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公文書開示審査会答申第130号

更新日:2012年4月2日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 群馬県企業管理者の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 開示請求者は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県企業管理者(以下「実施機関」という。)に対し、平成23年6月23日付けで、「関東経済産業局に平成23年3月に提出した『卸・融通供給条件届出書一式』(電力需給契約書および料金規則様式第1、2、4の添付書類を含む)」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

(1)実施機関は、本件請求に対して「関東経済産業局に平成23年3月に提出した『卸・融通供給条件届出書一式』(電力需給契約書および料金規則様式第1、2、4の添付書類を含む)」(以下「本件公文書」という。)を特定した。本件公文書には、条例第21条第1項に定める第三者に関する情報が記載されており、当該第三者に意見書提出の機会を付与し、意見書を提出する期間を設けるため、実施機関は平成23年7月1日付けで決定期間の延長を行い、同日付けで当該第三者に対して公文書の開示に係る意見照会書を通知した。

(2)実施機関から意見照会書の通知を受けた第三者から、平成23年7月6日付けで、本件公文書のうち、次に掲げる情報について、開示することに支障がある旨の意見書が提出された。
ア 卸・融通供給条件届出書のうち、
 (ア)「料金」の項目の金額に係る箇所
 (イ)様式第1、2、4表の金額に係る箇所
 (ウ)報酬率の算定根拠資料
イ 電力受給契約書(相俣発電所ほか28発電所分)のうち、
 (ア)第12条第1項
 (イ)第12条第3項
 (ウ)第12条第4項
 (エ)第12条第5項
ウ 電力受給契約書(高浜発電所分)のうち、
 (ア)第9条の項目の金額に係る箇所
 (イ)第10条
 (ウ)第11条

(3)実施機関は、上記(2)に掲げた情報のうち、イ(エ)並びにウ(イ)及び(ウ)については非開示とした上で、その余の部分については、条例第14条に規定する非開示情報に該当しないと判断し、平成23年7月14日、本件公文書について部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行った。また、同日付けで、開示に反対の意思を表示した第三者に対し、公文書を部分開示決定した旨を通知した。

3 第三者からの異議申立て

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、開示に反対の意思を表示した第三者であるところ、行政不服審査法(以下「法」という。)第6条の規定に基づき、平成23年7月28日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。異議申立ての趣旨は、前記2(2)に掲げた情報のうち、実施機関が条例第14条に規定する非開示情報に該当しないと判断した情報について、部分開示決定を取り消すべきというものであり、当該情報は、次に掲げるとおりである。
ア 卸・融通供給条件届出書のうち、
 (ア)「料金」の項目の金額に係る箇所
 (イ)様式第1、2、4表の金額に係る箇所
 (ウ)報酬率の算定根拠資料
イ 電力受給契約書(相俣発電所ほか28発電所分)のうち、
 (ア)第12条第1項
 (イ)第12条第3項
 (ウ)第12条第4項
ウ 電力受給契約書(高浜発電所分)のうち、
 (ア)第9条の項目の金額に係る箇所
 実施機関は、平成23年7月28日、法第48条で準用する第34条第2項の規定により、職権で開示を停止するとともに、その旨を開示請求者及び申立人に通知した。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成23年8月22日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 申立人の主張の要旨

