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公文書開示審査会答申第88号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「社会福祉法人○○運営・◇◇市△△デイサービスセンター指導文書等
 平成14年1月28日付太保福第148-14号
 平成14年1月28日付事務連絡
 平成14年12月25日付事務連絡」
の部分開示決定に対する異議申立ての件
に係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第二部会

第1 審査会の結論

実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成18年4月28日付けで、「社会福祉法人○○運営・◇◇市△△デイサービスセンター指導文書等 平成14年1月28日付太保福第148-14号 平成14年1月28日付事務連絡 平成14年12月25日付事務連絡」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成18年5月11日、本件請求に係る公文書を「社会福祉法人○○運営・◇◇市△△デイサービスセンター指導文書等 平成14年1月28日付太保福第148-14号 平成14年1月28日付事務連絡 平成14年12月25日付事務連絡」(以下「本件公文書」という。)であると特定し、部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、公文書を一部開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

 条例第14条第3号イ及び第6号 該当

 介護保険法及び関係法令・通知に基づき、実施した実地指導の結果のうち、改善を要するとして指摘及び指導した事項は、上記の非開示情報に該当するため開示しない。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成18年6月1日、本件処分を不服として、実施機関に対し異議申立てを行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成18年6月28日、本件異議申立事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(法人等事業情報該当性及び事務事業情報該当性)

 本件公文書で非開示とした部分が、条例第14条第3号イ及び第6号に該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 申立人の主張

 申立人が異議申立書及び意見書で述べている主張のうち、本件処分に関係する内容の要旨は、次のとおりである。

  1. 本件公文書に係る指導は、当該法人の指定基準違反に対するものであり、事実を公表し、法令等の規定に基づく適切な対応が講じられるべきである。
  2. 実施機関は本件処分が適法であることの理由の一つとして、平成11年に出された、指導監査結果通知に記載されている法人に関する情報が非開示情報であると認めた答申を挙げているが、当時と今日とでは、介護保険法制度における事業者監査・指導は、そのあり方が全く異なっている。
  3. 平成12年5月12日付老発第479号厚生省老人保健福祉局長通知「介護保険施設等の指導監査について」においては、「市町村(保険者)への情報の提供を行うとともに、出来る限り利用者保護の観点から開示を行う。」とされている。
  4. しかし、本件処分は名目は部分開示決定であるものの、指導部分についての記述は全て墨塗りされており、内容が全く示されていない。
  5. 平成13年7月23日付社会・援護局長等通知「社会福祉法人指導監査要綱の制定について」においても、「監査結果の開示は、法人運営の適正化のみでなく、利用者の立場に立った質の高いサービスの提供に資することも目的としていることを踏まえ、各都道府県市の情報公開条例に基づく開示請求に対しても積極的に閲覧を可能としておく体制を整えることが望ましいこと。」とされている。

2 実施機関の主張

 指導監査結果通知に記載されている法人に関する情報についての開示については、平成11年に群馬県公文書開示審査会から、施設及び法人が認識できる情報は法人事業情報に該当し、開示すべきでないとの答申が出されている。
 また、本件公文書と同一の文書について、以前にも同様の部分を非開示として部分開示決定を行っており、それに対し異議申立てが提起されている。そして、群馬県公文書開示審査会から平成16年12月10日付けで、非開示とした部分は次のような理由で条例第14条第3号イ及び第6号に該当し、部分開示決定は妥当であるとの答申(答申第56号)が示されている。

  1. 条例第14条第3号イ該当性
    • 当該指導の結果通知のみに記載された全ての情報が単独で公開されると、既に改善されているにもかかわらず、現在も適正とはいえない運営がなされているかのような誤解を生じさせる。
    • 当該「指導」の目的が制度の周知徹底等を主眼とするものであるにもかかわらず何か重大な問題があるかのように誤解されるおそれもある。
    • 監査の背景を知らない第三者が短文の指摘文をみても十分な内容が把握できずに無用の誤解を招くおそれがある。
  2. 条例第14条第6号該当性
    • 「指導」は指導要綱に基づき行政指導として行われたものである。当該「指導」に当たっては、施設等の関係者から組織運営、人事、資産など内部管理情報の任意の提供を受けて実施しており、これら任意の提供は、一般的に他に知らされないという認識及び信頼のもとに行われている。したがって、従来公にされたことのない「指導」の結果通知の内容を突然に公にすることになると、法人との間の信頼関係が損なわれ、今後の「指導」が円滑に行われなくなる事態が予想される。

 本件処分は、当該答申から1年6ヶ月後になされたものであり、基本的に、答申で示された判断を踏襲すべきものである。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 本件公文書について

 介護保険施設等の指導監査は、平成12年5月12日付老発第479号厚生省老人保健福祉局長通知「介護保険施設等の指導監査について」において、介護給付等対象サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ることを目的として行われ、その内容は、介護保険法第24条並びに第76条、第83条及び第90条等の規定に基づき実施される「監査」と、第5条の規定に基づき実施される「指導」に分かれていた。このうち「監査」は、不正又は著しい不当が疑われる場合に適切な措置をとるために実施され、「指導」は、介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させるために実施されていた。
 本件公文書は、当該通知を踏まえ、実施機関が「群馬県介護保険サービス事業者等指導要綱」に基づいて介護保険制度の周知徹底を目的とする行政指導として行った、「指導」の結果通知である。
 なお、当該通知は、平成18年10月23日付け厚生労働省老健局長通知「介護保険施設等の指導監督について」が出されたことにより、廃止されている。

