本文
公文書開示審査会答申第131号
(1)「昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地を県が代位処理して家督相続及び県へ寄付登記を行っている関係資料類一式(その時期まで公図に表示されていなかった○○番地が、この時期に公図上に表示され近隣の筆界が変えられていることから、登記に当たっての現地付近の地図訂正(確認)資料を含む。)」のうち、「用地課で管理している分」の公文書部分開示決定、
(2)「○○郡○○町大字○○字○○地区(現在国道○○号線)にかかる1 昭和37年(前後)道路拡幅工事書類写真含む一式、2 昭和47年(前後)道路拡幅工事書類写真を含む一式」のうち、「用地課で管理している分」の公文書部分開示決定、
(3)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式(用地課で管理している分)」の公文書部分開示決定、
(4)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式(用地課で管理している分)」の公文書不存在決定、
(5)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、3 昭和53年に前記にかかる土地登記が行われているがその関係書類資料類一式」のうち、「用地課で管理している分」の公文書部分開示決定、
(6)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「用地課で管理している分」の公文書部分開示決定、に対する異議申立てに係る答申書
群馬県公文書開示審査会
第1 審査会の結論
群馬県知事が行った決定のうち、(1)、(3)及び(5)の公文書部分開示決定、並びに(4)の公文書不存在決定は妥当であるが、(2)及び(6)の公文書部分開示決定は妥当ではなく、回議用紙等も含めた公文書全体を特定して、改めて決定すべきである。
(1)「昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地を県が代位処理して家督相続及び県へ寄付登記を行っている関係資料類一式(その時期まで公図に表示されていなかった○○番地が、この時期に公図上に表示され近隣の筆界が変えられていることから、登記に当たっての現地付近の地図訂正(確認)資料を含む。)」のうち、「用地課で管理している分」(以下「本件公文書1」という。)
(2)「○○郡○○町大字○○字○○地区(現在国道○○号線)にかかる1 昭和37年(前後)道路拡幅工事書類写真含む一式、2 昭和47年(前後)道路拡幅工事書類写真を含む一式」のうち、「用地課で管理している分」(以下「本件公文書2」という。)
(3)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式(用地課で管理している分)」(以下「本件公文書3」という。)
(4)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式(用地課で管理している分)」(以下「本件公文書4」という。)
(5)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、3 昭和53年に前記にかかる土地登記が行われているがその関係書類資料類一式」のうち、「用地課で管理している分」(以下「本件公文書5」という。)
(6)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」のうち、「用地課で管理している分」(以下「本件公文書6」という。)
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成23年3月1日付けで、以下(1)から(5)の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(1)「昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地を県が代位処理して家督相続及び県へ寄付登記を行っている関係資料類一式(その時期まで公図に表示されていなかった○○番地が、この時期に公図上に表示され近隣の筆界が変えられていることから、登記に当たっての現地付近の地図訂正(確認)資料を含む。)」(以下「本件請求1」という。)
(2)「○○郡○○町大字○○字○○地区(現在国道○○号線)にかかる 1 昭和37年(前後)道路拡幅工事書類写真含む一式、2 昭和47年(前後)道路拡幅工事書類写真を含む一式」(以下「本件請求2」という。)
(3)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」(以下「本件請求3」という。)
(4)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、3 昭和53年に前記にかかる土地登記が行われているがその関係書類資料類一式」(以下「本件請求4」という。)