1 異議申立ての趣旨

 前記第2 3に掲げた情報は、条例第14条第3号イの非開示情報に該当するため、本件処分は取り消されるべきである。

2 異議申立ての理由

(1)条例第14条第3号イに該当すること

ア 前記第2 3のうち、ア(ア)、イ(ア)及びウ(ア)
 申立人が実施機関に支払う基本料金及び電力量料金単価が記載されているところ、当該契約の料金体系が開示されれば、従来、申立人が当該料金より安価で電気を購入してきた他事業者との契約更新及び新たな事業者との新規契約締結等の際に、当該料金と同等以上の価格水準での契約締結を求められる可能性が高い。
 また、実施機関との契約における料金体系は、相俣他28発電所は基本料金(固定料金)と電力量料金(従量料金)の2部構成、高浜発電所は基本料金のみとなっているところ、料金体系を全量従量制にしている他事業者から、実施機関と同様の料金体系を求められる可能性が高い。
 実施機関は、当該料金及び料金体系を開示する理由として、行政資料である「群馬県公営企業決算書(企業局関係)」(以下「決算書」という。)に記載されていることを主張するが、決算書に記載された内容は、他に例がないほど詳細なものとなっており、また、申立人の事前の了解を得ることなく一方的に記載されたものであることから、これをもって「通常公表が予定されている」との根拠とすることは許されない。
 さらに、決算書に記載された電力受給契約は過去の契約内容であるが、本件公文書は、現在の契約内容に関するものを含むのであって、決算書にも記載されておらず、未だ公表されていないものであって、その主張の前提事実が誤ったものであることは明白である。
イ 前記第2 3のうち、ア(イ)
 申立人が実施機関に支払う料金総額(原価)が記載されているため、開示によって上記アと同様のリスクが発生する。
 また、様式第1及び第2には、申立人が個別に審査し合意している各費用項目の内訳、その算定根拠並びに修繕、委託及び諸費等の項目が記載されているところ、当該表を見れば、申立人が合意可能な費用額の水準を推測することができる。これにより、今後、より低廉な費用での電力供給が可能な他事業者からも、実施機関と同等の費用に基づく契約条件の提示及び工事費用の高止まり等を招くリスクが発生する。
ウ 前記第2 3のうち、ア(ウ)
 原価算定における最重要項目の一つである当該電気事業に見込む実施機関の報酬額の算定方法が記載されている。特に自己資本報酬については、卸供給料金算定規則(以下「規則」という。)第5条第2項第1号に「実績値及び合理的な将来の予測値等を勘案した値を用いて」と規定されているが、その内容は当事者間での協議により個別の事情を斟酌して決定すべきであるところ、当該算定内容が開示された場合には、今後、他事業者から個別の事情にかかわらず実施機関と同様の算定方法を基準とした協議を求められる可能性が高い。
エ 前記第2 3のうち、イ(イ)及び(ウ)
 個別の電力受給(需給)契約の料金算定に当たって、当該各条項に規定されるような費用を原価に織り込むか否かは、個別の事情を斟酌して当事者間の協議で決定されるものである。それにもかかわらず、当該情報が開示された場合には、他事業者から同様の性質の費用を原価に織り込むことを前提とした協議を求められる可能性が高まる。

(2)その他

ア 電気料金情報公開ガイドライン
 「電気料金情報公開ガイドライン(平成13年1月6日資源エネルギー庁)」(以下「ガイドライン」という。)」は、留保条件として、「情報公開法においても、『競争上の地位』を阻害する情報等については『不開示情報』とされている。本ガイドラインにおける情報公開についても、こうした点を参酌することが必要である」と述べており、実施機関が主張するような、金額も含めて原則全て公開、という画一的な取扱いを否定している。
イ 非開示情報との関係について
 実施機関は、前記第2 2(2)のうち、イ(エ)並びにウ(イ)及び(ウ)については、個別の契約条件に関わることであり、また、予定価格が類推され、入札金額が高止まりする可能性がある等の理由により、非開示情報の該当性を肯定している。それにもかかわらず、同様の理由が妥当するその他の箇所については、具体的な理由を示すことなく、安易に開示決定をしており、その判断は極めて矛盾したものといわざるを得ない。
ウ 実施機関の支障について(条例第14条第6号ロ該当性について)
 情報を公にすることで申立人がこうむる不利益については、実施機関においても、当てはまるものであり、今後、実施機関が申立人以外の電気事業者との間で電力受給契約を締結する場合において、申立人と実施機関との電力受給契約の個別・具体的な内容を知悉している事業者から受給料金の引き下げを求められる、あるいは、実施機関が電気事業に伴い実施する工事等について入札金額が高止まりするなどの、不利益な状況が想定される。

