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公文書開示審査会答申第142号

更新日:2015年2月3日 印刷ページ表示

「住宅用太陽光発電システムを設置した場所・所有者の氏名・住所・連絡先・モジュールメーカー・出力数(平成21年以降の補助金交付された者を対象)」の公文書部分開示決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会第二部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事の行った公文書部分開示決定のうち、管理台帳の「申請者名」及び「設置住所」を非開示とした決定は妥当であるが、補助金申請書類の全てを開示しなかった決定は妥当ではなく、補助金申請書類のうち、「住宅用太陽光発電設備を設置した住所」、「住所」、「氏名」、「電話番号」、「Fax番号」及び「緊急連絡先」その他の個人を識別できる部分を非開示とした上で、改めて部分開示決定すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成25年9月20日付けで、「住宅用太陽光発電システムを設置した場所・所有者の氏名・住所・連絡先・モジュールメーカー・出力数(平成21年以降の補助金交付された者を対象)」の公文書開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成25年10月4日付けで、平成21年以降の「住宅用太陽光発電設備設置補助金申請書類」(以下「本件公文書1」という。)及び「住宅用太陽光発電設備設置補助金交付者管理台帳」(以下「本件公文書2」という。)を本件請求に係る対象公文書として特定し、条例第14条第2号に該当するとして公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行った。非開示とした部分は本件公文書1のすべて並びに本件公文書2の「申請者氏名」及び「設置住所」であり、次のとおり理由を付して、申立人に通知した。

 条例第14条第2号該当
(非開示部分)
本件公文書1のすべて並びに本件公文書2のうち「設置住所」及び「申請者名」に関する部分。
(非開示理由)
特定の個人が識別されることかつ補助目的以外の利用を認めていないため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成25年10月8日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成25年11月11日、本件異議申立事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 本件事案における当事者の主張

1 申立人の主張要旨

 個人情報に関して個々に情報開示の同意を求め、同意を得た個人情報のみ開示を要求したい。

2 実施機関の主張要旨

(1)本件公文書1及び2について

 本件公文書1は氏名などと一体となっている財産情報などの個人情報が記載されているため開示することができない。また、実施機関が補助要綱で定めた様式において、「本申請書により得られた個人情報は、補助金の交付に関わる目的並びに、国及び市町村における住宅用太陽光発電設備の補助等に関わる目的以外に使用しない」ことが明記されていることからも、当該申請書を開示することはできない。
 本件公文書2は発電設備の「設置住所」及び補助金の「申請者名」が記載されており、当該部分は個人情報であるため開示することができない。

(2)部分開示の可否について

 住宅用太陽光発電設備設置補助金事業に係る補助対象件数は21,929件ある。本件公文書1は平成21年度から平成24年度までは事前申請・変更申請・完了報告の3種の書類があり、平成25年度は補助金申請書(兼完了報告書)の1種類の書類がある。本件公文書1は合計で219,576枚あり、仮に情報公開を行うとすれば、文書の搬入搬出作業及び複写作業に係る膨大な開示作業を行う必要が生じる。したがって、条例第15条第1項の「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。
 また、申立人が求めているのはあくまで補助金申請者の個人情報であり、当該部分が開示されなければ開示請求の目的が達成されないため、条例第15条第1項但し書き中の「有意な情報が記録されていないと認められるとき」に該当し、部分開示を行う必要はないと考える。

(3)個人情報の当該個人への意見照会について

 仮に補助金申請者に個々に個人情報の開示に同意をするか照会を行い、特定の個人から情報開示の同意を得ることができたとしても、現在の群馬県情報公開条例では、このような手続は認められていないため、申立人の要求に応えることはできない。

第4 争点

1 争点1(本件公文書1の部分開示の可否)

 本件公文書1について条例第15条に基づく部分開示が可能か。

2 争点2(個人情報の当該個人への意見照会)

 条例第14条第2号に該当する情報を、本人の同意を得て開示することが可能か。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 本件公文書1及び2の概要について

 本件公文書1は、群馬県が行っている住宅用太陽光発電設備設置に対する補助金交付事業に関して、発電設備の設置に際し補助金の交付を希望する設置者が県に対し提出するものであり、平成21年度から平成24年度までは申請書、変更申請書及び完了報告書の3種類から構成され、平成25年度は申請書(兼完了報告書)の1種類から構成されている。
 本件公文書2は、県が内部事務用として使用するため、発電設備の「設置住所」、補助金の「申請者名」、太陽電池の「出力」、「管理番号」を一覧表としてまとめた文書であり、各年度ごとにまとめられているものである。

