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公文書開示審査会答申第128号

更新日:2011年11月16日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 群馬県警察本部長が行った公文書非開示決定のうち、次の部分については開示すべきであるが、その他の部分については、非開示が妥当である。

  • 指導・面接結果のうち、指導対象者の階級の部分
  • 指導・面接結果のうち、指導年月日の部分

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、平成22年1月21日付けで、「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成22年2月17日、本件請求に係る公文書を「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」(以下「本件公文書」という。)であると判断し、条例第14条第2号、第4号及び第6号に該当するとして非開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件公文書を開示しない理由を次のとおり付して、請求人に通知した。

  • 条例第14条第2号該当
     個人の勤務成績及び個人の評価に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報を含む。)又は公にすることにより、個人の権利利益を侵害するおそれがある情報であるため。
  • 条例第14条第4号該当
     職務質問の内容や各種取締り状況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等に関する情報が含まれており、公にすることにより将来の犯行を容易にし、又は将来の捜査に支障を生じるおそれがあるため。
  • 条例第14条第6号該当
     人事管理に係る情報であり、公にすることにより、円滑な人事管理に支障を及ぼすおそれ及び今後の警察活動の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。

3 審査請求

 請求人は、行政不服審査法第5条の規定に基づき、平成22年4月12日付けで、本件処分を不服として群馬県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し審査請求を行った。

4 諮問

 諮問庁は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成22年6月10日、本件審査請求事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点(条例第14条第2号、第4号及び第6号該当性)

 条例第14条第2号、第4号及び第6号に該当するとして、本件公文書を非開示とした決定は妥当であるか。

第4 請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消し、全面開示を求める。

2 審査請求の理由

(1)本件公文書の特定について

 請求人は、検挙実績低調者(以下「低調者」という。)の定義というものを知らされていないため、低調者と認定された各地域の個別の警察官それぞれに対して、実施機関が、どのような評価基準をもとに、どのような評価をくだしているのか、なぜ低調者への指導を必要とするのか、評価に応じて低調者と認定された警察官に対して、どのような指導基準をもとに、指導をするのか、ということを踏まえて、低調者に対して行った指導状況に関する情報を知りたいと考え、本件請求を行った。請求人は、低調者に関する、こうした基本的な情報すら知らされないまま、本件処分を通知されたのである。
 本件請求に対して実施機関が特定した本件公文書の他にも、低調者そのものに関する評価基準や、指導基準が制定されているのであれば、それらも含めて開示対象文書として特定されなければならない。

(2)条例第14条第2号(個人情報)該当性について

 本来、公人の氏名等は条例の原則開示によりすべて公表すべきものであるが、低調者の氏名、性別、年齢、面接実施者の氏名、性別、年齢等は場合によっては非開示もやむを得ない事情があることは理解する。
 しかし、所属警察署名や職名のような間接的な情報までもが個人情報とみなされることには首肯できない。これらの一般情報を開示しても、個人名が特定できないような配慮がなされていれば、なんら個人の権利利益を侵害する恐れはないからである。
 各警察署ごとの低調者の数を公表したり、職名別の低調者の数を公表したりすることは、低調者の多い警察署管内にいる一般市民にとっても、地域の治安に対する関心が高まることが期待できる。
 実施機関は、指導・面接結果という文書が作成されていること自体が、個人の資質や名誉にかかわる当該個人の評価に関する情報であるとして、全面非開示としているが、どの地区がもっとも低調者が多いか、などに関する情報を、一般市民に知らせることは、なんら個人の権利利益を害するものではなく、むしろ、自分の住む地区の治安状況についてのひとつの指標が得られるという点において、開示のメリットのほうが大きい。