第4 実施機関の説明の要旨

1 公文書を開示する理由

(1)条例第14条第3号イに該当しないこと

ア 前記第2 3のうち、ア(ア)、イ(ア)及びウ(ア)
 当該料金及び料金体系は、実施機関が電気事業を行うに当たり根幹となる部分であり、最も高い説明責任が求められる箇所である。これらの概要は、決算書に記載されている。
 当該料金と同等以上の価格水準での契約締結を求められること及び同様の料金体系を求められることが他事業者との契約に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性、それが法的保護に値するまでに申立人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれは想定できない。
イ 前記第2 3のうち、ア(イ)
 記載された金額は、規則に則り料金が適正に算定されたものであることを説明するものであるとともに、記載された金額は、必要であると見込まれる修繕、委託及び諸費等を項目ごとに積み上げた合計額であり、個別・具体的な事業費用ではない。これをもって合意可能な費用額の水準を推測されること及び同等の費用に基づく契約条件を提示されることが他事業者との契約に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性、それが法的保護に値するまでに申立人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれは想定できない。
 また、個別・具体的な事業費用を示すものではないことから、添付様式に記載された金額の開示が、他事業者の工事費用の高止まり等を招き、申立人が他事業者に支払う料金に影響を及ぼすことについての蓋然性、それが法的保護に値するまでに申立人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれは想定できない。
ウ 前記第2 3のうち、ア(ウ)
 規則に則り作成されたものであり、料金が適正に算定されたものであることを説明するために必要な資料であるとともに、協議を求められること及び協議を求められることが他事業者との契約に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性、それが法的保護に値するまでに申立人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれは想定できない。
エ 前記第2 3のうち、イ(イ)及び(ウ)
 個別・具体的な事業が記載されているが、イ(イ)については、国の事業であり、金額も定額、イ(ウ)については、既に協定締結済みの事業である。金額が変動しないことから、申立人が実施機関に支払う料金に影響を及ぼすことはなく、申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはない。
 また、協議を求められること及び協議を求められることが他事業者との契約に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性、それが法的保護に値するまでに申立人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれは想定できない。

(2)電気料金情報公開ガイドライン

 国においては、「公共料金については、料金算定に係る行政プロセスの透明化や料金の妥当性を確認するための情報等を十分かつ分かりやすく公開すること」の必要性という観点から、ガイドラインが設けられており、「規則に従って事業者から提出された説明資料等」及び「事業者から提出された規則に代入するための数値」は、「料金の妥当性のチェックに必要な情報」に位置づけられている。これにより、本件と同様の公開請求が国に対して行われた場合、届出書については、金額も含めて原則全て公開という扱いとなっている。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について

 実施機関は、電気事業法第2条第1項第12号に定める卸供給事業者として、同第2号に定める一般電気事業者であるところの申立人に対して、自らが発電した電気を供給(以下「卸供給」という。)している。電気事業法第22条第1項は、卸供給について、「経済産業大臣に届け出た料金その他の供給条件によるのでなければ、卸供給を行ってはならない」と規定しており、経済産業大臣への届出に必要な書類は、規則第28条に規定されている。
 実施機関は、申立人に対する卸供給を行うため、実施機関の保有する発電所のうち、29の水力発電所及び1の火力発電所について、平成23年度から平成24年度までの卸供給条件を、それぞれ平成23年3月10日付けで、経済産業省の地方支分部局である関東経済産業局に対し、規則第28条に基づき、「規則様式第21の卸・融通供給条件届出書」に、「供給の相手方との契約書の写し」及び「卸供給料金算定規則様式第1、第2及び第4により作成した書類」を添えて提出しており、これが本件公文書に当たる。

2 条例第14条第3号イ該当性について

 申立人は、前記第2 3に掲げる情報について、条例第14条第3号イに該当すると主張している。以下、前記第2 3で整理した区分に従って、条例第14条第3号イ該当性について判断する。
 なお、条例第14条第3号イは、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」について、例外的に非開示とすることを定めるものであるが、「害するおそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められるものである。

(1)前記第2 3のうち、ア(ア)、イ(ア)及びウ(ア)