2 本件事案を判断するに当たっての留意点

 群馬県公文書開示審査会答申第56号において、本件処分と同内容の部分開示決定の妥当性について判断をしていることから、今回、当該答申の内容を踏まえつつも、審査会の答申で示される考え方は決して不変のものではなく、社会情勢の変化等に応じて変更されることも当然にあり得ることを念頭に置き、本件事案について判断を行うものである。

3 条例第14条第3号イ該当性について

 本件公文書に記録され、実施機関が非開示とした情報が、条例第14条第3号イに該当するかどうかについて検討する。
 この点に関して、答申第56号においては次のように判断している。
「本件事案は、特定の施設の過去における『指導』の結果通知のみを単独で請求したものである。一般に、指摘された事項については一定の期間内に改善策を講じることとなっている。本件においても既に概ね適正な運営が行われていると判断されているところであり、当該『指導』の結果通知のみに記録された全ての情報が単独で公開されると、既に改善されているにもかかわらず、現在も適正とはいえない運営がなされているかのような誤解を生じさせるおそれがあると判断された。さらに、他の一般的な『指導』の結果通知との比較が行われることがないことから、当該『指導』の目的が対象サービスの取扱いや介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とするものであるにもかかわらず何か重大な問題があるかのように誤解されるおそれもあると判断された。
 また、実施機関は、国が定める回数を上回って『指導』を行っている。したがって、事務の効率化の観点から指摘文についてはできる限り省略して短文となるようにしている。これは、『指導』時に施設の担当職員と関係書類を確認しながら問題点と改善事項を指摘していることから、短文であってもその意図するところを正確に理解することができるということをその理由としている。しかし、これらの背景を知らない第三者がこの短文の指摘文を見ても、十分な内容を把握できずに無用の誤解を招くおそれを生じかねないものであることも確認された。
 したがって、これらの情報のみから安易に施設等への評価がなされることは、結果として法人の正当な利益を損うことになるため、本件公文書は、条例第14条第3号イに該当する。」
 これについて、答申第56号の判断時点以降の事情の変化の有無等を検討して、現時点で法人の正当な利益を害するおそれが存在するかどうかを判断する。
 まず、本件公文書は、平成14年1月28日及び同年12月25日付けの指導結果通知であり、本件処分時点においては、既に相当の期間が経過している。一般に、実施機関が行った指導の後も、通常に施設運営が行われながら相当の期間が経過していくならば、指導のあった事項については、指定取り消しに繋がるような重大な違反ではなかった、また、既に改善がなされて現在は適正な取扱いがなされているであろうと第三者に推測される可能性は高まっていくとも考えられるものの、その前提に立ったとしても、現在において、答申第56号で言及された危惧が現実的に問題のない程度に解消されているとまで言い切ることはできない。本件公文書において指導がなされた内容が短絡的に受け止められ、あたかも、重大な基準違反があった、あるいは不適正な状態が今も改善されないまま続いているかのような無用の誤解を与える具体的なおそれは、なお存在していると認められる。
 また、前述のとおり、本件処分後に厚生省老人保健福祉局長通知「介護保険施設等の指導監査について」については廃止され、新たに厚生労働省老健局長名で「介護保険等の指導監督について」が通知されているところであるが、その中では、指導監査結果の情報公開については特に言及されていない。これは、決して指導監査に関する情報公開の後退を意味するものではなく、従前からの利用者本位の情報公開を推し進める方針に変更ないものと理解するが、いずれにせよ、答申第56号以降、現在に至るまで、その考え方に大きく影響を与えうるような、厚生労働省の新たな方針等は特に示されてはいないものと認められる。
 なお、本件事案に関連して、平成18年7月14日付け群馬県公文書開示審査会答申第74号において、実施機関が行った「指導」の結果通知に対する「改善結果報告書」について、実施機関が非開示とした、指摘事項及びそれに対する「改善結果と今後の措置」(本件公文書に記録され、実施機関が非開示とした情報も、部分的にではあるが記載されている。)の部分は、条例第14条第3号イには該当しないとの判断を示している。ただし、当該事案については、改善結果自体が記載された文書が対象となっており、答申第56号で危惧されたような誤解を招くおそれはそもそも存在しないことが上記判断の根拠となっているため、本件事案とは前提が異なるものである。
 これらを勘案すれば、本件公文書のみから安易に施設等への評価がなされることは、結果として法人の正当な利益を害するおそれがあるため、答申第56号での判断と同様に、本件公文書で非開示とされた部分については、条例第14条第3号イに該当すると認められる。

4 結論

 以上のことから、本件処分について、非開示とされた部分は条例第14条第3号に該当すると認められるため、同条第6号該当性について判断するまでもなく、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 なお、申立人はその他種々主張するが、当審査会の上記判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成18年6月28日 諮問
平成18年7月28日 実施機関からの理由説明書を受領
平成18年10月2日 異議申立人からの意見書を受領
平成18年11月22日
(第4回 第二部会)
審議(事案の説明、実施機関の口頭説明等
平成18年12月25日
(第5回 第二部会)
審議
平成19年1月30日
(第6回 第二部会)
審議
平成19年2月5日 答申