2 争点1(本件公文書1の部分開示の可否)

 実施機関は、本件公文書1について「氏名などと一体となっている財産情報などの個人情報」であってそのすべてが条例第14条第2号に該当すると主張するため、その当否について検討する。

(1)個人情報の部分開示
 条例第15条第2項は、「開示請求に係る公文書に前条第2号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」と規定されている。条例第14条第2号の「特定の個人を識別することができるもの」とは、通常、個人を識別させる部分(例えば、氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動記録)とから成り立っているため、その全体が1つの非開示情報を構成するものである。しかし、個人を識別させる部分を除くことにより残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、部分開示とするよう定められているものである。
 つまり、同項の趣旨によれば、本件公文書1についても、個人情報であることを理由にそのすべてを非開示とするのではなく、個人を識別させる部分とその他の部分に分けて開示・非開示の判断を行わなければならないのである。

(2)ところで、申立人が本件請求で開示を求めているのは「住宅用太陽光発電システムを設置した場所、所有者の氏名・住所・連絡先・モジュールメーカー・出力数」であるため、当該部分について、個人識別性の有無及び個人の権利利益を害するおそれの有無について検討を行うものとする。

イ 住宅用太陽光発電システムを設置した場所、所有者の氏名、住所、連絡先について
 本件公文書1には、「住宅用太陽光発電設備を設置した住所」、「住所」、「氏名」、「電話番号」、「Fax番号」及び「緊急連絡先」が記載されている。「氏名」は、まさに特定の個人を識別させる部分である。また、「住宅用太陽光発電設備を設置した住所」、「住所」、「電話番号」、「Fax番号」及び「緊急連絡先」は、いくつかの記述等を組み合わせることにより、特定の個人を識別させる部分に当たる。

ロ モジュールメーカー、出力数について
 本件公文書1には、「太陽電池モジュールのメーカー名」及び「太陽電池の最大出力」が記載されている。太陽電池モジュールとは太陽光を電気に変換して発電する装置(一般的にはソーラーパネルのこと)であるが、その製造元であるメーカー名が記載されている。また、太陽電池の最大出力とは、1枚の太陽電池モジュールが指定された条件下において発電することが出来る最大出力を合計した値である。これらの記述は、単にソーラーパネルの製造元及び性能を示す記述であり、特定の個人を識別させる部分とは認められない。また、当該部分は、公にしても個人の権利利益を害するおそれも認められない。したがって、「太陽電池モジュールのメーカー名」及び「太陽電池の最大出力」は、開示すべきである。

(3)部分開示の可否(容易性について)
 また、実施機関は、「仮に情報公開を行うとすれば、文書の搬入搬出作業及び複写作業に係る膨大な開示作業を行う必要が生じる。したがって、条例第15条第1項の『容易に区分して除くことができるとき』に該当しない」と主張する。確かに本件事案については、実施機関の上記主張のとおり、対象文書が膨大な量に及ぶため、人員等の面から開示作業を行うことが現実的には困難であるとする主張も理解できる。しかし、判例(佐賀地判平成19年10月5日)が示しているとおり、「『容易に区分して除くことができるとき』に該当するか否かについては、あくまで技術的な観点から客観的に決すべき」ものである。開示作業に多大な時間と労力を要するという事情については、公開のため時間を要する理由となることはあっても「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない理由の根拠とはならないのである。本件事案については、区分して除くことについて技術上の困難があるとは認められず、よって「容易に区分して除くことができるとき」に該当するものと認められる。

(4)部分開示の可否(有意性について)
 さらに、実施機関は、「申立人が求めているのはあくまで申請者の個人情報であり、当該部分が開示されなければ開示請求の目的が達成されないため、条例第15条第1項但し書き中の『有意な情報が記録されていないと認められるとき』に該当し、部分開示を行う必要はない」とも主張する。しかし、有意性の判断については、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によってではなく、非開示情報が記録されている部分を除いたその余の部分に、客観的に「有意な情報」が記録されているか否かによって判断すべきである。すなわち、本件公文書1における特定の個人が識別される部分を除いたその他の部分に記録される「太陽電池のモジュールのメーカー名」及び「太陽電池の最大出力」という情報は、無意味な文字、数字等の羅列等には当たらないため、「有意な情報」であると認められる。したがって、実施機関の主張する「条例第15条第1項但し書き中の『有意な情報が記録されていないと認められるとき』」に該当しない。

