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公文書開示審査会答申第78号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「小寺弘之群馬県知事が為した可能性のある次の各土地に係る農地転用許可処分(以下「本件処分」という)に係る手続き書類一式。○○市◇◇(地区)△△(21筆の特定地番を列挙。)」の公文書の存否を明らかにしない決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第二部会

第1 審査会の結論

実施機関は、当初の決定を取り消し、文書を特定した上で決定すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成17年9月26日付けで、「小寺弘之群馬県知事が為した可能性のある次の各土地に係る農地転用許可処分(以下「本件処分」という)に係る手続き書類一式。○○市◇◇(地区)△△(21筆の特定地番を列挙。)」の開示請求(以下、「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

実施機関は、平成17年10月11日、本件請求に関して、公文書の存否を明らかにしない決定(以下「本件処分」という。)を行い、公文書の存否を明らかにしない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

 条例第14条第2号該当

本件請求は、特定地番を名指ししての請求であり、開示請求に係る公文書の存否自体を明らかにすることにより個人情報を開示することになるため。

3 異議申立て

申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成17年10月17日、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。

4 諮問

実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成17年11月9日、本件異議申立て事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点

争点(条例第14条第2号該当性)

「開示を請求する公文書の内容又は件名」に多数の特定地番名を挙げた開示請求がされた場合に、条例第14条第2号に該当するものとし、条例第17条の公文書の存否を明らかにしない決定をしたのは妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

争点(条例第14条第2号該当性)

(1)申立人の主張

知事は処分の理由として、群馬県情報公開条例第14条第2号を適用しているが、地番を特定しての請求が、なぜ「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」として、判断したのか、特定の個人とは誰なのか、なぜ公文書の有無を知らせるだけで個人情報の開示となると判断したのか。また、「特定の個人の情報」とは一体誰の何を指すのか。条例に係る、このような判断の根拠の具体的な説明の責任を果たさないまま、本件処分を為したことは、条例に違反しており、直ちに本件処分の取り消しを求める。

(2)実施機関の主張

農地法による転用の手続きは、申請者から農業委員会による意見書添付を経て、県で許可が行われている。その申請書の内容としては、個人対個人または個人対法人の情報を記した添付書類が含まれている。
 本件請求は、特定地番を名指ししての請求であり、開示請求に係る公文書の存否自体を明らかにすることにより個人情報が開示されることになるため。
 異議申立人は、開示請求に係る公文書を存否応答拒否したことについて、条例を不当に解釈し運用されたものであるとして異議申立てを行っているが、今回、存否を明らかにしない決定をした開示請求は、条例第14条第2号本文の規定による「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当する情報を指定してのものである。