(3)条例第14条第4号(公共安全情報)該当性について

 警察官等の「職務質問の内容や各種取締り状況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等に関する情報が含まれており(以下「技術等情報」という。)」としているが、この技術等情報こそが、実施機関が「実績低調者に対して行った指導状況」であると推測される。「警察官等」を雇っている納税者の県民・国民に対して技術等情報を明らかにすることは、納税者の知る権利である。
 また、請求人に対して本件処分を取り消しても、将来の犯行を容易にし、又は将来の捜査に支障を生じるおそれはない。なぜなら、審査請求は、技術情報等を、地域住民の安全・安心のための活動に役立てるものであり、将来の犯行増加や捜査への支障は全くない。
 職務質問の内容については、不適切な事例が公表されることにより、不当な職務質問の減少に役立ち、ひいては警察の信頼確立という効果が期待できる。また、各種取締りの状況等が明らかにされることにより、たとえば、交通違反の摘発など、各警察署にノルマ制を課していると噂されている取締りの実態について、正しい判断を一般市民に知ってもらうことができるという効果も期待できる。
 こうした職務質問の適正あるいは不適正な事例が分かる情報の公開は、一般市民にとっても不当逮捕の恐れを払しょくする効果が大いに期待できる。
 これらの情報は、正しい警察の取締りのあり方を一般市民に知ってもらうために有意義なものであり、実施機関の解釈は間違っている。

(4)条例第14条第6号(事務事業情報)該当性について

 本件処分を取り消すことこそ、適正、警察の円滑な人事管理を実現する最も有効性のある情報であり、人事管理や警察活動に支障を与えるおそれは全くない。
 低調者に対する指導制度が、きちんとした定義に基づき、実施されているのかどうかを把握し、地元の治安維持のため日ごろから地域コミュニティの中に入り、情報収集に努め、犯罪の防止や抑止に貢献している警察官が正当に評価されているのかどうかを、一般市民として確認しておくことは、社会秩序の維持の観点から、極めて重要であり、ひいては警察の信頼増強にも資するものである。
 いたずらにこの制度を濫用すると、特定の警察官いじめにもつながりかねず、また、曖昧な基準で評価や指導がなされたりすれば、それこそ組織の一体が失われ、警察官の士気の喪失さえ引き起こしかねない、などゆゆしき問題を発生させる恐れがあるため、この制度の正しい運用を担保するためにも、公表が必要である。

第5 諮問庁の主張の要旨

1 本件公文書の特定について

 本件請求に係る公文書を、「地域警察官検挙実績低調者等指導要綱の制定について(平成20年4月9日付け群地第174号通達)」に基づいて、検挙実績低調者(以下「低調者」という。)に対して指導を行った状況が記載された「指導・面接結果(通達別記様式第3号)」及び「群馬県警察身上指導推進要綱の制定について(平成14年群本例規第35号)」に基づいて作成される「身上指導記録表(別記様式第2号)」と特定した。

2 公文書を非開示とする理由について

(1)条例第14条第2号(個人情報)該当性について

 本件公文書には、低調者の氏名、所属、職名、性別、年齢、面接実施者の氏名等、個人を識別することができる情報が記載されており、条例第14条第2号に該当する。
 また、個人識別情報を非開示としたそのほかの部分には、指導・面接した結果として、低調者の勤務状況、改善すべき点等が記載されており、この部分を公にすることは、当該個人の権利利益を害することから、条例第14条第2号に該当すると判断した。
 本件公文書である指導・面接結果は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、本件公文書が作成されているということ自体が、個人の資質や名誉にかかわる当該個人の評価に関する情報である。したがって、開示、非開示の判断に当たっては、直接的又は間接的に個人を識別することができる情報のほか、個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報に配意しなければならない。
 請求人は、公務員である警察官等は公人であり、氏名等を公開することにより、個人の権利利益を侵害することはないと主張しているが、本件公文書に記載された職員の氏名等については、職務遂行上の情報ではなく、個人に関する実績等の評価に関するものであることから、個人情報として非開示であると考える。

(2)条例第14条第4号該当性(公共安全情報)について

 本件公文書には、低調者の指導を行う上で、職務質問の内容や各種取締りの状況等が記載されている部分があり、これらの情報を公にすることは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第14条第4号に該当する。

(3)条例第14条第6号(事務事業情報)該当性について

 本件公文書は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、職員を評価し、改善を図ることを目的とした人事管理に係る情報である。本件公文書が作成されていること自体が、個人の資質や名誉にかかわる個人情報であり、これを公にすることは、当該職員に組織への不信感を抱かせ、自己評価との差異をめぐる監督者との対立を招くなど、組織の一体性を失わせ、また、当該職員が萎縮し、士気の低下を招くなど、実績低調の改善を図るという当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第14条第6号に該当する。