(5)「1 昭和37年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式、2 昭和47年頃(前後)における○○郡○○町大字○○字○○番地にかかる道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式」(以下「本件請求5」という。)
2 実施機関の決定
実施機関は、平成23年3月14日、本件請求に係る公文書が古く検索に時間を要することから、条例第19条第2項の規定による決定期間の延長を行い、当該公文書を検索したところ、用地課(平成23年4月1日付けの組織改正により監理課用地対策室に変更)及び藤岡土木事務所において保有していたことから、それぞれ所属ごとに次のとおり決定を行った。
(1)用地課分
実施機関のうち用地課は、平成23年3月25日、本件請求1から本件請求5に係る公文書を、本件公文書1から本件公文書6であると判断し、本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6について公文書部分開示決定(以下それぞれ「本件処分1」、「本件処分2」、「本件処分3」、「本件処分5」及び「本件処分6」という。)を行い、それぞれ公文書の一部を開示しない理由を別紙のとおり付して、申立人に通知した。また、本件公文書4について、同日、公文書不存在決定(以下「本件処分4」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
(不存在の理由)
○ 請求のあった公文書については、用地課では管理していないため。
(2)藤岡土木事務所分
実施機関のうち藤岡土木事務所は、平成23年3月25日、本件請求に係る公文書のうち、藤岡土木事務所が保有する分について、公文書不存在決定及び公文書開示決定(以下「藤岡土木事務所決定」という。)を行った。
3 不服申立て
申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成23年5月27日付けで、本件処分1から本件処分6を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行い、併せて、藤岡土木事務所決定についても異議申立てを行った。
4 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成23年7月8日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)及び藤岡土木事務所決定に対する異議申立て事案の諮問を行った。
第3 争点
1 争点1(本件請求に係る公文書の特定について)本件請求に係る公文書として、実施機関が本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6を特定したことは妥当であるか。
2 争点2(本件公文書4の公文書不存在決定について)本件公文書4を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
3 争点3(条例第14条第2号該当性)本件公文書2及び本件公文書6で非開示とされた部分が条例第14条第2号に該当するか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 争点1(本件請求に係る公文書の特定について)
(1)申立人の主張要旨
ア 異議申立てに係る処分のうち、部分開示決定については、他にも関係文書があると思われることからその開示を求める。
イ 昭和37年及び昭和46、47年の2回にわたる道路拡幅工事資料からみても、それぞれ当時の現況と1回目と2回目の工事資料に矛盾がある。このようなことを行ったから、都合の悪い詳細資料について当時又は今回隠蔽していると考える。
ウ ○○番地の件は、調査によると旧赤道から拡幅後の新赤道に変更当時に筆界が一部少し変えられ、その時にすでに○○番地の一部が県道から山側の旧道登り口になっていたものを昭和37年頃になって登記処理されたもので、現況と公図上の位置・形状が異なる。昭和37年前後、昭和47年前後の拡幅に係わる実際の測量図・現況地形図等の資料があればはっきりしたことである。
エ ○○について、昭和53年登記処理資料は、説明からすると保管されているはずだが、昭和47年当時土木事務所が誤った内容で作製し、地積測量図としては、本来、要をなさない現況とも明らかに異なる関係資料が残っているのみで現状を測量した資料等がない。
オ ○○について、道路拡幅に係わる昭和37年当時と昭和47年当時の同じ場所の図が測量の長さなど大きく違っているものが保管されている。要をなさない地積測量図で登記処理が行われ、つじつまが合わない資料のみ保管されている。現況等に基づく正しい資料はないのか。尺度の違う公図上で処理し測量を行わなかったのか。元の正しい公図や現況とも違い、意図的に作られた資料しかなぜ開示しないのか。公に出来ない何かが残っているのではないか。
(2)実施機関の主張要旨