第5 審査会の判断

 本県の条例は、第17条で公文書の存否を明らかにしないでする決定(開示拒否)を、特に対象となる非開示情報を限定せずに認めており、それゆえ理論的には、すべての非開示情報について、この開示拒否は可能ということになる。
 この開示拒否を行いうるのは、非開示情報が保護しようとしている利益を著しく侵害する場合に限定すべきという考え方もあるが、非開示情報が条文及び解釈等で既に合理的な範囲に限定されている以上、この開示拒否の場合に限って、保護利益の侵害の程度を高めることは一貫性を欠くことになるので、必ずしも適当ではない。
 しかしながら、この規定は濫用のおそれを伴っており、濫用された場合は、条例第1条の「県が県政に関し県民に説明する責務」を実質的に果たさないことになるので、この規定を適用する場合は、対象となる公文書の情報が非開示情報に当たるか否かを当然のことながら正確に判断しなければならない。
 本審査会は、答申第71号において、特定の個人の氏名を挙げて、その「農地転用申請」に係る情報が記録された公文書の開示請求があった場合には、公文書の存否を明らかにしない決定は妥当であると判断しているところであるが、そのような結論とした理由として、農地法による許可申請手続と売買及び登記手続とはその趣旨・目的を異にする別個の制度であるということもあるが、それとともに我が国の不動産登記制度が人的編成主義(不動産登記簿を編成する場合に、不動産所有者を基準とし、1人ごとに1用紙を備えて編成する主義:新法律学辞典有斐閣より引用)ではなく、物的編成主義(不動産登記簿を編成する場合に、不動産を基準とし、1個の不動産ごとに1用紙を備えて編成し、個々の不動産ごとに権利関係を公示する主義:新法律学辞典有斐閣より引用)を取っていることが挙げられる。
 さて、本件事案で、実施機関の主張するところの非開示情報とは、詰る所「特定の個人が特定の地番の土地(農地)について(農地法に基づき)農地転用を行った」というものであると思われるが、条例第14条第2号で規定する個人情報の非開示情報は、「特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの)」と「なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に大きく分けられる。農地転用の事実は、通常後者には該当しないものと考えられる(実施機関も主張をしていない。)ので、前者についての検討を行うこととする。
 まず、本件事案の開示請求において確かに特定の地番が名指しされているが、地番自体は個人の氏名等と異なり直接的な個人情報ではないこと、及び確かに他の情報(土地登記簿)と照合することにより個人情報に至ることはあるものの、一方で土地は(農地の場合限定はされているものの)法人や団体が所有することもあるので、地番を名指しした開示請求であるということのみをもって、「群馬県情報公開条例の解釈及び運用の基準」でいうところの探索的請求に該当するものとは必ずしもいえない。
 また、本件事案については1つの地番ではなく、多数の地番が挙げられていることから、今までの実施機関の農地転用に係る開示方法を前提とすれば、開示請求に係るすべての地番を同一人が所有しているなど特別の場合でない限りは、この請求で対象公文書を特定したことをもって、必ずしもそれだけでは特定個人が識別できるものとはいえない(推定はできるとまではいえるが、条例の定める非開示情報は個人を推定できる情報ではなくあくまでも個人識別情報である)。
 なお、特別の調査をすれば推定情報を識別情報に変えうるのではないかという考えは、本件事案の開示請求に係る地番の数からすると、本件事案に関しては条例のいう「他の情報」に含めて考える必要はないものと判断をする。
 次に、本件事案で対象公文書を特定した場合に、識別はできないものの実質上対象となる地番が限定されることから、不動産登記制度がある限り、特別な調査をすることなく他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるという考え方もありうる。
 しかしながら、不動産取引の安全の保護の為に不動産の表示及び不動産に関する権利を物的編成主義により公示する不動産登記制度を、農地転用関係の情報公開請求に形式的に適用して公文書の存否を明らかにしない決定(開示拒否)ができるという話になれば、不動産登記制度があることが、拒否する情報を広げるという方向に作用し、結果として条例第1条の趣旨に反していくことになるので、今回のような事案においては、実質的な観点から判断していかなければならない。
 そこで、本件事案の対象となっている地番周辺を、公道上から調査したところ、開示請求の対象となっている地番らしき中に、明らかに田や畑等の農地とはいえない土地利用がなされているものがあった。
 「開示を請求する公文書の内容又は件名」で時期や時間的な制限がなされていないので、もし、その土地が本件事案に含まれているのであれば、請求日時点の状況は本審査会ではわからないものの、現時点においてはその外観から「農地転用」がなされたのではないかという事実(有無の事実)又は少なくともなされていなければならないという規範(物事の是非善悪を評価する尺度をいう。通常「~すべし」という形式で表現される:新法律学辞典有斐閣より引用)が存在するといわざるを得ない。
 このような事実(有無の事実)又は規範が存在する以上は、実質的な請求拒否である公文書の存否を明らかにしない決定をするのは妥当ではなく、その外観の限りにおいて「公にされている情報」(個人情報との兼ね合いでいうと条例第14条第2号ただし書イ該当)に当たるものと判断するが相当である。
 よって、以上のことから、本件事案で公文書の存否を明らかにしない決定をしたことは妥当でないと判断をするものである。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成17年10月18日 諮問を受理
平成17年12月15日 実施機関からの理由説明書を受領
平成18年7月20日
(第1回 第二部会)
審議(実施機関、異議申立人からの口頭意見陳述)
平成18年9月4日
(第2回 第二部会)
審議
平成18年10月23日
(第3回 第二部会)
審議
平成18年11月1日 答申