(4)非開示決定について

 本件公文書は、その全体が条例第14条第2号及び第6号の非開示情報に該当するとして、そのすべてを非開示としたものである。

第6 審査会の判断

 審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 本件公文書について

 実施機関は、平成20年4月に「地域警察官検挙実績低調者等指導要綱(以下「指導要綱」という。)」を定め、警察署に勤務する警部補以下の地域警察官を対象として、検挙実績が一定の基準を満たさない者のうち、特別な指導・教養を要すると認められる者を低調者に指定し、署長をはじめとする地域幹部により、定期的に必要な指導・教養を行っている。
 本件公文書は、指導要綱に基づき、各警察署が低調者ごとに作成している指導・面接結果(以下「本件公文書1」という。)及び身上指導記録表(以下「本件公文書2」という。)である。
 なお、本件公文書2は、平成14年7月に実施機関が定めた「群馬県警察身上指導推進要綱(以下「推進要綱」という。)」に基づき、警察職員の身上指導を行うため、低調者の指定を受けているか否かにかかわらず作成されるものであるが、指導要綱において、本件公文書1に記載した内容を本件公文書2に転記することが定められていることから、対象公文書として、実施機関が特定したものである。

2 本件公文書の特定について

 本件請求は、低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書を求める趣旨であるところ、実施機関が行った公文書の特定の妥当性について検討する。
 低調者への指導は、指導要綱に基づき行われるものであり、指導要綱には、低調者の定義や指定基準等が示されている。
 指導要綱では、低調者に対する指導・教養の内容として、「署長等による個々面接及び指導・教養(指導要綱第6)」、「検挙実績低調者等研修の実施(指導要綱第8)」及び「地域課長による個別指導(指導要綱第9)」を定めている。指導要綱の対象となる地域警察官は、3カ月を1期間として検挙実績を評価され、一定の基準を満たさない者のうち、特別な指導・教養を要すると認められる者は、低調者に指定され、「署長等による個々面接及び指導・教養」が行われる。そして、二期連続で低調者に指定された者のうち、平素の勤務状況から指導・教養の効果が認められない職員を対象に、「検挙実績低調者等研修の実施」を行い、研修後も引き続き低調者に指定された者については、「地域課長による個別指導」を行う旨が定められている。
 実施機関は、本件請求に対して、指導要綱に基づき実施した「署長等による個々面接及び指導・教養」の記録であるところの本件公文書1及びその内容を転記した本件公文書2を対象公文書として特定している。
 審査会が実施機関に確認したところ、本件請求時点で、指導要綱に基づき実施されたのは「署長等による個々面接及び指導・教養」のみであり、「検挙実績低調者等研修の実施」及び「地域課長による個別指導」は実施されていないとのことである。
 低調者に対し、段階を踏んで異なる指導・教養を行うことを指導要綱で定めていることは前述のとおりであり、「検挙実績低調者等研修の実施」及び「地域課長による個別指導」の記録が存在しないことに、特段不合理な点は認められない。
 なお、請求人は、意見書において、低調者の定義等の基本的な情報を知らされていない旨主張するが、請求人は、本件請求と同日付けで指導要綱を求める公文書開示請求を行っており、この請求に対し実施機関は、本件処分と同日付けで開示決定を行い、請求人に指導要綱を開示している。
 よって、実施機関が本件公文書を特定したことは妥当である。

3 非開示情報該当性の判断に当たって

 実施機関は、本件公文書について、前記第5 2のとおり、その全体が条例第14条第2号及び第6号に当たる旨、また、職務質問の内容や各種取締りの状況等が記載されている部分については、条例第14条第4号に当たる旨を主張する。
 そこで、審査会における非開示情報該当性の判断に当たっては、本件公文書に記載された情報を項目ごとに区分した上で、まず、条例第14条第2号の該当性を判断し、同号に該当しない情報については、条例第14条第4号及び第6号の該当性を判断するものとする。また、条例第14条第2号に該当すると判断した情報についても、必要に応じて、条例第14条第6号の該当性を判断するものとする。
 なお、条例第14条第2号は、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」を非開示情報として定めているが、ここで、「他の情報」とは、公知の情報や、図書館などの公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手しうる情報のほか、公文書の開示請求権は何人に対しても認められていることから、当該個人の近親者や地域住民等の関係者など、一定の範囲において、保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれるものである。
 本件公文書は、指導要綱に基づき低調者に指定された警察官に対する指導・教養の記録であり、特定の個人が低調者として識別された場合は、当該低調者の名誉や感情が傷つけられるなど、当該低調者の権利利益が害されるおそれが高い。
 このことからも、一般人が通常入手しうる情報のほか、各警察署の職員をはじめとする警察関係者や、各警察署管内の地域住民等、一定の範囲において保有している又は入手可能であると通常考えられる情報についても、「他の情報」に含まれるものとして、条例第14条第2号該当性について判断を行うものである。

