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個人情報保護審議会諮問事件第23号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

1 件名

 「カルテ(全部)」の診療情報非開示決定に対する審査請求

2 諮問庁・処分庁

 群馬県病院管理者・精神医療センター院長

3 開示等決定年月日、内容及び理由

(1)決定内容

 平成22年9月21日 診療情報非開示決定

(2)非開示理由

  • 条例第13条第1号該当
    開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるため。
  • 条例第13条第7号ハ該当
    個人の指導、選考、判定、診断その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため

4 不服申立て

(1)申立年月日

 平成22年11月10日

(2)趣旨

 本件処分を撤回して、すべてのカルテの開示を求める。

(3)理由

 処分庁の開示しない理由から見て、請求人の意に反する企てがあることが想像される。平成17年9月8日の最高裁判決で、産婦人科の医師に対して説明義務違反を指摘し、そのために患者が多大な損失を被ったことを認定している。日本国内においては歯科を除いて医師免許はどの診療科においても共通なのであり、精神科だからという例外は許されない。
 厚生労働省は、カルテは本人やその家族には見せなさいという旨のガイドラインを出しており、処分庁が県の出先機関といえども条例さえ守っていればよいというわけではない。
 確かに、処分庁の医師が、請求人のことを診断書に悪し様に書くから請求人は生活保護を受けたり、障害者年金を受給できること自体は請求人も推測しているが、それ以外に条例で定める原則公開の除外事項に該当するような内容は見受けられない。

5 諮問年月日

 平成22年12月28日受理

6 審議会の判断

(1)結論

 群馬県立精神医療センター院長の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。

(2)判断理由

条例第13条第1号該当性について

 本件個人情報は、処分庁が請求人に対して行った入院及び外来の診察及び治療に関する記録であり、諮問庁は、本件個人情報のすべてが条例第13条第1号に規定する「開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある」情報であると主張している。
 一般に精神医療において、患者への診療情報の開示は、医療機関と患者との信頼関係や、開示が患者の精神状態に与える影響といった複雑な要素を、高度に医学的、専門的な見地から判断する必要があると考えられるが、この判断は、医学上の専門的な学識経験を持つとともに、現在も請求人の診察及び治療に携わっている担当医師にまず求められるべきものといえる。
 本件処分は、請求人が本件個人情報の開示を受けることで特定の事柄に興味を奪われ、現在も継続中の治療行為に支障が生じ、結果として請求人本人の病状悪化等が懸念されるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものであるが、当審議会が、処分庁の口頭説明において、本件個人情報を開示することによる請求人の病状に与える影響とその判断根拠等について、担当医師から詳細な説明を聴取したところでも同様の見解が確認でき、そしてこの医師の判断は、実際に審議会が見分した本件個人情報の記載内容と十分な整合性を有する合理的なものと認められるため、当審議会においてもこれを尊重すべきであると考える。
 よって、本件個人情報は、条例第13条第1号に該当するものと認められる。

条例第13条第7号ハ該当性について

 諮問庁が条例第13条第7号ハに該当するとして非開示としている本件個人情報は、処分庁が請求人に対して行った入院及び外来の診察及び治療に関する記録であり、個人に対する診断など、評価又は判断を伴う事務又は事業に関する個人情報であると認められる。
 精神医療において、患者への診療情報の開示の判断は、上記のとおり、患者の診察及び治療に携わっている担当医師にまず求められるべきものといえるが、本件処分は、本件個人情報を開示することで請求人と処分庁との間で構築してきた信頼関係を失うこととなり、それにより以後の診断及び治療方針を受け入れられなくなるなど悪影響を与えることが予見されるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものである。
 当審議会が、処分庁の担当医師から詳細な説明を聴取したところでも同様の見解が確認でき、この担当医師の判断には、社会通念上合理性を欠くと認められる特段の事情は見受けられないため、当審議会においてもこの判断を尊重すべきであると考える。
 よって、本件個人情報は、条例第13条第7号ハに該当するものと認められる。

本件個人情報に係る過去の不服申立て事案について

 当審議会は、平成18年2月15日付け個審第53号答申で、本件個人情報の一部(平成13年4月13日から平成17年7月13日までの請求人のカルテ(歯科を含む。))について、諮問庁の判断は妥当であると判断を示したところであるが、本件個人情報の条例第13条第1号及び第7号ハ該当性を判断するに当たり、時の経過や社会情勢の変化等さらに斟酌すべき事情は認められなかった。

結論

 以上のことから、上記(1)「結論」のとおり判断する。
 なお、請求人は、意見書等において、厚生労働省が定める「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日医政発第1224001号・薬食発第1224002号・老発第1224002号厚生労働省医政局長・医薬食品局長・老健局長通知。)及び平成17年9月8日の最高裁第一小法廷判決(平成14年(受)第989号損害賠償請求事件)に反するなど主張しているが、いずれも当審議会の判断を左右するものではない。

7 答申年月日

平成23年5月30日(個審第158号)