 以上の理由から、「太陽電池モジュールのメーカー名」及び「太陽電池の最大出力」等の部分を含めた本件公文書1のすべてを開示しなかった実施機関の決定は妥当でなく、「住宅用太陽光発電設備を設置した住所」、「住所」、「氏名」、「電話番号」、「Fax番号」及び「緊急連絡先」その他の個人を識別させる部分を非開示とした上で、改めて部分開示決定すべきである。
 なお、実施機関は、改めて部分開示決定を行うに当たって、本件公文書1に記載される個々の記述について、個人の権利利益を害するおそれの有無を含め非開示情報該当性を適切に判断すべきである。

3 争点2(個人情報の当該個人への意見照会)

 上記(2)で判断したとおり、申立人が本件請求で開示を求めるもののうち、本件公文書1に記載される「住宅用太陽光発電設備を設置した住所」、「住所」、「氏名」、「電話番号」、「Fax番号」及び「緊急連絡先」は、「特定の個人を識別することができるもの」と認められ条例第14条第2号に該当する。また、本件公文書2のうち「申請者名」及び「設置住所」も同様に、「特定の個人を識別できるもの」と認められ条例第14条第2号に該当する。一方、申立人は「個人情報に関して個々に情報開示の同意を求め、同意を得た個人情報のみ開示要求したい。」と主張している。しかし、条例は個人情報について、条例第14条第2号においてその定義を示した上で、原則非開示の取り扱いを定めており、但し書きイ、ロ、ハにおいて例外的に開示しなければならない場合を限定列挙しているのである。
 したがって、申立人の主張する手続は条例において何ら規定されていないのものであるから、上記の条例第14条第2号に該当する情報について、実施機関が当該個人に対し意見照会を行う義務はなく、その必要も認められない。

4 結論

以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 付言

 本件事案において、申立人は本件公文書が約22万枚に及ぶ膨大なものになると想定した上で、なお本件公文書の写しの交付を求めて本件請求及び本件異議申立てを行ったものなのか定かではない。
 さらに、申立人が本件請求で開示を求めた情報は「住宅用太陽光発電システムを設置した場所・所有者の氏名・住所・連絡先・モジュールメーカー・出力数」であるが、このうち本答申の判断により新たに開示されることになる情報は「モジュールメーカー」のみである(「出力(Kw)」は本件公文書2に記載されており、原処分においてすでに開示が認められている。)。
これらの開示情報に関する状況並びに本件請求及び本件異議申立てにおいて申立人が主として開示を求めている情報が個人識別情報であるという事実を踏まえると、本答申の判断によっては申立人の目的が達成されないものと思料され、申立人が実際には公文書の写しの提供を求めない可能性もある。
このような可能性を全く考慮せずに、実施機関に写しの作成を求めた場合、実施機関の労力が徒労に終わり、実施機関の事務に無用の停滞を招くだけになってしまうおそれがある。
この点、条例は、第24条(適正な請求及び使用)において、請求人に対して、開示を受ける意思のない請求を行うべきでないなど、「適正な請求」に努める責務があることを明確に規定している。
かかる条例第24条の趣旨及び本件事案における前述の状況を踏まえ、当審査会としては、「第1 審査会の結論」記載のとおり実施機関に対して改めて部分開示決定をすることを求めるものの、他方で、申立人に対しては、本答申に沿って開示されることになる本件公文書の写しを受け取るか否かの意思を明確にすることを求めるとともに、写しの受領を希望する場合には、写しの提供を求める公文書の範囲や写しの提供を受ける時期、方法等について、実施機関との十分な協議に応じることを求める。
なお、申立人が本件公文書の写しを受ける意思を明確にした場合には、実施機関が本答申の判断に従って部分開示決定を行うにあたって、条例第19条第3項(開示決定等の期限の特例)等を適用し、相当の時間的猶予を設けることができることを申し添える。

第7 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成25年 11月11日 諮問
平成25年 12月17日 実施機関からの理由説明書を受領
平成26年 5月30日
(第39回 第二部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成26年 7月29日
(第40回 第二部会)
審議
平成26年 9月24日
(第41回 第二部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成26年 11月21日
(第42回 第二部会)
審議
平成27年 1月20日
(第43回 第二部会)
審議
平成27年 2月5日 答申

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