ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 生活こども部 > 県民活動支援・広聴課 > 公文書開示審査会答申第75号

本文

公文書開示審査会答申第75号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「平成17年4月28日付新聞発表の県教委所管県立高校女子生徒マッサージ教師懲戒処分事件に係る処分説明書」の部分開示決定に対する審査請求に係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第一部会

第1 審査会の結論

実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県教育委員会教育長(以下「実施機関」という。)に対し、平成17年7月15日付けで、「平成17年4月28日付新聞発表の県教委所管県立高校女子生徒マッサージ教師懲戒処分事件に係る処分説明書」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成17年7月27日、本件請求に係る公文書を「平成17年4月28日付新聞発表の県教委所管県立高校女子生徒マッサージ教師処分事件に係る処分説明書」(以下「本件公文書」という。)であると特定し、部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、公文書を一部開示しない理由を次のとおり付して、請求人に通知した。

 条例第14条第2号該当

 懲戒処分を受けた本人の氏名及び所属学校名は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる記述によって特定の個人(含む被害生徒)を識別することができるため。

3 審査請求

 請求人は、行政不服審査法第5条の規定に基づき、平成17年9月26日、本件処分を不服として、実施機関の上級行政庁である群馬県教育委員会委員長(以下「諮問庁」という。)に対し審査請求を行った。

4 諮問

 諮問庁は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成17年10月20日、本件審査請求事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(条例第14条第2号ただし書該当性)

 本件公文書で条例第14条第2号により非開示とした部分が、同条第2号ただし書イ、ロ又はハに該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

争点(条例第14条第2号ただし書該当性)

1 請求人の主張

 不良教師の勤務校名を隠すのは、今後の防犯上不当である。
 事件被害生徒への気遣いは分かるが、過去及び将来、また不良教師の転勤先の生徒の安全・安心の方が重要である。
 本件非開示理由は、学校名や犯罪の詳しい内容が外部に出ると、被害生徒個人に甚大な二次被害が及ぶため等というものであるが、犯罪職員を徒に隠避隠匿し、野放しにし、これまでに被害に遭った生徒らばかりでなく、新しい別の被害予定生徒らまで犯人の前に差し出すだけの、完全なる共犯行為である。
 当該職員は、他自治体で万引き行為等により懲戒免職処分を受けている元職員らとは比較にならない重大犯罪者なのであるから、その生温い懲戒処分書や処分説明書などは全部公開して、県教育委員会自体が組織的全体的に腐敗し切っている事実を公表し、県民全体に謝罪させるべきである。
 性犯罪者は庇護されれば罪質が悪化深化して、猟奇性を求め、牙が少女や幼女に向かうことは高崎の女児殺しの例でも明らかである。
 さらなる被害者を生ましめないためにも、全面開示を求める。

2 実施機関の主張

(1)条例第14条第2号本文該当性

  今回開示しなかった、該当教諭の氏名、所属学校名(以下、「本件非開示情報」という。)は、氏名はもちろん、所属学校名についても、既に報道等により公表されている該当教諭の年齢やその後転任した事実などの他の情報と照合することにより特定の個人を識別できるものであり、条例第14条第2号の個人情報に該当する。
  また、教諭本人のみならず、被害を受けた生徒についても、本件非開示情報が公開されることにより、該当教諭が顧問をしている部活動に所属する女子生徒であることが特定され、当該部活動に所属する女子生徒の人数等の状況から、被害生徒は相当程度絞り込まれてしまう。よって、本件非開示情報は、被害生徒が識別されうる情報でもあるといえるが、仮に特定の個人を識別することができる情報には当たらなくとも、「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」には該当することは、明白である。

(2)ただし書イ該当性

 本件公文書は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条に基づいて執行された懲戒処分に関し、同法第49条第1項に基づき、該当教諭本人に処分の通知とともに処分事由を伝えることを目的としたものである。懲戒処分の根拠法令である地方公務員法や、それを受け具体的な手続等を定める、群馬県職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和26年条例第54号)には、懲戒処分を受けた職員の氏名等の公表に関する規定は存在しない。
 また、群馬県教育委員会では、教職員の懲戒処分について、「群馬県教育委員会の懲戒処分に関する公表基準」に基づき、処分対象職員の学校種及び職種、処分事由、処分内容、処分年月日を公表しているが、具体的な氏名、所属学校名は、個人のプライバシー保護及び被害者又は関係者の保護等の観点から、原則として公表内容から除いている。例外として処分対象職員の氏名、所属学校名を公表するのは、「職務に関する非違行為で刑事事件となっている事案(収賄、詐欺等)」又は「本人の重大な法令違反や非行の場合で、社会に及ぼす影響の著しい事案」のいずれかに該当する場合となっており、今回はこれに該当しない。

(3)ただし書ロ該当性

 該当教諭は、その非違行為に関し既に適法な手続に基づいた懲戒処分を受け、現在は適正に職務を行っており、それを公表しなければ更なる被害を防げないという請求人の主張には根拠がない。また、そのような懲戒処分の事実の公表は、任命権者の職権濫用に当たると判断される。
 よって、本件公文書中には、人の生命、健康等を維持するため公にすることが必要な情報は認められない。

(4)ただし書ハ該当性

 本件懲戒処分の事由が、学校の教育活動の中で行われたものである以上、本件文書は、職務の遂行に係る情報を含むが、その非違行為を原因として職員個人が受けた懲戒処分に関する情報は、職務の遂行に係る情報には当たらない。仮に職員個人の懲戒処分に関する情報までを職務の遂行に係る情報として捉えたとしても、本件非開示情報について公表した場合、該当教諭に対し過剰な社会的制裁が加えられる可能性があり、「当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合」に該当し、ただし書ハの例外に当たる。
 また、本件非開示情報は、被害生徒が識別できる情報でもあり、その点から見たとき、そもそもただし書ハには該当しない。