4 本件公文書1について

 本件公文書1は、低調者に対する「署長等による個々面接及び指導・教養」の際に作成されるものであり、その様式は、指導要綱の別記様式第3号として定められており、各警察署は当該様式により文書を作成している。
 一般に、条例第14条第2号に該当する情報であっても、同号ただし書に該当する情報については開示となるところ、本件公文書1のうち、条例第14条第2号に該当する情報に関しては、指導要綱に基づく低調者の指導のために作成された情報であり、職員が担任する職務を遂行する場合の当該活動についての情報ではないことから、条例第14条第2号ただし書ハには該当せず、また、条例第14条第2号ただし書イ及びロに該当しないことは明らかであるから、条例第14条第2号ただし書を適用する余地はない。

(1)警察署名

 本件公文書1には、低調者の所属する警察署名が記載されている。
 審査会が、平成20年度及び平成21年度における、県内各警察署に所属する指導要綱の対象者数について実施機関に確認したところ、警察署の規模によって対象者数は大きく異なるが、警察署全体の対象者が少数である場合に、その警察署における低調者の有無や人数を公にすれば、各警察署の職員をはじめとする警察関係者や、各警察署管内の地域住民等において、低調者を識別することは容易であると考えられる。また、低調者を識別することができないとしても、低調者及び低調者と同一視された同僚の名誉や感情を傷つけるなど、その権利利益を害するおそれがあることから、小規模の警察署名については、条例第14条第2号に該当する。
 なお、中規模以上の警察署においては、警察署名が公にされたとしても、小規模の警察署名が公にされた場合と比較して、低調者の識別に至る可能性は低いが、小規模の警察署のみ警察署名を非開示として、中規模以上の警察署名を公にすれば、消去法により非開示とされた警察署名を類推できることから、警察署の規模を問わず、警察署名は、条例第14条第2号に該当する。
 また、警察署名を公にした場合、警察署ごとに開示された文書の枚数を数えることで、県内の警察署別の低調者数を容易に知ることができる。
 低調者の指定は、個人の検挙実績が一定の基準を満たさないことを指定の契機とするものであって、低調者が所属している警察署の検挙実績の多寡や、地域ごとの捜査体制の強弱などと、直ちに結びつくものではない。
 しかし、県内の警察署別の低調者数を知った者は、それが各警察署の現状を反映したものであるかは別としても、その大小をもって、県内の警察署を評価し、低調者数が多いことをもって、特定の警察署への信頼を低下させ、不信の念を抱くことが考えられる。このことは、実施機関の業務に対して過度に批判的になったり、非協力的になったりすることにつながりかねず、また、警察署別の低調者数の大小から、捜査態勢の強弱を判断し、犯行場所を選定して犯行を企図するなど、実施機関の業務遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、警察署名については、条例第14条第6号についても該当する。
 請求人は、警察署別の低調者数を公にすることで、地域の治安に対する意識が高まり、居住する地域の治安状況についての指標が得られるとして、当該情報を開示するべきと主張する。警察署別の低調者数は、各警察署の組織の状況を示す一つの指標になりうるものであるが、低調者の指定はあくまで個人の検挙実績に基づき行われるものであり、「刑法犯認知件数・検挙件数」や「交通事故発生件数」など、実施機関が公表している他の情報と比べても、各警察署の組織を評価し、又は地域の治安状況を判断する際の正確な指標として用いることができるのか、疑問が残る。警察署名については、前述のとおり、条例第14条第2号及び第6号に該当すると判断しており、請求人の主張によっても、その判断は変わらない。
 よって、警察署名については、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(2)回議の印

 本件公文書1には、文書の作成者が、署長等に文書を回議した際の確認印が押されているものがある。
 これは、低調者の所属する警察署の地域幹部の名字が分かる情報であるところ、警察署の地域幹部名は、人事異動の際に新聞に掲載されるなど、通常公にされている情報であるから、地域幹部の名字を公にすれば、低調者の所属する警察署名も公になる。
 警察署名については上記(1)で非開示妥当と判断しており、回議の印についても、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(3)指導対象者の氏名

