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公文書開示審査会答申第74号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

○○市デイサービスセンターにおける利用者死亡に至る介護事故について
(1)平成13年度◇◇◇デイサービスセンター介護保険事業者等の実施指導に対して、同事業所が提出した改善結果報告書及び挙証書類
(2)平成14年度◇◇◇デイサービスセンター介護保険事業者等の実施指導に対して、同事業所が提出した改善結果報告書及び挙証書類の部分開示決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会

第1 審査会の結論

 実施機関は、本件異議申立ての対象となった公文書すべてについて開示すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成16年12月22日付けで、「○○市デイサービスセンターにおける利用者死亡に至る介護事故について平成13年度以降、社会福祉法人□□□□運営の事業所等に対する実施指導結果等のうち苦情申立書等に関連したもの。及び同法人等提出の改善結果報告書並びに挙証書類等(前回開示の書面等で非開示部分が前回と同一である場合にはこれを除く。また、比較可能な他の一般的指導結果通知事例及び本指導等に係る背景、経過等を表わす書面等を添付すること)」の開示請求を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成17年1月17日、本件請求に対応する公文書を「平成13年度及び平成14年度の◇◇◇デイサービスセンター介護保険事業者等の実施指導に対して、同事業所が提出した改善結果報告書及び挙証書類」(以下「本件公文書」という。)であると判断し、条例第14条第3号イに該当する情報が含まれていることを理由として、部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件公文書を一部開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

 条例第14条第3号イ該当

競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成17年3月14日、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成17年3月30日、本件異議申立て事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点

争点(条例第14条第3号イ等該当性)

 本件公文書に記載された情報(挙証書類に関しては文書名を含む)が、条例第14条第3号イその他の非開示情報に該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

争点(条例第14条第3号イ等該当性)

(1)申立人の主張

ア 本件指導の内容により、実施機関が当該法人の不正の揉み消しを図った事実が明らかになっている。また、指導の結果及び改善報告書の内容については、(老発479号平成12年5月12日付厚生省老人保健福祉局長通知で)「そのサービス事業者の事業活動区域に所在する市町村(保険者)への情報提供を行う」とうたっているが、市町村への情報提供が全く行われておらず、当該不正の隠蔽を図る意図は明らかであり、速やかに開示されるべきである。

イ 本件公文書は、改善報告書であり、改善内容が明確に記されている。従って、現在も適正とはいえない運営がなされているかのような誤解を生じさせる恐れはありえない。また、指摘事項等に認められる不正は既に明らかであり、改善内容の記述について、同法人による虚偽あるいは不実の記載があるならば、その事実を確認して相応の処分が必要である。

ウ 不正受給の隠蔽と揉み消しが、法人との信頼関係の持続に必要であるとする実施機関の主張は論外というも愚かであり、すべてを開示して事実を明らかにすることが、双方にとって緊張関係を保つことであり、法令順守の遂行に繋がるものである。

エ 本件指導等についての着眼点及び主眼点について、それらの規定違反に対する改善内容が明らかとなることが、競争上の地位その他正当な利益を害するものとは考えられない。

オ 関係法令順守と適正な介護給付を指導監督するべき立場でありながら、法令違反の事実を揉み消し、不正を隠蔽したものが、不当な条例の適用を再度主張するべきではない。

カ 前回の答申において、次のとおりの付帯意見が記されている。
 「指導結果の通知及び改善報告の内容について、・・・・・・できる限り利用者保護の観点から開示を行う」旨が明記されている。したがって、現時点において・・・開示することは・・・難しいとしても・・・法人ごとの指導結果の通知及び改善報告書の内容について公表する方法を検討するなど必要な措置を講じられたい」

キ 公文書開示審査会において、介護保険施設の指導監査について(老発第479号平成12年5月12日付厚生省老人保健福祉局長通知)等に関して錯誤が存在する。

(2)実施機関の主張

ア 指導監査結果通知は、社会福祉法人及び当該法人が運営する社会福祉施設の事業活動について関係法令及び厚生労働省通知等を踏まえ、改善を要する事項を文書により通知し改善指導するものであり、それに対し、同法人は、指導監査結果通知の指摘事項に沿って、改善状況の報告を行っている。また、改善報告書を裏付ける資料として、挙証書類を添付している。
 具体的に内容を検討したところ、改善報告書には、指摘事項とそれに対する「改善結果と今後の措置」及び「改善(予定)年月日」が含まれており、群馬県公文書開示審査会答申(平成16年12月13日付答申第55号等)の中で述べられているように、指摘文言のみから安易に評価されると法人及び施設に関する社会的信用・信頼を不当に低下させ、その正当な利益を損なうおそれが強いと判断せざるを得ないものであった。

イ 挙証書類についても、開示することにより、指摘した事項が類推されるおそれがあることから、同様の判断を行ったものである。
 このため本件公文書は、条例第14条第3号イに規定する「公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」である。

