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公文書開示審査会答申第137号

更新日:2014年5月23日 印刷ページ表示

「平成24年5月1日現在 私立幼稚園園児数一覧」の公文書部分開示決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第一部会

第1 審査会の結論

 実施機関が行った公文書部分開示決定は妥当ではなく、非開示部分は条例第14条第3号イに該当しないため開示すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成25年2月18日付けで、「県内の私立幼稚園の24年在園児童数」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成25年3月1日、本件請求に係る公文書を「平成24年5月1日現在の私立幼稚園園児数一覧」(以下「本件公文書」という。)であると判断し、条例第14条第3号イに該当するとして部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件公文書の一部を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

  • 条例第14条第3号イ該当
    (非開示部分)
    本件公文書中、24年度実員、充足率、前年比、23年度実員及び増減に関する部分
    (非開示理由)
    開示することにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成25年3月12日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成25年3月19日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点

 本件処分で非開示とされた部分が条例第14条第3号イに該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 申立人の主張要旨

 保育所は公立、私立ともに開示している。何をもって法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するのか理解できない。ほとんど税金で運営している施設が、主権者に情報を開示しないのは法治国家としては最高の判断者である者に対して許せない行為である。また、近くの多くの県は開示している。

2 実施機関の主張要旨

(1) 園児数に関する調査方法、用途等について

 私立幼稚園の園児数については、県から各園あて毎年5月1日現在の園児数を照会し、取りまとめている。当該園児数については私立幼稚園を設置運営する学校法人に交付される「私立学校教育振興費補助金」の算定基礎数値、国から県あて交付される地方交付税交付金の算定基礎数値等として活用されている。
 なお、私立学校の園児(生徒)数に関する調査としては、本件の他、統計法(平成19年法律第53号)第9条に定める基幹統計として、文部科学省が所管する「学校基本調査」がある。

(2) 条例第14条第3号イの該当性について

 私立幼稚園を含む私立学校は、国公立学校が国又は地方公共団体の設置する施設として公の財源により賄われるものであるのに対し、私人による寄附財産等により設立され、運営されることを原則としている。
 そのため、私立学校においてはいわゆる「建学の精神」が尊重されるとともに、その自主性を重んじ、行政庁による規制や関与をできる限り避けることが一般的とされている。
 従って、各私立幼稚園の運営に関しては、「私立学校法(昭和24年法律第270号)」、「幼稚園教育要領(平成20年文部科学省告示第26号)」等に反しない限り、当該私立幼稚園設置者の自由かつ自主的な運営に委ねられている。
 各私立幼稚園における園児数に関する情報は、自主的な運営を旨とする私立学校においては経営の根幹を成す重要な情報であり、特に定員充足率が低い園にあっては、これが公開された場合、様々な憶測や風評を生みかねず、園経営に重大な支障を生じかねない。
 よって、私立幼稚園における園児数に関する情報は、条例に定める「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するものと認められ、非開示とすることが適当と判断したものである。
 なお、「学校基本調査」においても、学校(園)別の生徒(園児)数は公表されていない。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 争点(条例第14条第3号イ該当性)

 実施機関が条例第14条第3号イに該当すると主張する非開示部分は、本件公文書中、各幼稚園毎の「24年度の満3歳児、3歳児、4歳児、5歳児、実員計、充足率及び前年比並びに23年度実員並びに増減」の覧であり、実施機関は、これを公にすることにより「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものに該当する」と主張する。実施機関が主張するように、特に定員充足率が低い園にあっては、これら園児数に関する情報が公開された場合、様々な憶測や風評を生みかねず園経営に支障を生じる可能性も完全には否定できない。
 しかし、実施機関に他の都道府県における園児数の開示状況を確認したところ、調査に回答のあった7割以上の自治体が開示するとしており、実施機関からも開示により支障が生じたという事実を確認できない。なお、条例第14条第3号イの「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」とは、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められるものである。つまり、本件事案においては、実施機関の調査結果が示すように、「正当な利益を害する」ことにつき蓋然性があるとはいえないものである。
 また、平成17年4月1日に「私立学校法の一部を改正する法律」(平成16年法律第42号)が施行され、学校法人については、従前から義務付けられている財務書類の作成及び備え付けに加えて、新たに事業報告書等を作成し、これらを利害関係者への閲覧に供する義務が加えられるなど、より一層の情報公開が求められている。さらに、私立幼稚園を含む私立学校は、教育事業という公共性、公益性の高い事業を行っており、それゆえに公的助成や税制上の優遇措置もとられている。したがって、私立学校には、保護者、入園・入学志願者や在園・在校生への説明責任に限らず、広く県民に対する説明責任を果たすといった観点を重視して情報公開への適切な対応が求められていると考えられる。
 以上のことから本件事案については、条例第14条第3号イに規定する「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」とはいえない。また、私立幼稚園における運営の自主性、独立性に留意しつつも、昨今の社会全体における情報公開の流れや、私立幼稚園が公共性及び公益性が高く、公的助成や税制上の優遇を受ける教育の実施主体であることから、広く県民に説明責任を果たす観点を重視すべきである。したがって、本件処分における非開示部分は、条例第14条第3号イには該当せず、全て開示することが相当と認められるものである。

2 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成25年3月19日 諮問
平成25年4月25日 実施機関からの理由説明書を受領
平成25年5月8日 異議申立人からの意見書を受領
平成25年7月12日
(第38回 第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成25年9月17日
(第39回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成25年12月16日
(第40回 第一部会)
審議
平成26年3月11日
(第41回 第一部会)
審議
平成26年5月14日
(第42回 第一部会)
審議
平成26年6月9日 答申

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