 本件公文書1には、低調者として指導・教養を受けた指導対象者の氏名が記載されている。これは、まさに特定の個人を識別することができる情報である。
 よって、指導対象者の氏名については、条例第14条第2号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(4)指導対象者の階級

 本件公文書1には、低調者として指導・教養を受けた指導対象者の階級が記載されている。
 指導要綱の対象者は、「警部補以下の地域警察官(指導要綱第3の1)」と定められており、対象者の階級は、「巡査」、「巡査長」、「巡査部長」及び「警部補」のいずれかである。(「巡査長」は、国家公安委員会で定める「巡査長に関する規則」に基づき設置されている階級であり、警察法上の階級では「巡査」に区分される。)
 審査会が、平成20年度及び平成21年度における、地域警察官の階級別人数について実施機関に確認したところ、階級ごとに人数の差はあるものの、階級のみで低調者が特定され、又は数名に絞り込むことが可能になる程度に少人数の階級はないことが確認された。
 よって、指導対象者の階級は、条例第14条第2号には該当しないと判断される。
 続いて、指導対象者の階級について、条例第14条第6号該当性を判断する。
 実施機関は、口頭説明において、階級を公にすることで、個人の特定ができないとしても、特定の階級において低調者の割合が高いなどの情報が公になれば、同じ階級の警察官までもが同視されるなど、特定の階級に属する警察官の権利利益の保護が図られないことを、非開示理由として主張する。
 階級ごとの低調者の割合には差異があるものの、それが公になったときに、特定の階級に属する警察官への不信につながるほどに大きく異なるものではなく、また、業務に関する知識や経験は、階級によって異なることからすれば、低調者の割合の差異は、当然に生じうるものと考えられる。
 よって、指導対象者の階級は、条例第14条第6号には該当しないと判断される。
 指導対象者の階級は、条例第14条第4号にも該当しないことは明らかであり、実施機関の主張するいずれの非開示理由にも該当しないことから、開示することが妥当である。

(5)指導対象者の年齢

 本件公文書1には、低調者として指導・教養を受けた指導対象者の年齢が記載されている。
 審査会が、平成20年度及び平成21年度における、県内各警察署に所属する年齢区分ごとの指導要綱の対象者数について実施機関に確認したところ、他の年齢区分よりも、対象者数の少ない年齢区分があることが確認できた。
 特定の年齢に属する対象者数が少なければ、それだけ低調者の識別可能性は高くなるものであるが、たとえ警察職員であっても、同僚の正確な年齢までは分からないことが通常であり、指導対象者の年齢のみ分かることで、低調者の識別につながる場合は限られる。
 しかし、上記(4)において、指導対象者の階級を開示すると判断しており、指導対象者の階級に加えて指導対象者の年齢を公にすれば、その条件を満たす警察職員はさらに絞られるものであり、同じ階級に属する警察職員の年齢に相当の幅があって、その年齢分布には偏りがあることを考え合わせると、指導対象者の年齢を公にすれば、警察関係者等において、低調者を識別することは可能であると考えられる。
 なお、指導対象者の階級と指導対象者の年齢との組み合わせによっては、その条件に該当する職員が多いため、低調者の識別には至らない場合も考えられるが、低調者の識別が可能な場合のみ非開示として、そうでない場合を公にすれば、消去法によって非開示とされた指導対象者の年齢を類推できることになる。
 よって、指導対象者の年齢については、条例第14条第2号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(6)指導対象者の勤務場所

 本件公文書1には、低調者として指導・教養を受けた指導対象者の勤務場所が記載されている。
 群馬県地域警察の運営に関する訓令第5条では、地域警察官の勤務種別を、「交番勤務」、「駐在所勤務」、「署所在地勤務」及び「無線自動車勤務」の4つに区分しており、指導対象者の勤務場所としては、この勤務種別のいずれかが記載されているほか、「交番勤務」又は「駐在所勤務」の場合には、交番名又は駐在所名として、地名等が冠されている。
 審査会が、平成20年度及び平成21年度における、勤務種別ごとの指導要綱の対象者数について実施機関に確認したところ、勤務種別ごとに人数の差はあるものの、勤務種別のみで低調者が特定され、又は数名に絞り込むことが可能になる程度に少人数の勤務種別はないことが確認された。
 しかし、上記(4)において、指導対象者の階級を開示すると判断しており、特定の勤務種別に属する警察職員の階級分布に偏りがあることを考え合わせると、指導対象者の階級に加えて指導対象者の勤務種別を公にすれば、その条件を満たす警察職員はさらに絞られるものであり、その場合には、警察関係者等において、低調者を識別することは可能であると考えられる。
 なお、指導対象者の階級と指導対象者の勤務種別との組み合わせによっては、その条件に該当する職員が多いため、低調者の識別には至らない場合も考えられるが、低調者の識別が可能な場合のみ非開示として、そうでない場合を公にすれば、消去法によって非開示とされた指導対象者の勤務種別を類推できることになる。
 よって、指導対象者の勤務場所については、条例第14条第2号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(7)指導・面接実施者の階級及び職名

