場所で速度取締りを行えば、そこで検挙された者はもちろん、当該場所を通行し、速度取締りの実施を目にした者にとって、その事実は明らかであるし、その事実を知った者から、第三者に情報が伝播することも考えられる。
 しかし、一部の人にその事実が明らかであるとしても、未だ公知の事実とまでは言えず、速度取締りの実施にあたっては上記(5)のとおり制約があることを考慮すると、取締場所を公にすることは、交通犯罪を取り締まる上で、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあると判断されるので、条例第14条第6号に該当すると認められる。

3 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。なお、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成22年5月26日 諮問
平成22年5月31日 諮問庁からの理由説明書を受領
平成22年7月12日 審査請求人からの意見書を受領
平成22年7月23日
(第34回 第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成22年9月10日
(第35回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成22年11月4日
(第127回 審査会)
審議
平成22年12月14日
(第128回 審査会)
審議
平成23年1月19日
(第129回 審査会)
審議
平成23年1月21日 答申