 当該情報は、「規則様式第21の卸・融通供給条件届出書」及び添付書類である「供給の相手方との契約書の写し」のうち、申立人が実施機関に支払う料金及び料金体系である。
 申立人は、当該情報が公になることで、申立人が他事業者との契約交渉を行う上で、実施機関に支払う料金と同等以上の価格水準での契約締結を求められることや、固定料金・従量料金など料金体系の構成について、実施機関に対する場合と同様の料金体系を求められることなどから、申立人の競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性が高い旨を主張している。
 実施機関は、当該情報が法的保護に値するまでに申立人の利益を害するおそれは想定できないことに加え、当該情報は実施機関が電気事業を行うに当たっての根幹部分であり、最も高い説明責任が求められる箇所であることや、当該情報の概要は、決算書として公表していることなどから、条例第14条第3号イには該当しない旨を主張している。
 料金については、規則に定める項目ごとに様式に整理した金額(非開示情報該当性について後述(2))をもとに算定されるところ、項目のうち、固定資産税や国有資産等所在市町村交付金、減価償却費などは、基本的に、各事業者が所有する発電所の規模や経過年数等によって、その金額が決められるものと考えられる。料金は、各事業者がどのような発電所を所有するかという固有の事情に左右されるものであり、料金算定の前提となる条件が全く同じ発電所を他事業者が保有していることはありえないのであるから、全体の料金が公になったとしても、他事業者がその情報をもとに自己に有利な主張をすることは困難であり、申立人が他事業者と契約交渉を行う上で不利に働くとは考えにくい。
 また、固定料金・従量料金など料金体系の構成についても、契約条件の一つであるに過ぎず、特定の料金体系が、一方に有利であるか不利であるかは、料金の設定や供給実績の多寡等で左右されるのであって、料金体系が公になったとしても、申立人が他事業者と契約交渉を行う上で不利に働くとは考えにくい。
 加えて、実施機関は、群馬県が経営する地方公営企業として、その業務内容や経理について、県民に対して高い説明責任を負っている。実施機関は、他の発電所も含めて、毎年70億円前後の料金収入を電気事業で得ているものであり、当該情報は、この金額が妥当であるかを県民が確認するためには、欠かすことのできない情報である。仮に、当該情報を公にすることで、申立人に何らかの不利益が発生するのだとしても、地方公営企業と契約を結ぶ事業者は、一定の不利益については受忍すべきであって、上記のとおり、申立人の今後の契約交渉に不利に働くとは考えにくいことからすれば、当該情報を公にすることは、受忍範囲内であると言える。
 したがって、当該情報は、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、条例第14条第3号イには該当しない。
 なお、申立人及び実施機関は、当該情報の概要を決算書に掲載していることについて、そのことをもって公知情報と言えるか否か、各々主張している。当該情報は、平成23年度から平成24年度までの供給条件に関するものであり、現時点で決算書に掲載された情報でないことは申立人の主張のとおりであるが、当該情報については、公知情報であるか否かを判断するまでもなく、上記のとおり判断するところである。

(2)前記第2 3のうち、ア(イ)

当該情報は、「卸供給料金算定規則様式第1、第2及び第4により作成した書類」のうち、金額に係る情報である。
 規則は、営業費の算定について第4条に、事業報酬の算定について第5条に、また、料金の算定について第8条に、それぞれ定めをおいている。
 当該情報は、営業費、事業報酬及び料金の算定について、規則に定める項目ごとに整理して様式に記入したものであり、様式第1は「営業費総括表」、「事業報酬総括表」及び「控除収益総括表」により、様式第2は「営業費明細表」、「事業報酬明細表」及び「控除収益明細表」により、そして様式第4は「原価等と料金収入の比較表」及び「供給電力量想定表」により構成されている。
 申立人は、当該情報が公になることで、上記(1)と同様の支障があると主張するほか、規則に定める項目ごとの金額から、申立人が合意可能な費用額の水準を推測され、より低廉な費用での電力供給が可能な他事業者からも、実施機関と同等の費用に基づく契約条件の提示及び工事費用の高止まり等を招くおそれを主張している。
 実施機関は、当該情報が、規則に則り料金が適正に算定されたものであることを証する情報であることや、必要であると見込まれる修繕、委託及び諸費等を項目ごとに積み上げた合計額であり、個別・具体的な事業費用ではないことから、申立人の主張を否定している。
 公共料金については、料金算定に係る行政プロセスの透明化や、料金の妥当性を確認するための情報公開が強く求められるところであり、資源エネルギー庁は、平成13年1月6日付けでガイドラインを制定している。ガイドラインでは、制定の基本的考え方として、「行政は、料金設定のプロセスを透明化するため、料金算定のルールを予め明確化し、これを公開することが必要」とし、制定の意義として、「公開された情報について一定の水準が担保され、例えば、料金算定のルールに従って公開された数値をもとに算定を行えば、第三者にも『料金設定の適正性の確認』や『料金の妥当性の事後的評価』を行うことが可能になる」としている。そして、卸供給料金に関して行政が公開する情報としては、「卸供給条件の届出(変更届出)時に、電気事業法施行規則に従って卸事業者から提出された説明資料等」や「卸事業者から提出された卸供給料金算定規則に代入するための数値」を挙げている。
 ここで、当該情報は、すべて規則に定める項目ごとに整理して様式に記入したものであり、規則に定める項目よりも細かい内訳やその金額など、様式で求められている以上の情報は記載されていないことから、ガイドラインに照らせば、当該情報は、すべて公開するべき情報と考えることが妥当である。
 申立人が主張するとおり、ガイドラインでは留保条件として、情報公開法において「『競争上の地位』を阻害する情報」が「不開示情報」となることを示し、「ガイドラインにおける情報公開についても、こうした点を参酌することが必要である」としているが、前述のとおり、当該情報は、ガイドラインで公開するべき情報として具体的に整理されているのであって、それにも関わらず例外的に非開示とするべき理由としては、申立人の主張は具体性に欠けるものである。
 ガイドラインは資源エネルギー庁が定めたものであり、審査会はあくまで条例に基づいて開示・非開示の判断を行うものであるが、ガイドラインの趣旨については審査会も異存はなく、条例に基づく判断の際にも考慮してしかるべきものと考える。
 そもそも、当該情報は、上記(1)の情報と比べれば、細かく分類されている情報であるものの、当該情報自体も、本件公文書には記載されていないところの、各項目に包含される個々の必要経費を積み上げて算定するなどした情報であると考えられる。
 上記(1)で述べたとおり、各事業者が保有する発電所は異なるものであり、そうした各事業者の状況や交渉の前提条件がより明確にならない限り、当該情報が公になったとしても、やはり、申立人が他事業者と契約交渉を行う上で不利に働くとは考えにくい。
 また、実施機関が地方公営企業として、その業務内容や経理について説明責任を果たす上で、公にすることが必要な情報であること、仮に申立人に何らかの不利益が発生するのだとしても、地方公営企業と契約を結ぶ事業者として、受忍範囲であると認められることも、上記(1)と同様である。
 したがって、当該情報は、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、条例第14条第3号イには該当しない。