 本件公文書1には、低調者への指導・面接実施者である面接者及び補助者の階級が記載されており、警察署によっては、階級に職名を併記している。
 指導要綱によれば、低調者に対して指導・教養を行うのは、低調者の所属する警察署の署長であり、地域交通官や地域課長等の地域幹部を補助させることができるものと規定している。
 審査会が、平成20年度及び平成21年度における、県内各警察署長の階級について実施機関に確認したところ、県内警察署のうち、署長が警視正である警察署が2箇所あることが確認できた。同様に、県内各警察署の地域幹部の階級を確認したところ、特定の階級にある者が地域幹部を務めていることが公になった場合、警察署が数箇所に限定されることが確認できた。
 警察署名については、上記(1)で非開示妥当と判断しており、数箇所の警察署のいずれかに所属する低調者の有無や人数が公になることは、上記(1)で警察署名を非開示とした趣旨に反することになるため、面接者が警視正である場合や、補助者が特定の階級である場合には、それを公にすることはできない。
 警視正以外の面接者の階級や、特定の階級以外の補助者の階級が公にされたとしても、低調者の属する警察署が数箇所に限定されるということはないが、面接者の階級が警視正である場合や、補助者が特定の階級である場合のみ非開示とすれば、消去法により非開示とされた階級を類推できることから、指導・面接実施者の階級については、どの階級であるかを問わず、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。
 また、平成20年度及び平成21年度における、県内各警察署の地域幹部の職名についても実施機関に確認したところ、警察署における職名は、すべての警察署において一律のものではなく、特定の職名が公になれば、低調者の所属する警察署が数箇所に限定されることが確認できた。
 階級に関する判断と同様に、指導・面接実施者の職名については、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(8)指導・面接実施者の氏名

 本件公文書1には、指導・面接実施者として、面接者及び補助者の氏名が記載されている。
 面接者及び補助者を務める地域幹部名は、人事異動の際に新聞に掲載されるなど、通常公にされている情報であるから、面接者及び補助者の氏名を公にすれば、低調者の所属する警察署名も公になる。
 警察署名については、上記(1)で非開示妥当と判断しており、指導・面接実施者の氏名についても、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(9)指導年月日

 本件公文書1には、指導・面接実施者が、低調者に対して指導・教養を行った指導年月日が記載されている。
 特定の指導年月日において、特定の低調者に対して面接を実施していることを知っている者は、指導・面接実施者及び低調者本人のほかは、極めて限られていると考えられ、その範囲においては、指導年月日を示すまでもなく、誰が低調者であるかを了知していると考えられる。このような者に対して、指導年月日を開示しても、低調者の識別につながる情報を新たに開示することにはならない。また、指導年月日を開示することのみで、他に情報を持たない者が、低調者を識別できるわけではない。
 よって、指導年月日は、条例第14条第2号には該当しないと判断される。
 また、指導年月日は、条例第14条第4号及び第6号にも該当しないことは明らかであり、実施機関の主張するいずれの非開示理由にも該当しないことから、開示することが妥当である。