第5 審査会の判断

当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

(1)本件公文書について

 本件公文書に係る指導監査に関しては国から次のような通知が出ている。
 まず、「介護保険施設等の指導監査について」(平成12年5月12日付厚生省老人保健福祉局長通知)によると、介護保険施設等の指導監査は、介護給付等対象サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ることを目的として行われ、その内容は、介護保険法第24条並びに第76条、第83条及び第90条等の規定に基づき実施される「監査」と、第5条の規定に基づき実施される「指導」に分かれている。このうち「監査」は、不正又は著しい不当が疑われる場合に適切な措置をとるために実施され、「指導」は、介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させるために実施される。
 実施機関は、当該通知等を踏まえたうえで、介護保険サービス事業者等(居宅介護支援事業所、デイサービスセンター等)に対して、対象サービスの取扱い、介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを目的とする場合には「群馬県介護保険サービス事業者等指導要綱」(以下「指導要綱」という。)に基づき「指導」を行い、対象サービスの内容又は介護報酬の請求について不正又は著しい不当が疑われる場合には「群馬県介護保険サービス事業者等監査要綱」(以下「監査要綱」という。)に基づき「監査」を行っている。
 これら「指導」及び「監査」の結果は、主に厚生省令の基準が十分に満たされていないもの、またはそれに関連する事項に対してなされる「指摘事項」と、厚生労働省通知が十分に満たされていないもの、またはそれに関連する事項に対してなされる「指導事項」に分けて通知され、「指摘事項」に関しては改善結果の報告を求めている。
 本件公文書の指摘事項の背景となる厚生省令の基準の主なものは、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」等である。
 本件公文書は、指導要綱に基づき行政指導として行った「指導」の結果通知(指摘事項)に対する「改善結果報告書」(ただし、一部「指導事項」に対するものも含まれている。)及び改善結果に係る「挙証書類」である。

(2)本件事案を判断するに当たっての留意点

 本件事案を判断するに当たっては、実施機関及び申立人双方が前回(答申第55号、第56号)の判断に関して、それぞれ提出した理由書及び意見書で引用あるいは反論していることから、今回の判断に当たっては、それらことを踏まえ、本件事案と前回答申との事実の違いをできるだけ明らかにした上で判断を行うものとする。