本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6については、実施機関で保管する潰地調書を調べたところ、昭和37年度、昭和45年度から昭和47年度及び昭和54年度の各年度の簿冊の中に本件請求に該当する場所及び年度の文書が保管されていたため、非開示情報と認められる情報を除いて部分開示決定した。なお、保存文書目録に記録がない文書について、執務室の書棚のほか、書庫や文書館等も含めて関係書類を探索したが、部分開示決定をした文書以外に本件請求に該当する文書は保管していない。
2 争点2(本件公文書4の公文書不存在決定について)
(1)申立人の主張要旨
異議申立てに係る処分のうち、不存在決定については処分を取り消し、全部開示 することを求める。昭和37年代、昭和47年代と2回にわたる工事で測量しないわけがなく、その資料は当然あったはずである。
(2)実施機関の主張要旨
本件公文書4については、実施機関で保管する潰地調書を調べたところ、該当する場所及び年度の文書が保管されていなかった。また、保存文書目録に記録がない文書について、執務室の書棚のほか、書庫や文書館等も含めて関係書類を探索したが、本件公文書4に該当する文書は保管されていないため、不存在決定とした。
3 争点3(条例第14条第2号該当性)
(1)申立人の主張要旨
昭和45年度の○○さんとの契約資料の中で「物件その他通常受ける損失補償の表示」中の地番・種類は開示すべきではないか。黒塗りされていては、○○さんと契約したというだけで、どこの何を契約したか当時の現地を知る人しか分からない。地元住民は、当該倉庫がどこに建っていて、どのような建物で、誰が所有していたかは近隣では公の事実として承知していたことである。その補償金額の開示を求めているものではない。
(2)実施機関の主張要旨
部分開示決定をした文書のうち、「土地売買に関する契約書」別表第2「物件その他通常受ける損失補償の表示」のうち、個人を補償の相手方としているものについては、記載されている物件の所在地、種類、形状、単位、単価、金額及び損失の種類の情報は、公にされていない特定の個人の財産に関する情報であるため、条例第14条第2号に該当し、また、地権者がどのような物件を所有しているかは不動産登記事項によっても公示されず、同号ただし書イに規定する「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」とは言えないため、非開示とした。
第5 審査会の判断
本件請求は、○○郡○○町(現在の○○)大字○○字○○(以下「○○」という。)地区における昭和37年頃及び昭和47年頃に行われた道路拡幅工事に係る工事関係文書及び登記関係文書の開示を求めるものである。これに対し実施機関は、本件請求に係る公文書を保有する用地課及び藤岡土木事務所が、それぞれの所属で保有する分について決定を行っている。本件事案は、実施機関のうち用地課が行った本件処分1から本件処分6に対するものであることから、当審査会は、当該処分の妥当性について審議する。
1 争点1(本件請求に係る公文書の特定について)
(1)本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6について
審査会は、本件事案についての概要の説明を実施機関から受けたところ、実施機関では、各土木事務所で作成・保存されていた用地買収に関する文書のうち、昭和54年度以前のもので、用地の所有権移転登記が完了せず未登記となった案件について、当該文書が編綴された用地買収調書等綴の簿冊ごと各土木事務所から引き継いでおり、潰地調書として管理しているとのことである。そして、実施機関は、昭和30年度から昭和46年度及び昭和54年度の潰地調書を保有しており、これらの潰地調書の中から本件請求に該当する場所及び年度の文書を特定したとのことである。審査会は、実施機関に対して条例第30条第1項に基づき本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6の提示を求め確認したところ、次のアからカに分類できることから、当審査会は、この分類ごとに特定の妥当性について検討する。
ア 昭和37年度施行 主要地方道○○線 ○○郡○○町大字○○地内 道路改良工事潰地調書綴(以下「昭和37年度潰地調書」という。)
イ 昭和45年度 主要地方道○○線 ○○郡○○町○○地内 道路改良工事潰地調書(買収)(以下「昭和45年度潰地調書1」という。)
ウ 昭和45年度 主要地方道○○線 ○○郡○○村○○地内 ○○町○○・○○地内 道路改良工事潰地調書(買収)(以下「昭和45年度潰地調書2」という。)
エ 昭和46年度 主要地方道○○線 ○○郡○○町○○地内 道路改良工事潰地調書(買収)(以下「昭和46年度潰地調書1」という。)
オ 昭和46年度 主要地方道○○線 ○○郡○○町○○地内 雷電橋架換工事潰地調書(寄附)(以下「昭和46年度潰地調書2」という。)
カ 不動産の所有権移転登記完了について(昭和53年12月28日決裁)(以下「昭和53年度文書」という。)
(2)昭和37年度潰地調書について