(10)指導・面接結果

 本件公文書1には、上記(1)から(9)までの項目を記載したのち、指導・面接実施者が、低調者に指導・教養した具体的な内容が記載されている。
 低調者の勤務場所や業務内容、低調者に指定されるに至った経緯等は、一人一人異なるものであり、指導・面接結果として記載される内容も、低調者ごとに異なるものである。その内容は、指導・面接実施者から低調者への指導・助言に加え、低調者からの弁明等も記載されており、その中には、家庭事情等の個人的な情報も含まれている。
 指導・面接結果に記載された情報は、個人の人格と密接に関連した情報であって、低調者の名誉や感情に配慮する必要性が高いものであり、低調者の氏名など、特定の個人が識別できる情報を除いたとしても、公になれば、個人の権利利益を侵害するおそれがあるから、条例第14条第2号に該当する。
 また、指導・面接結果に記載された情報を公にした場合、文書の作成者がそのことを意識するあまり、率直な記載を控えて画一的な記載に終始するなど、記載内容が形骸化するおそれは否定できず、その場合、実施機関の人事管理に係る事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるから、条例第14条第6号にも該当する。
 よって、指導・面接結果については、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(11)理由書

 本件公文書1は、指導要綱に定められた様式により各警察署で作成しているものであるが、特定の警察署においては、低調者から個別に提出させた理由書が、様式に添付されていた。
 理由書は、低調者がその評価期間において、検挙実績が上がらずに低調者に指定された原因を自己分析し、評価期間中の反省や将来に向けての抱負等を自筆で記載したものである。
 こうした作成の経緯からしても、理由書は、個人の人格と密接に関連した情報であって、低調者の名誉や感情に配慮する必要性が高いものであり、低調者の氏名など、特定の個人が識別できる情報を除いたとしても、公になれば、個人の権利利益を侵害するおそれがある。
 また、理由書の筆跡により、警察関係者等において、低調者が識別できることも考えられる。
 よって、理由書については、条例第14条第2号に該当し、非開示とすることが妥当である。

5 本件公文書2について

 本件公文書2は、推進要綱に基づき、低調者の指定を受けているか否かにかかわらず作成されるものであり、記載欄として「記載年月日」、「記事・指導結果等」及び「記載者」が設けられているほか、警察署ごとに記載の有無や内容は異なるが、身上指導記録を整理する上で有用な情報が欄外に記載されている。実施機関は、指導要綱において、本件公文書1に記載した内容を転記することが定められていることから、対象文書として特定したものである。

(1)記載年月日

 推進要綱では、「人事異動後」、「対象職員が転入したとき」及び「対象職員を新たに採用したとき」に、個々面接を実施しなければならない旨を規定しているが、個々面接の具体的な実施時期について、それ以上の規定はなく、本件公文書2を見分したところ、個々面接はこうした機会以外にも実施されていることが確認できた。
 個々面接は、警察署ごとに異なる日程で、異なる頻度で行われており、また、特定の出来事に端を発し、特定の時期に限られた職員に対して、個々面接を行う場合もあると考えられる。記載年月日としては、個々面接を実施し、その結果を記載した年月日が、その都度記載されるところ、それを公にすれば、警察関係者等において、個々面接を受けた低調者を識別することが可能であると考えられる。
 また、低調者の識別に至らない場合であっても、警察関係者等において、低調者の所属する警察署名を類推できるものと考えられ、警察署名が非開示情報に当たることは、前記第6 4(1)で説示したとおりである。
 さらに、個々面接は推進要綱に定められた機会以外にも必要に応じて実施されることからすると、記載年月日を公にすれば、職員や職場によって個々面接の実施回数に差異があることが明らかになり、自分に対する個々面接の実施回数が多いと認識した職員が不必要に萎縮し、あるいは、記載者がそうした職員への悪影響を避けるため、推進要綱に定められた機会以外の記録を差し控えるようになるなど、身上指導事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
 よって、記載年月日については、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。
 ただし、前記第6 4(9)において、本件公文書1の「指導年月日」については、開示することが妥当であると判断している。本件公文書1の「指導年月日」は、本件公文書2の記載年月日として記載された年月日のうちの一つに過ぎず、その部分のみ公にしたとしても、他の年月日が公にならない限り、個々面接を受けた低調者の識別や警察署名の類推はできないと考えられ、また、低調者に指定された場合には必ず個々面接が行われ、その内容を本件公文書2に転記することが指導要綱で定められているものであって、前述のおそれはないと考えられることから、「指導年月日」については、本件公文書2においても非開示情報には当たらないと判断するが、当該情報の有意性については後述する。