(3)改善結果報告書の条例第14条第3号イ等該当性について

 改善結果報告書に記録され、実施機関が非開示とした情報が、条例第14条第3号イに該当するかどうかについて検討する。
 実施機関は、「改善結果報告書には、指摘事項とそれに対する『改善結果と今後の措置』及び『改善(予定)年月日』が含まれており、群馬県公文書開示審査会答申(平成16年12月13日付答申第55号等)の中で述べられているように、指摘文言のみから安易に評価されると法人及び施設に関する社会的信用・信頼を不当に低下させ、その正当な利益を損なうおそれが強いと判断せざるを得ない」と主張するが、前回の実地指導結果通知と異なり、改善結果報告書について、前回の答申で述べている「当該『指導』の結果通知のみに記録された全ての情報が単独で公開されると、既に改善されているにもかかわらず、現在も適正とはいえない運営がなされているかのような誤解を生じさせるおそれがあると判断された。」はそもそも該当しない。
 また、「背景を知らない第三者がこの短文の指摘文を見ても、十分な内容を把握できずに無用の誤解を招くおそれ」は改善結果報告書について全くないとはいえないものの、介護保険サービス事業者等に関しては、前述の「介護保険施設等の指導監査について」で「都道府県は、指導結果の通知及び改善報告書の内容について、そのサービス事業者等の事業活動区域に所在する市町村(保険者)へ情報の提供を行うとともに、出来る限り利用者保護の観点から開示を行う。」とされており(他にも「社会福祉法人指導監査要綱の制定について」(平成13年7月23日社会・援護局長等通知)において「監査結果の開示は、法人運営の適正化のみでなく、利用者の立場に立った質の高いサービスの提供に資することも目的としていることを踏まえ、各都道府県市の情報公開条例に基づく開示請求に対しても積極的に閲覧を可能としておく体制を整えることが望ましいこと。」とされている。)、審査会で調査した限りにおいては、東日本のほとんどすべての都道県において既に開示情報(北海道、東北及び関東はすべて原則開示)であると判断されていること、同種の情報である社会福祉法人の指導監査結果等のホームページ上の公開が実際なされている都県も存在し記載内容の比較が可能であること、そもそも今回の対象公文書は改善をしたとの結果が合わせて記載されている事実からすれば、通常一般人が誤解をするとは考えられず、県と介護保険サービス事業者等との間でその指摘内容に疑義が生じている場合でもない限り、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれは認められない。
 なお、今回、実施機関は条例第14条第6号該当とは正式に主張していないが、前回の答申で「・・・当該『指導』に当たっては、法人及び施設等の関係者から組織運営、人事、資産など内部管理情報の任意の提供を受けて実施しており、これら任意の情報の提供は、一般的に他に知らされないという認識及び信頼のもとに行われている。したがって、従来公にされたことのない『指導』の結果通知の内容を突然に公にすることになると、法人との間の信頼関係が損なわれ、今後の『指導』が円滑に行われなくなる事態が予想されることから・・・」としているのでそれとの関係も述べることとしたい。
 事務事業の適正な遂行に支障があるおそれがある情報の解釈について、最高裁判事である藤田宙靖氏は、かつて国の情報公開審査会委員(東北大学教授)であったときの講演の中で次のように述べている。(情報公開法施行一年を振り返って-情報公開審査会審査委員としての経験から- 平成14年7月12日東北大学藤田宙靖東北大学大学院法学研究科・法学部ホームページから引用)
 「・・・いわゆる『労災隠し』の問題などが、その典型例の一つであって、労働災害が起きた事業所から基準監督署が受ける事故報告書につき、これを開示せよ、という請求に対し、行政機関の側では、こういったものが開示されると、今後、事業所側は、例えば風聞被害等をおそれて、事故が起きても詳細な報告をしないとか、或いは偽った報告をする等、適正な協力をしなくなるおそれがあり、それでなくとも摘発が難しい労災隠しについての調査が、一層困難になる、という理由から、不開示が相当と主張して来ている。この種のケースは、事業所側の非協力ということ自体が、本来あってはならないことなのであって、それを前提として議論すること自体適当でない、と考えるべきなのか、それとも、それが良いか悪いかはともかく、事実として、そういった事態が生じ、事業に支障が生じるおそれがある以上、情報開示はなさるべきでない、というように考えるのか、とりわけこのようなケースでは、第三者の協力が得られるかどうかが重要なポイントとなっており、必ずしも、行政機関の側の努力のみで完全に解決できる問題だけではない、といった側面があることから、甚だ難しい判断が強いられるケースである。
 こういった難しい実情はあるが、しかし、この問題は、やはり、基本的に、規範論的立場から考えることをその出発点とせざるを得ないものであるように考える。すなわち、・・・(中略)・・・監督署が、本来あってはならない事業所側の非協力の恐れを理由とすることは、極力避けられなければならないのである。それが無理だ、というためには、無理であるということ、例えば、・・・(中略)・・・労災隠しを防ぐにはそれしかない、といった事情が、具体的かつ詳細に説明されるのでなければならない。こういったスタンスを明確にせず、徒らに事実論的立場に立って判断することが習いとなると、『事実として困難』という理屈の前に、『それは本来あってはならないこと』という認識が後退し、そこに歯止めが効かなくなってしまう恐れがある。・・・」
 本審査会は司法機関ではないので、すべての事案に関してここでいうところの規範論的立場を優先すべきであるとまでいうつもりはないが、少なくとも本件事案については、先に述べた国の通知で「出来る限り利用者保護の観点から開示を行う。」(本県の指導要綱でも同様の記述がある。)とあり、そしてそれが出された当時の背景として介護保険制度の「行政上の措置」から「利用者本位の契約」へという大きな流れがあったことから判断すれば、改善報告書が提出された時点で、法人への指導としては完結しており、改善がされたことが記載されている公文書については条例第14条第6号の該当性よりも、むしろ開示していくことが、同通知の「介護給付等対象サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ること」という指導監査の目的にも適うと考えるものである。
 ちなみに、情報公開制度は、実施機関が保有する情報を取得する根拠法令等の趣旨に従って、非開示に該当するか否かが判断されるものであり、そういった意味では相対的なもの(例えば、個人情報であっても法令等の規定の仕方により、開示となる場合もある。)であるので、必ずしも県が指導監査に類することを行う他の法人(病院等)の同種の情報と同様に判断しなければならないものではない。

(4)挙証書類(「利用契約書」)の条例第14条第3号イ該当性について

 本件事案の対象となる挙証書類は、「利用契約書」であるが、(3)のとおり、「改善結果報告書」自体を条例第14条第3号イに該当しないと既に判断しているところであるので、実施機関の「挙証書類についても、開示することにより、指摘した事項が類推されるおそれがあることから、同様の判断を行ったものである。」との主張は認められない。
 なお、実施機関は特に他の非開示理由を主張しておらず、一般的にデイサービスセンターの「利用契約書」は法人の内部管理情報であるとは認められないから、条例第14条第3号イの非開示情報には該当しない。

(5)結論

 以上により、本件公文書はすべて開示することが妥当であると認められ、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 その他

 異議申立人は、情報公開条例以外のことについて種々主張するが、争点に係るもの以外の主張はいずれも本件事案の判断とは関係がない。

第7 審査の経過

当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成17年3月31日 諮問
平成17年5月9日 実施機関からの理由説明書を受領
平成17年11月16日 異議申立人からの意見書を受領
平成18年3月24日
(第121回審査会)
審議
平成18年4月28日
(第122回審査会)
審議(実施機関、異議申立人の口頭意見陳述)
平成18年5月22日
(第123回審査会)
審議
平成18年6月16日
(第124回審査会)
審議
平成18年7月14日 答申