実施機関は、本件公文書1から本件公文書3、本件公文書5及び本件公文書6として、昭和37年度潰地調書を特定している。申立人は追加意見書において、○○番地のみ土地寄附承諾書がないことや○○番地及び○○番地については、土地寄附承諾書はあるが、土地分筆代位申告書、地形図、地積測量図等は付いておらず、都合の悪い部分は見せないということが分かる一つの事例であると述べるが、審査会が昭和37年度潰地調書を確認したところ、実施機関が特定した文書以外に対象とすべき文書の存在は認められなかった。
(3)昭和45年度潰地調書1
実施機関は、本件公文書2及び本件公文書6として、昭和45年度潰地調書1を特定している。審査会が昭和45年度潰地調書1を確認したところ、実施機関が特定した文書以外に対象とすべき文書の存在は認められなかった。
(4)昭和45年度潰地調書2
実施機関は、本件公文書2及び本件公文書6として、昭和45年度潰地調書2を特定している。審査会が昭和45年度潰地調書2を確認したところ、実施機関は昭和45年度潰地調書2のうち、○○番○○に係る所有権移転登記、土地地目変更登記及び土地分筆登記の登記嘱託書、地形図、地積測量図を開示しているが、この文書は、昭和46年3月1日決裁「所有権移転登記並に分筆登記事務委託契約について(伺い)」の起案文書の一部であり、ほかに回議用紙や登記事務委託契約書等が付いていた。また、昭和46年2月5日決裁「用地費及び補償費について(伺い)」の起案文書については、開示文書以外に、○○町農業協同組合が作成した有線電柱移転工事費の見積書が付いていた。
さらに、昭和46年3月5日決裁「所有権移転登記並に分筆登記事務委託契約について(伺い)」の起案文書には、開示文書以外に、家屋補償写真綴が付いていたが、実施機関に確認をしたところ、これらの文書については、特定をしていないとのことであった。
条例に基づく開示請求の対象は「情報」ではなく「公文書」であるから、請求の対象を情報単位で特定できたとしても当該情報が記録されている公文書全体が請求の対象となるというべきであり、実施機関の取扱いとしては、開示請求者からの明確な意思表示がある場合に限り、公文書の一部をページ単位で「請求対象外」とすることができるとしているところである。
したがって、実施機関が申立人の意思を確認することなく起案文書の一部を特定したことは妥当ではなく、起案文書全体を対象公文書として特定すべきであった。
(5)昭和46年度潰地調書1
実施機関は、本件公文書2及び本件公文書5として、昭和46年度潰地調書1を特定している。申立人は意見書において、開示された写真資料は各対象物件を個々に撮影しているが一部欠落しており、一番確認したい部分のみなく、他の物件のように撮影したものは開示されなかったのはおかしいと述べるが、審査会が昭和46年度潰地調書1を確認したところ、実施機関が特定した文書以外に対象とすべき文書の存在は認められなかった。
(6)昭和46年度潰地調書2
実施機関は、本件公文書2として、昭和46年度潰地調書2を特定している。審査会が昭和46年度潰地調書2を確認したところ、実施機関が開示した文書以外に、○○番地及び○○番地の丈量図が付いていたが、実施機関に確認をしたところ、この丈量図については、特定をしていないとのことであった。
条例に基づく開示請求の対象は「情報」ではなく「公文書」であるから、上記(4)で述べた理由と同様の理由により、この丈量図も含め対象公文書として特定すべきであった。
(7)昭和53年度文書
実施機関は、本件公文書2及び本件公文書5として、昭和53年度文書を特定している。審査会が昭和53年度文書を確認したところ、実施機関が特定した文書以外に対象とすべき文書の存在は認められなかった。
(8)
さらに、審査会は、実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、執務室内、書庫及び文書館を入念に調査したが、上記(1)アからカ以外に対象とすべき文書の存在は認められなかった。
(9)
以上を総合すると、実施機関が本件請求に係る公文書として、昭和37年度潰地調書、昭和45年度潰地調書1、昭和46年度潰地調書1及び昭和53年度文書を特定したことは妥当であるが、昭和45年度潰地調書2及び昭和46年度潰地調書2の一部を抜き出して特定したことは妥当ではなく、回議用紙等も含めた公文書全体を特定して、改めて決定すべきであると判断する。
2 争点2(本件公文書4の公文書不存在決定について)
審査会が実施機関に確認したところ、本件請求4のうち、昭和47年頃(前後)における○○番地に係る道路拡幅工事に伴う関係書類資料類一式については、実施機関で保管する潰地調書を調べたが、該当する場所及び年度の文書が保管されておらず、執務室の書棚のほか、書庫や文書館等も含めて関係書類を探索したが保管されていなかったとのことである。
審査会が、昭和37年度潰地調書を見分したところ、○○番地については、昭和37年7月25日付けで、土地所有者から実施機関に対し土地寄附承諾書及び土地寄附證書が出されており、この土地寄附證書には、昭和38年7月5日付けの前橋地方法務局○○出張所の登記済印が押印されており、土地寄附承諾書には、完結の判が押されていた。