(3)前記第2 3のうち、ア(ウ)

当該情報は、「卸供給料金算定規則様式第1、第2及び第4により作成した書類」のうち、自己資本報酬の額を算定するために必要な報酬率や、その算定方法に係る情報である。
 申立人は、当該情報は当事者間の協議により個別の事情を斟酌して決定するべきところ、当該情報が開示された場合、他事業者から個別の事情にかかわらず県と同様の算定方法を基準とした協議を求められる可能性が高いとしている。
 実施機関は、当該情報が、規則に則り作成されたものであり、料金が適正に算定されたものであることを説明するために必要な資料であることや、申立人と他事業者との契約交渉に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性はない旨を主張している。
 規則は、第5条で事業報酬の算定について定めており、自己資本報酬については、同条第2項第1号イ乃至ハに示す方法により算定することとしている。
 まず、報酬率は、上記(2)の情報としても記載されており、非開示情報該当性の判断も同様である。
 報酬率の算定方法は、第5条第2項第1号イ乃至ハで示す3種類の算定方法に限られ、算定方法が決定すれば自動的に報酬率が決定するということでは必ずしもないが、算定方法を決定することで報酬率は一定の範囲に限定される。報酬率をいかに設定するかの交渉は、この範囲に留まるものであって、3種類の算定方法のいずれかを選択したかは上記(2)の情報としても記載されており、また、報酬率をいかに設定するかについても、あわせて記載することが求められていることからすれば、こうした情報を、条例第14条第3号イで保護するに値する当事者間の交渉結果あるいはノウハウとして捉えることには疑問がある。
上記(2)でも述べたとおり、料金算定に係る行政プロセスの透明化や、料金の妥当性を確認するための情報公開の必要性をかんがみれば、報酬率の算定方法についても報酬率と同様に、料金設定の適正性の確認や料金の妥当性の事後的評価をするために欠かせない情報であるし、行政が公開する情報としてガイドラインで掲げている「卸供給条件の届出(変更届出)時に、電気事業法施行規則に従って卸事業者から提出された説明資料等」にも該当すると考えられる。
 また、実施機関が地方公営企業として、その業務内容や経理について説明責任を果たす上で、公にすることが必要な情報であること、仮に申立人に何らかの不利益が発生するのだとしても、地方公営企業と契約を結ぶ事業者として、受忍範囲であると認められることも、上記(1)と同様である。
 したがって、当該情報は、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、条例第14条第3号イには該当しない。

(4)前記第2 3のうち、イ(イ)及び(ウ)