 以上の理由により、当該情報は条例第14条第2号ただし書には該当しないと判断し、部分開示とした。

第5 審査会の判断

当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

争点(条例第14条第2号ただし書該当性)

1 公文書の特定について

 請求人が本件請求時に記載した公文書の内容又は件名は「平成17年4月28日付新聞発表の県教委所管県立高校女子生徒マッサージ教師懲戒処分事件に係る処分説明書」である。
 このことから、請求人の主張する本件公文書は、当該懲戒処分を受けた教育職員(以下「被処分者」という。)に対して懲戒処分を行う際に交付した、処分の理由を記載した説明書(以下、「本件処分説明書」という。)であると認められる。

2 処分説明書について

 地方公務員法は、第29条第1項において、職員が非違行為等を行った場合に、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる旨を規定し、また、その第49条第1項において「任命権者は、職員に対し、懲戒その他の意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」と規定している。
 本件処分説明書は、被処分者の任命権者である群馬県教育委員会が、非違行為等を行った当該教育職員の懲戒処分を行う際に、地方公務員法第49条第1項の規定に基づいて交付した、処分の理由を記載した説明書の控えである。
 本件処分説明書には、被処分者の所属学校、氏名、処分事由、根拠法令、処分の種類及び程度、懲戒処分に対する不服申立てに係る教示、発令年月日、処分者が記載されている。
 実施機関は、これらの記載内容のうち、被処分者の所属学校名及び氏名を非開示としたものである。

3 条例第14条第2号本文該当性について

 実施機関は、本件処分説明書のうち、本件非開示情報については、第14条第2号本文に該当するとしていることから、以下において、その妥当性を検討する。
 まず、被処分者の氏名は、明らかに条例第14条第2号に該当する情報である。
 次に、被処分者の所属学校名については、既に報道され公表されている当該職員の年齢やその後の転任の状況といった他の情報と組み合わせることにより、特定の職員が懲戒処分を受けたということが識別され得るものであるため、被処分者の氏名と同様、条例第14条第2号に該当する情報である。
 また、被処分者が特定されることにより、当該職員が顧問を務めていた部活動もまた明らかになるが、報道により公になっている被害生徒の人数と、当時当該部活動に所属していた女子部員の人数とを考慮すると、本件非開示情報が明らかになった場合、被害生徒についても、相当程度正確に特定されることとなる。よって、本件非開示情報は、特定の個人を識別することができるとまではいえないが、本件処分の原因となった事件の性質を考慮すると、公にすることにより、なお被害生徒の権利利益を害するおそれがある情報であるといえる。

4 ただし書イ該当性について

 懲戒処分の根拠となる地方公務員法や、同法を受けて手続及び効果を定めた群馬県職員の懲戒の手続及び効果に関する条例中には、処分説明書の内容の公表についての規定は存在しない。
 また、実施機関においては、職員に対して地方公務員法に基づく懲戒処分を行ったときには、「群馬県教育委員会の懲戒処分に関する公表基準」により公表をしているところである。上記基準においては、被処分者本人や関係者のプライバシー保護の観点から、原則として、被処分者の氏名や所属学校名は公表内容に含まれておらず、例外的に、「職務に関する非違行為で刑事事件となっている事案(収賄、詐欺等)」又は「本人の重大な法令違反や非行の場合で、社会に及ぼす影響の著しい事案」に当たる場合に、原則として氏名や所属学校名を公表する、と定められている。
 本件懲戒処分の原因となった事件については、刑事事件とはなっておらず、また、当該非違行為が「重大な法令違反や非行の場合で、社会に及ぼす影響の著しい事案」には該当しないとの実施機関の判断が、その裁量権を逸脱・濫用したものであるとまではいえない。また何より、本件非開示情報は、被害生徒の個人情報でもあり、これを公にすれば被害生徒の権利を害するおそれもあることを考慮すれば、本件非開示情報が「群馬県教育委員会の懲戒処分に関する公表基準」に照らして公にされるべき情報であるとは認められない。
 よって、本件非開示情報は、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報ではなく、ただし書イに該当しないものと判断する。

5 ただし書ロ該当性について

 本件処分説明書は、上記のとおり、公務員に対し懲戒処分を行う際に、被処分者に交付することを目的として作成されるものであり、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」は記載されていないことから、本件非開示情報は、ただし書ロに該当しないものと判断する。

6 ただし書ハ該当性について

 本件懲戒処分の原因となった非違行為は、部活動中での行為であり、当該被処分者の職務遂行の過程において行われたものである。しかしながら、特定の職員が懲戒処分を受けたという事実自体は、本質的に、公務員の立場を離れたその個人の資質、名誉にかかわる、被処分者固有の身分上の取扱いに関する個人情報である。
 また、前述のとおり、本件非開示情報は、被処分者の個人情報であると同時に被害生徒の個人情報としての面も有するものであるが、この被害生徒が、ただし書ハにいう「公務員」に当たらないことは明らかである。
 以上により、本件非開示情報は、ただし書ハに該当しないものと判断する。

7 結論

 以上のことから、実施機関の決定は妥当であり、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成17年10月20日 諮問
平成17年11月25日 実施機関からの理由説明書を受領
平成18年1月4日 審査請求人からの意見書を受領
平成18年7月21日
(第1回 第一部会)
審議
平成18年8月30日
(第2回 第一部会)
審議(実施機関の口頭意見陳述)
平成18年10月23日
(第3回 第一部会)
審議
平成18年10月30日 答申