このことからすると、前記1(1)のとおり、実施機関は、昭和54年度以前のもので、用地の所有権移転登記が完了せず、未登記となった案件について、当該文書が編綴された用地買収調書等綴の簿冊ごと各土木事務所から引き継いでいたとのことであり、昭和47年頃(前後)における○○番地に係る文書を保管しておらず不存在とする実施機関の説明に、特段不自然な点は認められない。
さらに、審査会は、実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、執務室内、書庫及び文書館を入念に調査したが、本件公文書4として特定すべき文書の存在は認められなかった。
以上のことから、本件公文書4が存在しなかったとする実施機関の判断に特段不合理な点は認められない。
3 争点3(条例第14条第2号該当性)
申立人は、昭和45年度潰地調書2のうち、昭和46年2月5日決裁「用地費及び補償費について(伺い)」の起案文書の特定個人との契約書に付いている「物件その他通常受ける損失補償の表示」中の地番・種類について、当該倉庫がどこに建っていて、どのような建物で、誰が所有していたかは近隣では公の事実として承知していたことであり開示すべきと主張する。審査会が、当該起案文書を見分したところ、この文書には用地買収に係る用地、建物、工作物及び立竹木等の物件の所有者ごとの契約書等が付いている。この契約書には、「別表第1 土地の表示」及び「別表第2 物件その他通常受ける損失補償の表示」が添付されているが、「別表第2 物件その他通常受ける損失補償の表示」には、物件の所在地、種類、形状、単位、数量、単価及び金額として、補償の相手方が所有する各物件の内訳や補償内容等が詳細に記載されていた。
実施機関は、別表第2「物件その他通常受ける損失補償の表示」のうち、個人を補償の相手方としているものについては、記載されている物件の所在地、種類、形状、単位、数量、単価及び金額(以下「本件非開示情報」という。)を条例第14条第2号に該当するとして非開示にしているが、各物件の所有者氏名については開示している。
通常、建物、工作物及び立竹木等の概況については、ある程度は土地の外部から観望することができるものの、県の用地買収により不動産登記簿に登記されて公示されるものとは異なり、実施機関が損失補償を行ったそれぞれの相手方に対する補償内容等は、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」とは認められない上、補償金額の算定の要素となる建物や工作物等の内部の構造、使用資材等の詳細は、一般人が通常の手段をもって知り得るものではなく、また必ずしも公示される情報でもない。
実施機関が個人の氏名を開示していることからすると、その所有者が識別されている財産に関する情報となることから、本件非開示情報は、公にされていない特定の個人の財産に関する情報であると認められ、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報ではなく、条例第14条第2号ただし書イには該当せず、同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しないため、条例第14条第2号に該当し非開示が妥当である。
4 その他
審査会が本件公文書2及び本件公文書6を見分したところ、昭和45年度潰地調書 2及び昭和46年度潰地調書1の実施機関が非開示とした部分について、申立人は主張していないが、用地補償費総括調書や個人別調書等、文書によって開示・非開示の 判断に不統一が見受けられたことから、実施機関は、改めて行う決定に当たっては、非開示情報該当性の判断を適切に行うべきである旨を付言する。
5 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
なお、申立人は、用地買収時に測量が行われていないことの是非や道路拡張工事の際に公図を変えられたことなど種々主張をしているが、当審査会は、条例第26条の規定に基づく実施機関からの諮問に応じ、本件処分1から本件処分6の妥当性について判断するものであり、申立人の当該主張の是非については、当審査会の判断するところではない。
第6 審査の経過
当審査会の処理経過は、以下のとおりである。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成23年7月8日 | 諮問 |
平成23年8月9日 | 実施機関からの理由説明書を受領 |
平成23年9月26日 | 異議申立人からの意見書を受領 |
平成23年103日 | 異議申立人からの追加意見書を受領 |
平成23年11月7日 (第136回 審査会) |
審議(本件事案の概要説明) |
平成23年12月12日 (第137回 審査会) |
審議(実施機関の口頭説明) |
平成24年2月14日 (第138回 審査会) |
審議(条例第30条第4項による調査を実施) |
平成24年3月9日 (第139回 審査会) |
審議 |
平成24年5月7日 (第140回 審査会) |
審議 |
平成24年5月11日 | 答申 |
別紙 省略