当該情報は、「供給の相手方との契約書の写し」のうち、29の水力発電所に関する契約書の第12条第3項及び第4項である。第12条第3項には、国が実施する事業において、実施機関が一定の金額を負担し、申立人が実施機関に支払う料金にはその金額が含まれる旨が、また、同条第4項には、実施機関が発電事業を行うため、特定の企業に対して補償金を支払い、申立人が実施機関に支払う料金にはその金額が含まれる旨が記載されている。
 申立人は、各条項に規定されるような費用を原価に織り込むか否かは、個別の事情を斟酌して当事者間の協議で決定されるものであり、当該情報が開示された場合、他事業者から同様の性質の費用を原価に織り込むことを前提とした協議を求められる可能性が高まる旨を主張している。
 実施機関は、各条項に規定された費用は変動しないことから、申立人が実施機関に支払う料金に影響を及ぼすものではないし、申立人と他事業者との契約交渉に不利な影響を及ぼすことについての蓋然性はない旨を主張している。
 当該情報は、上記(2)で検討を行った、規則に定める項目ごとに整理された金額の内訳に当たる金額であるが、国への負担金や特定企業への補償という、実施機関の固有の事情に基づく支出である。上記(1)で述べたとおり、各事業者が保有する発電所が異なり、各事業者の状況や交渉の前提条件が異なるところ、当該情報が公になったとしても、申立人が他事業者と契約交渉を行う上で不利に働くとは考えにくい。
 上記(2)でも述べたとおり、料金算定に係る行政プロセスの透明化や、料金の妥当性を確認するための情報公開の必要性をかんがみれば、当該情報についても、料金設定の適正性の確認や料金の妥当性の事後的評価をするために欠かせない情報であるし、行政が公開する情報としてガイドラインで掲げている「卸供給条件の届出(変更届出)時に、電気事業法施行規則に従って卸事業者から提出された説明資料等」にも該当すると考えられる。
 当該情報については、実施機関と申立人との契約内容の一部である以前に、実施機関と国あるいは実施機関と特定企業との債権・債務に関する情報であり、仮に当該情報を非開示情報とすれば、実施機関の国や特定企業に対する債務について、その金額すら説明することができなくなる。
 実施機関が地方公営企業として、その業務内容や経理について説明責任を果たす上で、公にすることが必要な情報であること、仮に申立人に何らかの不利益が発生するのだとしても、地方公営企業と契約を結ぶ事業者として、受忍範囲であると認められることも、上記(1)と同様である。
 したがって、当該情報は、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、条例第14条第3号イには該当しない。

3 その他

(1)非開示情報との関係について

 実施機関は、本件処分において、前記第2 2(2)のうち、イ(エ)並びにウ(イ)及び(ウ)については、条例第14条第3号イ及び第6号ロに該当するとして、非開示としている。
申立人は、前記第2 2(2)のとおり、開示することに支障がある旨の意見書を提出しているところ、申立人の主張どおり実施機関が非開示とした部分の非開示理由が、申立人の主張に反して実施機関が開示すると判断した部分にも当てはまると主張している。
 本件事案は、前記第2 2(3)の情報について実施機関が開示するべきと判断したことについて異議申立てがなされたものであるところ、審査会が、その妥当性・適法性を審査する上で、当事者間に争いのない部分の実施機関の判断を審査する必要はないため、非開示部分については判断しない。

(2)実施機関の支障について(条例第14条第6号該当性について)

 申立人は、前記第5 2で検討した情報を公にすることで申立人がこうむる不利益については、実施機関においても当てはまるものであり、今後、実施機関が申立人以外の事業者との間で電力受給契約を締結する場合において、申立人と実施機関との契約内容を知悉している事業者から受給料金の引き下げを求められる、あるいは、実施機関が電気事業に伴い実施する工事等について、入札金額が高止まりするなどの、不利益な状況が想定されると主張している。
これは、前記第2 2(3)の情報が条例第14条第6号ロに該当する旨を主張する趣旨と考えられるが、この点について、実施機関は、自らの契約、交渉に係る事務に関し、財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害されるおそれを主張していない。
前記第5 2で検討したとおり、前記第2 2(3)の情報については、申立人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、そのことは、実施機関の契約、交渉に係る事務の適性な遂行に対する支障について検討する場合でも同様であるので、前記第2 2(3)の情報は、条例第14条第6号ロにも該当しない。

4 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成23年8月22日 諮問
平成23年9月26日 実施機関からの理由説明書を受領
平成23年11月2日 異議申立人からの意見書を受領
平成23年12月12日
(第137回 審査会)
審議(本件事案の概要説明)
平成24年2月14日
(第138回 審査会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成24年3月19日
(第139回審査会)
審議
平成24年3月29日 答申