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個人情報保護審議会諮問事件第31号

更新日:2014年3月19日 印刷ページ表示

1 件名

 「医師職員、看護職員らが保有する個人情報のうち、請求者に係るもの」の診療情報非開示決定に対する審査請求

2 諮問庁・処分庁

 群馬県知事、精神医療センター院長

3 開示等決定内容及び理由

(1)決定内容

 平成25年8月21日 診療情報非開示決定

(2)非開示理由

  • 条例第13条第1号該当
    開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるため。
  • 条例第13条第7号ハ該当
    個人の指導、選考、判定、診断その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。

4 不服申立て

(1)申立年月日

 平成25年9月1日

(2)趣旨

 本件処分を撤回して、本件個人情報の開示を求める。

(3)理由

 条例第13条第3号イでは、慣行として知ることができるものは他人の個人情報であっても開示する旨定めてあるが、本件請求の前に群馬県立精神医療センター(以下「センター」という。)の医師職員が、請求人に、訪問看護を再開するのはデイケアで頑張ったら、などという条件を付け、これでは通院の必要のない訪問看護の前に、通院の必要なデイケアを先にするのは順序が逆である。この理由を知る権利は当然請求人にある。また、請求人以外の他の外来患者との兼ね合いも考えられ、本件処分は明らかに条例第13条第3号イ違反である。
 条例第13条第3号ロでは、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報は開示することとなっている。これに係ることで、Poor Business(貧乏人の弱みに付け込むあくどい商売の意)がある。請求人の貸家の大家が請求人の居所の水道を止めたこと等につきセンターの看護職員にただすと、請求人が大家に家賃を払わなかったから水が止まった、と虚偽の認識をし、しかも、これを誰から聞いたか請求人に言わない有様である。センターの職員がPoor Businessに加担していることは間違いなく、また、請求人の外来診察日時を漏らしていることは疑いの余地がなく、これは条例第10条違反である。
 以上を総合的にみると、今回の請求で実施機関がしたことは、地方公務員法でいう職権濫用罪にあたる。

5 諮問年月日

 平成25年9月17日

6 審議会の判断

(1)結論

 群馬県立精神医療センター院長の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。

(2)判断の理由

判断に当たっての基本的な考え方について

 条例は、第1条に規定されているとおり、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、県の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める権利を明らかにすることにより、県政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益の保護及び県民に信頼される公正で民主的な県政の推進を目的として制定されたものである。よって、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされなければならない。
 しかしながら、この自己情報の開示請求権も絶対無制限な権利ではなく、条例第13条各号に規定された非開示情報に該当する場合には非開示となるものである。

条例第13条第1号該当性について

 本号は、「開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるとき」と規定しているが、これは自己情報の開示を受けることが本人の利益にならない場合には非開示とすることを定めたものである。しかしながら、既に説示したとおり、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされるべきであることを考えると、この「おそれ」の判断に当たっては、単に起こり得る可能性があるというだけでなく、法的保護に値する蓋然性が求められるというべきである。
 本件個人情報は、処分庁が請求人に対して行った入院及び外来の診察及び治療に関する記録であり、諮問庁は、本件個人情報の全てが条例第13条第1号に規定する「開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある」情報であると主張している。
 一般に精神医療において、患者への診療情報の開示は、医療機関と患者との信頼関係や、開示が患者の精神状態に与える影響といった複雑な要素を、高度に医学的、専門的な見地から判断する必要があると考えられるが、この判断は、医学上の専門的な学識経験を持つとともに、現在も請求人の診察及び治療に携わっている担当医師にまず求められるべきものといえる。
 本件処分は、請求人が本件個人情報の開示を受けることで特定の事柄に興味を奪われ、現在も継続中の治療行為に支障が生じ、結果として請求人本人の病状悪化等が懸念されるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものであるが、当審議会が本件事案についての概要の説明を諮問庁及び処分庁から受けたところでも同様の見解が確認でき、そしてこの医師の判断は、実際に審議会が見分した本件個人情報の記載内容と十分な整合性を有する合理的なものと認められるため、当審議会においてもこれを尊重すべきであると考える。
 よって、本件個人情報は、条例第13条第1号に該当するものと認められる。

条例第13条第7号ハ該当性について

 本号に該当する個人情報は、個人の疾病、健康状態等について専門的な見地から行う診察、検査、評価、判断等の内容を記録したものをはじめとした、個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業に関する個人情報であり、かつ、開示することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす可能性が客観的に認められるものを指すと解される。
 諮問庁が条例第13条第7号ハに該当するとして非開示としている本件個人情報は、処分庁が請求人に対して行った入院及び外来の診察及び治療に関する記録であり、個人に対する診断など、評価又は判断を伴う事務又は事業に関する個人情報であると認められる。
 精神医療において、患者への診療情報の開示の判断は、上記(2)のとおり、患者の診察及び治療に携わっている担当医師にまず求められるべきものといえるが、本件処分は、本件個人情報を開示することで請求人と処分庁との間で構築してきた信頼関係を失うこととなり、それにより以後の診断及び治療方針を受け入れられなくなるなど悪影響を与えることが予見されるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものである。
 当審議会が本件事案についての概要の説明を諮問庁及び処分庁から受けたところでも同様の見解が確認でき、この担当医師の判断には、社会通念上合理性を欠くと認められる特段の事情は見受けられないため、当審議会においてもこの判断を尊重すべきであると考える。
 よって、本件個人情報は、条例第13条第7号ハに該当するものと認められる。

本件個人情報に係る過去の不服申立て事案について

 当審議会は、平成23年5月30日付け個審第158号答申で、本件個人情報の一部について、諮問庁の判断は妥当であると判断を示したところであるが、本件個人情報の条例第13条第1号及び第7号ハ該当性を判断するに当たり、時の経過や社会情勢の変化等さらに斟酌すべき事情は認められなかった。

結論

 以上のことから、「(1) 審議会の結論」のとおり判断する。
 なお、請求人はその他種々主張するが、当審議会の判断を左右するものではない。

7 答申年月日

 平成26年3月20日(個審第208号)

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