(2)記事・指導結果等

 推進要綱によれば、身上指導は、「職員の性格、勤務態度、家庭環境、健康、悩みその他の身上事項を把握して早期に問題点を発見し、組織的指導等を適切に行うことにより、職員が心身共に健全な状態で職務に専念できるようにするとともに、各種事故の未然防止を図り、もって県民に信頼される組織を確立することを目的」として行われるものであり、記事・指導結果等に記載されるのは、当該目的を達成するため、身上指導の総括責任者である所属長をはじめとする地域幹部が面接を行った結果や、把握した事項である。
 具体的には、職員の家族構成、健康状態、勤務状況、生活習慣、職務や私生活における悩み等が記載されているほか、面接時の面接者と職員とのやり取りや、面接者の職員に対する指導内容、評価等が記載されている。
 これらは、職員の人格と密接に関連した情報であって、職員の名誉や感情に配慮する必要性が高いものであり、職員の氏名など、特定の個人が識別できる情報を除いたとしても、公になれば、個人の権利利益を侵害するおそれがあるから、条例第14条第2号に該当する。
 なお、記事・指導結果等は、推進要綱に基づく身上指導のために作成された情報であり、職員が担任する職務を遂行する場合の当該活動についての情報ではないため、条例第14条第2号ただし書ハには該当しない。また、条例第14条第2号ただし書イ及びロに該当しないことは明らかである。
 また、記事・指導結果等を公にした場合、記載者がそのことを意識するあまり、率直な記載を控えて画一的な記載に終始するなど、記載内容が形骸化するおそれは否定できず、その場合、身上指導事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、記事・指導結果等は、条例第14条第6号にも該当する。
 よって、記事・指導結果等は、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(3)記載者

 推進要綱に基づき実施される個々面接は、身上指導の総括責任者である所属長をはじめとする幹部職員により実施されるところ、本件公文書2には、記載者として、地域幹部の名字が記載され、または地域幹部の確認印が押されている。
 ここで、地域幹部名は、人事異動の際に新聞に掲載されるなど、通常公にされている情報であるから、記載者を公にすれば、低調者の所属する警察署名も公になる。
 警察署名については、前記第6 4(1)で非開示妥当と判断しており、記載者として記載された情報についても、条例第14条第2号及び第6号に該当し、非開示とすることが妥当である。

(4)欄外に記載された情報

 本件公文書2には、上記(1)から(3)で整理した情報のほか、警察署ごとに記載の有無や内容は異なるが、身上指導記録を整理する上で有用な情報が欄外に記載されている。
 具体的には、「警察署名」、「回議の印」、「指導対象者の氏名」、「指導対象者の階級」及び「指導対象者の勤務場所」などであるところ、これらの情報はすべて本件公文書1にも記載されている情報であって、非開示情報該当性の判断は、前記第6 4で説示したとおりである。
 欄外に記載された情報のうち、非開示情報に該当しない情報は、「指導対象者の階級」のみであるが、当該情報の有意性については後述する。

(5)有意性について

 上記(1)から(4)で検討した結果、本件公文書2において非開示情報に該当しない情報は、「記載年月日のうち、公文書1の指導年月日に当たるもの」及び「指導対象者の階級」であると整理できる。
 これらの情報は、いずれも本件公文書1で開示される情報と同じ情報であり、本件公文書1を見分することで得られる情報であることから、それを開示することに有意性は認められない。
 非開示情報に該当する情報及び有意性の認められない前述の情報を除くと、本件公文書2はその様式のみが残ることになるが、そもそも本件公文書2は、指導要綱において、本件公文書1の内容を本件公文書2に転記することが定められていることから実施機関が特定したものであり、転記内容を除いた様式自体は、「低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」を求めるという本件請求の趣旨に照らして、客観的に有意な情報であるとは認められない。
 したがって、本件公文書2については、非開示とすることが妥当である。

6 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 なお、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第7 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過

年月日

内容

平成22年6月10日

諮問

平成22年7月16日

諮問庁からの理由説明書を受領

平成22年8月24日

審査請求人からの意見書を受領

平成22年9月6日
(第35回 第二部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成22年11月4日
(第127回 審査会)
審議
平成22年12月14日
(第128回 審査会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成23年1月19日
(第129回 審査会)
審議

平成23年3月7日
(第130回 審査会)

審議

平成23年4月19日
(第131回 審査会)

審議

平成23年5月23日
(第132回 審査会)

審議

平成23年7月5日
(第133回 審査会)

審議

平成23年8月24日
(第134回 審査会)

審議

平成23年9月30日
(第135回 審査会)

審議
平成23年11月7日
(第136回 審査会)
審議
平成23年11月15日 答申